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体操のシモーネ・バイルズ、競泳のマイケル・フェルプスなど、ADHD(注意欠陥多動性障害)を公言しているエリートアスリートは少なくない。 子供の頃に診断された選手もいれば、つい最近まで「自身がADHDだとは知らなかった」という選手もいる。 東京オリンピックの女子マラソンの銅メダリスト、モリー・セイデル(29)が、その兆候に気づいたのは2022年頃だという。 「もし子供の頃にADHDと診断されて、すぐに薬を飲んでいたら、オリンピック選手にはなれなかったと思う」 というのも、彼女にとっては「振り返れば、スポーツが薬」のように機能していたからだと、米誌「ウィメンズヘルス」に語っている。 同誌によれば、ADHDの人は「体を動かすことで興奮した心を落ち着かせられる」と感じる傾向があるという。 たとえば、小学6年生のときにADHDと診断されたフェルプスは「泳いでいるときに、初めて自分をコントロールできて
初回のパリ五輪では競技に使われた 開催直前となったパリ・オリンピック。その開催にあたり、パリ市はセーヌ川を泳げるようにすると約束し、水質改善のためにかなりの努力をしてきた。 7月30日と31日には、トライアスロンの選手がセーヌ川を1.5キロメートル泳ぐことになっている。8月8日と9日には、マラソンスイミングの選手が10キロメートル泳ぐ予定だ。 7月17日、イダルゴ市長はセーヌ川で遊泳を果たし、その水質改善をアピールした。しかし、競技当日に泳げるかは、まだわからないというのが本音のようだ。 セーヌ川は水質の悪さから、1923年から最近まで遊泳が禁止されていた。オンラインメディア「カンバセーション」によると、1900年のパリ・オリンピックでは、7つの水泳競技がすべて川でおこなわれた。当時、セーヌ川の水はきれいで、泳いでも問題はなかったという。人間の排泄物は農場で堆肥として使うために回収され、川
英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」が、日本ではまだ少ない女性すし職人に注目。国内外で高額なおまかせコースが人気を博すなか、独自のスタイルで至極のすしを提供する東京の名店を紹介している。 2024年初頭、東京の高級住宅街・麻布十番にある「鮨 めい乃」が、日本の人気ドキュメンタリー番組に取り上げられた。店主の幸後綿衣(こうご・めい)は34歳のすし職人かつソムリエで、10年の修行を経て独立し、自身の店をオープンした。 店を持とうと決意したときのことを、独立するには最適のタイミングだと思ったと幸後は語っている。この店で提供されるのは、5万円の「おまかせコース」のみだ。 銀座の小野二郎に金沢郊外に店を構える山口尚享(たかよし)と、名立たるすし職人がそろう日本で幸後が注目を浴びる理由はシンプルだ。彼女がすしを極めたいと願う、女性の職人だからだろう。 すし業界は伝統的に男社会だ。2021年の政府統計に
アップルTVで7月10日に放送開始されたドラマシリーズ『サニー』は、AIと人間の関係性を描くダークコメディだ。だが、なぜアップルは自社AI「アップル・インテリジェンス」を発表したカンファレンスの後に、ディストピア作品を公開したのだろうか。 米誌「ファスト・カンパニー」は、「アップルの巧妙な広告戦略ではないか」と指摘する。 暴走するAIを描いた作品 日本在住のアイルランド人作家コリン・オサリバンの小説『ダーク・マニュアル』を元にしたドラマ『サニー』は、近未来の日本を舞台にした物語だ。京都に住む米国人女性スージーは最愛の夫を航空事故で失う。その慰めとして、夫が勤めていた企業が製造したロボット「サニー」を贈られ、共に暮らすことになる。 「ロボットは嫌い!」と、サニーに嫌悪感を露わにしたスージーだったが、両者は次第に友情を育んでいく。そして亡くなった夫に隠された真実を明かしていくうちに、危険に巻き
最新のニュースに登場した時事英語を紹介するこのコーナーでは、世界のニュースに出てくるキーワードを学ぶと同時に、ビジネスの場や日常会話のなかでも役立つ単語やフレーズを取り上げていきます。1日1フレーズずつクイズ感覚で学び、英語に触れる習慣をつくっていきましょう。語彙力の向上には、日々の積み重ねが大事です。 今日の時事英語 2024年7月23日(火)の「BBC」に次の一文がありました。 The organising committee of Paris 2024 has vowed to make it the greenest Games in Olympic history, with half the carbon footprint of London 2012 and Rio 2016. この“greenest”とは、どういう意味でしょうか? “Greenest”の意味 答えは「最も
