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血液製剤スキャンダルの犠牲者追悼集会で、HIVとC型肝炎に感染した弟の写真を掲げる遺族(2024年5月) Hollie Adams-Reuters <血液製剤の実験に使われたイギリスの血友病の子供たち。民事訴訟で被告企業が責任を全面的に認め和解が成立した日本との違いとは?> [ロンドン発]英国で1970~91年にかけ、汚染された血液製剤や輸血で3万人以上の人々がヒト免疫不全ウイルス(HIV)や肝炎に感染し、約3000人が死亡したNHS(国民保健サービス)史上最悪の医療災害で調査委員会は5月20日、5年にわたる調査の最終報告書を公表した。 最終報告書は「この医療災害は回避することが可能であり、回避されるべきだった。患者は故意に『容認できないリスク』にさらされた」と結論付けた。さらに英国政府、医師、NHSが感染を隠蔽しようとしたと非難した。 英南部ハンプシャー州の医療と教育を同時に行う施設「ト
<米共和党はゼレンスキーを助けるか、トランプに忠誠を誓うか──「ウクライナは敵、ロシアは友」とする強硬派も> [ロンドン発]「ウクライナを巡る米国の正念場。米共和党はゼレンスキーを助けるか、トランプに忠誠を誓うか、厳しい選択を迫られている」と題した英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のエドワード・ルース米国エディターのコラム(4月10日付)を読んで背筋が寒くなった。 英国のデービッド・キャメロン外相(元首相)は4月8日、ウクライナ戦争、北大西洋条約機構(NATO)、緊迫度を増す中東情勢について話し合うため米フロリダ州のマー・ア・ラゴ・リゾートを訪れ、ドナルド・トランプ前米大統領と会談した。 英紙デーリー・テレグラフ(4月9日付)によると、キャメロン氏はトランプ氏に「英国が国防費にどれだけの予算をつぎ込んでいるかを知ってほしい」と第二次大戦以来の英米特別関係の「幅広さと強さ」を強調したという
<「私が大統領なら24時間以内にウクライナ戦争を片付けられる」と豪語するドナルド・トランプ前米大統領だが> [ロンドン発]米紙ワシントン・ポスト(4月7日付)は「ウクライナ戦争を終結させるためのドナルド・トランプ前米大統領の秘密計画」という見出しで「トランプ氏はウクライナに圧力をかけて被占領地を放棄させることで戦争を終結できると内々に語っている」と報じた。 それによると、トランプ氏の考えはウクライナにクリミア半島と東部ドンバス地方(ドネツク、ルハンスク両州)をロシアに割譲するよう働きかけることだという。トランプ氏はこれまで「私が大統領なら24時間以内にウクライナ戦争を片付けられる」と豪語してきた。 トランプ陣営の外交・安全保障専門家はロシアより中国重視だ。トランプ氏はロシアとウクライナ双方が「面目を保ちたい」「逃げ道を求めている」と考えており、ウクライナの一部の人々は現在の被占領地がロシア
<「英国は1970年代の危機再発に直面」と、最大野党・労働党のレイチェル・リーブス影の財務相。一方のスナク首相は支持率低迷にあえぐ> [ロンドン発]英国の次期総選挙で14年ぶりの政権奪還が確実視される最大野党・労働党のレイチェル・リーブス影の財務相は3月19日の講演で「英国は1970年代と同様、政治的混乱と危機再発の瞬間に直面している。その重荷は労働者の肩にのしかかっている」と指摘した。 英国は昨年第3、4四半期連続でマイナス成長に陥り、景気後退入りした。今年2月時点のインフレは持ち家住宅費を含む消費者物価指数(CPIH)で年率3.8%。食品・飲料5%、衣服・靴5%、健康6.6%、通信5.7%、外食・宿泊6%と落ち着いてきたとは言え、まだ高い。 リーブス氏は「その根底には、急速に変化する世界で英国が競争するために必要なサプライサイド改革の失敗がある。強固で安全な基盤の上に成長を築き、3本の
