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コーヒー沼
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女性がテニスをするようになり、テニススカートの歴史も始まった。その丈は徐々に短くなっていき、テニス界のスーパースター、セリーナ・ウィリアムズ(写真)が着たことによって、テニススカートはコートの外でも通用するおしゃれなアイテムとなっていく。(Photograph by Vincent Kessler, Reuters/Redux) 動きやすく風通しのいいテニススカートは、本来の用途以外にも多目的に使える、おそらく唯一のスポーツウエアだろう。テニスプレーヤーたちの恋愛を描く映画『チャレンジャーズ』の宣伝を兼ねて、主演した米国の女優で歌手のゼンデイヤがテニスウエアを思わせるドレスでレッドカーペットに登場するなど、テニススカートの人気はコートの外でも高まっている。 だが、そんなテニススカートがスポーツファッションのセンターコートに立つまでには長く険しい道のりがあった。テニススカートはその時々に応じ
インドのベンガル地方北部のニュー・ドゥアーズ茶園で見つかった、土に埋められたゾウの死骸。(PHOTOGRAPH BY WEST BENGAL FOREST DEPARTMENT) サバンナで暮らすアフリカゾウが仲間の死を悼むことは以前から知られていたが、野生のアジアゾウではこれまでほとんど報告がなかった。しかし、2024年2月26日付けで学術誌「Journal of Threatened Taxa」に発表された研究によると、アジアゾウは死んだ子ゾウを埋葬している可能性があるという。 論文では、2022年と2023年にインドのベンガル地方北部で、5つの異なる群れが、死んだ子ゾウを灌漑(かんがい)用の溝まで引きずっていき、そこに埋めた事例が報告されている。どの事例でも、子ゾウの脚は地面から突き出し、頭部や鼻、背中は土で覆われていた。 埋葬という行為は、動物の世界ではほとんど見られない。アフリカ
アメリカンフットボールのチームでクォーターバックを務めることは、ストレス要因ではあるものの、そのことを楽しめる人にとっては悪くはない。世の中にはストレス要因をまったく苦にしない人もいるが、それは必ずしも良いことではない。(PHOTOGRAPH BY BRIAN FINKE, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 人間を幸せにするものは何だろうか。大人の感情のプロセスを研究してきた米カリフォルニア大学アーバイン校の心理学教授スーザン・チャールズ氏は、その問題に何度も立ち返ってきた。ほとんどの感情は社会的な状況の中で経験されるので、「私たちは安全だと感じるときに幸せを感じます。他者との関係に満足しているときに、自分の人生は有意義だと感じるのです」と氏は言う。だから、私たちの生活に小さな波風を立てる日常的なストレスのもとを量的に測れば、他者との関係がもたらす幸せについて考えるヒント
コルチゾールの結晶の偏光顕微鏡画像。コルチゾールは副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンの一種で、肉体的・精神的なストレスに対する体の反応を促す。(PHOTOGRAPH BY SIDNEY MOULDS, SCIENCE SOURCE) ストレスの場合はどうだろう。ストレス反応は、私たちに人生のあらゆる色合いを経験させ、学習を促す。 記憶による学習を促す海馬という脳の部位は、目新しいものごとが大好きだ。私たちは日常生活の小さなストレス要因をたえず克服することで、多くの新しい経験をし、成長できる。 日常的な挑戦がないと、脳の調子は悪くなる。MIDUSで「ストレスはない」と報告した参加者の記憶力や問題解決能力の低さには、このような背景があるのだろう。 「私たちは、自分には無理そうだと思ったことからは逃げ出したくなります」とジェイミソン氏は言う。「けれども、対応力を身につけ、困難を耐え抜くのは
