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衆院選
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ホーム 家なき人のとなりで見る社会 第43回:ツッコミどころが満載すぎる桐生市 一日千円、桐生市・生活保護費違法支給訴訟を傍聴して(小林美穂子) 2024年10月4日、前夜から降り続いた雨がようやく止んだ金曜日の朝、私は前橋地方裁判所に向かっていた。群馬県桐生市で生活保護を利用している男性2名が、市に一人あたり27万5千円の賠償を求める国家賠償請求訴訟を起こした。その2度目の口頭弁論が開かれる。 持病が悪化して働けなくなり、生活保護を申請した原告たち。要件を満たしているので当然保護は開始されたが、同時にハローワークで毎日求職活動をするように指導された。不自由な体で毎日ハローワークへ通い、求職活動をした証明を福祉課の窓口で見せると、一日千円だけ支給された。生活保護制度を利用しているにもかかわらず、法で定められた保護費満額を月内に渡されることはなかった。 非常に注目を浴びた本ケース、初回口頭弁
衆院選真っ只中である。 テレビやネットメディアでは党首討論などが放映され、各政党が政策や主張を展開。普段からこれくらいやってほしいものだと思いつつ見ているが、そんな中、思わず「お前が言うか?」と叫びそうになったことがあった。 それは公示直前、10月14日の報道ステーションでの党首討論。主要政党の党首によって討論が繰り広げられたのだが、その際、石破首相は「昔の日本人はもっと思いやりがあった」などと述べたのだ。 それを耳にした瞬間、私の頭にカーン! とゴングの音が鳴り響いた。 昔の日本人は思いやりがあっただと? その思いやりを積極的に奪うような政治をしてきた存在こそが自民党ではないのか? 血管が切れそうになりながら、叫び出したい気持ちを必死でこらえた。 貧困問題をメインテーマにして18年。私はこの「失われた30年」を、「金に余裕がなくなると心にも余裕がなくなる」を証明してきた30年だと思ってい
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第694回:唐沢俊一氏の訃報に、サブカルと孤独死とヘイトと「受援力」などについて考えた。の巻(雨宮処凛) 9月末、唐沢俊一氏が亡くなったことが報じられた。享年66。 2000年代に放送されたバラエティー番組「トリビアの泉」のスーパーバイザーをつとめ、「トンデモ本」などを品評する「と学会」などの仕事で注目された「雑学王」。 90年代にサブカル女だった私にとっては代表的な「サブカル文化人」だったが、特に追ってはいなかった。「鬼畜系」にどっぷりハマっていた私にとっては馴染みの薄い存在だったのだ。 が、「トンデモ本」などを品評する際の冷笑・嘲笑的なスタンスには大いに影響を受けたと今になって思う。そしてそんなスタンスは、現在この国に蔓延する「冷笑系」にも通じるものなのではないかと思ったりする。 そんな唐沢氏の死を告げる言葉の中には、訃報にふさわしくないものが散見された。 例
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第693回:袴田さんの無罪に思う〜私がこれまで出会った冤罪被害者の服役期間、合計で125年〜の巻(雨宮処凛) 「袴田巌さん、再審で無罪」 ニュース速報で流れたその文字に、思わず「おおお!」と言いながら立ち上がっていた。身体中から熱いものが溢れ出しそうな、そんな気持ちに包まれた。そして「よかった……」と口にしたものの、失われた時間のあまりの長さに次の言葉が見つからなかった。 今から58年前の1966年に起きた一家4人の殺人事件で逮捕され、48年を獄中で過ごした袴田巌さん。 2014年には「拘置をこれ以上継続することは、堪え難いほど正義に反する状況にあると言わざるを得ない」(静岡地裁の裁判長の言葉)と釈放されるものの、30歳で逮捕された袴田さんはその時点ですでに70代。48年間に及ぶ獄中生活のうち33年間、死刑執行に怯える日々を過ごした袴田さんは、いつからか自分の世界
