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コーヒー沼
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約250年前に江戸幕府公認で設置され、借金に苦しむ女性たちを閉じ込めて性売買が行われてきた吉原遊郭。そうした歴史を「文化」として、絵画等で華々しく紹介する美術展「大吉原展」(主催 : 東京藝術大学、東京新聞、テレビ朝日)が開催前から大きな批判を浴びている。前編では、遊女らを人形のように扱い、男目線で描いた展示に著者が疑問と憤りをぶつけた。 「文化」を支える男たちによって維持され続ける性売買 この「大吉原展」の開催にあたり、学術顧問の田中優子氏(江戸文化研究者、法政大学名誉教授)は記者会見で「吉原はさまざまな芸能や出版を含めた日本文化の集積地、発信地としての性格と、それが売春を基盤としていたという事実の、その両方を同時に理解しなければならない」「そのどちらか一方の理由によって、もう一方の事実が覆い隠されてはならない」「本展覧会は、その両方を直視するための展覧会」などと考えを述べている。しかし
「吉原遊郭」を美化しカルチャー化する内容に批判殺到 先日、東京・上野で開催されていた「大吉原展」(主催 : 東京藝術大学、東京新聞、テレビ朝日)に行き、私は吉原(現在の東京都台東区千束の一角。江戸時代に遊郭が設けられた)に閉じ込められて体を売らざるをえなかった女性たちが、男たちに美しく描かれたり写真に残されたりして、現代においても消費されていることに胸が痛んだ。 吉原遊郭は江戸幕府公認で設置され、約250年にわたり性売買が行われていた。遊女とされた女性たちは借金のカタとして売られ、性を売るしかない状況に追いやられていた。「大吉原展」は、東京藝術大学大学美術館が企画した美術展である。しかしその展示は、そうした搾取や女性に対する暴力の歴史に目を向けるのではなく、吉原を「文化発信の中心地」として美しく語る内容であった。さらには「江戸アメイヂング」「最新のエンタメもここから生まれた!」「イケてる人
現代的なモチーフを積極的に小説に取りこんできた芥川賞作家の上田岳弘さん。新作『K+ICO(ケープラスイコ)』(文藝春秋)ではウーバーイーツの配達員とTikTokerの主人公たちが現代の複雑なシステムに翻弄される様を活写した。 23年、資本と癒着せざるを得ない現代を生きる女性の表現者たちを批評した初の単著『女は見えない』(筑摩書房)を上梓した西村紗知さん。 気鋭の小説家と批評家のふたりが〝いま〟を描く理由とは? YouTuber という生き方の新しさ、松本人志とテレビ文化、「推し活」が流行るなかで「批評」の役割とは……。多岐に渡る現代的なトピックについてお話しいただいた。 西村紗知氏(左)上田岳弘氏(右) YouTuberという不思議な存在に惹かれる 上田 僕は西村さんのデビューのきっかけになった「2021すばるクリティーク賞」のゲスト選考委員をしていました。西村さんのデビュー作「椎名林檎に
TBS系テレビの金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』(主演・阿部サダヲ)が2024年3月、最終回を迎えた。 1975年生まれで来年50歳、脚本を書いたクドカン(宮藤官九郎)の5歳下である私にとって、ツボることばかりのドラマだった。というか、昭和って本当にひどい時代だということに、改めて驚愕した。 なにしろ、体育の授業でも部活でも水を飲むことは禁止。誰かのミスが全員の「連帯責任」とされ、その罰が今や膝などに悪いことで有名な「うさぎ跳び」。本当に何から何まで無法地帯だったわけだが、昭和の元暴力教師はあのドラマをどんな思いで観たのだろう? そんな「昭和の苦痛」を引きずっている人たちは私の周りにも多くいる。 例えば給食で「完食」を命じられ(当時はアレルギーなどという発想すらなかったのだから恐ろしい)、嘔吐したトラウマから会食恐怖症になり、現在も誰かと食事するなどもってのほかという人もいるし、壮絶な
