サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
買ってよかったもの
www.ier.hit-u.ac.jp/~yosihara
第14回現代規範理論研究会「シンポジウム:アナリティカル・マルクシズムの可能性」について 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2006年4月4日 1. はじめに 第14回現代規範理論研究会「シンポジウム:アナリティカル・マルクシズムの可能性」を2006年3月16日に一橋大学国立東キャンパスマーキュリータワーにて行った。このシンポには、パネラーとして磯谷明徳氏(九州大学大学院経済学研究科)、佐藤良一氏(法政大学経済学部)、及び橋本 努氏(北海道大学大学院経済学研究科)の3人をお招きし、新刊間もない『マルクスの使いみち』(稲葉振一郎・松尾匡・吉原直毅)について、論じていただいた。また、著者サイドの稲葉、松尾両氏もディスカッサントとしてお招きした。パネラーをお願いした御三方には、公刊後わずか10日ばかりの間で急遽、著作に目を通してコメントを突貫工事的に準備していただき、本当に感謝に絶えない。
書評:アマルティア・セン/後藤玲子『福祉と正義』東京大学出版会 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2009年6月29日 本書は民主主義システムを規範的に基礎付ける正義の理論と、福祉的自由を巡る基礎理論及び応用理論に関するアマルティア・センと後藤玲子の近年の諸論文を下に、福祉と正義に関する両者のダイアローグの意図の下、1冊の書籍として再構成したものである。まず序章で、センの経済学について、主に社会的選択理論と合理性の理論、及び広義の自由論と潜在能力理論について、その動機と意義が後藤によって説明される。その後は、「I 個人の権利と公共性」、「II 正義の条件――義務と相互性――」、及び「III 正義の位相」の3部構成となっており、それぞれ最初にセンが問題提起とそれへの自説を展開する章に始まり、続いて、後藤が自身の固有の問題意識に基づいて、センの議論の発展的拡張・応用や独自の理論的整理を行う章が続く
最近思う事: 湯浅誠・堤未果『正社員が没落する--貧困スパイラルを止めろ!』(角川新書)を読んで 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2009年3月15日 1. 湯浅誠・堤未果『正社員が没落する--貧困スパイラルを止めろ!』(角川新書)は今の時勢がまさに必要とする論を展開している。湯浅氏や堤氏の昨年来の優れた新書の公刊なり、そして経済学者においても京大名誉教授の橘木氏の一連の地道な「日本の貧困問題」に関する実証研究もあって、現在ではもはや日本でも貧困問題や経済格差問題が深刻化している旨を否定する論調も見られなくなった。3~4年前までは、80年代以降の日本の所得格差拡大は人口の高齢化によって齎された統計上の見せかけの現象である――人口の高齢化が統計上の所得格差拡大を齎す大きな要因であった事は確かであるが――、そして90年代後半以降の若年層での顕著な格差拡大を伴った所得格差拡大は、90年代長期不況故
ワークフェア(Workfare)とベーシックインカム(Basic Income) 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2007年4月18日 1. ワークフェア ワークフェアとは、生活保護、医療費保護などからなる「福祉」(welfare)の受給者に対して、一定の就労を義務づけ、給付を労働の対価とすることによって、その精神的自立を促すと共に、就労を通じて、招来の経済的自立の基盤たる技術・技能を身に着けさせようという公的扶助に関する改革理念であり,制度である。もともとは米国ニクソン政権下におけるAFDC(要保護児童扶助)改革に際して,造語されたと言われる。代表例として,米国クリントン政権下の96年8月の「個人責任及び労働機会調和法」が挙げられ,AFDCの廃止とTANF(貧困家族一時扶助)の導入を求めた。それによると,各州は2002年までに受給者の5割を週30時間以上就労させなければならず,通
第15回現代規範理論研究会:後藤玲子「正義と公共的相互性」について 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2006年4月24日 第15回現代規範理論研究会は4月22日土曜日に開催され、立命館大学の後藤玲子さんをお迎えして報告してもらった。この研究会は、毎度、幅広いスタイルの研究者・大学院生が集まってくる。後藤さんの今回の報告は、近年の生活保護制度見直しの動向の中で、老齢加算、母子加算などの段階的廃止が検討されてきているのであるが、そうした動向を規範理論的に批判するものだ。厚生労働省の社会保障審議会福祉部会「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」でそうした議論が為されてきており、後藤さんは委員の一人だった。制度見直しのこうした動向には、近年の高齢化や不況などもあって、生活保護受給者の人数も、またその受給期間も増えており、将来的な財政的負担の懸念という側面もある。また、現在の制度は生活保護受給者の自
