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都知事選
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中年期は大きな転換が必要だ。人生の後半に栄光と輝きを夢見る人はほとんどいないが、ベストセラー作家でホスピタリティー起業家のチップ・コンリー(63)の考え方は違う。 著書『ミッドライフを楽しむには:年を重ねるごとに人生が良くなる12の理由』(未邦訳)のなかで、コンリーはこう問いかけている。 「中年期の自然な移行を、危機としてではなく、“さなぎ”の時期と考えてはどうか。脱皮して、羽を広げ、知恵を世界に授粉しながら、私たちのなかにある深遠なものが目覚める時期だ」 米国の人口が急速に高齢化するなか、中年期を前向きな変化が起きる有望な時期として捉え直すことが新たな課題となっている。それを実現する方法についてコンリーに聞いた。 ──中年期の変化のロールモデルは誰でしたか? 父親です。彼は会社員として無難な道を歩んでいたのですが、40代後半で起業を決意しました。スタンフォード大学に子供2人を通わせ、もう
ピカディージョ 作り方 1 厚手の大きな鍋にオリーブ油を入れ、強めの中火にかける。油がふつふつとしてきたら、玉ねぎ、チョリソー、にんにくを加えて混ぜ合わせ、玉ねぎがしんなりするまで約10分炒める。 2 牛ひき肉を加え、ほぐしながら焼き目をつけていく。塩胡椒で味付けをする。 3 トマト、ワインビネガー、シナモン、クミン、ローリエ、クローブ、ナツメグを加えてかき混ぜる。火を弱め、ふたをして約30分煮込む。 4 ふたを取り、レーズンとオリーブを加えてさらに15分ほど煮込む。ご飯を添えて召し上がれ。 © 2024 The New York Times Company
11月の米大統領選に向け27日開かれたテレビ討論会で民主党の現職バイデン大統領が苦戦したことを受け、米国の同盟国の一角では、共和党のトランプ前大統領の返り咲きに備える動きが強まっている Photo: Kenzo Tribouillard / Reuters 11月の米大統領選に向けて27日に開かれたテレビ討論会で民主党の現職バイデン大統領が苦戦したことを受け、米国の同盟国の一角では、共和党のトランプ前大統領の返り咲きに備える動きが強まっている。 討論会では、バイデン大統領は序盤から時折声がかすれ、言葉に詰まる場面もあった。バイデン氏が討論会で「高齢懸念」を払拭するという期待も高まっていたが、同氏の精彩を欠く姿を受けて民主党内でも動揺が広がり、一部の民主党員からは、候補者の交代という異例の措置が必要かもしれないとの見方も出ている。 海外の新聞各紙の紙面も、バイデン氏に対する非難が目立った。仏
テスラは2024年6月に開催した定時株主総会でイーロン・マスクCEOの560億ドル(約8兆8000億円)の巨額報酬案を承認した。報酬額は米国で史上最高額となる。一方、この巨額の報酬を巡っては米国デラウェア州の裁判所が無効との判断を下し、そのゆくえが注目されていた。株主総会を前に、テスラのデンホルム会長に英紙が単独取材。これまであまりメディアの前に登場しなかった彼女は、イーロン・マスクの巨額報酬についてどう語ったのか。 イーロン・マスクをどう思っている? テスラの会長でシドニー在住のロビン・デンホルムは、CEOであるイーロン・マスクの予期せぬツイートで目覚めることに慣れている。「もし私に魔法の杖があれば、ツイッター(X)なんて消してしまうのに」と、彼女は本紙「フィナンシャル・タイムズ」のインタビューで冗談を飛ばした。 マスクがXに投稿する挑発的な発言は、規制当局や政府とのトラブルを引き起こす