すべての子どもに力をつけさせる公教育の場は、敗者には何も与えられない弱肉強食のプロスポーツの世界ではないのだ。子どもたちと向き合い続けてきた教師としての豊富な実践経験の中から、警鐘を鳴らした久保の言葉には、普遍的な公教育の意義が感じられる。SNSで拡散されたこの提言書の文章については、「支持します」というリツイートが瞬く間に10万件を超えた。 ところが、2021年8月20日、この提言書を問題視した市教委は久保に「文書訓告」処分を科した。「(久保が)独自の意見に基づいて、現場に混乱が起きていると断じて、懸念を生じさせた」とし、地方公務員法「信用失墜行為」に該当するとしたのである。 学校現場に混乱が起きていたのは紛れもない事実である。それを無かったとし、逆に久保が混乱を起こしたとする市教委の方がエビデンスを示していない。 大阪公立大学の辻野けんま准教授は、この久保の提言書と処分について議論する
すごい映画を観た。 それは代島治彦監督『ゲバルトの杜 彼は早稲田で死んだ』(2024年、ノンデライコ配給)。 今から約半世紀前、早稲田大学の文学部キャンパスで20歳の学生が約8時間にわたるリンチの果てに殺されたことを、どれくらいの人が知っているだろう? 私がそれを知ったのは、21年に出版された樋田毅著『彼は早稲田で死んだ 大学構内リンチ殺人事件の永遠』(文藝春秋)によってである。映画は、この書籍と監督との出会いによって生まれたそうだ。 事件が起きたのは1972年11月。この年の2月には、かの有名な「あさま山荘事件」が起きている。連合赤軍の若者たちが人質をとってあさま山荘(長野県軽井沢町)に立てこもり、警察と銃撃戦を繰り広げた事件だ。この模様は連日テレビ中継され視聴率90%という驚愕の数字を叩き出し、また警察官が極寒の中すするカップめんが注目され、カップヌードルが爆売れするなどした。 この事
「桐島聡を名乗る男が末期ガンで入院している」 2024年1月25日、日本中を衝撃的なニュースが駆け抜けた。 桐島聡。東アジア反日武装戦線「さそり」のメンバーとして半世紀近く指名手配されていた男。黒縁メガネに長髪という1970年代スタイルで笑顔を見せる、手配書で唯一の陽キャ。あまりにも見つからないことから、多くの人に海外逃亡もしくは他界と思われていた男。令和に突如蘇りし、「政治の季節」の忘れ物。そんな男が約半世紀の潜伏期間を経て、自ら名乗り出たのである。死を目前にして。 結局、桐島は名乗り出た4日後に逝去。死後、「内田洋」という偽名を使い、神奈川県内の土木会社に約40年つとめていたことなどが明らかになった。また、飲み屋で歌い踊るパリピっぽい生前の映像が出回ったりもした。 名前を変え、保険証も身分を証明するものもなく、おそらく銀行口座なども作れず、この半世紀、どう過ごしてきたのだろう。まるで映
警視庁長官の視察報道に感じた疑問と怒り 2023年11月、歌舞伎町(東京都新宿区)のホストクラブが集中するエリアを警察庁長官が視察し、その様子がメディアで大きく報じられた。少女や成人女性たちを性売買に追いやって、とことん食い物にする男たちが牛耳る夜の街――そこへ行政・警察組織上層部の男たちがぞろぞろとやってきて、睨みをきかせる様子が映し出されていた。しかしその実、少女や女性に対する被害は置き去りにされ、単に男社会の権力構図をPR的に見せられたように感じたのは私だけだろうか? 朝日新聞の記事によると23年春、歌舞伎町のホストクラブに勤める男が客の20代女性に「立ちんぼで稼いだら店でも会えるし借金返済もできる」などとそそのかし、新宿区立大久保公園近くで売春の客待ちをさせた疑いで逮捕された。その女性は、男の勤める店に常に20万円ほどの売掛金(ツケ)があったという。記事では「女性に借金を負わせ、売
BUCK−TICK・あっちゃん、X JAPAN・HEATHの死から我がバンギャ人生と90年代を振り返る 2023年10月24日、BUCK−TICKのボーカル・櫻井敦司氏(愛称・あっちゃん)の急死が報じられた。享年57。 あっちゃんの死。それは現在48歳バンギャの私にとって、とてつもなく大きなものだった。 まずここで断っておきたいのは、私はBUCK−TICKは好きだったものの、一筋ではなかったということ。これはBUCK−TICKファンの方々に失礼にならないようにまず言っておきたい。 が、昨年、約30年ぶりにコンサートに行っていた。同世代でヴィジュアル系好きの友人(時々最近のV系ライヴにともに参戦する仲。BUCK−TICKファン歴あり)と、「我々は一度この辺で原点に戻るべきでは?」ということになり、馳せ参じたのだ。 約30年ぶりに生で観たあっちゃんは5億倍くらい「魔王」感が増していて、「我らの