米南カリフォルニア沖の海底にとどまっているラウンドスティングレイ(Urobatis halleri)。(PHOTOGRAPH BY ERIN CHANDLER) おそらく世界で最も有名なエイの「シャーロット」が病気にかかっていると、水族館のスタッフが発表した。2024年2月、米ノースカロライナ州ヘンダーソンビルにあるチームECCOの水族館「アクアリウム&シャークラボ」は、ラウンドスティングレイ(Urobatis halleri)のシャーロットが科学的には単為生殖と呼ばれる「処女懐胎」をしていると報告した。しかし、数カ月が経っても子どもが生まれなかったため、このエイに何が起きているのかについて憶測が飛び交っていた。 2024年5月30日、ついに水族館はFacebookに「シャーロットが珍しい生殖器系疾患を発症し、生殖系に悪影響がでている」と投稿した。この結果は「本当に悲しく、予期せぬ医療的な
ソーダやポテトチップスのような超加工食品は多くの健康問題と関連しているが、摂取をやめるのはたばこをやめるのと同じくらい難しいかもしれない。(PHOTOGRAPH BY DAN KITWOOD, GETTY IMAGES) ポテトチップスの大袋をいつの間にか完食してしまったり、思っていた以上にドーナツを食べてしまったりした経験がない人はいないだろう。この現象の原因が、意志の弱さではなく「超加工食品依存症」という状態にあることを示す証拠が集まってきている。 超加工食品(高度に加工された食品)には、袋菓子、朝食用シリアル、ほとんどのファストフード、大量生産されたパンやデザート、ソーセージ、ホットドッグ、冷凍魚フライ、ソフトドリンク、アイスクリーム、キャンディーをはじめ、包装されてスーパーに陳列される多くの食品が含まれていて、米国の成人が消費するカロリーの60%近くを占めると推定されている。 超加
医学誌「BMJ」に掲載された論文によると、硬膜外麻酔による無痛分娩で、出産による重い合併症にかかる割合が著しく減るという。(PHOTOGRAPH BY CASARSAGURU, GETTY IMAGES) 出産は世界の多くの地域で主な死亡原因であることから、妊婦たちは長い間、お産に伴う恐怖や不快感を和らげようとしてきた。歴史上、出産の痛みの緩和には、催眠術やアヘン、水中分娩、ハーブ療法のほか、ありとあらゆる手段が用いられてきた。 現在、出産の痛みを和らげる方法としては、背中や腰から麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔法」による無痛分娩が最も一般的だ。しかし新たな研究により、この方法には痛みの緩和以上の効果があるとわかった。硬膜外麻酔を受けた場合、出産から6週間後までの間に重い合併症にかかるリスクが35%も下がることが示されたのだ。英グラスゴー大学と英ブリストル大学の研究者による論文は、2024年5
―― 擬似的生産性がもたらすプレッシャーは、上司や同僚にどのような影響を及ぼすでしょうか。 できるだけ多くのことを抱え込もうとすると、結局は生産に非常に時間がかかるようになります。擬似的生産性は、仕事をする我々の足を引っ張るだけです。実際に良いものを生産するのが目標であるならば、擬似的生産性ではうまくいきません。 ――より多くの仕事を引き受ければ、より多くのことが成し遂げられるのではありませんか。 皮肉なことに、現実にはそれが逆の効果を及ぼすこともあるのです。管理上の負担が増え、最終的には、一日の大半が引き受けたさまざまな仕事の管理に費やされるという状況に陥ります。仕事を進める時間はほとんど残りません。仕事を仕上げる速度はガタ落ちになります。誰にとっても良いことはありません。会社の利益は増えず、価値も生まれません。従業員は燃え尽き、離職率が上がります。 米ニューヨークのアルファベット・シテ
――一般に、歴史上最も生産性が高い人物といえば、作家のジェーン・オースティンのような、精力的に活動する人のことを指します。オースティンは、家族がせわしなく出入りする自宅の居間でこっそりと小説を書いていたそうです。しかし、あなたの著書によると、オースティンが良い作品を書けるようになったのは、家事や家族からのプレッシャーから解放された後だったそうですね。 ジェーン・オースティンの場合、義務の少ないシンプルな生活を送るようになって初めて執筆ができるようになりました。問題は仕事の量にあったのです。現代の知識労働について考えるにあたっては、我々はオースティンの経験に学び、デジタル作業量の管理などに生かすとよいでしょう。(参考記事:「裸で冷気に身をさらす 偉人は1日の始まりをどう過ごしたか」) ――では、「スローな生産性」を実践するには何から始めればよいでしょうか。 労働者は自分が思っている以上に自律
