記者会見で和解を公表した高橋政代氏(右)=東京都港区で2024年5月30日午後5時37分、松本光樹撮影 iPS細胞(人工多能性幹細胞)関連の特許を巡って、元理化学研究所の高橋政代氏らが国に「裁定」を求めた紛争は、高橋氏が条件付きながら特許を使用できる形で、特許を持つ企業側と和解が成立した。発明者とはいえ、特許権を持たない人に無償で使用を認める異例の決着だ。ただ、産学間でトラブルが相次ぐ中で、これが解決のための先例になったとまでは言いがたい。 和解が成立した5月30日、高橋氏は東京都内で記者会見を開き、ほっとした表情を浮かべた。「一部でも特許を使えるようになったことをうれしく思う」 対象の特許はiPS細胞から網膜細胞を量産するために必要な技術だ。和解により、高橋氏らが自由診療で、患者本人のiPS細胞から目の網膜細胞を作ることなどが30例まで無償で可能になる。 一方で、特許権を持つヘリオス社(