国連が「ジャニーズ問題」に言及した──。2023年8月4日、国連人権理事会「ビジネスと人権」作業部会が訪日調査を終えて東京で開いた記者会見は、国内ではおおむねそんなふうに報道された。作業部会が出した声明に、ジャニーズ事務所における性加害問題について、日本政府に調査や被害者救済への取り組みを求める内容が含まれていたからだ。しかし、それは声明のほんの一部分。実際には女性や障害者、先住民族や LGBTQなど、幅広い分野における人権状況の改善を、強く提言する内容だった。 国連ビジネスと人権の作業部会 訪日調査ミッション終了の記者会見(2023年8月4日 東京にて) 日本政府は今回も、国連の提言には「法的拘束力がない」から従う義務はないとしているが、本当にそうなのだろうか。そもそも、なぜ国連が各国の人権問題に対して意見を述べるのか、他国は国連からの提言に対してどのような対応を取っているのか。国連特別
キム・ドンリョン監督が語る韓国ドキュメンタリー映画界の闇と光(前編)~ヤンヨンヒ作品の剽窃事件から見えてくる「386世代」の政治と映画の関係 20年前の剽窃問題 最新作『スープとイデオロギー』は2023年毎日映画コンクールでドキュメンタリー映画賞を受賞。現在も『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』『かぞくのくに』など過去作品とあわせた特集上映が各地の劇場で続いているが、その作り手、ヤンヨンヒ監督を長きにわたって苦しめてきた事件がある。 ヤンヨンヒ監督 韓国映画界で起きた前代未聞の不祥事をまず時系列で記す。それは1998年に起きた。当時、ニューヨークに留学中であったヤンヨンヒ監督は、韓国在住のホン・ヒョンスク監督の作品『本名宣言』が釜山国際映画祭でウンパ賞(最優秀ドキュメンタリー賞)を受賞したことを報道で知る。ヤンはこのホンの日本での撮影に協力し、市立尼崎高校の故・藤原史郎教諭の通訳などを請わ
ロシアのウクライナ侵攻により、「核戦争」や「原発へのミサイル攻撃」が徐々に現実味を帯びはじめています。いざ緊急事態となれば、私たちも放射性物質に対処しなければならなくなるでしょう。 日本では、2011年の福島第一原発事故後に広く知られるようになった放射線の「被曝線量」や「避難指示基準」は、ICRP(国際放射線防護委員会)という組織の勧告に沿って定められています。しかし、日本の行政にそれほどの影響を与えているICRPは、IAEA(国際原子力機関)のような国連関係の国際組織ではありません。いったいどのような団体で、何を目的としているのか……? 原発事故後の福島を注視し続けるジャーナリストの黒川祥子さんが明らかにします。 福島第一原発事故後の除染作業(福島県伊達郡川俣町山木屋地区、2014年) 事故後の福島で聞いた耳慣れない言葉、「放射能防護」 「放射線防護」という言葉を初めて聞いたのは2012
朝鮮学校を高校授業料無償化の対象からはずした国の判断の是非を問う裁判で、2018年9月27日、大阪高等裁判所は「無償化の対象とするように」と国に命じた前年7月の一審判決を覆した。 高校授業料無償化の動きそのものは広がっており、現在は国公立だけではなく、私立高校や、さらには学校教育基本法の第1条で定められた学校に相当しない、「各種学校」「団体」扱いの高校でも就学支援金が支給されるようになっている。各種学校もしくは団体扱いで支援金が支給されている高校の一覧は文部科学省のサイト(「高等学校等就学支援金制度の対象として指定した外国人学校等の一覧」。外部サイトに接続します)に載っているが、多くはブラジル、韓国、フランスなどの外国人学校である。 この高校授業料無償化は、民主党政権だった2010年4月から導入され、当初は朝鮮学校もその対象となっていた。しかし自民・公明連立政権に交代後、12年12月、当時