恋愛市場においてはジェンダー規範と職業がいまだに強く結びついているようだ Photo: Oscar Wong / Getty Images 小学校教員や看護師は女性の仕事、工学エンジニアやコンピュータサイエンティストは男性の仕事というように、ジェンダーの規範と職業を結びつける発想は時代遅れになりつつある。多くの職業において雇用機会を男女で分けたり、誰かの職業を指して「男っぽくない」「女っぽくない」などと評価したりすることは、社会的にはあまり受け入れられなくなった。 しかし、個人レベルではどうだろうか。特に個人のパートナーを選ぶ際、多くの人は無意識のうちに、いまだに職業とジェンダーを結びつけているかもしれないことが研究で判明した。マッチングアプリを中心とするいわゆる「恋愛市場」においては、性別のイメージに合った職業についている人のほうが「成功する」傾向にあると示されたのだ。 マッチング率に大
クーリエ・ジャポンのプレミアム会員になると、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のサイトの記事(日・英・中 3言語)もご覧いただけます。詳しくはこちら。 シンガポール在住の中国人留学生(26)は昨秋、休暇で帰国するためスーツケースに荷物を詰めていた。荷物の中には衣類や靴だけでなく、米半導体大手エヌビディアの人工知能(AI)向け先端半導体チップが6個入っていた。 米国が半導体の対中輸出を規制しているため、大学の友人を介して、チップを中国に持って行くように頼まれた。チップ1個は任天堂のゲーム機「ニンテンドースイッチ」ほどの大きさで、空港の検査員に怪しまれることもなかった。 到着後、運んだチップ1個につき100ドル(約1万6000円)を受け取ったと学生は話した。 米バイデン政権の輸出規制はエヌビディアの先端AI半導体を中国に渡さないことを目的としている。だが、これをかいくぐる買い手・売り手・運び
最新のニュースに登場した時事英語を紹介するこのコーナーでは、世界のニュースに出てくるキーワードを学ぶと同時に、ビジネスの場や日常会話のなかでも役立つ単語やフレーズを取り上げていきます。1日1フレーズずつクイズ感覚で学び、英語に触れる習慣をつくっていきましょう。語彙力の向上には、日々の積み重ねが大事です。 今日の時事英語 2024年7月21日(日)の「CNN」に次の一文がありました。 Biden reached the decision to end his campaign after days in isolation at his Delaware beach house with Covid-19 and after watching many Democrats desert the president who led them to power just four years a
JAMA精神医学誌に掲載された新しい研究によると、幼少期から思春期にかけての子供時代に2回以上の引っ越しをすると、成人後のうつ病のリスクが大幅に増加することが判明した。 「子供時代に頻繁に引っ越しをするリスクは、貧しい地域に住むリスクよりもはるかに大きかった」という。 この研究は、1982〜2003年の間に生まれたデンマーク人、100万人以上を対象とした大規模なもので、所得レベルによる違いも調査に含まれている。 対象者のうち、精神病院でうつ病の診断を受けた人は3万5098人(約2.3%)。研究者らは、「予想した通り、貧しい地域で育った人のほうが、うつ病を患う可能性が高く、地域の所得レベルが低下するごとにそのリスクが2%増加した」と述べている。 彼らを最も驚かせたのは「10〜15歳の間に2回以上引っ越しをした成人のうつ病のリスクが増加していたこと」で、この時期に引っ越しをしなかった成人と比較