ある秋の日、200人の女性たちが米フィラデルフィアのベンジャミン・フランクリン橋に集まり、ウォーキングを行った。「フィリー・ガールズ・フー・ウォーク」という名称のこのグループは、心身の健康増進を目的に、毎週約5キロメートルのウォーキングを実施している。女性と若年成人は、仕事に関連する燃え尽き症候群のリスクが世界的に最も高く、運動はそれを軽減する方法のひとつだ。(PHOTOGRAPH BY BRIAN FINKE) 会議、電話、通知、マルチタスク――現代の職場は、リラックスして仕事ができる環境にあるとは言い難い。事実、最近の米国の調査では、米国人の84%が「自身が抱えるメンタルヘルスの問題の少なくともひとつは雇用主に関するものである」と答えている。 燃え尽き症候群やストレスに悩まされる人の数が驚異的に増えつつあるなか、米ジョージタウン大学の教授でベストセラー作家のカル・ニューポート氏は「スピ
ギザの港で、大ピラミッド建造のための石を船から降ろす労働者たち。J・C・コルバン氏による水彩画。(MUSÉE DÉPARTEMENTAL ARLES ANTIQUE © J.C. GOLVIN/ÉDITIONS ERRANCE) メレルの日誌 紅海文書にはいくつかの異なる種類の文書があるが、最も人々を興奮させたのが、メレルの日誌だった。メレルは建造部隊の監督官を務め、大ピラミッド建造中の3カ月間、自分の部隊の活動を日々記録していた。 およそ200人の労働者が所属していたメレルの部隊は、エジプト中を旅して、大ピラミッド建造に関わるあらゆる業務の遂行を担っていた。特に興味深いのは、ピラミッドの外装に使用された石灰岩の化粧石だった。メレルは、トゥーラの採石場から石灰岩を切り出してギザまで運んだことを細かく記録していた。(参考記事:「死海文書には何が書かれているのか、キリスト教との関連は」)
紅海のエジプト沿岸に、ワディ・エル・ジャラフという4000年以上前の古代遺跡がある。遠く海の向こうにシナイ半島を望むこの遺跡で2013年、歴史的発見がなされた。石灰岩で作られた坑道のなかで、世界最古のパピルス文書が30巻見つかったのだ。 古さもさることながら、注目すべきは書かれている内容だ。この「紅海文書」と呼ばれるものは、その昔にぎやかな港として栄えたワディ・エル・ジャラフについて明らかにしているだけでなく、クフ王の大ピラミッド建造に直接関わっていたメレルという人物の日誌も含んでいた。(参考記事:「“永遠”のギザの三大ピラミッドはどう建てた? 謎の空間も発見」) ワディ・エル・ジャラフの遺跡が最初に発見されたのは1823年。発見者の英国人旅行家で古物収集家のジョン・ガードナー・ウィルキンソンは、これをギリシャ・ローマ時代のネクロポリス(共同墓地)だと考えた。その後1950年代に、考古学好
怒りの感情を紙に手書きし、物理的に捨てると気持ちが落ち着くことを名古屋大学などの研究グループが実証した。怒りを抑える手法はこれまで「気の持ちよう」といったものにとどまり、実験や客観的事実を基にしたものは確立されていなかった。科学的に怒りを鎮めるための簡単で効果的な方法として期待できるという。今後はメールなど電子媒体でも応用できるか実験を進めていきたいとしている。 名古屋大学大学院情報学研究科の川合伸幸教授(心理学・認知科学)らは、50人の大学生のグループと、46人の大学生と20代の社会人が混在する2グループに分けて実験を行った。 まず、「学費の値上げについてどう思うか」や「路上喫煙についてどう考えるか」などいくつかの社会課題について論述してもらった。それぞれの課題について添削を行い、「知性がある」「親近感がわく」などの項目について1~9点をつけ、平均が3点と低くなるようにあえて調整した。加