ビジネス成功のために必要な知識を身に着ける「教養」がいま必要だ――。 このような文言を目にしたことはないだろうか? しかし、その「教養」の中身を見ると、短時間でざっくり学べる名著の解説、インフルエンサーによる自己啓発セミナーなど……。 はたして、これらから学ぶことが本当に「教養」と言えるのか? かつて「歴史小説」を読むことが、大衆にとっての「教養」となっていた時代があった。そんな時代を代表し、2023年の今年、生誕100年を迎える小説家・司馬遼太郎について社会学者の福間良明さんにご寄稿いただいた。 「余談」の教養 戦後の国民作家と言えば、真っ先に思い起こされるのが司馬遼太郎だろう。日露戦争を扱った『坂の上の雲』の累計発行部数は1970万部、坂本竜馬と幕末期を描いた『竜馬がゆく』に至っては2500万部にものぼる。ちなみに、今年(2023年)は司馬遼太郎生誕100年にあたり、3年後の2026年
まず、全世代型社会保障では、1)子ども・子育て支援、2)働きかたに中立的な社会保障、3)医療・介護の制度改革という3本の大きな柱が立てられている。政策のリストは広範にわたる。だが、令和5年度(2023年度)の改正で、現実に具体的な制度改革に結びついたのは、出産育児一時金の増額やかかりつけ医の法制化支援など、ごく一部だ。 むしろ議論の焦点は、現役世代の受益を大胆に拡大することよりも、高齢者の負担を増大させ、現役世代の不満を和らげることにあった。事実、介護サービスの利用時負担の引きあげ、国民年金の保険料納付期間の延長、75歳以上の後期高齢者医療の保険料の引きあげ等、財源問題は陰に陽に議論の俎上に載せられた。 統一地方選挙前という事情もあって、実現したのは、後期高齢者医療の保険料引きあげだけだった。乏しい財源を高齢者に求め、出産を控えた世帯に現金を配る、現役世代の保険料負担を軽減するというこぢん
「論破王」でおなじみのひろゆき氏が人気だ。 言わずと知れた掲示板サイト「2ちゃんねる」(現在の「5ちゃんねる」)創設者。ユーチューバーとして活躍するだけでなく多くのメディアにも登場し、書店には彼の本が並ぶ。そんなひろゆき氏が新基地建設に反対する沖縄県・辺野古で座り込む人々をTwitterで揶揄すれば28万の「いいね」がつき、いくつもの裁判の賠償金を踏み倒しているというのに社会的な地位は揺るがない。しかもベネッセホールディングスが発表した昨年(2022年)の「小学生の流行語ランキング」1位は「それってあなたの感想ですよね」。ひろゆき氏の言動を真似る子どもは「ひろゆキッズ」と呼ばれるなど、幼い世代にまで支持されている。 そんなひろゆき氏は1976年生まれの46歳。同世代のロスジェネで、私の方がひとつ年上だ。 「ひろゆき氏について、どう思いますか?」 辺野古ツイート以降、そんなことをよく聞かれる
村上春樹の6年ぶりの長編小説『街とその不確かな壁』(新潮社)を読んで、こんなことを感じた。これは極私的な弔いのような小説なのだろう。私たちは、たとえうまくセルフケアできず自己愛を持てない時でも、自分で自分を弔いうる。そしてもう若くなく、病んだり傷んだりした心と体でも、新しい生活へと軟着陸していける。村上春樹はあるいは、国民作家や世界作家という重荷を降ろして、〝かけがえのない、大したことのない私(田中美津)〟として、この小説を書いたのかもしれない。それはささやかであるにせよ、とても大切な仕事ではなかったか。それなら、作中の単角獣の頭蓋骨の中に眠る夢を読むように、私たち読者が『街とその不確かな壁』を読むとは、どういうことか。 ⁂ まず基本的な事実を確認しておく。巻末に珍しく付された「あとがき」によれば、『街とその不確かな壁』は、文芸誌「文學界」1980年9月号に掲載された「街と、その不確かな壁
カタクリ子さんのガーナ人の夫は、2017年の5月、面接の呼び出しがあって品川入管に行った際、突然、収容された。そのときのことをカタクリ子さんはまざまざとおぼえていた。 「収容された日、私も一緒に行ったんですね。毎回不安だから、仕事を休んでついて行くんです。でも、お昼前に面接に入ったのに5時間待っても全然出てこなくて。『え、どういうこと?』と思って。結局、閉館時間になって、『蛍の光』みたいな音楽が流れてきて。そこで電話がかかってきたんですよ、私の携帯に。それで『収容しました』って言うんですよ。『えっ? いや、私、今日ここでずーっと待ってたんですけど。夫はそれ言いましたよね』って言っても、『収容したんで』としか言わない。ちゃんと答えないし、何も説明がないんですよ」 「絶対そこで夫は、『いや、妻がそこで待ってるから、話をさせてくれ』とか、『妻がそこにいるから、伝えてくれ』とか言ったはずなんですよ