伝統的な家族観が根強く残る韓国社会では、税金や住宅、保険などに関する政府の優遇措置はすべて「家族」向けに調整されている。その代わり、高齢の親族の介護など、社会福祉の多くを家族が担うことが期待されているのだ。 しかし近年では、多くの若者が結婚という制度を敬遠しているため、こうした家族中心のシステムは急速に崩壊しつつある。そこで、新たな家族の形を提案するのが、共同生活を送るファン・ソヌ(47)とキム・ハナ(47)だ。 米「ニューヨーク・タイムズ」紙によれば、彼女たちは、互いに恋愛感情はなく、ほかの人と恋愛関係にあるわけでもない。そんな女性ふたり暮らしの様子を綴った共著『ふたりで生きる』(未邦訳)は韓国でベストセラーになり、ポッドキャスト『ふたりで語る』は数十万人のリスナーを集めている。 法律上、韓国で「家族」と認められるのは配偶者、両親、子供だけである。だが、キムとソヌは自分たちのことを 「D
20世紀前半の中国を動かした「宋家三姉妹」の三女・宋美齢は、米国のルーズベルト大統領まで魅了し、日中戦争や太平洋戦争に影響力を及ぼしていた。日米中の歴史に詳しい作家の譚璐美氏が、宋美齢の壮絶な人生に迫る。 中国の民族衣装ではない 日本でもおなじみのチャイナドレスは、中国伝統の女性の民族衣装だと思われているが、実はそうではない。 チャイナドレスは中国語では「旗袍」(チーパオ)と呼ばれ、原型は、清朝時代に「八旗」(はっき)と呼ばれる満州貴族の軍団が騎馬用に着た服(袍)で、襟元を小さくして砂嵐から肌を守り、馬に跨るために両足が広く開くよう裾が分かれていた。 それが1920年代、上海で西欧モダニズム文化が花開いた時代に、流行に敏感だった上海の女子学生たちが、洋服と融合させて今日のような細身の「海派旗袍」(ハイパイチーパオ、洋風ドレス)を生み出した。 当時の上海には英国、フランスなどの租界が広がり、
米国在住のある母親が、中学生の娘のスマホ依存をめぐる壮絶な闘いの日々を、英紙に仮名で寄稿した。成績の低下、繰り返されるウソ、自傷行為、半裸のセルフィー……SNSに溺れてどんどん変わっていく娘に、母親の胸は何度も張り裂ける。 カメラロールに残る「負のスパイラル」 私の娘は、米公衆衛生局長官が精神衛生上の深刻なリスクにさらされていると警鐘を鳴らした子供の一人だ。ソーシャルメディアに浸っている米国の子供たちは、「数十年にわたる社会実験に無意識のうちに参加させられている」という。 娘は中学に入る前、犬の散歩でお小遣いを貯めてスマートフォンを買った。中古のiPhone 13 miniを売買サイトで見つけたのだ。親としては購入を許すことで、良い成績を取ったり、部屋をきれいにしておいたり、ゴミ出しをしたりするモチベーションになればと期待した。 当時の私は、このスマホが娘に及ぼす影響と娘から何を奪うかにつ
米国の家庭の多くは新車や中古車を買えない状況にある、と米誌「アトランティック」は指摘する。 物価はここ1年で2.5%上昇したが、コロナ禍初期には7%上昇したので、それよりは低い。家賃は高いものの、横ばいだ。食品の価格も急上昇しているわけではなく、卵などは値下がりしているほどだ。 だがそれでも、米国民が車の購入に踏み切れない事情とは──? 新車を買えるのは「裕福な家庭」だけ 多くの車種の価格は下がってきており、在庫も充分に眠っている。しかし、それは単に、コロナ禍の前半に半導体が不足し、それ以外の部品もサプライチェーンが麻痺したことで、これまでの店頭価格が大幅に上昇していたからだ。 新車の価格は依然として高く、中流家庭の多くは経済的な余裕がなくて購入できない。新車に手が出せるのはたいてい、裕福な家庭だけだ。 中古車を買う場合も、状況は似たり寄ったりだ。新型のダッジ・ラムであれ、旧型のトヨタ・プ
人体を冷凍して生き返らせる──そんなSF映画の世界のような技術に取り組むスタートアップがある。天才と称された人物が立ち上げたスタートアップは、どこまで技術の研究が進んでいるのか。謎に包まれた研究室を米経済メディアが訪ねた。 冷凍された人間は生き返ることが可能なのか? 不老長寿という研究分野は、いわばなんでもありで、大風呂敷を広げる人が多い。そんな研究分野で10代の頃からベンチャーキャピタリストとして仕事をしてきたのがローラ・デミング(30)だ。 この10年で、この分野でもっとも目が利く投資家の一人として頭角を現した。そんな彼女がベンチャーキャピタリストとしての仕事を中断する。これからは自分が起ち上げた会社の経営に本腰を入れ、不老長寿研究のなかでも、とくに物議を醸すテクノロジーの開発に取り組むのだという。 デミングが2024年6月、世間に対してお披露目したのがクレードル・ヘルスケアという会社