<バイデンとトランプが演説で語った、180度異なる「アメリカ」の姿。大統領選の後、実現するのはどちらのアメリカなのか> [ロンドン発]「トランプとバイデンは2つの演説で米国について全く異なる見解を示した」(3月8日付米紙ニューヨーク・タイムズ)「バイデンとトランプ、2つの演説で語られた2つの米国像」(3月8日付米紙ウォール・ストリート・ジャーナル) 11月の米大統領選で再び対決する現職ジョー・バイデン大統領の一般教書演説とドナルド・トランプ前大統領によるスーパーチューズデーの勝利演説は米国について180度異なるビジョンを描いてみせた。世論調査で優位に立つトランプ氏はディストピアの米国を語る。 「この3年間、この国が大きな打撃を受けるのを見てきた。私が大統領に再選していればロシアがウクライナを攻撃することはなかった。イスラエルが攻撃されることもなかった。イランは一文無しだった。(イスラム過激
ロシア反政府活動家ナワリヌイ氏「獄死」...大統領選を前にプーチンは怯えている 「これは強さではなく弱さ」 <アレクセイ・ナワリヌイ氏は摂氏マイナス30度にもなる北極圏の刑務所に収監されており、2月15日にはビデオ審問に参加していた> [ロンドン発]ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を厳しく批判し、昨年12月に北極圏ヤマロ・ネネツ自治管区の刑務所に移された反政府活動家アレクセイ・ナワリヌイ氏(47)が2月16日獄死した。ロシア国営タス通信は「死因は調査中」(ヤマロ・ネネツ自治管区刑務局)と伝えた。西側やウクライナ首脳からプーチン体制を非難する声が相次いだ。 タス通信によると、ナワリヌイ氏はこの日刑務所で散歩した後、気分が悪くなり、すぐに気を失った。医務班が駆け付け、救急車が呼ばれた。必要な蘇生処置が施されたが、ナワリヌイ氏は回復せず、救急隊員は死亡を宣告した。ナワリヌイ氏は2月13、15
「違法な取り立て」に心折れ、自殺者も...富士通のシステムが招いた巨大「冤罪」事件に英国民の怒りが沸騰 <富士通社員が出した証拠の信憑性に重大な懸念も。英スナク政権や警察は、国民の批判に押される形で「被害者」の救済と捜査を加速> [ロンドン発]富士通が提供した英国のポストオフィス(郵便事業のうち窓口業務を引き受ける国有非公開会社)の勘定系システム「ホライズン」の欠陥が原因で、民間郵便局長ら700人以上が「現金を横領した」などの疑いをかけられ冤罪になった事件。これについてロンドン警視庁は5日、無実の民間郵便局長らから不足分の資金を違法に取り立てたポストオフィスの行為が詐欺罪に当たるかどうか捜査していることを明らかにした。 ロンドン警視庁の発表は「偽証罪と偽計業務妨害罪の可能性について捜査中だ。これらの犯罪の可能性はポストオフィスによって行われた捜査や起訴から生じたものだ。訴追や民事訴訟の結果
<ロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー安全保障への懸念が強まり、多くの国で気候変動政策が停滞している> [ドバイ発]アラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれている国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で8日、恒例の「気候変動パフォーマンス指数(CCPI)」2024年版が発表された。COP28で2度にわたって不名誉な「今日の化石賞」に選ばれた日本は63カ国と欧州連合(EU)の中で前年の50位からさらにランクを8つ下げ、58位に沈んだ。 環境や気候変動問題のシンクタンク「ジャーマンウォッチ」と「ニュークライメート・インスティチュート」、国際環境団体のネットワーク「CANインターナショナル」が05年から19年連続で発表している。昨年のロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー安全保障への懸念が強まり、多くの国で気候変動政策が停滞している。 63カ国とEUで世界の温室効果ガス排出量