「基本所得」政策の規範的経済理論:――「福祉国家」政策の厚生経済学序説―― 後藤玲子 立命館大学大学院先端総合学術研究科 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2004年4月22日 要約 本稿の目的は、「福祉国家」の有り方を巡る近年の論争において提起されている「基本所得」政策の、資源配分メカニズムとしての規範的特性を明らかにする事である。最初に、「基本所得」政策の代表的提唱者であるヴァン・パレース(Van Parijs (1985))に依拠しつつ、「基本所得」制構想の規範理論的基礎付けを与える「リアル・リバータリアン」論を紹介し、それによって明らかにされた「基本所得」政策が満たすべき規範的基準を、公理的資源配分理論の枠組みにおいて定式化する。さらに、「基本所得」政策と整合的な資源配分ルールの理論的構成可能性を探求する。そのようなルールは、労働スキルの格差のない経済環境では、均等便益解として特徴付け
シンポジウム「統計で見る日本の経済格差」を聴講する 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2006年4月24日 4月19日に、日本学術会議主催のシンポジウム「統計で見る日本の経済格差」が開催され、聴講しに行った。基調報告が京大経済学部の橘木さんと阪大社研の大竹さんで、その後、一橋経研の高山さんを加えてのパネルディスカッションとなった。 面白かったのは、ジャーナリズムでも橘木さんと大竹さんは並らんで紹介されるが、橘木さんは「弱者の見方」、大竹さんは「市場原理主義者」という対立図式で取り上げられるらしい。しかし、二人ともその図式に対して不満を表明された点である。互いに「そんなに違っていない」、「ほとんど同じ事を言っている」と強調されていた。 確かに二人とも、日本の経済格差の拡大現象が統計的にも裏付けられると言う点では一致している。ただ、実証的分析としては、大竹さんのほうがはるかに緻密だ。彼の議論は現在
『マルクスの使い道』(稲葉振一郎・松尾匡・吉原直毅)の出版、近し[1] 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2006年2月19日 1. イントロダクション 一部で秘かに注目されていたらしい稲葉振一郎・松尾匡・吉原直毅の3人による座談会本『マルクス経済学の逆襲(仮題)』が、『マルクスの使い道』という正式なタイトルの下に、ついに出版への最終段階に入った。当初の予定通り、2月末から3月初旬の間に、書店の書棚に積まれることになろう。帯タイトルが「人文系ヘタレ中流インテリのためのマルクス再入門」となるようだが、この本はまさに寝る前にベッドで寝転がりながら読むのにちょうど良いような「ポップ」な娯楽本であって、その意味では入門レベルの教科書ですらない、という体裁を整えて発売されるようだ。そこら辺は、稲葉さんの趣味や出版社のそろばん勘定が働いた結果であろうから、私自身はあまり突っ込む気はない。少なくとも、「研究
「『新自由主義』に対する科学的オールタナティブ構想に向けて」[1] 吉原直毅 一橋大学経済研究所 2005年11月23日 1. 「新自由主義」に対する既存のオールタナティブ路線に欠けているのは何か? いわゆる「経済のグローバリゼーション」の下で、日本の福祉国家制度も本格的再編が進んでいる。その動向は、「新自由主義」路線として特徴付けられることも多い。すなわち、経済的自由競争を重視し、規制緩和や市場の競争ルールの整備を進める一方、社会福祉や教育など従来公共部門が担ってきたものを民間へと移して「小さな政府」を作り、「民間活力」による経済的効率やサービスの向上を図る路線として特徴付けられている。これらの政策路線の資源配分的特徴の一つは、端的に言って大企業や高所得者への優遇的な減税の実施であり[2]、他方での福祉的支給の切り詰め・制度見直し[3]等を通じた、所得再分配メカニズムの変換である
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『www.ier.hit-u.ac.jp』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く