2024年6月に江蘇省蘇州市で日本人母子が襲われるなど、最近、中国で外国人に対する暴力事件が相次いでいる。その背景には、ネット上で蔓延する外国人ヘイトの問題があるという。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が外国人嫌悪を組織的に煽ろうとする中国の国家システムに迫った。 2023年、中国のSNSに公開されたある動画が広く拡散された。動画には上海の小学校の校庭らしき場所に100人以上の日本人の子供たちが集まっている様子が映し出されている。 リーダー格の2人が何かを叫ぶと、その言葉が次のように中国語字幕に翻訳される。 「上海は私たちのもの。もうすぐ、私たちは中国全土を手に入れる」 第二次世界大戦中に日本軍に占領された歴史を持つ中国の人々は、この言葉に憤りと危機感を覚えた。 だが実際には、この動画は日本の小学校で撮影されたもので、子供たちは中国に対するヘイトスピーチを発したわけではなく、運動会の選手宣誓
「日本の宗教は何?」と海外の人に聞かれたとき、仏教と神道の関係を説明できますか? さらに「神道ってどんな宗教なの?」と突っ込まれたら、その特徴について語ることができますか? 日本人は「無宗教」と言うことが多いですが、その歴史を見れば、単に信仰心がないためにお正月には神社に初詣をして、お葬式をお寺であげているわけではありません。宗教学者の島田裕巳さんが解説します。 日頃、私たち日本人は、自分たちのことを「無宗教」だと考えています。ところが、世界を見渡してみれば、ヨーロッパや米国ではキリスト教が広がり、中東を中心にイスラム教が広がっている。東南アジアには最大のイスラム教の国、インドネシアがあるし、世界で最大の人口を抱えるインドにはヒンドゥー教とイスラム教がある。宗教が力を持っていない国や地域は存在しないのです。 無宗教を標榜する日本人も、葬式は仏教の寺院でおこない、初詣には神社を訪れます。いま
在宅勤務を機に性格が一変 精神分析医の仕事をしていると、仕事や恋愛、肉体や道徳で完璧をめざし、それができなくて悩んでいる人に会うことが多い。自分に厳しい目標を課し、その目標を達成できないと自分はダメだと嘆く患者と会わない日はないといってもいいくらいだ。そういう患者は、たいてい自分の知り合い(同僚や兄弟や友人など)なら、自分にできなかったこともたやすくできたに違いないと思い込んでいるので、その分、自己批判の度合いも強くなる。 ところが2020年の春、新型コロナの影響でロックダウンが始まったとき、私は自分の患者の多くが完璧主義から解放されるようになっていることに気がついた。役所や企業が在宅勤務に切り替わったので、大量の仕事に追い回されなくなり、常時の監視状態から逃れられ、自分の人生の優先順位を見直す機会を持てたことが関係しているようだった。パン作りや散歩、読書やおしゃべりといったシンプルなこと
アダム・グラント 組織心理学者。ペンシルベニア大学ウォートン・スクール教授。著書に『GIVE&TAKE 「与える人」こそ成功する時代』、『THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す』、『ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代』(いずれも三笠書房)など Photo: Olga Rolenko / Getty Images 履歴書やこれまでの仕事の実績を見れば、その人が採用すべき人材か否かは自ずとわかる──。 そう考える人がこの本を読んだら、腰を抜かすかもしれない。『隠れたポテンシャル』(未邦訳)は、米国の名門ビジネススクール「ウォートン・スクール」のアダム・グラント教授(42)の最新著だ。ポテンシャルの高い人材を見抜くためには、採用人事のソフトウェアを変更しなければならないと説いている。科学や社会学の研究を援用しながら「才能」という概念を打ち砕き、「粘り強さ」の重
欧米でEV市場が停滞している。そんななか、高級スポーツカーメーカーのフェラーリは、2025年に初めてのEVを売り出す予定だ。しかし、熱狂的なファンが多い同社は、EVという全く異なるシステムに移行しても、その魅力を保てるのか。EVに大規模投資をするフェラーリのいまについて、米紙「ニューヨーク・タイムズ」が考察した。 減速するEV市場 北イタリアの新工場では、フェラーリ車のフレームがロボット搬送装置によってなめらかに運ばれていく。ステーションごとに、チェリーレッドのユニフォームに身を包んだエンジニアたちがフレームにエンジンブロック、ダッシュボード、ステアリングホイールといった部品を付け加えていった。そうしてハイブリッド車が組み立てられた。 そして、同社が次に作ろうとしているのは、電気自動車(EV)だ。