2023年3月7日、出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正案が閣議決定され、国会に提出された。この改正案は、国外退去を命じられた外国人の長期収容問題の解消を目的とすると謳われているが、内実は追い出しに拍車をかけたものであり、一昨年、国内外の強い批判の声もあり廃案となっていたものだ。その法案をほぼ踏襲した改正案が再び提出された。 一昨年の改正案から入管の問題を見つめ続けてきた小説家の木村友祐氏が、入管法に翻弄される当事者の実相に迫った。【全3回】 一昨年、多くの批判の声に廃案となった入管法改定案(内容が「改正」になっていないので「改定」と書く)が、問題部分を改善することなく再び国会に提出された。入管は(法務省は)、在留資格がないのなら事情にかかわりなく排除するという非情な姿勢は頑なに堅持するつもりのようだ。 しかし、この改定案が通って苦しみを味わうのは在留資格のない外国人ばかりではない。日
2020年代以降、自ら差別的動機を主張する犯罪が立て続けに起きた。いずれも実行犯は20代で、ヘイトデモの多くを主催していた在特会(在日特権を許さない市民の会)や周辺関係者との繋がりはない、いわば「出自のわからない」人物だった。彼らを生み出した背景は、何だったのか。 ネットに突き動かされて、ヘイトクライムに走る 2021年8月30日、京都府宇治市ウトロ地区で、放火事件が起きた。当時22歳だった無職男性が実行犯で、同年7月には愛知県名古屋市の在日本大韓民国民団関連施設にも放火している。 2022年5月から6月にかけておこなわれた公判の場で、彼はヘイトデモなどには一切の参加経験がないこと、インターネットで1週間程度情報収集をした結果、「ウトロ地区に住む在日コリアンは不法占拠である」という思い込みを募らせ、「放火を通じてその地区の存在を世間に知ってもらう。ウトロ平和祈念館の開館を阻止する」目的で火
新安保3文書――「NATO並み」の防衛費を目指して 岸田政権は2022年12月16日、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」(新安保3文書)を閣議決定した。国家安全保障戦略には、2027年度には、防衛費とそれを補完する経費を合わせて国内総生産(GDP)比2%へと増額する方針が明記された。今後5年間で、防衛費の総額は43兆円となり、17兆円ほどの増加となる。 「GDP比2%」という目標値は、NATO(北大西洋条約機構)諸国の防衛費との関連から出てきた数値だ。ロシアがクリミア半島を併合した2014年、NATOは防衛投資誓約(Defense Investment Pledge)を策定し、2024年までに防衛費を「GDP比2%」にする目標値を設定した。もっとも2022年時点でGDP比2%を達成していたのは、30か国中9か国のみであった。 こうした状況を変えたのが、ロシアによるウクラ
2022年ごろから、誰でも気軽に使える「画像生成AI」が話題になっている。スマートフォンやパソコンで画像生成AIを搭載したアプリやソフトを立ち上げて、例えば何か言葉を入力すると、絵を生み出してくれるのだ。絵が苦手な人でも、「くま」「イラスト」「かわいい」とリクエストすれば、かわいいくまの絵を生み出せる。しかし、こうして半ば自動で出力されてくる絵は、いったい「誰のもの」なのだろう? AIの作品? それとも「私」の作品? 著作権などに詳しい福井健策弁護士にうかがった。 福井健策弁護士 「画像生成AI」とは? いわゆる「ジェネレーティブAI」(生成系AI)のひとつです。生成系AIは、機械学習の成果をもとに、簡単な指示を出すことで文章や音楽、画像などを生成する人工知能(AI)のこと。有名なものでは、1980年代からカリフォルニア大学の教授がバッハ風の音楽を生成するために開発しはじめた「エミー」や、
女性の月経に比べ、学校で学ぶ機会が少ない「男子の性」は、大人になってもちゃんとした知識が身についているとは限らない。「特に今の時代は、自然に性を学ぶのが難しい」と警鐘を鳴らすのが、泌尿器科医で聖隷浜松病院リプロダクションセンター長の今井伸医師だ。正しい知識がないまま「床オナ」など不適切なマスターベーション(オナニー)の癖がついてしまうと、将来の射精障害や男性不妊にもつながりかねないという。「テクノブレイク(過度なマスターベーションで死に至る現象を指すネットスラング)はあるのか」「精液が汚くて嫌」など、悶々と悩む男子に伝えたい「射精の心得」とは何か。自ら考案した「射精道」で正しい性知識の普及に取り組む今井医師にうかがった。 今井伸医師(聖隷浜松病院リプロダクションセンター長) 深刻な不妊症カップルに足りなかったもの 性教育というと、産婦人科の医師や助産師が行うことが多いと思いますが、私は泌尿
