サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
大谷翔平
www.nippon.com
「還暦を迎えると退職して、悠々自適の生活を送れる時代があったらしい」と、昭和を語る日がやってくるのだろう。今や、60-64歳の就業率は74%。 総務省の集計で、2024年9月15日時点の、65歳以上の高齢者の推計人口は前年より2万人増の3625万人で過去最多となった。総人口に占める割合も0.2ポイント増の29.3%で過去最高だった。 高齢者人口の増加に伴い、働く高齢者も増えている。2023年の65歳以上の就業者数は914万人で、20年連続で増加し過去最多。産業別では、「卸売業・小売業」が132万人で最も多く、「医療・福祉」107万人、「サービス業」104万人と続いた。「医療・福祉」は10年前と比べて、2.4倍に急拡大しており、特に、介護分野で働く人が増えている。15歳以上の就業者全体に占める65歳以上の割合は13.5%で、働く人の7人に1人は高齢者ということになる。 65歳以上人口に占める
手間なしでヒット「アタック」開発者に聞く 粉末の利点生かす独自技術【経済トレンド】 Newsfrom Japan 経済・ビジネス 2024.08.16 07:03 / 2024.08.16 07:17 更新
組織の不正などを内部から暴く公益通報で、通報者が不利益を被る事例が後を絶たない。なぜ、日本で「良心の告発」が根付かないのだろうか? 公益通報者保護法が2004年6月に成立して20年が経過し、2年前には通報者保護をより強化するために組織に体制の整備などを求める改正法が施行された。しかし最近、地方自治体などに従事する「全体の奉仕者」(日本国憲法第15条第2項)が、内部の不正や違法行為が疑われる行為に関して声を挙げた結果、懲戒処分などの不当な扱いを受ける事案が散見される。「公益通報者」を「保護」すると法律名でうたいながら、同法が役割を十分に果たしていないことがあらわになっている。 逮捕、懲戒処分、自殺…相次ぐ犠牲者 鹿児島県警本部の事案では、元生活安全部長の男性が定年退職後、県警本部長が警察官によるストーカー事案を隠蔽(いんぺい)しようとしたことが、元警察官として許せなかったとして、「闇をあばい
いつにも増した大接戦となっている米大統領選挙。勝者次第で対外政策は大きく変わる。日本はどう備えるべきなのか? 2024年の米大統領選挙は近年まれに見る展開を見せている。予備選の段階では現職のバイデン大統領とトランプ前大統領が民主、共和両党それぞれの候補者となったが、6月末に行われた両者のテレビ討論会でバイデン氏が精彩に欠け、高齢に関する不安が高まった。7月の暗殺未遂事件では、強い指導者として振る舞ったトランプ氏に一気に有利な流れができたかにみえた。しかし、民主党内でバイデン氏の撤退を求める声が強まり、ハリス副大統領が民主党の大統領候補になると再び流れが変わった。 各種世論調査では、激戦州で接戦が続いていることがうかがえる。米中西部のラストベルト(さびた工業地帯)を中心とする激戦州では両党への支持は拮抗(きっこう)しており、投票行動を決めかねている無党派の動向が最終結果を左右することになる。
フリーランス新法が2024年11月1日、施行される。同法は、取引の相手方である発注者からフリーランスを保護することを目的としている。国際的に見て日本独自の立法をどのように評価すべきか。労働法研究の第一人者が解説する。 フリーランスとは、2021年の公正取引委員会、厚生労働省などのガイドラインで「実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者」と定義されている。この定義は「フリーランス新法」(「特定受託事業者の取引条件の適正化等に関する法律」)の適用対象者である「特定受託事業者」の定義でも踏襲されている。 22年の就業構造基本調査(総務省)では、初めて、この定義によるフリーランスの人数も調査された。それによれば、本業としてフリーランスとして働く人は209万人で、全体に占める割合は3.1%、副業としてフリーランスで働くのは48万人だった。