エマニュエル・マクロン仏大統領が数年前に「脳死状態にある」と酷評していたNATO(北大西洋条約機構)が、ウクライナ戦争を契機に求心力を強めている。 7月に米国ワシントンDCで開かれたばかりの首脳会議では、「われわれが直面する脅威は世界的かつ相互に関連している」として、関与すべき安全保障空間を、欧州のみならずアジア地域にまで拡大した。 さらに、NATO加盟国にとって最大の脅威であるロシアのほかに、中国、イラン、北朝鮮を挙げて、個別に批判を展開している。 日本の岸田文雄首相も、中国の軍事力強化や北朝鮮の核・ミサイル開発を念頭に、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」と繰り返し発言している。 「反米枢軸」? NATOが批判する中国、イラン、北朝鮮はいずれも、ウクライナ攻撃を続けるロシアに武器供与などの形で支援をしている。さらに、ロシアとともに現在の国際秩序を批判し、多極化した国際社会の
鎌倉の山に日本各地から古民家や廃寺を移築し、唯一無二の大屋敷を作ってしまった米国人がいるという。米紙「ニューヨーク・タイムズ」が現地を取材した。 鎌倉の街を望む山で、ある日の午後、ブライアン・ヘイウッド(57)が、彼の新居に最後の仕上げを施す12人の職人を見守っている。 咲き誇る山桜の木々に縁取られたこの広大な高台の屋敷からは、西に相模湾が見え、遠くには富士山も見える。ヘイウッドは言う。 「車で入ってきたとき別世界に連れてこられた気分になってもらいたいのです」 東京から50キロほど離れた海沿いの街にある、1200坪ほどの敷地は、交渉と保存の末に勝ちとられたものだ。ヘイウッドが「楠山(しょうざん)」と呼ぶ敷地には、築数百年の木造家屋が3棟、築150年の廃寺、その他の文化財が興味深く混合して建っている。すべて慎重に解体され、もともと建っていた場所から移され、5年かけて再建されたものだ。 それぞ
クーリエ・ジャポンのプレミアム会員になると、「ウォール・ストリート・ジャーナル」のサイトの記事(日・英・中 3言語)もご覧いただけます。詳しくはこちら。 マサチューセッツ州セーレム在住のエデュアルド・タナーさん(37)は昨年、カリフォルニア州サンディエゴを旅行で訪れたとき、午前3時に当時のガールフレンドに起こされた。一風変わったバードウオッチングに出かけるためだ。2人は双眼鏡と図鑑の代わりにスマートフォンを持ち、出発した。外はまだ暗かった。 2人が探していたのは鳥に似た仮想生物「ルチャブル」だ。メキシコ国境近くで目撃されたことがあり、宿泊先のホテルの近くに出現したらしい。 タナーさんは、大人でありながら旅行にスマホゲーム「ポケモンGO」を取り入れる「希少種」の一人だ。ポケモンGOは、ポケモンと呼ばれるかわいいモンスターが現実の世界に重ねて表示される拡張現実(AR)ゲームだ。例えば、丸石で舗
平時における製造システムにせよ、戦時の人や物資の動員にせよ、その成否を決めるのは複雑なサプライチェーン(供給網)をどのようにして機能させるかだ。 だが、この真実は長きにわたり忘れ去られ、過小評価されてきた。 学者や政策立案者らは近年のサプライチェーン危機を機にようやく、これまでほとんど研究されてこなかった「メソ(中間)経済学」に目を向けはじめている。その名前は、ミクロ経済学とマクロ経済学の狭間の領域に着目することに由来する。 中国・韓国経済の成長を読み解く ミクロ経済学は企業、消費者、労働者、投資家といった個々の主体の動きに注目し、マクロ経済学はGDPや国民所得などに代表される集合体の統計を追う。その中間に位置する経済の機能にこれまであまり関心が向けられてこなかった原因のひとつは、(経済問題において)最も効率的な解決策を提供するのは市場だと考える「市場信仰」にあるのかもしれない。
新型コロナウイルスによる規制が中国で撤廃されてから1年半以上が経過したが、中国から海外へ渡航する人の数は、以前の水準には戻っていない。英紙「フィナンシャル・タイムズ」によると、香港でも中国本土からの旅行者数がコロナ以前の水準を大幅に下回っているという。 しかし、香港では中国本土からの訪問者による保険商品の購入がコロナ前の2019年よりも増えている。同地の保険局によると、2024年第1四半期、中国本土の観光客による保険売上高は前年同期比で62.6%増と急増した。156億香港ドル(約3170億円)となり、2019年の同期間を上回った。 それを受け、香港の保険会社の業績は好調である。保険会社AIAでは、香港での新規契約高が43%増加した。プルデンシャル保険も、香港での新契約利益がこの1年で急成長しているという。 その背景にあるのは、中国市場の冷え込みだ。人民元安に加え、中国株は2021年のピーク
