サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
Pixel 9
natgeo.nikkeibp.co.jp
土壌中に存在する放線菌が産生する「プラディミシンA」という天然物質が、新型コロナウイルスの感染を抑えることを、名古屋大学などの研究グループが発見した。ウイルス表面のスパイクタンパク質に存在する糖鎖に選択的に結合し、ヒトの細胞に刺さるのを防いでいるという。変異株に有効な感染阻害剤としての新薬開発を期待している。 プラディミシンAは日本人が1980年代に微生物の放線菌から発見した低分子化合物。100ミリリットルの放線菌を培養すると30ミリグラムが採れる高収率の天然物質だ。このプラディミシンAは糖の中でもマンノースにだけ水中で結合する特徴を持つ。同じ糖のグルコースやグルコサミン、ガラクトースには一切結合しない。 名古屋大学糖鎖生命コア研究所の中川優(ゆう)准教授(天然物化学)らの研究グループは、プラディミシンAがマンノースのみに結合する理由や、その選択性を生かした使い方ができないかといった研究を
「日本人の祖先はどこからやってきたのか」。このロマンに満ちた問いに対しては、祖先は縄文人と大陸から渡来した弥生人が混血したとする「二重構造モデル」が長くほぼ定説となっていた。そこに日本人のゲノム(全遺伝情報)を解析する技術を駆使した研究が盛んになり、最近の、また近年の研究がその説を修正しつつある。 日本人3000人以上のゲノムを解析した結果、日本人の祖先は3つの系統に分けられる可能性が高いことが分かったと理化学研究所(理研)などの研究グループが4月に発表した。この研究とは別に金沢大学などの研究グループは遺跡から出土した人骨のゲノム解析から「現代日本人は大陸から渡ってきた3つの集団を祖先に持つ」と発表し、「三重構造モデル」を提唱している。 理研グループの「3つの祖先系統」説は「三重構造モデル」と見方が重なり、従来の「二重構造モデル」の修正を迫るものだ。日本人の祖先を探究する進化人類学はDNA
祖先集団の移動や複雑な混血の実相明らかに 今春発表された理研の研究成果も、それに先立つ金沢大学や東京大学の研究成果も、DNA、ゲノム解析の技術が進化人類学と融合した賜物(たまもの)と言える。日本人のルーツだけでなく、人類のさまざまな集団が持つ遺伝的変異の系統が明らかになって人類がどのように世界中に広まっていったかが分かってきた。 人類進化の研究に新たな視点を提供したデニソワ人の名を命名したのは、2022年のノーベル生理学・医学賞を受賞したドイツ・マックスプランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボ教授だ。教授は約4万年前に絶滅したネアンデルタール人の骨片のゲノム解析を行ってゲノム配列を2010年に発表。欧州やアジアに住む現代人のゲノムの1~4%がネアンデルタール人に由来し、ネアンデルタール人が現生人類と交雑していた証拠を示した。 ペーボ教授はまた、2008年にロシア・シベリアのデニソワ洞窟か
ラムセス3世は古代エジプトの最後の偉大なファラオだった。しかし、ラムセス3世は本当に自分の妃が企てた陰謀で暗殺されたのかどうか、何世紀にもわたって謎に包まれていた。ラムセス3世のミイラが発見されても、現代の技術が古代のこの未解決事件を解決するまで、謎は深まるばかりだった。(Photograph by Brugsch Pasha, The Royal Mummies, University of Chicago) 陰謀を企む妻たち。叫び声を上げるミイラ。何世紀にもわたる憶測。紀元前1155年ごろ、古代エジプトのファラオであるラムセス3世を暗殺しようと企てた、いわゆる「後宮の陰謀」にまつわる疑問は3000年以上も続いてきた。後継者争いによる陰謀はまるで現実の『ゲーム・オブ・スローンズ』のようだが、現代の考古学者たちがこの謎を解き明かした方法は探偵番組顔負けだ。 歴史家たちは、この陰謀がラムセス