自主制作映画『あみこ』を引っ提げ、弱冠20歳で鮮烈な世界デビューを果たした山中瑶子監督。その待望の新作『ナミビアの砂漠』は、今年のカンヌ国際映画祭「監督週間」に正式招待され、女性監督として史上最年少で国際批評家連盟賞を受賞した。いま最も勢いのある女優、河合優実を主演に迎え、一人の女性の波打つ感情を多彩に描き込んだ唯一無二の快作だ。 必ずしも映画ファンとは限らない広い読者層を想定しながら映画の紹介をしている立場として、常々「これは観たほうがいい」などと差し出がましい言い方はしたくないと思っている。しかしこの『ナミビアの砂漠』はそう言うしかないと思わせてしまう作品だ。 それは、ここ何年かの日本社会とそこに暮らす日本人の姿を眺めながら、その間に世に出た数々の映画を観てきた中でこの作品に出会い、しみじみと沸いてきた感想だ。「それってあなたの感想ですよね?」と言われてしまいそうなので、そこを少しでも
都道府県知事へのキャリアパスとして最も有力なのは「中央省庁のキャリア官僚」。最大勢力は総務省出身の11人。 〈オリジナルの記事は2023年4月19日公開。その後の首長選挙の結果などを反映して再公開する〉 2023年4月9日の9道府県知事選をもって全47知事が戦後生まれとなった。現在、最年少は1982年生まれ長崎の大石賢吾氏、最年長は1947年生まれ岐阜の古田肇氏と秋田の佐竹敬久氏。女性知事は山形の吉村美栄子氏と東京の小池百合子氏の2人だけ。 過半数の25人が中央省庁のいわゆるキャリア官僚出身。内訳は、総務省11人、経済産業省5人、国土交通省5人、財務省2人、農林水産省・外務省各1人。総務省は地方行財政を所管しており、地方自治体にとっては総務省出身の知事が国とのパイプ役として機能することに期待をかけている。総務省出身知事11人のうち7人は、自らの出身地ではなく、副知事などとして出向した先の自
パレスチナ自治区ガザでイスラエル軍とイスラム組織ハマスによる戦闘が、2023年10月7日に始まってから11カ月。過酷さが増す中、ガザでの救援活動を指揮する国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長が、ニッポンドットコムのオンラインインタビューに応じ、「世界の人々はガザの不条理から目を背けてはならない」と訴えた。 清田 明宏 SEITA Akihiro 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)保健局長。医師。1961年生まれ。高知医科大学(現・高知大学医学部)卒業。95年から世界保健機関(WHO)で約15年間、結核や感染症の対策にあたった。2010年から現職。現在はヨルダンの首都アンマンの本部に勤務する。著書に『天井のない監獄 ガザの声を聴け!』(集英社新書)など。 避難所に殺到する人々 UNRWA本部があるヨルダンの首都アンマンから、8月29日にガザに入った。戦闘開
意外と知らないマグロの種類と特徴:最高級クロマグロはお手頃価格に!? ミナミマグロ漁はピンチ Guideto Japan 食 暮らし 環境・自然・生物 2024.08.31 すしネタの王様・マグロは近年、和食ブームと健康志向の高まりによって、世界的な人気となっている。しかし、その魚種や漁場、日本での流通形態が多様なことはあまり知られていない。今回はマグロの種類や特徴などを、直近の生産・市場動向を含めて紹介する。 2022年の漁獲量は世界5位 すしネタや刺し身の定番・マグロ。日本は世界最大の消費国と言われてきたが、このところ、サーモンなどに押されて人気に陰りが見えてきたと指摘する声も。世界的に魚食が拡大する一方、日本人の魚消費が低調なことを考えれば、自然の流れなのかもしれない。 マグロ類の漁獲量でも、日本が1980年代まで断トツの1位だったが、すし人気が海外で定着した90年代頃から台湾や東
100年以上も前に絶滅したとされるニホンオオカミにどうしてここまで引き付けられるのだろうか。小学校4年の時に、博物館のオープンラボで剥製(はくせい)をひと目見てから、小森日菜子さんの研究人生がスタートした。 この5月、国立科学博物館(科博)で開催中だった『大哺乳類展3』に、一体のイヌ科動物の剥製標本が追加された。プレートには「ニホンオオカミ」「特定後初公開!」と掲示。これまでに存在が確認されているニホンオオカミの剥製標本は、オランダに1体、英国に1体、国内に3体しかなく、これで6体目となる貴重なものだ。 この剥製がニホンオオカミのものであることは、品川女子学院中等部2年生の小森日菜子さん、山階鳥類研究所の小林さやかさん、国立科学博物館の川田伸一郎さんの3人が共同で研究。2024年2月に「国立科学博物館所蔵ヤマイヌ剥製標本はニホンオオカミか?」と題する論文を発表した。(論文発表時は小森さんは