住む家を追われ、食糧支援で飢えをしのぐ...ロンドンの小学校では大半が「ホームレス児童」という英国の異常事態 <「生活費の危機」のさなかにあるイギリスでは、住宅問題だけでなく飢えに苦しむ人々による万引きの急増など社会不安が強まっている> [ロンドン発]英BBC放送によると、ロンドン南部の小学校ハリス・プライマリー・アカデミー・ペッカム・パークは全児童約300人に無償で制服、遠足、給食を提供している。一部の家庭には食料小包も配っている。児童の家庭が困窮しているためだ。その大半が友人宅のソファや宿泊施設のベッド・アンド・ブレックファスト(B&B)、ホステルで暮らす。 児童のほとんどが「ホームレス」ということだ。イングランドの地方自治体では昨年4月から1年間にホームレスが雨露をしのげるように民間宿泊施設、B&B、ホステルや避難所に対前年比約9%増の合計17.4億ポンド(約3200億円)を費やした
イスラエル「世界最強」防空システムと情報機関でも、奇襲を防げなかった理由...もはや「ハマス敗北はない」の声も <双方の死者が計1500人超というイスラエルにとって建国以来最悪の奇襲攻撃だが、「抵抗の枢軸」はどこまでハマスの作戦に関与したのか?> [ロンドン発]パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスによる奇襲攻撃で、イスラエル側では建国以来最悪とされる900人以上、ガザで687人を含む計1500人以上が死亡した。世界最強と称賛されてきた防空システム「アイアン・ドーム」や情報機関に守られているはずのイスラエルはどうしてハマスの奇襲をまともにくらってしまったのか。 ■【動画】ゲームにあらず、降り注ぐロケット弾を正確に捉えるイスラエルの迎撃ミサイル(2021年の映像) 米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(10月8日付電子版)は「ハマスと、レバノンを拠点に活動するイスラム教シーア派
<ルパート・マードック氏が経営の一線からの引退を表明。後継者の長男は「父のビジョン、開拓者精神、揺るぎない決意、不朽の遺産に感謝」> [ロンドン発]1954年にオーストラリア南部アデレードの小さな新聞社を父親から引き継いで約70年、米国、英国、オーストラリアの新聞・テレビを支配してきた「メディアの帝王」ことルパート・マードック氏(92)が21日、FOXコーポレーションとニューズ・コーポレーションの取締役会会長を退任すると電撃発表した。 FOXの発表では、マードック氏は11月中旬開催予定の株主総会でそれぞれの取締役会長を退任。マードック氏は両社の名誉会長に退き、長男のラクラン・マードック氏が単独でニューズ・コーポレーション社の会長となり、FOXの常勤会長兼最高経営責任者(CEO)を継続する。 ラクラン氏は「FOXとニューズ・コーポレーションの取締役会、リーダーシップ・チーム、そして父の努力の
<ついには貧困層向けの「万引き」代行業者まで登場。賃金が低迷し、公共サービスが機能低下するなど、英国経済は危機に瀕している> [ロンドン発]「彼女ほど恥知らずな政治家はいない。あるいは芸術的に自己認識を欠いているとでも言うべきか。史上最低の英国首相という称号で人気者になることを想像してみてほしい。デービッド・キャメロン、テリーザ・メイ、ボリス・ジョンソン、リシ・スナクよりひどい。普通の感覚を持った人間なら永遠に石の下に隠れてしまうところだ」 左派系英紙ガーディアンの議会担当ジョン・クレイス記者は、約1年前の秋に財源の裏付けがない恒久減税策(ミニ予算)をぶち上げ、英国衰退のフタを開けた与党・保守党のリズ・トラス前首相がロンドンのシンクタンクで講演したことを容赦なくこき下ろした。確かに、ここまで自己認識を欠いた政治家は日本にもいまい。 「彼女のミニ予算が経済を破綻させ、国に数十億ポンドの借金、