銅価格の高騰が止まらない。銅不足のリスクをはじめ、今後の銅市場を理解するための4つの質問に、世界で2番目の銅取引量を誇る大手資源商社「トラフィギュラ」のエコノミスト、グレアム・トレインが答える──。 1.銅の需要は今後どのように変化する? クリーンエネルギーへの移行が進むにつれて、私たちが使うものがどんどん電化すると予想されます。現在、銅の消費量は年間で約3000万トンですが、今後10年でさらに年間1000万トンほど増加すると見込まれています。 その1000万トンの内訳ですが、3分の1は電気自動車(EV)関連の需要であり、次の3分の1はエネルギーのインフラや送電網の需要です。残りの3分の1は、建設関連(新興国で多い)やデータセンター、オートメーション関連の需要です。 2.銅が不足するリスクは…? 銅は10年前から需要が供給を上回る状態が続いているというのが私たちの認識です。2013年の時点
多くの外国人観光客が押し寄せるなか、日本各地の観光地のみならず、以前はそうでなかった場所までもが彼らの振る舞いに悩まされている。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が、住民たちの複雑な心境を聞いた。 最近では2回、マツモト・ショウジの理髪店に、散髪を希望する外国人観光客が入ってきた。正面のドアは半分以上開けると大きな音で軋む、そんな店だ。 1人目はイタリア人、2人目は英国人だった。75歳で、どちらの言語も話さないマツモトは、どうコミュニケーションをとればいいのかわからなかった。彼はハサミを手にとり、散髪を始めた。長年の経験だけを頼りに、この気まずいめぐり合わせを切り抜けることができますように、と願いながら。 2022年に新型コロナウイルス関連の入国制限が撤廃されて以降、円安の後押しを受け、旅行者が日本に押し寄せている。岸田文雄首相をはじめとする政府関係者のなかには、オーバーツーリズムを懸念する声
占星術や血液型など、自分の性格や人との相性を診断する方法は、無数にある。そんななかでも筆者が信頼を置くのが、半世紀以上前に米国で提唱され、現在も使われているマイヤーズ・ブリッグス・タイプ指標(MBTI)だ。 この記事は、愛をテーマにした米紙「ニューヨーク・タイムズ」の人気コラム「モダン・ラブ」の全訳です。読者が寄稿した物語を、毎週日曜日に独占翻訳でお届けしています。 性格診断に夢中になったワケ 3度目のデートの後、クレアに診断を受けてほしいと言った。 私たちの関係は順調だった──手と手が触れ合い、膝と膝がかすめ、頭と頭が近くにあった。家に帰ってひとりでベッドに倒れ込む頃には、これはいけるんじゃないかと思って顔が火照った。かなり酔ってもいたけれど。 クレアは16性格診断に興味をもったみたいだったから、彼女にそのリンクを送った。それからメモアプリを開いて、診断結果を予測して「クレア、INFP」
子供を持つことで、女性のキャリアに支障が出るということはよく言われてきた。だが、長期的に見たとしても、女性たちが失われたキャリアを回復することはできないのだろうか? 私は前週までの育児休暇から復帰して、書く気満々だ。「子持ちになった途端、築いてきたキャリアが損なわれる恐れがある」とする研究も枚挙にいとまがないではないか。次は我が身、という恐れは早急に振り払うに越したことはない。しかし、ここで思い出す──自分は父親だった。それで、ほっとしてコーヒーを飲みに行く。 子供を持つことで被るキャリアの打撃、経済学者がいう「チャイルド・ペナルティ」で割りを食うと考えられているのは、母親だけだ(マザーフッド・ペナルティと呼ばれる)。 実は、子供の出産後に職場復帰する母親も、ひと息入れることはできるかもしれない。母となった自分の当面の手取りは減りそうで、父となった男の収入は変わりがないと知れば腹も立つだろ