マイナス18℃に保たれた冷凍庫は食品を永久的に保存できるが、保存方法によっては、味や食感が落ちる可能性はある。(PHOTOGRAPH BY REBECCA HALE, NATIONAL GEOGRAPHIC) 多くの人にとって、冷凍庫は食べ残しや雑多な食品を保管するブラックホールのような役割を果たしている。食べかけのアイスクリームから感謝祭の残りものまで、あらゆるものが冷凍庫に置かれがちだ――ときには永久に。 冷凍庫は余分な食品を収納するのに便利な場所だが、混乱のもとになりがちで、使い方を誤ると、食中毒の原因にもなる。 例えば、熱々の残りものをそのまま冷凍庫に入れていいのかと気になっている人もいるだろう。また、部分的に結晶化したマフィンはまだ食べても大丈夫かといった疑問もあるだろう。さらに、解凍と再冷凍を何度か繰り返した正体不明のレッドソースはどうするべきかと悩んでいる人もいるはずだ。 冷
政府の地震調査委員会は、兵庫県沖から新潟県沖にかけての日本海にマグニチュード(M)7以上、最大M8級の地震が想定される海域活断層や断層帯が25カ所ある、としてそれぞれの位置や長さ、推定地震規模を公表した。 2024年1月に起きた能登半島地震後に作業を急いだ評価結果で、自治体などの大地震への備えに活用してもらうために発生確率の算出を待たずに前倒しで公表した。調査委は今後30年以内の発生確率を2025年前半にも公表するとしている。 調査委のこの作業は、宮崎県沖を震源とする最大震度6弱の地震が起きて初の南海トラフ臨時情報「巨大地震注意」が出される前に行われた。プレート境界で起きた宮崎県沖の地震と日本海側の活断層型地震は発生のメカニズムが異なる。気象庁などは直接の関係はないとの見方だが、連動する可能性は完全には否定できないと指摘する専門家もいる。日本海側も引き続き注意が必要だ。
ザトウクジラ(画像は南極半島の沿岸海域で撮影)が気泡の円を作って獲物を囲い込む行動は、かなり以前から観察されてきた。(PHOTOGRAPH BY WHALE RESEARCH SOLUTIONS) チンパンジーは棒を使ってシロアリを釣り、ラッコは石で貝を割り、イルカはカイメンで口先を保護しながら海底で餌を探す。新たな研究により、人間以外で道具を使うこうした種の仲間に、ザトウクジラがあらためて加えられることになった。しかも彼らは道具を使うだけでなく、周囲の環境から道具を作り出しているという。2024年8月21日付けで学術誌「Proceedings of the Royal Society Open Science」に論文が掲載された。 世界各地のザトウクジラ(Megaptera novaeangliae)は、オキアミ、ニシン、サケの稚魚などの特定の獲物を捕らえる際、気泡でできたバブルネットを
マッコウクジラは最長で1時間息を止めて、2000メートルを超える深さまで潜水できる。それほどの深海でどのように獲物を捕るのか、オーシャンXの科学者たちは関心を寄せている。(写真:BRIAN SKERRY) 深海には地球上で最も多くの謎に包まれた生命が潜んでいる。その謎を解明するための最新機器を満載した船に乗り込んだ。 6月の暖かな朝、全長87メートルの調査船が、北大西洋に位置するアゾレス諸島を出航した。 陽光を浴びて白く輝く「オーシャンXプローラー号」は、船首にヘリコプターの発着場があり、船尾の近くには2艇の潜水艇を搭載。海面下に沈んだ船体には海底地形のデータを収集する高解像度ソナーがずらりと並ぶ。 この民間の調査船は特殊な任務を帯びている。野生のカグラザメをその生息域で追跡し、データを得ることだ。カグラザメは非常に深い水域に潜んでいるため、その行動は多くの謎に包まれている。2億年前に出現
恐竜の復元を専門とするリサーチ・キャスティング・インターナショナル社(RCI)にて、模型を前に話し合う古生物学者のルイス・キアッペ(右)とペドロ・モチョ。(PHOTOGRAPH BY CRAIG CUTLER) 長年にわたる労力と数億円にのぼる費用をかけて、絶滅した恐竜を博物館の展示物としてよみがえらせるプロジェクトを追った。 化石になるなんて、まったく奇跡のようなものだ。仮に、あなたがディプロドクスという竜脚類の恐竜だとしよう。長く大きな尾を振り回しながら、ジュラ紀の世界で70年ほどの生涯をまっとうし、やがて命を落とす。だが、特殊な環境下で、あなたの骨は地中に埋もれた後、長い時間をかけて石のようになる。骨の周りで山が盛り上がっては削られ、川が現れては消え、骨の上を氷河が大きな音を立てて流れるようなことが起きても、骨はもちこたえるのだ。 さらなる奇跡が続く。それから1億年以上たった後に、そ