校舎が崩壊、医療サービスは1年以上の待ち、国内最大の自治体が自己破産...英国、債務危機の深刻すぎる現状 <欧州最大の地方自治体バーミンガムの市議会が「事実上の自己破産」を表明。国家的な財政危機がイギリスを襲っている> [ロンドン発]英国最大の自治体バーミンガム(イングランド中部、人口約115万人)で財政危機が明らかになった。バーミンガム市議会は女性職員からの同一賃金請求の和解金として最大7億6000万ポンド(約1400億円)を請求され、弱者保護と法定サービスを除くすべての新規支出を直ちに停止すると宣言した。「事実上の自己破産」である。 中央議会では野党の労働党が運営するバーミンガム市議会は、101人の議員で構成される欧州最大の地方自治体。和解金の支払いは38億ポンド(約7000億円)の予算を逼迫させる。ここ数カ月、同市議会は財政管理と同一賃金を巡って話し合いを続けてきた。保守党は「労働党
<躍進する極右「ドイツのための選択肢(AfD)」を味方につける中国。来年の欧州議会選をにらみ、分断工作が進んでいる> [ロンドン発]世論調査の政党支持率で与党・社会民主党を上回る独極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」について、独保守系紙ウェルトのアラン・ポーズナー氏は「反米を唱える『ドイツのための選択肢』を中国は応援するだろう」と題し、ドイツが西側諸国との関係を放棄した場合、中国の言いなりにならざるを得なくなると釘を刺している。 ポーズナー氏は第二次大戦直前、ドイツで語られたジョークを取り上げている。地球儀を販売する店に若い女性が入ってくる。「ナチスのアドルフ・ヒトラー総統は私たちが世界政治に関心を持つことをお望みです。そこにあるような地球儀が欲しいのです。私たちのドイチェス・ライヒ(ドイツ帝国)はどこにあるのですか」と尋ねた。 「ここです」と店員が答える。女性が 「とても小さいです
未成年者性的スキャンダルで告発されたBBC司会者ヒュー・エドワーズ氏(2020年1月) Chris Jackson/Pool via REUTERS/File Photo <看板キャスターに狙われた子どもの母親が語ったショッキングな疑惑の中身。これが事実ならBBCには大きなダメージとなる> 「テレビで彼を視ると気分が悪くなる。うちの子の人生を壊した英BBC放送の司会者を糾弾する。子どもの純真さを奪い、死に追いやるかもしれないコカインの購入資金を渡し続けた」。性的な写真の見返りに17歳からの3年間にわたり自分の子どもに計3万5000ポンド(約629万円)以上を渡した――と母親からBBCの看板キャスターが告発された。 7月7日、英大衆紙サンに匿名で報じられた未成年者性的スキャンダルは12日、BBC司会者ヒュー・エドワーズ氏(61)の妻が「夫は6日に自分に対する疑惑があることを初めて聞かされた。
<郵便局を舞台に、英最悪の「大量冤罪」事件を起こした富士通の勘定系システム「ホライゾン」。元富士通UKの内部告発者が公聴会で証言した> [ロンドン]富士通が提供した英ポストオフィス(郵便事業のうち窓口業務を引き受ける国有の非公開株式会社)の勘定系システム「ホライゾン」の欠陥による大量冤罪事件の真相を究明する公聴会で9日、富士通UK(英国)に2001~04年に勤務したリチャード・ロール氏が証言した。ロール氏は数少ない富士通の内部告発者だ。 ロール氏は1976年に航空電子工学エンジニア見習いとして英空軍に入り、航空機のナビゲーションシステムや兵器システムのソフトウェア開発に従事した。89年に退役したあと工場のオートメーションやロボティックス機器のプログラミングに携わった。富士通UKではプロダクト・スペシャリストとしてホライゾンをサポートしたという。 ポストオフィスは99年、取引の4割を占める年