日本でも揺らぐ「報道の自由」 近年、世界中でメディアへの脅威が高まっている。 パレスチナ自治区ガザやロシア、中国などでは記者が不当に拘束され、暴力を受ける事例が相次ぐ。権力の不正を暴こうとする記者をインターネット上で組織的に中傷する問題も起きている。 東京新聞と中日新聞の海外特派員らによって書かれた『報道弾圧 言論の自由に命を賭けた記者たち』(ちくま新書)は、政治思想・派閥による分断や、ポピュリスト政治家の台頭、SNSやデジタルプラットフォームの普及といったメディアを巡る諸問題を切り口に、各国の報道機関が直面する危機と、それに果敢に立ち向かおうとするジャーナリストたちの姿に迫っている。 ではなぜ、いまメディアに逆風が吹いているのか。本書において、豪メルボルン大学でジャーナリズムを研究するデニス・ムラー上級研究員(取材当時)は、メディアを統制しようとする動きが世界中で加速する背景には、200
生き残るためには「取材」をすべき ──生成AIが急速に普及するなか、メディア業界でもこの技術をどのように活用していくかという議論が起きています。AIが記事を作成するようになった場合、記者の存在意義が薄まる可能性も指摘されています。また、情報の正確性の見極めが難しくなるという懸念もあります。こうした状況をどのように見ていますか? 個人的には、生成AIは慎重に使うべきだと考えています。記者の役割はできる限り一次情報に近づき、自分で見聞きしたことを、自分の言葉で伝えることで、その基本はいまも変わっていません。 そこを安直にAIに頼れば物事の本質を見誤る可能性がありますし、記者の存在価値を自ら下げることになります。出所がはっきりしない情報を使ってフェイクを流すという行為は、記者として、メディアとしてあってはならないことです。 翻訳やリサーチなどの作業を効率化するといった活用方法はよいと思いますが、
マルボ族の近代化を推進した「一家」 ジャバリ・バレー先住民区域は、地球上で最も隔絶された場所の一つだ。ポルトガルに匹敵する広さの熱帯雨林が鬱蒼と広がり、道路はなく、迷路のように入り組んだ水路が張り巡らされている。ジャバリ・バレーに住む26部族のうち、19部族が完全な孤立状態で暮らしている。 その一つであるマルボ族も、かつては外界との接触がなく、何百年もの間、森の中を移動しながら生活していた。19世紀末に天然ゴムの違法伐採業者がやってきたことで、長年にわたる暴力と疫病に見舞われたが、同時に新たな習慣や技術がもたらされもした。 マルボ族は服を着るようになり、なかにはポルトガル語を学ぶ者も出てきた。イノシシ狩りに使う弓矢は銃に、キャッサバ畑を開墾するための鉈(なた)はチェーンソーに持ち替えられた。 この変化をとくに推進した一家があった。セバスチャン・マルボは、1960年代に森の外で暮らしはじめた
「インターネットのせいで、若者が怠け者に」 スターリンクは2022年にブラジルに参入して以来、世界最大の熱帯雨林全域に普及し、地球上で最後のオフライン地帯の一つにインターネットをもたらした。 隔絶された小さな文明がいきなり世界に開かれたら、何が起こるのか──「ニューヨーク・タイムズ」紙はそれを知るために、アマゾン奥地にあるマルボ族の集落を訪れた。 「インターネットが開通したときは、みんな大喜びでした」。ツァイナマ・マルボ(73)は、マロカと呼ばれる、部族の人々が寝食を共にする高さ15メートルの小屋の土床に座ってそう話す。 遠く離れた家族や友人とビデオ通話で話すことができたり、緊急時に助けを呼べたりと、インターネットは確実に利益をもたらしてくれた。「でも、いまは状況が悪化しています」 彼女は体に塗る黒い染料の原料となる、ジェニパポの実を練り潰していた。身に付けているのはカタツムリの殻を繋ぎ合
建設現場の作業員たちがよく穿いているニッカボッカ。その不思議なフォルムに、世界でも関心の目が向けられているようだ。そこでスペイン「エル・パイス」紙がニッカボッカの歴史を探ってみると、単なる作業着以上の意味が見えてきた。 「日本の建設作業員は、ズボンを穿いて奮闘する必要がない」 インスタグラムに投稿された画像には、仕事着を着込んで並んだ日本の職人たちの姿が映る。脚の部分が幅広くて、くるぶしはギュッと絞ったズボンには、不思議な魅力がある。すでに1万2000人以上が、この制服に対してハートマークを贈っている(何人かは炎のマークも付けている)。 工事現場用の制服が、なぜこれほどまでに人を惹きつけることができるのだろう?