米国ワイオミング州ケリーに設置された遠隔カメラが捉えた野生のピューマ。病気の個体の動画はこちら。(Photograph by Charlie Hamilton James, Nat Geo Image Collection) ネコ科の動物を死なせる「よろよろ病」と呼ばれる感染症に、北米の野生のピューマがかかっていたことが明らかになった。よろよろ病は、ヨーロッパでは50年前からイエネコや動物園の動物で確認されているが、北米で確認されたのはこれが初めてだ。論文は新興感染症の専門誌「Emerging Infectious Diseases」2024年8月号に掲載された。 ピューマを調べた米コロラド州立大学の野生動物病理学者のカレン・フォックス氏は、「罹患したのがこの個体だけなら心配はしません」と言う。「けれども経験的に、私たちが発見する疾患は氷山の一角であり、これまでに見落としてきた症例がたくさ
悪い姿勢の問題は、見た目だけにとどまらない。呼吸が制限され、取り入れる酸素が減る。首や腰の痛み、運動能力の低下、消化の問題、筋肉疲労、ホルモンバランスの乱れにつながることもある。(Photograph by Tara Moore, Getty Images) 健康を向上させて寿命を延ばすには、運動をしたり、果物や野菜を食べたりすることだけが重要なのではない。首や腰の痛み、呼吸器の問題、運動能力の低下、消化器疾患、筋肉疲労、ホルモンバランスの乱れといった問題を避け、充実した人生を生きるには、正しい姿勢を保つことが不可欠だ。こうした問題は、適切に対処しなければ時間とともに悪化する可能性がある。 「年とともに関節や靱帯の弾力性は低下し、悪い姿勢に適応できなくなっていきます。するとやがて、神経や脊髄が圧迫され、身体活動が制限されたり、慢性的な痛みにつながったりすることがあります」。米カリフォルニア
人間の肺の3D CTスキャン画像(正面)に彩色したもの。左肺上葉にあるがんが青い色で強調されている。(Scan by K H Fung, Science Photo Library) 肺がんにかかる人のなかで、たばこを吸ったことがない人の割合が世界的に増えている。台湾では、肺がん患者の3人に2人が、過去に喫煙歴がないという。 米国で1万2000人の肺がん患者を対象とし、2017年に発表された調査では、喫煙未経験者の割合が20年間で8%から15%に増えていた。英国の研究でも同様に、肺がん患者で喫煙したことがない人の割合が2008年の13%から2014年には28%に跳ね上がった(編注:日本では、肺がん患者のうち男性7.5%、女性75.1%に喫煙歴がなかったとする研究が2013年に報告されている)。 その原因は様々だが、一つ重要な要素として大気汚染が挙げられると、国際肺がん学会は指摘する。米公益
1898年、ニューヨーク市の路上で楽器を演奏する視覚障害者。ニューヨークでは醜陋(しゅうろう)法は制定されなかったが、似たような法案は起草されていた。(Photograph by Museum of the City of New York, Bridgeman Images) 美人は人間関係がうまく行き、学校や職場で得をすることは、研究で示されている。では逆に、見た目が悪いと思われることが社会的ハードルになるだけでなく、犯罪になるとしたらどう思われるだろうか。 19世紀半ばから1970年代に至るまで、米国には、「見た目がよくない」人々が公共の場に出ることを禁じるいわゆる「醜陋(しゅうろう)法」なるものが存在した。あまり知られていない法律だが、その歴史を紐解いてみると、米国社会が誰を「美しい人」とみなすのか、そしてその理想に届かない人々がどのような影響を受けたのかが見えてくる。 すぐに全米
血液検査でアルツハイマー病を診断できれば画期的だ。新たに開発された血液検査は、成人のアルツハイマー病を90%の精度で診断できるという。現時点では、診断にはより体への負担が大きい脳脊髄液の検査やPET検査が必要だ。(PHOTOGRAPH BY FLORENTIN CATARGIU, 500PX/GETTY IMAGES) 科学者たちは長年、血液検査によってアルツハイマー病の証拠を見つける方法の開発に取り組んできた。このほど、平均的な医師の診断より精度が高い新手法についての論文が、7月28日付けで医学誌「Journal of the Medical American Association(JAMA)」に掲載され、米国フィラデルフィアで開催された国際アルツハイマー病学会(AAIC)でも発表された。この方法は今のところ、発症前の検査として使うことは推奨されていないが、発症後の検査が受けやすくなる
