「殺人マシーン」を量産する「軍隊」の、極めて合理的だが、それ故に苛酷なる短期集中の特殊な新兵訓練を通して、「殺人マシーン」の「卵」を孵化させるプロセスで、孵化する前に「狂気」に搦(から)め捕られてしまった新兵と、その「卵」を孵化する最低限の条件をクリアしながらも、既に充分過ぎるほど、「殺人マシーン」が量産されている前線に踏み入っても、「殺人マシーン」に変容し切れない若者との対比を描くことで、「殺人マシーン」を量産する「軍隊」の終結点である「戦争」の本質と、そこへの「最適適応」の困難さ、厄介さを浮き彫りにした物語構造を持った問題作 ―― それが、「フルメタル・ジャケット」である。 「殺人マシーン」を量産する超合理的なシステムを内包する空間は、本作で言えば、南カロライナ州の合衆国海兵隊新兵訓練基地。