信じられないような偶然の一致を多用して、お話をつづけていくのはレベルの低い作家のやることだと考えられている。どうせ○○は、主人公だから最後まで死なないんでしょ、途中で生き返ったりするかも知れないな。馬鹿にしてそんなふうに言う人もいる。逆に考えてみれば、僕は逆に考えるのが好きなのだけど、死ななかった登場人物のひとりに、スポットライトをあてることで成立するのが「物語」だとも言える。それは人生に似ている。 シンクロニシティとは、人の心の生み出す幻にすぎない。人生は世界は、まるで意味のない偶然で満ちている。それを意味のある何か、物語のようなものに書き換えることをして、僕たちは生きている。無意味さから意味を学び、無価値さから価値を知る、何度でもピンチを乗り越え、ときに生き返りさえするのは、彼が主人公だからではない。死ななかったことで、彼は主人公になる、僕たちの人生の、この世界の真実を物語る資格を得る