現在はサッカー番組の司会者として活躍するゲーリー・リネカー(2022年4月) Action Images via Reuters/Carl Recine <納税者負担は1日10億円近く...。保守党の政策への賛否と、公共放送BBCの「政治的中立」問題にイギリスが揺れる> [ロンドン]英仏海峡を密航してくる不法入国者の小型ボートを阻止するためスエラ・ブラバーマン英内相が発表した不法入国者対策法案について、1986年サッカーW杯メキシコ大会得点王で元イングランド代表主将のゲーリー・リネカー氏が7日、ツイートで「内務省の誰かが内相を後押ししたようだ。この法案はほぼ間違いなく違法だ」と厳しく批判した。 リネカー氏は「不法(違法)」と「入国者対策法案」を2段に分けた英政府のサムネイルを「法案の実態に相応しい名前だ」と皮肉った。ブラバーマン内相が「もうたくさんだ。ボートを止めなければならない」と新しい
<EU離脱後のイギリスに残った「棘」であり、これまで誰もが解決不能と考えてきた北アイルランド問題に真っ向から挑むスナク首相> [ロンドン]英国の欧州連合(EU)離脱の棘として残された北アイルランド議定書を「ウィンザー・フレームワーク」に改定することでリシ・スナク英首相と欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長が2月27日合意した。このあとチャールズ国王はウィンザー城でフォンデアライエン氏に謁見、議会採決を待たずに「国王裁可」を与える形を演出した。 2020年1月末に英国はEUを離脱、同年末に移行期間が終わったものの、英国本土との取引に煩雑な通関が発生したため、北アイルランドの一部から不満が噴出した。スナク氏はボリス・ジョンソン元英首相のようにEUとの対立を意識的に煽る政治パフォーマンスを避け、消費者やビジネスの実利を優先させた結果、EUの譲歩を引き出すことに成功した。 島国の英国は北
<「私は頭と心で後継に道を譲る時が来たと理解した」と、辞任を表明したスコットランド自治政府のスタージョン首相> [ロンドン]2度目の独立住民投票に突き進んできた英スコットランド自治政府のニコラ・スタージョン首相が15日、緊急の記者会見を開き、辞任を表明した。世論の反対を押し切って性別認定証明書を取得しやすくするジェンダー改革を進めようとして足元をすくわれた格好だが、根本には自分の任期中に独立の道筋が完全に閉ざされたことがある。 「スコットランドの雌ライオン」の異名を取るスタージョン氏は「私は首相になった当初から良い仕事をするには他の誰かに道を譲るべき時が来たら本能的に自覚することだと信じてきた。たとえ国中の多くの人々や党員が早過ぎると感じたとしても、それを実行する勇気を持つことが大切だ。私は頭と心でその時期が今だと理解した」と心情を吐露した。 無念というより寂しさを漂わせる辞任会見だった。
<英国の自動車生産は66年ぶり最低水準に。電気自動車の生産が大幅に増加している一方で、バッテリー企業は倒産> [ロンドン]英国の自動車生産台数は昨年、世界的な半導体不足と国内工場の閉鎖、中国のゼロコロナ政策による供給停滞で対前年比9.8%減の77万5014台に落ち込んだ。1956年以来最低の水準だ。電気自動車(EV)用バッテリーの新興企業ブリティッシュボルトも倒産し、英国の自動車産業はいよいよ崖っぷちに追い込まれている。 英自動車製造販売者協会(SMMT)のマイク・ホーズCEO(最高経営責任者)によると、2021年比で8万4561台減、パンデミック前の19年の生産台数130万3135台から40.5%減、実に53万台近くも生産が落ち込んだ。半導体の深刻な不足により需要に応じて生産できなくなったことや、ホンダの撤退、EV化に伴うボクスホール工場の閉鎖が響いた。 一方、バッテリー式(BEV)、プ
<ゴールドマン・サックス出身の理事長が、ジョンソン元首相の融資保証を手助けした「利益相反」疑惑に揺れるBBCの構造的問題> [ロンドン発]英与党・保守党の大口献金者で米大手金融ゴールドマン・サックス出身のリチャード・シャープ氏が、ボリス・ジョンソン首相(当時)によって英国放送協会(BBC)理事長に選ばれる数週間前に、同首相への最大80万ポンド(約1億3000万円)の融資保証を手助けしていた疑いが英日曜紙サンデー・タイムズのスクープで浮かび上がった。 2020年、ジョンソン氏は子供の養育費など2人目の妻との離婚の支払い、新妻のわがままで膨れ上がった首相官邸改修費で資金繰りに窮していた。ジョンソン氏の遠縁に当たるカナダの大富豪が保証人になって融資を引き出すことを思いつき、シャープ氏に助言を求めた。 内閣府の倫理担当チームはシャープ氏が理事長就任を控えていたことから、ジョンソン氏に自分の資金繰り