待って! ポテトやトマト、ニンジンの皮を捨てないで! 皮には体にいい栄養分が豊富に含まれている。(PHOTOGRAPH BY ANDREA FRAZZETTA, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 果物や野菜の皮をむいて捨てている人は、せっかくそこに含まれている豊富な栄養素や食物繊維、ファイトケミカル(ポリフェノールやカロテノイドなど植物に含まれる物質)を捨ててしまっているかもしれない。 2023年1月に学術誌「Current Research in Food Science」に掲載された研究によると、リンゴや桃、柿の皮には、果肉や種よりも高い濃度の抗酸化物質(ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキンなど)が含まれているという。ザクロなど一部の果物の皮は、抗酸化作用が果肉よりもはるかに高いという報告も2003年の研究で出ている。 皮を摂取することで得られる健康効果への期
『サド侯爵の呪い』には、ギュスターヴ・フローベールの描くような愛書狂を魅了するさまざまな書物が登場する。愛書狂が求める書物の多くは、驚くほど美しい。 たとえば小口絵というものがある。分厚い本の側面の角度を調節すると、絵が現れるという仕掛けがほどこされているのだ。動画もみつかるので(Youtube「A Hidden Art Form You’ll Flip For」など)、機会があればぜひみてほしい。 もっと奇妙なところでは、人間の皮膚で装丁した書物がある。『サド侯爵の呪い』の登場人物のひとり、フレデリック・ハンキーは個人で大量のエロティカの本を英国に持ちこんでいた蒐集家だ。彼の厳選した数少ないエロティックな本のコレクションには、性や死や拷問を想起させる露骨な装丁が施されている。彼は人間の皮膚で装丁したいと考え、できるなら生きている若い女性から剥いだ皮膚を求めていたという。 実際に人皮装丁本
オニグモ(Araneus ventricosus)の網にかかったオスのホタル。オニグモは、ホタルが交尾相手を見つけるために使う生物発光のシグナルを操作できるのではと、研究者たちは考えている。(Photograph by Xinhua Fu) クモは、驚くほど様々な狩りのテクニックを進化させてきた。唾液を使って獲物をわなにかける種もいれば、ヘビさえも捕らえられる強力な網を張る種もいる。最新の研究では、日本でもごく普通に見られるオニグモが、とりわけ巧みな戦術を使ってホタルを自分の網に誘い込んでいるという。(参考記事:「クモの驚くべき世界」) 2024年8月19日付けで学術誌「Current Biology」に発表された論文によると、このクモは、網にかかったオスのホタルが発する光を操作して、あたかも交尾相手を求めるメスが光を放っているかのように見せかけ、別のオスをおびき寄せているようだ。 クモが
ラシード・アッディーン著『集史』の一場面を描いた絵。チンギス・ハーンとその妻ボルテが臣下の前で玉座に座っている。ボルテはチンギス・ハーンの正妻であり、強大なモンゴル帝国最初の皇后だ。(PHOTOGRAPH BY BRIDGEMAN IMAGES) テントと動物、ウマと剣。モンゴル帝国の初期は、戦争と征服、急速な領地拡大を特徴とし、チンギス・ハーンの統治下に置かれた人々はやがて世界最大の帝国の一員になった。 しかし、チンギス・ハーンは自分ひとりでモンゴル帝国を統治していたわけではない。正妻であるボルテが、13世紀のモンゴル帝国成立に非常に重要な役割を果たしたのだ。モンゴル帝国最初の皇后であるボルテは、どのように自身の影響力を使ったのか。そして、なぜボルテを始めとする女性たちがモンゴル帝国の知られざる英雄なのかをみていこう。 皇帝の正妻、ボルテとは何者か? ボルテは1161年頃、現在の中国内モ