6月、ナイキはこのシューズの復刻版の発売を予告し、公式インスタグラムに蜂が群がるウータンクランの写真を投稿した。すると、一部のコレクターからは批判の声があがった。 スニーカー業界に関するニュースレターの著者であるマイク・サイクスは、この件について「同社の悲惨な決算発表と無関係ではないだろう」と指摘する。 「特別なアイテムを一般の消費者に売ることで、ナイキは私たちにへつらっているようにも感じられました。まるで同社のこのところの停滞ぶりを忘れさせようとしているかのようです」 新CEOの経営再建も振るわず 米投資銀行スタイフェル・ファイナンシャルのマネージング・ディレクター、ジム・ダッフィーは「ナイキを変えるためにテック界の重役を登用したのは間違いだったと証明された」と語る。 そのテック界の重役とは、2020年1月からナイキのCEOを務めるジョン・ドナホーのことだ、彼はこれまでイーベイとサービス
米国のヒトラーなどと批判していたが… 「トランプが彼を選んだことは賢明だ」バンス副大統領候補とは何者か? 中西部の工業地帯「ラストベルト」の貧困家庭で育ったバンス上院議員(39)が、トランプ元大統領の副大統領候補に選ばれた Photo by Andrew Harnik/Getty Images
トマ・ピケティ「新しい“眼”で世界を見よう」 道義上の信用性を失っている欧州は、地政学上で弱小勢力になりつつある 2024年の欧州議会選挙で、地政学が争点の一つとして注目されたのに驚きはない。ウクライナとガザでは戦争が続いており、西側陣営と中国・ロシア陣営のあいだの緊張も高まっているからだ。中国・ロシア陣営は、南側諸国への影響力の拡大を狙い、「BRICSプラス」の加盟国も増やす構えだ(BRICSプラスの加盟国はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、エジプト、UAE、エチオピア、イラン)。 一部の人にいわせれば、いま掲げられるべき大義は明確だ。欧州の未来は、軍事色の強いものにしなければならないという。ロシアの脅威にさらされているいま、欧州連合(EU)には、軍事力を強化し、加盟各国の国軍の予算を大幅に増やす選択肢しかないというわけだ。現在、対GDP比で1.5~2%の軍事費を3~4%に増や
トランプ前米大統領は11月の大統領選で返り咲いた場合、数百万人の移民を強制送還し、高額な関税で世界貿易を再編成するとともに、ホワイトハウスを忠実な支持者で固める計画だ。トランプが公約に掲げる政策の一部を確認しよう。 貿易 トランプ氏は全ての輸入品に10%以上の関税をかける案を示している。貿易赤字をなくすためだとしているが、消費者物価の上昇と世界経済の不安定化を招くとの指摘もある。 同氏はまた、米国からの輸入品に関税をかけている国に対して、より高い関税をかける権限を自身が持つべきだとも述べている。一部の輸入車には200%の関税を課すと脅している。 特に標的にしているのは中国で、電子機器、鉄鋼、医薬品など中国からの輸入を4年間で段階的に削減することを提案。中国企業がエネルギーやハイテク分野で米国の不動産やインフラを所有することを禁止しようとしている。
生成AIが瞬く間に身近なものとなり、ネットやSNSでは人工知能によるコンテンツやサービスが爆発的に増えた。AIが作り出したものから逃れることは難しいと言えるだろう。そんななか、人間のクリエイティブを守るために「AIフリー」を掲げる人たちがいるという。 「AIを使わない」宣言 アップルがiPhoneに生成AIを搭載する計画を発表した時点で、それはこう言ったも同然だった──このテクノロジーはもはや避けられないものとなった、と。 大規模言語モデルは間もなく世界中のスマートフォンの大半に搭載され、メッセージングアプリやメールアプリで画像や文章を生成するようになる。AIはすでに検索エンジンのグーグルやビングに使われている。 800億ドル規模の新興企業であるオープンAIは、アップルやマイクロソフトと提携しており、まるで偏在しているかのようだ。同社のChatGPTやDALL-Eが自動生成するプロダクトは
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