ナチスの総統大本営の1つ「ヴォルフスシャンツェ(狼の砦)」の遺構で見つかった人骨のうちの1体。成人のものと推定されている。警察は遺体が埋葬された時期を第二次世界大戦前と推定しているが、ナチスドイツやソ連軍の犠牲者ではないかという声もある。(PHOTOGRAPH BY LATEBRA FOUNDATION) 2024年2月、ポーランドのアマチュア考古学者の調査がきっかけとなり、ナチスドイツでアドルフ・ヒトラーに次ぐ地位にあったドイツ空軍総司令官ヘルマン・ゲーリングの住居跡の地中から5体の人骨が発掘された。この住居跡は、ポーランド北東部の小都市ケントシン近郊にあるナチスドイツの総統大本営「ヴォルフスシャンツェ(狼の砦(とりで))」の遺構の一画にある。(参考記事:「ナチスのタイムカプセルを発掘、開封」) 1940年、ヒトラーはソ連侵攻の準備のため、人里離れたこの森に秘密の軍事司令部を建設するよう
米国ジョージア州に住むケイトリンとクリスのニコルズ夫妻は、三つ子の世話に追われている。未熟児だった三つ子は長期に及ぶ健康問題を抱えている。慢性病の子どもを世話する人は、ストレスで老化が早く進んでいる兆候が染色体に見られるなど、自身も健康を脅かされかねない。(PHOTOGRAPH BY BRIAN FINKE) 「ここ数年、長期にわたった新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)をはじめ、世界各国を揺るがす治安の悪化や政情不安の高まり、環境と経済に大きな影響を及ぼす気候変動といった要因が重なって、世界中で人々が感じるストレスのレベルは急激に高まっている。この広範囲に及ぶストレスの増加による影響はまだ認知され始めたばかりだが、科学的な証拠から、私たちは今、うつ病や不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)など、気分の変動や不安の高まりを特徴とする障害が世界中で猛威を振るう第2のパンデミ
アフリカのジブチ沖で、漁に使うライトに、プランクトンと若いジンベエザメが引き寄せられる。(PHOTOGRAPH BY TOM PESCHAK, NATIONAL GEOGRAPHIC IMAGE COLLECTION) 希少なクジラ類と船との衝突事故については以前から世界的に問題になっていた。しかし、世界最大の魚類であるジンベエザメも同じように命を落とすケースが多そうなことは、最近までわかっていなかった。2024年5月1日付けで学術誌「Science of the Total Environment」に発表された80人の研究者による合同研究の論文では、海運がジンベエザメにもたらす脅威について定量的な評価が行われた。(参考記事:「【動画】魚群を狩るジンベエザメの撮影に成功、超貴重な映像」) ジンベエザメは体長10メートルになることも多い。インド洋、太平洋、大西洋など、世界中の熱帯から亜熱帯の
快適な睡眠を妨げる要因を減らすために、夫婦が別々のベッドや寝室で寝る「睡眠離婚」が増えている。(Photograph by Dorothy Sing Zhang) 米国睡眠医学会が2023年3月に実施したアンケート調査によると、米国人の3分の1以上が、パートナーと寝室を分ける「睡眠離婚」を選択している。俳優のキャメロン・ディアス氏や司会者のカーソン・デイリー氏などの有名人を含め、睡眠の質を優先させるために別々のベッドや部屋で寝るカップルは増えている(編注:日本では、 2011年に学術誌「日本建築学会計画系論文集」に掲載された論文によると、別室で眠る夫婦は約22%であり、結婚から調査時までに別室就寝の経験がある夫婦は3分の1を超えたという)。 「夫婦は一緒に寝るもの、という固定観念に、私たちはとらわれてしまっています」と話すのは、『A Sleep Divorce: How to Sleep
カナダ沿岸のクイーン・シャーロット海峡で、アカウニなどの棘皮動物に溶け込むように体の色や形を変えたミズダコ(Enteroctopus dofleini)。タコをはじめとする頭足類は、動物界で最もすばやく変身することができる。(PHOTOGRAPH BY DAVID HALL) タコやイカなどの頭足類は、ほとんどすべての種が、皮膚の色や模様だけでなく体の形や質感まで変化させる驚くべき能力を持っている。そのスピードはまばたきより速く、既知の動物の中で最速だ。 「頭足類は、私たちが知っている中で最も優れた変身能力を持っています」と、米国スミソニアン自然史博物館の頭足類の学芸員であるマイケル・ベッキオーネ氏は言う。ほとんどの頭足類が色覚を持たないことを考えると、これはさらに驚きだ。「頭足類にとって、多種多様な変身パターンを持つことは進化的に重要だったはずです」 頭足類の皮膚は、色素胞と呼ばれる細胞