今年の夏の甲子園を制したのは、韓国系の民族学校がルーツの京都国際高(京都)だった。韓国では大統領がただちに祝意を発信するほどの盛り上がりを見せた。8月23日、関東第一高(東東京)との決勝戦を現地取材した朝鮮日報東京支局長のリポートをお届けする。 8月23日の第106回全国高校野球選手権大会決勝戦。阪神甲子園球場の三塁側アルプススタンドに用意された京都国際分の2800席は、すべて埋まっていた。 主催者側が当初、割り当てた応援席は1600席だったという。京都国際は、生徒数がわずか138人の小さな男女共学の高校でしかない。家族や卒業生がいくら駆けつけたとしても、1600席さえ埋めるのは難しいと考えられていた。 だから生徒数2400人という対戦相手の関東第一とは、応援団の数でそもそも比較にならないはずだった。ところが、京都国際の応援席は最終的に2800席まで増やされた。大勢の京都の小中高生たちが、
浜通りの新たな魅力を創出「福島イノベーション・コースト構想」 福島県産木材が世界中からの万博客をお迎え:大阪・関西万博のシンボル・大屋根を支える浪江町「ウッドコア」の挑戦 建築 環境・自然・生物 2024.08.27 世界最大規模の木造建築で、万博のシンボルとなる「大屋根」用の資材を製造した福島県浪江町の「ウッドコア」。東日本大震災の津波と福島第1原発事故によって甚大な被害を受けた浜通りで、林業再生を担い、地球温暖化対策にも貢献していく。 万博会場で福島の復興をアピール 2025年大阪・関西万博のシンボル「大屋根(リング)」が9月に完成する。世界中からの来場者を迎える高さ20メートル、全周2キロという世界最大規模を誇る木造建築で、2万7000立方メートルもの木材を使用している。 パビリオンが立ち並ぶエリアへ向かう来場者を迎える大屋根 画像提供:2025年日本国際博覧会協会 そのうち約450
125年前に起きたトルコの軍艦「エルトゥールル号」の遭難事故を、多くの日本人は知らないか、忘れている。トルコがとても親日的な理由の1つには、この未曾有の海難事故で、当時の日本人が身の危険を顧みず猛烈な台風の中、トルコ乗組員を必死で救助したことがある。 と同時に、日本とトルコが親善を深めようとした背景に、欧米列強国との「不平等条約」解消という19世紀末の“共通の想い”があったことを、日本人はほとんど知らない。 イスタンブールの港に停泊中のエルトゥールル号(撮影日時不明) 125年前の海難事故が生んだ「絆」 親善航海のため寄港した軍艦エルトゥールル号(排水量2,344トン、全長 約76m)は1890年9月16日夜半、帰航の途中、和歌山県串本町の紀伊大島沖で、猛烈な台風のために岩礁に激突、蒸気機関が爆発し二つに割れ沈没した。 この海難事故で、艦長以下587人が殉職。紀伊大島の島民たちの必死の救助
映画製作配給大手4社でつくる業界団体「日本映画製作者連盟」が、2023年の国内の映画概況を発表した。邦画の「THE FIRST SLAM DUNK」、洋画の「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」など、アニメ作品が好調で国内興行収入は前年比3.9%増の約2214億円だった。 メガヒットの目安とされている興収100億円を超えたのは、邦画1位の「THE FIRST SLAM DUNK」(158億7000万円)と同2位「名探偵コナン 黒鉄の魚影」(138億8000万円)、洋画1位の「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」(140億2000万円)で、これらアニメ3作品が邦画と洋画を合わせた全体興収でトップ3となった。 邦画だけをみると、上位10作品中6作品がアニメだった。日本映画製作者連盟の小林恵司事務局次長は、「原作となる日本の漫画、コンテンツの面白さが受け、評価につながっている」と分析して
