「有害な男らしさ」を体現した映画 ——今回取り上げるのは『40歳の童貞男』、2006年日本公開の作品です。 ジェーン・スー(以下、スー):オススメできると思って観返してみたら…時間が経つと印象が変わるものだわね。 高橋芳朗(以下、高橋):もちろん初めて見た時と同じように笑っちゃうシーンもあるんだけど、それ以上に戸惑いを覚えることのほうが多かったな。先日、剃刀製品ブランドの米ジレットが「有害な男らしさ」を見つめ直す長尺のCMを発表して賛否を呼んだけど、今回十数年ぶりに『40歳の童貞男』を見てまさか同じテーマについて考えさせられることになるとはね。初見の時はぜんぜん気にならなかったのに。公開当時から違和感を抱いていた人も実は結構いたのかな? スー:あのジレットのCMね。「有害な男らしさ」——’toxic masculinity’つまり「男は多少やんちゃでも強くあることが重要で、そういった“男ら