「スポッチャ」などの遊戯施設運営で知られるラウンドワンが米国で人気を集め、業績を伸ばしている。コロナ禍後、米国では郊外のショッピングセンターでテナントの立ち退きが相次いでいたが、ラウンドワンが起死回生に一役買っているという。米国で人気の理由とは? 全米で50ヵ所以上に 2021年末、米国コネチカット州郊外のショッピングモールに日本のビジネスマンご一行が訪れた。彼らは、破綻したアパレルブランド「フォーエバー21」が立ち退いた後、空っぽになっていたショピングモールを視察していたという。 このショッピングモールのオーナーは、米国ではもはや百貨店は流行しないと気づき、百貨店の代わりにモールの起死回生のために目をつけたのが、ゲームセンターなどを運営する日本のアミューズメント施設「ラウンドワン」だった。 米国ラウンドワンは現在、全米で50ヵ所以上の店舗を展開している。日本のゲーム機がたくさん並び、なか
【今回のお悩み】 「人生に疲れてしまって気力が出ません」 これまで仕事に熱心に取り組んできたのに、突然やる気を失ってしまった。モチベーションを保てなくなってしまったとき、どうしたらいいのでしょうか。哲学者の岸見一郎先生に聞いてみました。 仕事がたくさんあって忙しい毎日を送っていると疲れないわけはなく、もう何もしたくなくなることがあります。それでも、「人生」に疲れるのではありません。「仕事」に疲れるのです。 仕事を辞めれば、疲れは取れるでしょう。しかし、仕事を辞めたら生活していけなくなるので、それは現実的な選択肢にはなりませんが、ひとまず立ち止まるしかありません。気力のスイッチは、切らないと入れることはできません。 「疲れて気力が出ない、どうしたらいいか」と相談したら、誰もが仕事を休んだらいいと助言するでしょう。そんなことはいわれるまでもなく、わかっていると感じるかもしれません。何のためらい
国民議会選が目前に迫り、極右政党「国民連合(RN)」が存在感を強めるなか、フランスではこれに抗議する運動が各所で湧き起こっている。女性の権利を訴える団体の大規模デモ、サッカー選手キリアン・エムバペや女優のマリオン・コティヤールをはじめとする多数の有名人の反対表明……。 さらに、日本の「漫画ファン」コミュニティもRNへの反対を訴える。「『ONE PIECE』、『進撃の巨人』、『NARUTO -ナルト-』のファンでありながらRNに投票しようとするなんて、作品を理解していないか、作品の哲学をないがしろにしているかだ」。その真意とは? エマニュエル・マクロン仏大統領による国民議会解散を受け、6月30日と7月7日におこなわれるフランス総選挙。その選挙で、漫画がどのような役割を果たすというのだろうか? 間近に迫った投票を脅かす暗い危機を前に、日本の漫画など、とるに足らないようにも思えるが、選挙戦がイン
欧州と北米のあいだには大きな隔たりがある。それは洗濯に関わることだ。洗濯物を乾かすとき、欧州はおもに自然乾燥に頼り、物干しスタンドのうえに広げたり、外で吊り干ししたりする。米国やカナダの家庭はたいてい、洗濯物を乾燥機で乾かす。 その隔たりは、かなり際立っている。欧州で最も乾燥熱心なデンマーク人が洗濯物を機械乾燥する割合はたった28%である一方、米国の家庭のおよそ80%が毎週タンブル乾燥している。このギャップは何十年も存在してきたし、外国からの訪問者を大いに困惑させてもきた。 ところが日本では、大西洋の両岸からやってきた旅行者が、洗濯物を乾かす第三の道があると知って驚くことがよくある。見よ、浴室乾燥機だ。 電化製品と部屋の境界をまたいだ装備 英語に訳せば「バスルーム・ドライヤー」となるこの浴室乾燥機は、電化製品と部屋の境界をまたいだ、巧妙な装備だ。浴室の天井に埋め込まれたヒートポンプが暖かく
ブラジルが6月26日、個人使用の大麻を解禁し、人口2億300万人の同国は、同様の措置を講じた国々のなかで世界最大となった。大麻が世界的にますます受容されるようになっていることを示す最新の事例だ。 ブラジルの連邦最高裁判所は、国民が大麻を40グラムまで(大麻たばこ約80本分)所持しても罰せられないと裁定した。この決定は数日以内で発効し、そこから18ヵ月間は有効になる。 裁判所はブラジル議会と保健機関に対して、その有効期間が過ぎたあとに国民が所持できる大麻の定量を設定するよう依頼した。大麻を売ることは刑事犯罪のままだ。 法律アナリストらによれば、何千人ものブラジル人がこの新しい基準以下の量の大麻を所持していた罪で懲役刑を受けている。今回の決定が、そうした有罪判決にどう影響するのかは不明だ。 その多くが黒人男性で、人口に占める割合は27%ながら、麻薬取引で起訴された被告の61%を占めている。黒人