<法的な性別変更を簡易化する改革についてローリング氏は、女性専用のサービスや空間をトランスの人々にも使わせるのは「女性の権利の破壊」と批判> [ロンドン]トランスジェンダーの人たちが性別認定証明書を取得しやすくする英スコットランドのジェンダー改革を巡り、待ったをかけた保守党中央政府との間で対立が深まっている。2回目のスコットランド独立住民投票の前哨戦との見方もある。「ハリー・ポッター」の原作者J・K・ローリング氏も反対派に参戦し、英国でも「文化戦争」が激化している。 スコットランドで暮らすローリング氏は1月11日のツイートで、昨年12月18日付の左派系英日曜紙オブザーバーの社説から「自称進歩的な政治家はバランスを主張するにはあまりに臆病なことを証明した。刑務所や家庭内虐待、障害のためのケアを必要とする疎外された女性たちがその結果のしわ寄せを負担させられる」と引用した。 I stand in
<一方で短い間隔で追加接種を繰り返すことについては、欧州医薬品庁も「持続的な長期戦略とは言えない」としているが> [ロンドン]欧州連合(EU)からの強硬離脱を牽引した英国の与党・保守党アンドリュー・ブリジェン下院議員が新型コロナウイルスのワクチンについて「心臓専門医は私に『ホロコースト以来最大の犯罪だ』と語った」とツイートし、党籍を剥奪された。ワクチンの普及で重症化や死者が減る一方、接種疲れから反ワクチン派が勢いを増す恐れがある。 ブリジェン氏は自らの処分について「失望した。民主主義の現状、言論の自由、何十億もの人々に投与されている医薬品の科学的分析が明らかにマヒしていることを雄弁に物語る。m(メッセンジャー)RNAワクチンの安全性と有効性に関する合理的な疑問はこれからも問われ続けなければならないし、私はそれを(無所属で)問い続けるつもりだ」と反論した。 「一般の人々、発言できない医療従事
<ワールドカップ開催中のカタール側から金銭を受け取り、欧州議会でロビー活動を行っていた疑いで欧州議会の副議長を逮捕> サッカー・ワールドカップ(W杯)の開催国カタールに絡む汚職スキャンダルで、ベルギーの捜査当局は欧州連合(EU)欧州議会のエヴァ・カイリ副議長(44)=ギリシャ選出=と父親、夫フランチェスコ・ジョルジ氏ら数人を逮捕、このうちカイリ氏ら4人を起訴した。欧州議会のロベルタ・メッツォーラ議長は腐敗議員に「免罪符はない」と述べた。 事件の詳細はまだ明らかにされていないが、捜査当局は汚職、マネーロンダリング(資金洗浄)、犯罪組織への加担に関して「大掛かりな捜査」を進めている。カイリ氏は欧州議会で湾岸諸国に関して積極的に演説したり、「カタールは中東における労働改革の先頭ランナー」と称賛したりしていた。 カイリ氏らはカタール側から金銭を受け取った見返りに欧州議会でロビー活動を行っていた疑い
ロシアのドローン攻撃を受けたウクライナのエネルギー施設(10月27日) State Emergency Service of Ukraine/Handout via REUTERS <ウクライナで、エネルギーインフラを標的にした攻撃に重点を置き始めたロシア。なんとか「冬将軍」を味方につけたいとの狙いが透けて見える> [ロンドン発]ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は11月3日の演説で「ロシアのエネルギーテロに耐えることが今、私たちの国家的課題である」と訴えた。ロシア軍は前線で戦果をあげられないため、冬将軍の到来を前に「エネルギーテロ」でウクライナ軍を後方から支えるウクライナ国民の動揺を誘っている。 「全国各地のエネルギーインフラに被害が出ている。今晩の時点だけでも約450万人が緊急安定化計画に基づいて一時的にエネルギー消費を停止している。エネルギー産業に対するテロに訴えたことは