ホーム 家なき人のとなりで見る社会 第42回:あなたの町は何色? 市民の手で福祉行政を修復するために。正しい生活保護率増減マップの歩き方(小林美穂子) 9月17日、生活保護の現場職員(現/元ケースワーカー含む)や研究者らで作られる有志の市民団体「生活保護情報グループ」が2012年~2021年までの生活保護率増減マップ(簡易版はこちら)をネット上で公表した。 国内970地域を対象にしたマップは、過去10年間の各自治体の保護率(※)の推移を示したもので、2012年度と比べた2021年度時点の増減率で色分けをしている。 10%以上減少している自治体は赤色表示となり、40%以上の減少率になると赤色が最も濃くなる。逆に保護率が増加傾向にある自治体は緑色の濃淡で表わされる仕組みだ。 たとえば生活保護問題で有名になった群馬県桐生市を例として見ると、真っ赤である。もともと「一日1000円窓口支給」の一件か
2023年12月、群馬県桐生市在住のNさん(48歳)の呂律が回らなくなり、嘔吐が続いた。胃薬で紛らせようとしたが吐き気はおさまらず、異常を感じて救急車を呼んだ。脳梗塞と診断され、治療、リハビリを経て今年2月末に退院した。 入院中にソーシャルワーカーの働きかけで生活保護を利用することになった。同じ屋根の下で暮らす身体障害2級の実兄と、そしてNさんの退院と入れ替わるように家を出てグループホームに入所した異母兄、計3人で同一世帯と認定されての生活保護利用だった。 暴力的な父と2人の母と Nさんの家庭環境は複雑だった。 母親は内縁の妻で、子どもはNさんと兄の2人。Nさん家族が住む同じ家には本妻とその3人の子も暮らしており、計8人の大所帯だった。 父親は頻繁に暴力を振るった。その暴力は壮絶で、Nさんと兄は首を絞められたり、硬い灰皿で殴られたりして入院したこともある。兄が障害を負ったのは父親の暴力が元
「(前略)だまされたかわいそうな人間として扱われると腹が立つものです。私自身、取材がてら出演作品の販売停止の手続きを進めようとしましたが、支援団体から『かわいそうな人』との扱いをされ、しんどくなって途中でやめてしまった」 この言葉は、9月4日の朝日新聞夕刊「オトナの保健室」に掲載された峰なゆかさんへのインタビューのものである。「元女優が見たAV業界」のタイトル通り、峰さんは元AV女優で漫画家。作品には『AV女優ちゃん』などがあり、自伝的要素を含むという本書では2000年代のAV業界を描いているという。AV出演強要問題についても取り上げられているらしい。 「強要を訴えた女性を、複数の女優が攻撃する心理について、『かわいそうな人間だと思われたくないから』と評しました」とインタビュアーに答えて彼女は言う。 「実際、複数の女優が『強要なんてない』と発言していました」 それに続くのが、冒頭の言葉であ
8月14日、岸田首相が次の自民党総裁選に出ないことを表明した。これによって現在、秋の総裁選に誰が出るのか、時期総裁は誰かに注目が集まっている。そんな中、若手のホープ的に注目を集めている小林鷹之氏の演説をテレビで見かけた。小林氏と…
日本初の女性弁護士のひとりをモデルにしたNHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』が話題です。劇中では日本国憲法の条文が何度も読み上げられ、改めて聞き入って涙したという声も。では、そもそも憲法とは私たちにとって、どんな意味を持つものなのでしょうか。大の『虎に翼』ファンで、SNSを通じて憲法についても発信を続けている弁護士の國本依伸さんにお話を伺いました。 立法者に縛りをかけることが、憲法の重要な役割 ──『虎に翼』をきっかけに、改めて今「日本国憲法」が注目されています。ドラマの中では主人公が戦後、新憲法と出会うことで生きる気力を取り戻す場面などが描かれましたが、現代を生きる私たちにとって、憲法とはどんな意味を持つものなのでしょうか。その機能や役割についてまずお考えをお聞かせください。 國本 僕は、もっとも重要な憲法の機能は「立法者を縛る」ことだと思っています。 何のこと? と思った人にぜひ見てほし