新型コロナウイルスのオミクロン株(黄色)に感染した細胞(青色)。着色処理した走査型電子顕微鏡画像。(MICROGRAPH BY NIAID/NATIONAL INSTITUTES OF HEALTH/SCIENCE PHOTO LIBRARY) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が始まってから、これで5度目の夏になる。そして2024年の感染拡大は、夏に起こるものとしてはこれまでで最大規模となることが予想されている。 米疾病対策センター(CDC)は、救急外来のデータに基づき、8月13日の時点で25の州で新型コロナの感染が増えつつあると推定している。一方で、入院および死者の数は、今も最低水準にとどまっている。 日本の厚生労働省が8月16日付けで発表した新型コロナの発生状況では、全国の定点当たり報告数や入院患者数が5月から増え始め、7月ごろから急増したこと
バトゥ・ハーンによるルーシ侵攻の過程で、1238年にウラジーミル大公国の首都ウラジーミルを包囲するモンゴル軍を描いた絵画。(GETTY IMAGES) 歴史はチンギス・ハーンを、冷酷な征服者と、陸続きでは史上最大の帝国の創始者という2つの異なる顔で記憶している。1206年、チンギス・ハーンは、モンゴル高原のすべてのテュルク系、アルタイ系の遊牧民を統一するという、他の多くの征服者がなしえなかったことをなしとげたが、それはほんの始まりにすぎなかった。モンゴル帝国の初代皇帝となった彼は軍事の天才で、軍隊を大胆に動かして領土を拡大し、状況に合わせて速やかに動き、ねばり強く戦った。 チンギス・ハーンの帝国はアジア全域に広がり、既存の国家を一掃した。東方では、現在の中国にあった女真族の金とタングート族の西夏を滅ぼし、西方では、中央アジア南部の契丹族の西遼とホラーサーン地方のホラズム・シャー朝を滅ぼした
透過型電子顕微鏡で見たエムポックスウイルス粒子。通常は、アフリカ中央部と西部の熱帯雨林の近くで見つかる。自然宿主はげっ歯類だと考えられているが、ヒトからヒトへの感染も可能で、発熱、リンパ節の腫れ、水疱などが見られる。(Micrograph by UK Health Security Agency/Science Photo Library) アフリカでのエムポックスの流行を受け、世界保健機関(WHO)は国際保健規則(IHR)に基づく緊急委員会を開催した。コンゴ民主共和国では、2024年に入ってからの患者数が1万5600人以上にのぼり、537人が死亡している。心配なのは、ブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダなど、これまでエムポックスが確認されたことのない近隣諸国にも広がっていることだ。この状況を重く見たWHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。 緊急委員会の
約6600万年前、現在のユカタン半島付近に隕石が衝突し、恐竜時代を終わらせた大量絶滅が起きた。今回の研究で、その隕石が木星より外側からやってきたものであることが明らかになった。(Illustration by Nicolle R. Fuller / Science Photo Library) ティラノサウルスやトリケラトプスをはじめとして、鳥類を除く恐竜、翼竜や海竜などの爬虫類を絶滅させ、白亜紀を終わらせた直径10キロを超える隕石は、木星の向こう側からやってきたことが明らかになった。8月16日付けの学術誌「Science」で発表された論文によると、この巨大な岩の塊は地球の近くを周回していたのではなく、太陽系をはるばると旅してきたあと、地球に衝突したという。 6600万年前の衝突でできた巨大クレーターは、現在のメキシコ沿岸の海底にあり、チクシュルーブと呼ばれている。衝撃時には大規模な灼熱の
ハプロルキス・プミリオの兵隊が別の吸虫(Philophthalmus gralli)の体に張り付いて穴を開けようとしているところ。アリやシロアリが兵隊階級をつくることは知られているが、ヒトに感染する吸虫で兵隊が確認されたのは初だ。(VIDEO BY DANIEL METZ PHD) ハプロルキス・プミリオ(Haplorchis pumilio)という名前を聞いたことがあるという人はあまりいないだろうが、この小さな寄生虫が恐ろしい戦略をとっていることを科学者らが報告した。学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された新たな論文によると、この吸虫(寄生性の扁形動物)には、巨大な口をもつ極めて攻撃的な兵団を作り出す能力があるという。兵隊たちの目的はただひとつ、他の吸虫を見つけて張り付き、相手の中身を吸いとることだ。 特殊な兵隊型の個体には生殖器官がなく、自身のコピーを作れない。これは吸