家族計画を立てる際に人工知能(AI)搭載のチャットボット(自動会話プログラム)を頼りにできるだろうか。100万ドル(約1億5700万円)の投資や結婚式の誓いの言葉を作成する場合はどうだろうか。 人間のように会話するボットは2年前にはほとんど存在していなかったが、今や至る所にある。生成AIブームの火付け役となった「ChatGPT(チャットGPT)」やグーグルとマイクロソフトの製品に加え、無数の中小プレーヤーが自然な会話が可能な独自のアシスタントを開発している。 われわれは主要ボット5つを使用して一連のブラインドテストを実施し、どのくらい役に立つかを判定した。能力が抜きんでたチャットボットが見つかることを期待していたが、そうはならなかった。それぞれ得意・不得意な分野があった。その上、進化のペースも速い。われわれのテスト中に、オープンAIはスピードと時事知識が向上したチャットGPTのアップグレー
EV競争に飲まれる日本車メーカーたち 日産自動車が中国市場で苦戦を強いられている。同社は中国最大手のEVメーカー、BYDとの価格競争をうけ、中国江蘇省の工場閉鎖を発表した。今後は生産数を落とし、事業の立て直しを図っていくとみられる。 EV業界の動向を専門に報じる米メディア「エレクトレック」は、「日産はBYDがガソリン車に対して講じたEV解放戦の新たな犠牲者」だと書く。 多くの自動車メーカーと同様、日産にとって中国は重要な市場だ。2023年の販売台数実績を見ても、およそ2割は中国が占める。だが、EV化の煽りをうけ、中国での販売台数は落ち込む一方だ。 低価格のEVでガソリン車のシェアを奪うBYDの戦略は、いまのところ功を奏している。もっとも安価なコンパクトEV「シーガル」も日本円で150万円から購入可能だ。 同記事では、こうした果敢な価格競争の影響を受けているのは、日産だけではなく、「トヨタ、
本稿は社会心理学者ジョナサン・ハイトの未邦訳書『The Anxious Generation(不安な世代)』の抜粋である。第一回はこちらから。 スマホの罠から抜け出す4つの規範 子供とその親たちはスマホを使い続ける「集団行動の罠」にはまっている。どれも個々の家庭で抜け出すのは難しいが、家庭、学校、地域社会が連携して行動すれば、抜け出すのはずっと容易になるはずだ。 ここからは、スマートフォンに支配された子供時代に終止符を打つための4つの施策を紹介する。 地域コミュニティがこの4つを実践すれば、2年以内に若年層のメンタルヘルスに大幅な改善がみられると私は信じている。
宗教を信仰する10代の若者は、世俗的な若者よりも幸せであることを示す研究が注目を集めている。 近年、米国では若者のメンタルヘルスの危機が度々報じられている。だが、信仰心の篤い10代の精神状態は、この社会的傾向とは異なり、安定しているという。 一体なぜか? 米紙「ボストン・グローブ」が掲載した、米国の高校生を対象とした「モニタリング・ザ・フューチャー」のデータ(1979〜2019年)によると、「信仰心の篤い10代」と「世俗的な10代」のメンタルヘルスに顕著な差がみられ始めたのは2010年以降だ。 同調査では、対象者を「世俗的な進歩派(リベラル)」「信仰心に篤い進歩派(リベラル)」「世俗的な保守派」「信仰心に篤い保守派」の4つのグループに分けており、そのデータは2010年以降、ほぼどのグループも孤独や不安、無価値感、憂鬱をより強く感じるようになったことを示している。
足元で世界中を襲っているインフレ。イギリスでは物価上昇率が40年ぶりに10%を超えるなど、歴史的な水準にまで上昇した。では、過去にインフレが発生した時代の教訓から、私たちは何を学ぶことができるのだろうか。 インフレ高騰した16世紀はどんな時代だったか ヘンリー8世の時代、イングランドは崩壊寸前の様相を呈していた。かつてなく物乞いが増え、隙あらば他人の喉をかっ切るような連中ばかりだったという。誰もが貨幣価値の低下を疑い、その懸念は的中していた。貨幣に負けずモラルも低下していた。 ヘンリーの治世の半ば頃にケント州で行われたある悪名高い葬儀では「酒池肉林の乱痴気騒ぎとなった」と報告されており、「140人の男たち全員が女性をはべらせていた」という。何かおかしいという感覚はヨーロッパ全域で共有され、1590年代までに財政危機、社会不安、そして戦争に見舞われたのである。 社会混乱の元凶は、まったくの予
富士フイルムは半導体事業と深い関係を築いたオールドエコノミー企業の一つ(写真は同社が昨年横浜で開いた展示会) Photo: Stanislav Kogiku / SOPA Images / LightRocket / Getty Images