なんとも驚く結果だった。 それは東京都知事選。 午後8時ジャストに小池百合子氏が当確。のみならず、蓋を開けてみれば蓮舫氏を40万票近く上回り、石丸伸二氏が二位となっていたという逆転劇。 このことに、多くの人がショックを隠せないでいる。私もただただ驚いた。石丸氏に関してはまったくのノーマーク、まさか蓮舫氏以上の票を得るなど想像もしていなかった。 しかし、思い返せばその予兆は十分あったのだ。 たとえば都知事選が始まってすぐの頃。 普段全く政治について発信などしない若い有名アーティストなどが、SNSで石丸氏への支持を表明するという光景を幾度か見かけ、驚いていた。 え、もしかしてこの人、政治に無関心な若者の票をすごい勢いで掘り起こしてて、これまで選挙に行かない層に響いてる? そう思うことは何度かあった。 一方、街頭での熱気を感じる出来事もあった。選挙期間中、たまたま石丸氏の街宣の直前の様子を見かけ
「その人」の名前を私は知らない。遠い親戚だと両親から聞いていた。 私が小学生の頃、その人は2度、我が家にやってきた。 その人がやってくると、父は私と弟を寝室に引っ込めた。母は台所でつまみを作り続け、父がその人の相手をしていた。夜遅くまでちゃぶ台を挟んで飲み食いすると、必ずその夜は泊っていった。別室で眠りに落ちた私の記憶に、陽気な笑い声と、闊達な喋り声が残像のようにかすかに残っている。 白い浴衣姿の痩せた男として記憶されたその人は、間もなくして我が家ではタブーとなった。墓地で首を吊ったのだ。 「誰にも言うな。そんな親戚がいると人様に知られたら、お前たちは結婚できなくなる」 父は硬く怒ったような顔をして、小学生だった私たちきょうだいの口を封じた。 存在を消される人たち もともと遠い親戚なので、その人を知る人たちと私が出会うこともなかったし、家でもタブーとされているので、親とも話をすることは憚ら
都知事選の投開票日まであと2週間を切った。 立候補しているのは、過去最多の56人。 そんな都知事選告示の少し前、東京都の合計特殊出生率は、この8年で1.24から0.99まで下がったことが報じられた。 また6月20日には、1975年生まれで子どものいない女性が日本では28.3%とOECD加盟国では最多だったことが報じられた。各国の出生動向などを分析したOECDのリポートで明らかになったという。 ちなみに私はその28.3%に思い切り含まれる、「1975年生まれの子どものいない女性」だ。 都知事選を見ていると、多くの候補者が少子化や子育て支援を打ち出している。 小池都知事が掲げるのは「無痛分娩」。以前から「卵子の凍結」費用の助成にも取り組んでいると胸を張るが、「いや、そういうことじゃなくて、そもそもその手前の対策が必要では?」というのが実感だ。子育てに前向きになれるくらいの雇用の安定とか、収入が
7月7日に投開票の東京都知事選に、蓮舫氏が立候補を表明した。 表明の5日後に蓮舫氏が訪れたのは、東京都庁の下で毎週土曜日に開催されている食品配布だった。 この連載でもよく触れている食品配布。コロナ前は近隣の野宿男性50〜60人が並んでいたのだが、コロナ禍で並ぶ人はどんどん増加。そこに物価高騰も重なり、今年の5月24日には過去最多の800人が並ぶなど、この国の困窮を象徴する場となっている。行列には子どもを連れた女性や若者など、コロナ前には決して見かけなかった層も目立つ。蓮舫氏が訪れた6月1日には、実に773人が並んだという。 Twitter(現X)に表示された、「もやい」の大西連氏に話を聞く蓮舫氏の姿を見て、久々にほっと一息つきたくなるような安堵感に包まれた。そんな気持ちになって、自分自身がこの数年間、いろんな感情を押し殺していたことに初めて気づいた。 どんな感情かと言えば、「どうせ小池都政