新石器時代の人々がストーンヘンジの建設に使った石は、イングランドとウェールズ産だったことがすでに分かっている。新たな研究により、祭壇石はスコットランド産の可能性があるという。(Photograph by Reuben Wu, Nat Geo Image Collection) 100年以上にわたる探索の結果、研究者たちはストーンヘンジの中央に横たえられた「祭壇石」の起源を突き止めた。鉱物の年代と化学的性質に基づき、この石がストーンヘンジから750kmも離れたスコットランドから来ていることを、英アベリストウィス大学の地球科学者であるリチャード・ベビンズ氏らは2024年8月14日付けの学術誌「ネイチャー」に発表した。 英エクセター大学の考古学者であるスーザン・グリーニー氏は、研究チームが祭壇石の起源をスコットランドのはるか北東部と特定したことに胸を躍らせている。スコットランド北東部なら、新石器
眼球運動を用いたソマティックセラピーを受けるロヒンギャの女性たち。バングラデシュ、コックスバザールのRWウェルフェア協会ヒーリングセンターで撮影。ソマティックセラピーは従来の治療法に行き詰まりを感じている人々に、体への気付きによってトラウマや不安を和らげるという選択肢を提供している。(PHOTOGRAPH BY ALLISON JOYCE, GETTY IMAGES) 近年、より多くの人がメンタルヘルスについて助けを求めるようになっており、さまざまな治療法を模索している。状況が大きく進化するなかで、心と体をつないで回復を促す「ソマティックセラピー」が、従来のトークセラピー(心理療法)に行き詰まりや物足りなさを感じている人々の間で、有望な治療法として浮かび上がっている。 米国ソルトレイクシティ在住のジェイ・ヒューズさんも、従来の治療法を8年間にわたって受けた末、そのような岐路に立たされた。「
NASAのルナー・リコネサンス・オービター(背景に地球を配置したイメージ図)。「静かの海」と呼ばれる太古のマグマの海の下に、溶岩チューブの存在を直接的に示す証拠が発見された。(ILLUSTRATION BY UNIVERSITY OF TRENTO/ A. ROMEO/ NASA/ JPL-CALTECH (BRIAN KUMANCHIK/ CHRISTIAN LOPEZ)/ BILL ANDERS) アポロ計画以来の有人月面着陸が2020年代後半に予定されている。米航空宇宙局(NASA)のアルテミス計画だ。順調に進めば、水が豊富とされる月の南極域に、持続的な活動拠点が段階的につくられる。(参考記事:「人類を再び月面へ、NASA「アルテミス計画」ビジュアルガイド」) 2024年7月、この計画に朗報が届いた。月周回探査機のレーダー観測のデータを分析したところ、かつてアポロ11号が着陸した地点
透過電子顕微鏡(TEM)で撮影後、着色した組織内のリステリア。2024年夏、米国で数十人が感染し、2人が死亡した細菌だ。(SCIENCE SOURCE) 気温が上昇するにつれて、食中毒のリスクも高まる。2024年夏の記録的な暑さは、米国ですでに1件の大規模な食中毒を引き起こしている。米国当局は5月以降、加工肉食品に関連したリステリア症の急増を調査している。これまでに数十人が体調不良を訴え、2人が死亡している。(参考記事:「人は驚くほど空気温の変化に敏感、1℃未満の差でも気づく、研究」) 米食品医薬品局(FDA)によれば、米国では毎年、約4800万人(約6人に1人)が食中毒になっている。 「食中毒はよくあることで、食中毒と診断される件数より、実際の件数はさらに多い可能性が高い」とジョンズ・ホプキンス大学医学部の助教で、感染症を専門とするギーティカ・スード氏は述べている。 しかし実は、「良いこ
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『ナショナルジオグラフィック日本版サイト』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く