金価格が急騰し、ドル建てでも円建てでも史上最高価格の更新が続いている。その価格はまだ上がるとの指摘もあるが、なぜこれほどまでに追い風が吹いているのだろうか。 米国の経済史学者ハロルド・ジェイムズが、金の歴史的な意味を振り返りながら、現在の金価格上昇の理由を解き明かす。 「安定」のための金 最近、金価格が高騰している。これが象徴するのは、世界秩序の変化と、紛争と不確実性の新時代の到来だ。各国政府と中央銀行は長い間、この貴金属を通貨の安定と経済の安全保障のための潜在的な源泉と見なしてきたが、今回も例外ではない。国際通貨システムのなかで金が再び脚光を浴びているのだ。 いまから50年以上前、リチャード・ニクソン米大統領が金ドル本位制を廃止し、金ドル交換を停止した。そうして貴金属との引き換えが約束されない不換紙幣の新時代が始まった。 しかしいま、分散型台帳技術やブロックチェーンなどの新しいテクノロジ
米ハーバード大学の政治哲学者マイケル・サンデルは2001年末、思いがけない招待状を受け取った。生命倫理に関する問題を取り扱う諮問機関「大統領生命倫理評議会」への参加を要請されたのだ。サンデルは生命倫理の専門家ではなかったが、遺伝子操作、クローン技術、幹細胞研究など、大きな道徳的課題をもたらす新興分野を考察するというアイデアに心引かれた。 そして、これらのテーマをその有名な講義を通じて追究し続け、特に興味を引かれた問題だった遺伝子増強(エンハンスメント)に関する著作『完全な人間を目指さなくてもよい理由-遺伝子操作とエンハンスメントの倫理-』を出版した。この中で、サンデルは現在も未解決となっている倫理的なジレンマに関し、その知性と鋭さで切り込んでいる。また、この本では『実力も運のうち 能力主義は正義か? 』などの後に出版した著作でも展開した正義や民主主義、共同体、能力主義に関するサンデルの考え
チョコレートの原材料であるカカオ豆の国際価格が急騰し、2024年4月には過去最高値を更新した。5月以降、相場は調整を深めているが、今後カカオ豆の価格は再び上昇するのか。また、そもそもなぜ、カカオ豆の価格は急騰したのだろうか。その理由を探ると、世界的なインフレとは関係のない理由が浮かびあがってきた。 カカオ豆が史上最高値に上昇した理由 2024年3月初頭。イースターまで1ヵ月を切り、欧米では甘党の消費者たちがチョコレートに思いを馳せはじめる頃だ。英国だけでも、この時期にはミルクチョコレートエッグが何千万個も売れる。だが、2024年のチョコレート価格は例年になく高まることが予想されており、しかもその原因は、市場における既存のインフレ圧力とはほぼ無関係だ。 むしろ、ここ数ヵ月のカカオ価格の容赦ない上昇が価格を押し上げているようだ。カカオ豆の価格は史上最高額まで急騰し、ニューヨークのカカオ豆先物価
英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのマリアナ・マッツカート教授らは、コンサルティング業界は不当に莫大な経済的利益を得ていると指摘する。それはなぜなのか、英紙「フィナンシャル・タイムズ」が解説する。 衰退するコンサル業界 私は以前、米国の大手出版社で働いていた。当時は「ドットコム革命」の渦中にあり、読者の減少と収益の低下が課題となっていた。そこで同社幹部は大手経営コンサルティング企業と契約し、何をなすべきか分析を依頼した。 数ヵ月にわたって会議が続き、数100万ドルが支払われた。しかし、そうして提案されたシナリオは明らかに不充分だった。賢者たちによるそのアドバイスに従っても、読者をつなぎとめることも、雑誌を救うこともできなかったのだ。 さらに他の要因もあり、私はずっと経営コンサルティングに対して懐疑的だった。まず「正しく数値化できれば、適切に対応できる」というアプローチでは、たくさんのもの
著しく高齢化が進む日本の水産業。人手不足が深刻な状況のなか、漁師を目指す女性の姿も見られるが、古くからの男社会が彼女たちの参入を難しくしているという。英「ガーディアン」紙が岩手県で取材した。 岡田真由美(49)は最後にひと振りして、水をたっぷり吸った重いロープを太平洋へ繰り出した。午後の強風で海面に白波が立つなか、夫の薫省(くにあき・54)が船室を出て船べり越しに目を凝らす。そして、最後に投入した幼生カキの稚貝が所定の位置まで下りたことを確認した。このカキが成長すると、東北地方の太平洋岸一帯の代名詞といえる大振りな身の高級食材となる。 3年前、岡田薫省は勤務していた旅行会社を辞め、妻の真由美とともに東京から500キロ北の岩手県大船渡市三陸町の小規模集落、泊(とまり)へ移住した。彼は以前から、漁師として一本立ちすることを夢見ていた。真由美は夫の夢を応援したが、彼女自身も海への憧れがあった。
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