<就任からわずか45日で辞任に追い込まれた英トラス首相だが、日本より財政が健全なイギリスがここまで苦しむのには理由がある> [ロンドン発]減税による成長戦略をぶち上げ、債務危機に火をつけたリズ・トラス英首相が就任からわずか45日目の10月20日、首相官邸前で「このような状況では保守党から委任されたマンデートを実現できない」と大方の予想通り辞任を表明した。28日に新党首(首相)が選ばれるまで首相職に留まるが、英国史上最短命の首相となった。 これまで最短命記録は1827年に肺炎で急死したジョージ・カニングの121日。トラス氏はナチスドイツに対する宥和政策で知られる第二次大戦中のネヴィル・チェンバレン(保守党)以来80年以上ぶりに一度も選挙を戦うことが許されなかった首相という汚名も残す。 欧州連合(EU)離脱、英国内だけで20万人以上の死者を出したコロナ・パンデミック、ウクライナ戦争という未曾有
CSTOサミットに出席したプーチン大統領(5月16日) Sputnik/Anton Novoderezhkin/Pool via REUTERS <ウクライナでの苦戦により周辺地域におけるロシアの威信は大きく低下し、重しが外れた周辺地域で紛争の火種を一気に表面化させる結果を招いている> [ロンドン発]無謀なウクライナ侵攻でロシアの国力がみるみる衰える中、周辺の旧ソ連諸国に「力の空白」が生じ、不安定化している。ウラジーミル・プーチン露大統領が自らの正当性を主張するためウクライナの占領地域にこだわれば、それだけロシアは蟻地獄にハマる。旧ソ連崩壊と同時進行形で始まったユーゴスラビア紛争と同じ悪夢が繰り返されるのか。 「アゼルバイジャンは近い将来、欧州への天然ガス供給量を倍増することを計画しており、中央アジアの国々はわが国と協力し、カスピ海を越えて欧州に至る輸送・通信回廊の整備を加速させている。
基地に出発するため、家族と別れを告げるロシア予備兵。彼を待つ運命は……(9月28日) REUTERS/Stringer <軍の人手不足を補うため部分動員に踏み切ったプーチンだが、秩序も装備も訓練も補給も失われ、新兵たちには「大砲の餌食」になる「消耗品」としての運命が待つ> [ロンドン発]ウラジーミル・プーチン露大統領は30日、モスクワのクレムリンで上下両院議員らを前に演説し、占領するウクライナの東部ドネツク、ルハンスク、南部ザポリージャ、ヘルソン計4州(ウクライナ国土の約15%)の併合を宣言した。最大100万人を徴兵できる予備役動員を正当化し、エネルギー危機を悪化させ、米欧とウクライナを分断させる持久戦に持ち込む狙いがある。 ロシア国営通信社タス通信によると、4州で9月23~27日に行われたロシア編入を求める住民投票で「ドネツク人民共和国」は99.2%(投票率97.5%)、「ルハンスク人民
<野党・労働党は「政府は経済のコントロールを失い、ポンドを暴落させた」と痛烈批判。「トリクルダウン」経済学はやはり機能しない?> [英イングランド北西部リバプール発]リズ・トラス英首相の大規模減税で通貨ポンドが歴史的な水準まで暴落する中、最大野党・労働党のキーア・スターマー党首は27日、リバプールで開かれている年次党大会で演説し、「金利やインフレ率は上昇し、借金は増加する。政府は英国経済のコントロールを失い、ポンドを暴落させた」と批判した。 在位70年に及んだエリザベス女王死去の喪が明けた英国を待ち受けていたのは、財源なしで大規模な恒久減税を強行するトラス氏の経済政策「トラスノミクス」に対する市場の厳しい洗礼だった。高騰するエネルギー費対策として1500億ポンド(約23兆2900億円)、500億ポンド(約7兆7600億円)の恒久減税に市場は一斉にポンド売りに走った。 トラスノミクスは198
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