Home トピックス 巣鴨(JY11): 徳川慶喜は鉄道建設の騒音に耐えかねて逃げ出した!? 今もにぎわう「おばあちゃんの原宿」 1909(明治42)年に山手線と命名されて以来、「首都の大動脈」として東京の発展を支えてきた鉄道路線には、現在30の駅がある。それぞれの駅名の由来をたどると、知られざる歴史の宝庫だった。第12回は「おばあちゃんの原宿 とげぬき地蔵」の下車駅「巣鴨」。意外にも多くの偉人ゆかりの地でもあった。タイトルの(JY11)はJR東日本の駅ナンバー。 開業当時の乗降客数は1日160人 巣鴨駅の誕生は1903(明治36)年4月1日。大塚駅と池袋駅の開業と同日だった。 1925(大正14)年の巣鴨駅の写真には複数の線路が写っている。ホーム寄りは山手線、外側は山手貨物線の線路だ。貨物線は、現在は湘南新宿ラインの線路として使用されているが、巣鴨には停車しない。 関東大震災の2年後、1
ひと昔前まではラッシュの電車の中で新聞を細長く折りたたんでその日の主要ニュースをチェックするのが社会人の心得だった。今は、スマホでニュースチェック―と思いきや、ゲームに夢中の人の方が多いかも。 新聞通信調査会が全国の5000人を対象に実施した調査で、各メディアの情報をどの程度信頼しているかを0~100点で評価してもらったところ、「NHK」が67.0点(前回調査67.4点)でトップ。僅差の66.5点で「新聞」が続いた。いまや情報収集手段の主流となっている「インターネット」は 49.5 点にとどまった。 調査は2023年8~9月にかけて実施。特定のメディアユーザーに偏らないよう、住民基本台帳を用いた無作為抽出で、全国の18歳以上5000人を対象に訪問留置法で行った。2871人から回答を得た。 新聞の購読率(自宅で月ぎめで新聞を購読している)は前年度比0.2ポイント低下の58.1%だった。調査を
コッポラやスピルバーグ、ルーカスなど、黒澤明に影響を受けたと公言する映画監督は数知れない。 KUROSAWAはまさに映画界のレジェンドだ。国境や時代を超えて高く評価される名作を撮り続けた映像作家の生涯を紹介する。 没後20年以上たった今でも、世界中の映画ファンにこよなく愛される黒澤明。映像芸術の可能性を追究し、最期まで現役として映画製作に情熱を傾けた、まさに映画の申し子であり、映画の化身であった。 黒澤は1990年、ちょうど80歳のとき、米国のアカデミー賞授賞式でオスカー特別名誉賞を受賞した。ハリウッドで最も活躍しているジョージ・ルーカスとスティーブン・スピルバーグがプレゼンターとなった。黒澤は「私は映画がまだよく分からない、その魅力をつかむために努力します」とスピーチし、拍手喝采を浴びた。黒澤を師と仰ぐ両監督は、新作の撮影に入る前に必ず好きな黒澤作品を試写して、映画とは何かという原点に立
筆者作成。 *(1)は第6次エネルギー基本計画による数値。(2)、(3)は筆者の推計値。 再生可能エネルギーで伸び代が大きいのは風力であるが、22年度末の導入実績は陸上5.1ギガワット(GW)、洋上0.1GWにとどまり、リードタイム(計画着手から完成までの期間)の長さから考えて、陸上17.9GW、洋上5.7GWという30年度の導入目標達成は難しい。電源構成における原子力の比率を20〜22%とするには27基の原子炉の稼働が必要となるにもかかわらず、現時点で12基しか再稼働していない。30年度時点ではせいぜい20基稼働がいいところだろう。別表の(2)では、筆者が独自で推計した値を示した。30年度の電源別構成では再生可能エネルギーは30%程度、原子力は15%程度に過ぎない。水素・アンモニア火力の1%を合わせても、非化石電源の比率は46%程度にとどまるとみられる。 こうした状況は、じつは政府も認識
戦後初期、内閣が倒れた二つの疑獄事件 無罪判決続出だったが、裁判所は検察の起訴を評価:戦後初期、内閣が倒れた二つの疑獄事件(2) 歴史 社会 政治・外交 2020.05.22 時の内閣を崩壊させた「昭電疑獄」。数カ月前まで首相だった芦田均(ひとし)氏をはじめ、政官財界の38人を起訴したが、最終的に前首相を含め過半数の23人が無罪に。大金をばらまいた昭和電工社長も有罪だが、執行猶予となった。検察は被告側から「政治的謀略だ」と攻撃された。しかし、前首相無罪の一審判決は「国民的疑惑が抱かれる社会情勢のもとで、裁判所の判断を求めたのは賞賛さるべきもの」と検察の起訴を評価した。 金品の授受は認められたが… 昭電疑獄は裁判に入ると一転した。被告たちが金品を受け取っていたことは認められたが、無罪判決が続出したのである。贈収賄罪(汚職)が成立するには、(1)議員を含む公務員の職務に関して(職務権限)、(2