5月24日、早朝4時半に私は起きた。重い身体に鞭打って身支度を整え、朝ごはんをむりやりお腹に詰め込み、ベーグルの形に丸まって寝ている猫に顔を埋めてエネルギーチャージして家を出た。「第2回桐生市生活保護業務の適正化に関する第三者委員会」を取材するために一路、群馬県桐生市へ。 ザクッとこれまでの経緯 昨年11月、桐生市で生活保護を利用していた男性が、ハローワークで求職活動をした証明とひきかえに、毎日窓口で一日1000円だけ渡されていたことが報道各社から報じられた。 嫌がらせとしか思えない過度な就労指導、最低生活費を大きく下回る分割支給、そして月単位にしても保護費を半額程度しか支給されなかった男性2人はその後、提訴に踏み切った。 同時期、生活保護決定後も保護費の支給が遅れに遅れただけにとどまらず、預けた覚えのないハンコを勝手に受領簿に押された利用者がいたことが報道された。その後の記者会見で、保護
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第674回:独自の謎ルールが進化している桐生市を突撃! 〜桐生市生活保護違法事件全国調査団」として群馬に行ってきた〜の巻(雨宮処凛) なぜ、これほどまでに独自の謎ルールが進化していったのか一一。 滞在中、何度もそんな疑問が頭に浮かんでは消えた。そうして新事実が明らかになればなるほど、目の前が暗くなっていった。 そんな経験をしたのは、先週訪れた群馬県桐生市でのこと。 4月4日から5日にかけて、「桐生市生活保護違法事件全国調査団」が同市を訪れ、現地での相談会をはじめ、県庁や市への要望書提出、また集会を開催したのだ。私はこの調査団の一員であり、呼びかけ人の一人でもある。 群馬県の桐生市で、生活保護を巡っておかしなことが起きている一一。 このことを、どれくらいの人が知っているだろう? 事の発端は、昨年11月の報道。桐生市で生活保護を利用している男性が、一日1000円など「
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第668回:「貧乏に苦しむか/貧乏を楽しむかしか選択肢がないことがおかしい」問題に、遂にひとつの回答がもたらされる。の巻(雨宮処凛) 2月1日、安倍派「5人衆」を刑事告発する記者会見に参加したことは666回の原稿で書いた。 裏金問題で大物議員たちが事情聴取を受けながらも、なぜか不起訴となり捜査は終結。このままうやむやになりそうなのはおかしいとなされた告発だ。 ちなみに毎日新聞が2月17、8日に実施した調査によると、問題の議員を国税庁が調査すべきと答えた人は回答者の93%。確定申告の時期、「庶民には増税、政治家は脱税?」と怒りの声が高まっている。 そんな状況を受け、岸田内閣の支持率も爆下がりしている。やはり毎日新聞の調査によると、内閣支持率は過去最低の14%。また不支持率は驚異の82%となったのだった。 さて、そんな刑事告発の記者会見に参加してふと思ったことがある。
この時期、フリーランスは確定申告で大変だ。 面倒な作業をしていたところ、テレビで「ニセコのラーメンが3800円」というのをやっていた。海外の観光客人気で、ニセコのホテルやレストランの時給も2000円近くに上がっているという。 3800円のラーメン。一生食べることなどないだろうな……と思いつつ、ふと気づいたことがある。 今年で物書きになって24年。ありがたいことに書くことで食べてきたわけだが、四半世紀やっても対価は全然上がっていないということに。 いや、それどころか、2000年にデビューしてからこの24年、原稿料をはじめとする対価はずーっと下がり続けているではないか。少なくとも、私にとってはそうだ。 出版不況と言われて久しいことが大きいだろう。雑誌が次々と廃刊になったり、本が売れなくなったり、またネットの普及でタダで読めるものが増えたりと理由はいくつもあるが、とにかく、私の労働対価は事実とし
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第665回:病気になろうが仕事がなくなろうが一文無しになろうが世の中すべてを敵に回そうが、ビクともしないだけの「死なないノウハウ」、収集しました。の巻(雨宮処凛) 雨宮処凛がゆく!