米ワイオミング州コモ・ブラフにあるボーン・キャビン採石場で巨大なマンモスの骨を発掘する男たち。19世紀、ライバル関係にあった古生物学者のオスニエル・チャールズ・マーシュとエドワード・ドリンカー・コープは、恐竜の化石が豊富なこの尾根にそれぞれの発掘場所を確保していた。ここはまた、2人による化石戦争の舞台でもあった。(PHOTOGRAPH BY UNIVERSAL HISTORY ARCHIVE, GETTY IMAGES) 2人はロックスターのような学者だったが、キャリアを台無しにするほどの壮絶な確執があった。 オスニエル・チャールズ・マーシュとエドワード・ドリンカー・コープは19世紀を代表する化石ハンターだった。2人は古生物学の黎明(れいめい)期に、ステゴサウルスやトリケラトプス、リストロサウルスを含む100以上の恐竜を発見した。(参考記事:「奇跡の恐竜化石、世紀の大発見 写真18点」)
研究ボランティアとして3500年前のデンドラの甲冑のレプリカを着用し、青銅器時代の剣のレプリカを持つギリシャ軍兵士。イノシシの牙から作られた兜は、ミケーネ時代の兵士の勇敢さと狩猟の腕前を表している。(PHOTOGRAPH BY ANDREAS FLOURIS AND MARIJA MARKOVIĆ) トロイア戦争を描いたホメロスの叙事詩『イーリアス』における甲冑(かっちゅう)は、戦士の体を保護するだけのものではない。「甲冑は、しばしば戦士のアイデンティティとステータスを象徴し、英雄の規範と結びついていました」と、ギリシャ、テッサリア大学の生理学教授アンドレアス・フローリス氏は言う。「つまり、英雄の名誉と武勇を目に見える形にしたものなのです」 では、ギリシャの青銅器時代の甲冑は、実際の戦場で圧倒的な優位をもたらしたのだろうか? 古くからのこの疑問に、2024年5月22日付けで学術誌「PLOS
新たに発見された恐竜コレケンの復元図。(ILLUSTRATION BY GABRIEL DIAZ YANTÉN) すべてはかぎ爪から始まった。アルゼンチンのラ・コロニア累層で恐竜の化石を探していたとき、古生物学者たちが岩石から突き出た足の指の骨に気付いた。さらに掘り出して調べてみると、鼻の低い肉食恐竜アベリサウルス類の新種と判明した。小惑星の衝突によって白亜紀が終わる数百万年前、太古のパタゴニアを歩いていた肉食恐竜だ。この発見は5月21日付で学術誌「Cladistics」に発表された。 アルゼンチンにあるエジディオ・フェルグリオ古生物博物館の古生物学者ディエゴ・ポル氏らは、この恐竜をコレケン・イナカヤリ(Koleken inakayali)と命名した。パタゴニア東部の先住民族テウェルチェの首長だったイナカヤルにちなむ名前で、テウェルチェ語で「粘土と水から生まれる」という意味だ。
チャバネゴキブリ(Blattella germanica)は、約2100年前、現在のインドとミャンマーにあたる地域でオキナワチャバネゴキブリ(Blattella asahinai)から進化した可能性が高い。(PHOTOGRAPH BY OZGUR KEREM BULUR/SCIENCE PHOTO LIBRARY) 夜食でも食べようとベッドから起き上がり、キッチンの明かりをつけると、冷蔵庫の下にツヤツヤと光る茶色い昆虫の群れがうごめいているのを見つけた経験はないだろうか。その昆虫とはもちろん、チャバネゴキブリ(Blattella germanica)だ。 この嫌われ者の訪問客は、どのようにして世界に悪名をとどろかせる害虫となったのだろうか。5月20日付けで学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された新たな研究によると、その答えはチャバネゴキブリのDNAに記されていた。 いつ、ど
ピックルボールとは、テニス、バドミントン、卓球の要素を組み合わせたラケットスポーツで、心肺機能を高め、減量を助け、バランスや運動協調性、柔軟性を高める全身運動だ。(PHOTOGRAPH BY LINDSEY WASSON, THE NEW YORK TIMES/REDUX) 米ユタ州の会社経営者であるエド・ワーツ氏は、新型コロナウイルスの流行が始まったころに自身が経営するジムを閉めた後、アクティブでいる方法を探していた。ある晩、妻からデートで「ピックルボール」をやってみないかと提案された。「それ以来、妻と週に2〜3回プレーしています」と71歳のワーツ氏は言う。 米国ではこの夫婦を含め3600万人がピックルボールをプレーしており、競技人口の伸び率が3年連続で最も大きいスポーツとなっている。 「比較的短期間で、ピックルボールの人気はすでにランニングやバスケットボール、サイクリング、ゴルフのレベ