中国が日本産水産物を全面禁輸したことで輸出先を失ったホタテ。日本の水産業者などは、新たにメキシコ経由で米国の高級市場を狙う戦略を描いている。 中国による禁輸措置は、中国国内の消費市場向けだけでなく、中国で加工し、再輸出される日本産ホタテの供給網を一挙に崩した。中国依存から脱却するため、メキシコで加工し、米国の高級食材市場へ売り込む試みが進んでいる。 過度の中国依存があだ 中国政府は2023年8月、東京電力福島第1原発からの処理水放出に態度を硬化させ、日本産水産物の全面禁輸に踏み切った。中でも中国を最大輸出先としていたホタテへの打撃は大きかった。 23年の中国向け輸出額は前年比44.6%減の258億7800万円、輸出量は同47.7%減の5万3700トンに大きく落ち込んだ。これに引きずられて、中国を含む世界全体へのホタテの輸出額は同24.4%減、輸出量は同36.6%減となった。 中国に輸出され
芥川賞作家李琴峰さんの名誉毀損 元SFライターに賠償命令 Newsfrom Japan 社会 2024.07.19 19:08 / 2024.07.19 19:25 更新
2024年4月、米誌タイムの「世界で最も影響力のある100人」に選出された上野千鶴子氏。40年超にわたり日本の女性学・ジェンダー研究をけん引してきた上野氏に、「フェミニズムとは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想」だとする考え方の背景と、若い世代に託す思いを聞いた。 上野 千鶴子 UENO Chizuko 1948年、富山県生まれ。東京大学名誉教授、認定NPO法人「ウィメンズアクションネットワーク(WAN)」理事長。女性学・ジェンダー研究のパイオニアとして教育と研究に従事。高齢者の介護とケアも研究テーマとしている。 「アグネス論争」 上野さんがフェミニズムの論客として注目されるようになったのは、1987年の「アグネス論争」の頃からだ。人気歌手のアグネス・チャンさんが、テレビ番組収録の場に乳児を連れてきたことで賛否両論を巻き起こした。「職場に私生活を持ち込まない」という「美学」を背景
パリ五輪が幕を閉じ、日本選手団は海外で行われた五輪として、過去最多のメダルを獲得した。しかし、以前のような凱旋(がいせん)パレードは計画されず、今大会を最後にトヨタ自動車が五輪スポンサーの契約を終了するという。3年前の東京五輪がコロナ禍で原則無観客となり、大会後には協賛社選びを巡る汚職なども発覚。その影響が尾を引く中、日本に五輪の熱気が戻ることはあるのだろうか。 海外五輪で最多メダルの要因 日本選手のメダルラッシュは大会終盤まで続き、金20、銀12、銅13の計45個のメダルを獲得。海外での五輪としては、金メダル数で2004年アテネ五輪の16個を上回り、米国、中国に次ぐ世界3位の好成績を残した。メダル総数でも16年リオデジャネイロ五輪の41個を更新することになった。 金メダルの内訳を見ると、レスリングで最多の8個を獲得し、柔道と体操が各3、フェンシングとスケートボードで各2、陸上とブレイキン
日本の戦争の歴史を考える時、植民地支配によって人生を大きく狂わされた人々の歴史を忘れるわけにはいかない。朝鮮半島から日本各地に渡り、戦中・戦後を生き延びた在日コリアン(韓国・朝鮮人) たちは、その典型だろう。多くの在日コリアンが身を寄せ合って生きた川崎市の臨海エリアで、彼らの「生活史」を刻む取り組みが始まった。 2024年春、川崎市の桜本地区に生きる在日コリアンの女性たちにカメラを向けた金聖雄(キム・ソンウン) 監督(61)のドキュメンタリー映画「アリランラプソディ~海を超えたハルモニたち~」が公開された。戦争に翻弄(ほんろう)され、植民地となった祖国と日本のはざまで地をはうように生きてきた在日の女性たちの激動の半生と、人生の晩年でようやく出会えたささやかで幸福な日常について、本人の語りを通して伝えることで、「生きた戦後史」を浮き彫りにしている。 「旋盤工場、織物工場、鉱山での重労働。家族
2019年10月22日の「令和の即位の礼」の原型となったのは、1915年(大正4年)に近代日本で最初の、京都御所で行われた大正天皇の即位礼である。国民の代表としてお祝いの言葉を読み上げたのは大隈重信首相。まだ14歳だった少年皇太子(昭和天皇)は、「未成年皇族は公の儀式に参加せず」の慣例がある中、将来に備えて異例の参列を果たされた。 即位礼に執念を燃やした大隈重信 大正の即位礼には特別の意味がある。それ以前の即位式は、宮中での、ごく限られた人たちだけの儀式だった。これに対し、大正即位礼は初めて国民が祝賀に参加し、広く外国からも代表を招いた国際的な儀式で、今日の「即位の礼」の原型になっている。また、明治憲法下で日本が「天皇国」としてまとまる一つの契機にもなった。 皇太子時代の大正天皇=1908年ごろ撮影(Mary Evans Picture Library/アフロ) 明治政府は1909年(明治