「英語がうまく話せない」という英語コンプレックスは、おそらく多くの日本人が持っているだろう。「日本の英語教育は文法重視、だから英語が話せない」とも言われるが、実は1980年代後半から日本の英語教育は会話を中心とする「コミュニケーション重視」に舵を切り、2000年代初めからは公立小学校での英語教育も進められてきた。しかし、学校で英会話を学んできた若者たちが「英語が話せる」ようになっているかというと、逆に英語力が落ちているという指摘もある。現在の日本の英語教育の何が問題なのか、「英語が話せる」ようになるにはどうすればいいのか、そしてなぜ私たちは「英語が話せる」ようになりたいのか……英語教育の専門家として提言を続けてきた鳥飼玖美子・立教大学名誉教授にうかがった。 鳥飼玖美子・立教大学名誉教授 「ペラペラ英語」と「使える英語」は何が違うのか ――2022年11月、東京都は都内の全公立中学3年生を対
10代の女の子たちと沖縄へ合宿に 先月、Colabo(コラボ)のシェアハウスで暮らす10代の女の子たちと、沖縄県へ合宿に行った。Colaboでは年に数回、さまざまな合宿を開催している。Colaboとつながる多くの少女たちが経験せずにきた修学旅行や家族旅行のようでもある。 2年ぶりに開催した沖縄合宿では、初日にひめゆり平和祈念資料館に行き、彼女たちと同世代の生徒たちが、どのようにして戦地に行くことになり、どのような経験をしたのかを学んだ。2日目は、米軍基地の新設問題を抱える辺野古へ。行きの車の中で、案内してくださったノンフィクションライターの渡瀬夏彦さんに、辺野古基地新設の問題について話を聞いた。 政府が、住宅街にあり世界一危険だと言われる普天間基地を移設するためとして、辺野古に新たな基地を作ろうとしていること。しかし、辺野古でなくてはならない理由が明確でないこと。地元住民や、沖縄県民はこれ
しかし、そもそも、将来にわたって取り返しのつかない重大な被害が発生する恐れがあること、生殖機能の保護が必要なことをなぜ契約に含まれるものと認めるのか。 「心身及び私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害が生ずるおそれがある」こと、また、現に生じていることを認めるのであれば、その原因となるAVの制作をさせないことが必要なのではないか。そうでなければ被害を防ぐことはできない。契約方法や制作行為に対する規制が足りないから被害が起きているのではないし、法案にある通り「相談体制」を整備したとしても、被害者が相談するのは被害に遭った後であり、この法案では被害の拡大を防ぐことも不可能だ。 さらに罰則規定として、説明書面や契約書等を交付せず、虚偽の書面を交付した場合は処罰の対象になると書かれている。これはまさにAV業者が現在も行っている「自主規制」を参考にしたものだ。AV業者は契約の際に脅しや強
なぜ少女が主人公になったのか? 現在と未来の「日本(人)」の全体に「大丈夫」と告げ知らせるためには、民衆的な神道や天皇(制)の力が必要であり、何より女性たちの力が必要である――。『すずめの戸締まり』は、そのようなアニメーション映画であると感じられた。 『すずめの戸締まり』の中核にある主題は、2011年の東日本大震災である。主人公である少女・岩戸鈴芽と「閉じ師」のイケメン大学生・宗像草太は、ロードムービー的な冒険を通して、日本各地の被災や荒廃を経験しながら、忘れられつつある東日本大震災の経験に再び対峙する。そして「日本(人)」に祝福の光を与えようとする。 人がいなくなってしまった場所には「後ろ戸」と呼ばれる扉が開くことがある。扉の中には死者の世界、「常世(とこよ)」がある。後ろ戸からは現世に災いが出てくる。それは「ミミズ」と呼ばれ、日本列島の下を蠢(うごめ)く巨大な力である。ミミズが引き起こ
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