岩手県大船渡市の地層から約4億年前の植物化石を発見したと、静岡大学などの研究グループが発表した。古生代前期デボン紀のもので、これまで日本で見つかっていた最も古い化石より1000万年ほど前のもので、最古の植物化石としている。日本は地殻活動が活発で、欧州などに比べて植物化石が残りにくいとされる中での発見。当時は背の低い植物が草原のように広がっていたと推測できるという。 静岡大学理学部のルグラン・ジュリアン助教(古植物学・古生態学)らのグループは、現在の大船渡市に分布する「中里層」と呼ばれる地層から胞子の化石を採取した。この中里層には地層の堆積した時代の推定に役立つ示準化石の三葉虫が含まれているため、約4.1億~3.9億年前の前期デボン紀のものであることが分かっている。胞子化石は地熱と圧力によって黒く焦げていたため、走査型電子顕微鏡を用いて表面を観察した。
エジプトのサッカラにあるジェセル王の階段ピラミッドの近くで、ロバに乗る子どもたち。このピラミッドは、紀元前2650年ごろに建てられたエジプト最古のピラミッドと考えられている。ナイル川が「穏やか」になり、交通に利用されるようになったころに造られた。(PHOTOGRAPH BY KENNETH GARRETT, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 現在、ギザのピラミッドは、砂と岩ばかりの砂漠の景色の中にたたずんでいる。そこは、青々としたナイル川の岸辺から何キロも離れている。 だからこそ、姿を消した王国の壮大な遺跡という印象が強いのだろう。しかし、昔からずっとそうだったわけではないようだ。5月16日付けで学術誌「Communications Earth & Environment」に掲載された新たな研究によると、かつてピラミッドはナイル川の大きな支流沿いにあり、たくさんの船がそこ
専門家によれば、市販のトウガラシはより大きく、よりマイルドになっている。他方では、トウガラシの辛さを追求している生産者もいる。(PHOTOGRAPH BY IAN LAKER, GETTY IMAGES) トウガラシはとても刺激的だ。顔や耳が赤くなったり、息が荒くなったり、涙や汗が流れたり、時にはののしり言葉が出てきたり。もともとトウガラシは話題になるが、それにしても、ここ数年は爆発的に存在感を増している。(参考記事:「トウガラシが辛いのは菌類を撃退するためだった」) 例えば、シラチャーソースは2022年、厳しい気候条件が原因で店頭から姿を消したが、2024年も同じ理由で品薄になるかもしれない。2023年には、世界で最も辛いトウガラシ2種を使用したトルティーヤチップスが「念のため」に店頭から撤去された。ちなみに、このトルティーヤチップスを食べた後に14歳の息子が死亡した、と家族は主張してい
また、さまざまな研究からは、電動自転車は血糖値の管理に役立ち、BMI(体格指数)を改善し、さらには「関節にやさしい、すばらしく低衝撃の運動」になると、米テネシー大学ノックスビル校の運動生理学名誉教授デビッド・バセット氏は言う。氏によると、血圧を改善することも示されているという。 実際、心血管系および呼吸器系への恩恵は、電動自転車も従来の自転車もほとんど変わらない。米ブリガムヤング大学公衆衛生学部のグループによる研究で、マウンテンバイクに乗り慣れている参加者を集め、電動自転車と従来の自転車に乗ってコースを走ってもらったところ、どちらの自転車でも大半の人は「高強度の運動の心拍数ゾーン」に入っていたことがわかった。 別の研究でも同様の結論が得られているほか、先に挙げたレビュー論文では、電動自転車に乗ったときの酸素摂取量は最大酸素摂取量の51〜73%、従来の自転車では58~74%とほぼ変わらなかっ
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