人の心とは不思議なものだ。対話の相手に応じて、忘れたはずの記憶がよみがえったり、誰にも語るまいと決めたはずの秘密を打ち明けてしまったりする。旧日本陸軍が秘密裏に秘密戦研究を進めていた「陸軍登戸研究所」の史実が、沈黙によって葬り去られることを防いだのも、人の心の不思議のなせる業だった。 明治大学生田キャンパスは、川崎市多摩区の丘陵地帯にある。緑豊かなキャンパス内を丹念に散策すると、随所でこの土地の特別な歴史を伝える遺構に遭遇する。 旧日本陸軍が用いた「五芒星(ごぼうせい)」が刻印された、赤茶けた消火栓。1943年建立の巨大な動物慰霊碑。「陸軍」と刻印された境界石。これらはすべて、この地が「第九陸軍技術研究所」、通称「登戸研究所」だったことを今に伝える遺構だ。 資料館近くに散見される境界石。くっきりと「陸軍」の文字が確認できる 終戦後、慶応大学や北里研究所などが跡地利用していたが、慶応大学の移
あの戦争で、絵筆を手放し戦地に向かい、命を落とした画学生たちの作品を集めた美術館が長野県上田市にある。1997年5月に開設された「無言館」。戦争体験をもつ画家・野見山暁治さんの思いに突き動かされ、文筆家の窪島誠一郎さんが建てた私設美術館だ。その存在自体が戦争の「語り部」となってきた施設だが、高齢となった館主は、「戦没画学生を消費してきた四半世紀だった」と自省の念にかられている。 無言館は、長野県上田市郊外の小高い丘の上にひっそりと立っている。正面に「無言館」と彫られ、扉もあるものの、そこが入口とは明示されていない。何か「覚悟」が問われているかのようだ。 建物のデザインも窪島さんが手掛けた。正面は石棺のようでもあり、俯瞰すると十字架の形になっている 扉を開けると、薄暗く静ひつな空間が眼前に広がる。太平洋戦争に散った美術学校の画学生や卒業生の遺作たちが壁いちめんに展示され、中央のガラスケースに
たいわんほそ道~青天の下で歩く民主の聖地、宜蘭の経験を想う――県庁舎~金古路~員山機堡 旅 文化 暮らし 歴史 2021.12.19 道とすべきは常の道にあらず。いにしえに生まれた道をさまよいつつ、往来した無数の人生を想う。台湾の複雑な歴史が堆積した道をあるく連載紀行エッセー、今回は「民主の聖地」とも呼ばれる宜蘭。日本の建築集団が手掛けた宜蘭県庁から、太平洋戦争中に特攻隊が飛び立った南飛行場を経て、戦争博物館までの約7キロを歩きながら、時間という永遠の旅人が残した記憶に耳を澄ませる。 郷土の滋味 山脈を貫くながい雪山トンネルをぬければ、そこはKavalanの地である。Kavalanとは、古代よりこの土地に暮らしていた先住民(台湾での正式な呼称は “原住民族”)クバラン族のことで、世界に名を馳せるウイスキー「KAVALAN」の生産地としても知られる。視界いっぱいに広がる蘭陽平原がまぶしい。
洋画家・香月泰男の「シベリア・シリーズ」は、シベリア抑留の記憶を基に、帰国後、故郷・山口県で制作し続けた作品群だ。そこには、どんな状況にあっても、光明を追い求め、生き抜いていこうとする生命力が満ちあふれている。 洋画家、香月泰男(1911〜74年)は、自らが体験した太平洋戦争とシベリア抑留をテーマとする一連の油彩画、いわゆる「シベリア・シリーズ」によって、洋画壇に確たる地位を築いた。戦後の洋画家で最も成功したうちの一人と言っても過言ではない香月泰男の作品は、没後40年が過ぎた今日もなお、高い人気を誇っている。その大きな理由の一つは、彼が「シベリア」を描いた画家として人々に記憶されているからだろう。 実際には、シベリアから帰還した1940年代後半から50年代末ごろまで、香月は「シベリアの画家」ではなかった。今日、「シベリア・シリーズ」としてくくられる油彩画57点の大部分は、60年代以降に描か
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『nippon.com | 日本情報多言語発信サイト』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く