台湾で5月20日、新総統に与党・民進党の頼清徳氏が就任した。国際社会では「台湾有事」が切迫しているかのように言いはやされているが、中台情勢のエキスパートである川中敬一・元日本大学教授は荒唐無稽(こうとうむけい)だと言う。川中氏が懸念する真の危機とは。 実態とかけ離れた自衛隊の構想 台湾海峡の緊張を巡っては、2021年に米インド太平洋軍のデービッドソン司令官(当時)が「今後6年以内に中国が台湾侵攻に踏み切る恐れがある」と語った。日本でも自民党の麻生太郎副総裁が今年1月、米ワシントンで記者団の取材に対し、「(台湾有事は)日本の存立危機だと日本政府が判断する可能性が極めて大きい」と発言し、集団的自衛権発動の可能性にまで言及している。 だが、こうした見方は正しいのだろうか。川中氏は「昨今、流布されている台湾有事が日本有事であるかのような言説は荒唐無稽というほかない」と言い、「噴飯もの」と否定する。