1月1日に能登半島地震が起きた際、日本海沿岸にある原発への影響を心配した人は多かったのではないでしょうか。実際、この地震によって能登半島の志賀(しか)原発にはいくつものトラブルが起きていました。志賀原発の状況、そして事故の際の避難の難しさなどから、あらためて浮かび上がる原発再稼働の危険性について、NPO法人原子力資料情報室事務局長の松久保肇さんにご寄稿をいただきました。 2024年1月1日16時10分、能登半島の北東端、石川県珠洲市を震源とするマグニチュード(M)7.6(震源深さ16km)の地震が発生しました。最大震度7を計測する激しい揺れや、4mを超えるとみられる津波が能登半島の北岸などに到達し、きわめて大きな被害をもたらしています。今回の震災で亡くなられた方々に哀悼の意を表しますとともに、大切な方をなくされたご遺族と被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。 今回の地震で観測された
昨年(2023年)末、京都地裁で元医師の男に懲役2年6ヶ月の判決が下された。 男が問われていた罪は嘱託殺人罪など。19年、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の女性に薬物を注入して殺害した罪で逮捕されていた。亡くなった女性は生前、SNSに安楽死を望む書き込みをしていたことが確認されている。俗に言う「ALS嘱託殺人事件」だ。 安楽死。この言葉からあなたが思い浮かべるのはどんなものだろう。 「堪え難いほどの苦痛があるなら安楽死したい」など、痛みや苦痛からの救済・解放といったポジティブなイメージで捉えている人も多いかもしれない。私もかつてはそうだった。だからこそ、「安楽死反対」なんて声を聞くと随分と残酷な言い分に聞こえたものだ。 が、今は違う。世界的に安楽死合法化が広がる過程で、それは凄まじい変質を遂げ、今や医療費削減だけでなく、臓器提供の問題とも密接に絡んでいる。その人に「生産性」があるか否かで時に命
昨年12月、福岡高裁那覇支部は、沖縄県名護市辺野古での米軍新基地建設をめぐって、国が県に代わって埋め立ての設計変更を承認する「代執行」を認める判断を出しました。県内からは強い反対の声があがり、軟弱地盤など数々の問題点も指摘されている中での、国の主張を全面的に認める判断。裁判所の傍聴席でそれを聞きながら、強い憤りを感じたというジャーナリストの布施祐仁さんに寄稿いただきました。 開廷すると、三浦隆志裁判長がすぐさま判決の主文を読み上げた。 「被告は(中略)3日以内に承認せよ」 沖縄県の敗訴であった。その瞬間、傍聴席の市民から「不当判決だよ!」と怒号が飛んだ。三浦裁判長はヤジを無視するかのように間を置くことなく判決の骨子を読み上げ、5分足らずで閉廷した。 この日、裁判所にあったのは法でも正義でもなく、「国家による問答無用の暴力」以外の何物でもなかった。 判決後、報道陣に「不当判決」と記した紙を掲
昨年、「総裁としての今任期中に改憲を目指す」と宣言した岸田首相。2022年末には敵基地攻撃能力(反撃能力)保有を認める「安保関連三文書」が閣議決定、憲法審査会では緊急事態条項についての議論が続けられるなど、なし崩しに改憲への道が開かれようとしているようにも感じます。近年の日本の政治と憲法の現状について、憲法研究者の志田陽子さんにお話を伺いました。 高等教育無償化も同性婚も、憲法改正なしで実現できる ──昨年11月、岸田首相は自民党総裁としての今任期が終了する2024年9月までに「改憲を目指す」と発言しました。かつて、安倍元首相も同様に「任期中に改憲を」と述べていたことが思い起こされますが、首相や与党が前のめりに「改憲」を叫ぶ近年の状況をどう見ておられますか。 志田 今から10年ほど前、野党だった自民党が「日本国憲法改正草案」を出したあたりから、「憲法改正を実現することが保守の政治家としての
また生活保護がバッシングに晒されている。 きっかけは、10月に京都で開催された「生存権を求める京都デモ」が報じられたこと。 生活保護利用者と支援者が「たまには旅行に行きたいぞ」「たまにはオシャレもしたいぞ」「たまにはウナギも食べたいぞ」と路上で訴えたという記事に、大きなバッシングが広がった。 バッシングは定番のもので、何がウナギだ、何が旅行だといったもの。 「働いてる自分だってウナギなんて食えないのに」。その怒りは、もちろん理解できる。しかしこの場合、怒りの矛先は先進国で30年間、唯一賃金が上がらない国の舵取りをしてきた現政権にこそ向けられるべきではないかと思うのだ。が、今回もおなじみの「弱いものがさらに弱いものを叩く」光景が繰り広げられている。 貧困問題に17年間関わっていると、こういう光景には飽き飽きしていて「何度目だろう…」と遠い目になるのだが、ここで、あのデモに腹が立ったという人た
9月のある日、大阪府大阪市に住む女性からつくろい東京ファンドにメールが届いた。 女性は生活困窮して城東区に生活保護の申請をした際、これまでに何度か金銭的援助を受けていたことから関係が悪化してしまった親に扶養照会をしないで欲しいと職員に説明した。女性は厚労省通知にも目を通し、扶養照会についても事前に学んだ上で、つくろい東京ファンドのホームページから扶養照会に関する申出書も印刷、記入して提出した。にもかかわらず、対応した職員は「厚労省の運用改善は知っているが、国と現場は違う」と譲らず、彼女の意思も意見もクレー射撃のように撃ち落とし、結局、親に扶養照会を強行した。 メールで彼女は申出書の共有を感謝しながらも、「一体、どうすれば止められたのでしょうか」と無力感をつづっていた。 彼女は「自分はされてしまった。だけど、次の方にとって使いやすい制度であって欲しい」と願い、面談時に録音した音声データと正確
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第647回:『秋葉原事件を忘れない この国はテロの連鎖へと向かうのか』 中島岳志さん、杉田俊介さん、斎藤環さん、平野啓一郎さんと語り合った一冊。の巻(雨宮処凛) 雨宮処凛がゆく!
