<10年前の文章なのですが、とても愛着があるので、再掲載。> 彼女がちょっと出かけているとき、家でぼんやりとテレビを見ながら、僕はちょっとだけ妄想してみる。 もしも僕らが爬虫類だったら、もうちょっと楽しい人生だったんじゃないかなあ、と。そんな妄想で時間をつぶすのは、僕の数少ない趣味のひとつなのだ。 まず、年に一回、脱皮をすることになるのだと思う。 夏の暑い時期かなんかに、体中が猛烈に痒くなり、思わずぼりぼりとかきむしってしまう。すると、二の腕あたりの皮膚が、ある日突然ぼろっと剥けたりする。ぺりぺりぺり、と音を立てながら、腕、肩、胸、背中、下半身まで一気に皮が脱げる。顔はすっぽりと、まるで半透明のお面をはずすように脱皮できた。なんか気持ちいいけど、他人が見たら気持ち悪いんだろうな。 食べ物は基本的に丸飲み。歯、というか牙みたいな奴しかないから、あんまりうまく咀嚼ができないのだ。下あごは立派に