去年の話になるが、刑務所から満期出所したAさんの福祉事務所同行をした。 当時、コロナ禍の余韻で生活困窮して家を失う人の相談が相次いでいた。つくろい東京ファンドのシェルターは常に満室。特にこの1、2年は出口のない仮放免者や、私達につながった途端に精根尽き果てて身動きが取れなくなってしまう方が多かったため、シェルターの長期利用が常態化して、なかなか空きが出ない。 入所者がシェルターからアパートへ転宅し、ようやく空きが出たと思ったそばから埋まり、また長い間、回転しなくなってしまう。 コロナ禍の初期は、まだ元気な方が多かった。しかし、最近の相談者はみな疲れ切っているし、福祉につながれば万事解決! などという例は一件もないほどに複雑化している。 そんな理由でつくろいシェルターでも、あらたな入所希望者を受け入れることができず、Aさんの場合も福祉事務所に一時滞在場所を探してもらうことになった。 自立支援
ホーム 雨宮処凛がゆく! 第645回:全国の大学に広がる「だめライフ愛好会」とはなんなのか。〜中央大学だめライフ愛好会に聞いた。の巻(雨宮処凛) あなたは「だめライフ愛好会」を知っているだろうか。 私が初めてその言葉を目にしたのは数ヶ月前、Twitterでのこと。「中央大学だめライフ愛好会」というアカウントを発見したのがはじまりだった。 なにやら物好きな大学生がこの社会の窮屈さにささやかな抵抗を始めたのだろうか――。と思っていたら、Twitterには「東海大学だめライフ愛好会」「東京大学だめライフ愛好会」「九州大学だめライフ愛好会」「大阪大学だめライフ愛好会」と、いろんな大学のアカウントがどんどん増えていく。「中央大学だめライフ愛好会」のアカウントによると、その数は2023年7月1日時点で22大学にまで広まっているという。 「だめ」という言葉でまず頭に浮かぶのは、今年2月に亡くなったぺぺ長
マガジン9読者の皆さん、お久しぶりです。「明日できることは明日やる」をモットーに、やらなきゃならないことも先送りして呑気に構えていたら、いよいよ仕事が積もりに積もってしまい、にっちもさっちもいかなくなって恐慌をきたし、2カ月ほど連載をお休みさせていただきました。心配してくださった皆さん、ありがとうございました。 私は五十肩に苦しんだり、階段で滑って尾てい骨をしたたかに打ったりして落ち着きのなさは相変わらずですが、そこそこ元気にしております。ところで、「にっちもさっちも」ってなんでしょうね? 「それを考えると一晩中寝られないの」でお茶の間を温かい笑いに包んでくれた春日三球さんのご冥福をお祈りいたします。 ※「にっちもさっちも」は辞書で調べましたので、ちゃんと眠れました。 「住まいは人権」ハウジングファーストとは さて、連載復活の今日は、部屋探しの困難について。 私が何となく属している「一般社
日本維新の会が人気だ。 毎日新聞が5月に実施した「立憲民主党と日本維新の会、どちらが野党第一党にふさわしいか」(支持政党にかかわらず)という世論調査では、維新と答えた人が47%、立憲と答えたのは25%。倍近い差がつく結果となった。 維新を支持する層についてはこれまでさまざまな分析がなされてきた。低所得者が多いのではと言われていたがそうでもない、中堅サラリーマンや自営業などのプチ成功者が多いらしいとか、いろいろだ。 それらに対して私ごときでは検証しようもないわけだが、これまであまり語られてこなかったことに「ロスジェネの維新支持」という現象がある。 周りを見渡しても、2005年の小泉郵政選挙で自民党を支持し、今は維新支持というロスジェネは普通にいる。小泉の時は「既得権益批判」によって自分が上にいけると思い、今は維新を支持する層だ。正社員もいれば非正規もいる。 で、最近、見るともなしにテレビを見
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