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イタリアの固有種で唯一の大型淡水ガニ「ポタモン・フルビアティレ(Potamon fluviatile)」は、「かつて生息していた古代の群れの生き残り」だ。彼らはローマ帝国の興亡を目にしてきたかもしれない。トラヤヌスの広場で撮影。(PHOTOGRAPH BY EMANUELE BIGGI) 2005年、ローマの中心部にあるフォロ・トライアーノ(トラヤヌスの広場)で発掘を進めていた考古学者らが、古代の下水道を掘り当てた。その内部からは、大理石でできた紀元4世紀のコンスタンティヌスの胸像のほか、イタリアの固有種としては唯一の大型淡水ガニである「ポタモン・フルビアティレ(Potamon fluviatile)」の群れが見つかった。研究者らは、この群れの起源は非常に古く、ローマが単なる渓谷の湿地帯に過ぎなかった時代にまでさかのぼると推測している。 古代ローマ帝国の興亡を目にしてきたかもしれない彼らだ
1384年4月25日に誕生したティムールの孫イスカンダル王子のホロスコープ。イマッド・アル・ディン・マフムード・アル・カシが「イスカンダル誕生の書(The Book of the Birth of Iskandar)」に描いたものだ。疑似科学であるにもかかわらず、占星術や星占いは今も人気があり、天体の動きの解釈に基づき、多くの人が自分自身や人間関係、人生の選択についての洞察を得ている。(PHOTOGRAPH BY WERNER FORMAN, UNIVERSAL IMAGES GROUP/GETTY IMAGES) 多くの人が星に安らぎを見いだしており、自分自身の性格の謎を解き明かし、この先に何が待ち受けているかを予見するため、星占いを頼りにしている。星座や星占いは現代的なものに見えるかもしれないが、経験的証拠や科学的厳密性に欠けるという批判にもかかわらず、占星術は数千年にわたって文明を形
ロングアイランド沖での調査中、ホホジロザメの赤ちゃんが餌に食い付いた。おそらくリバティとは異なる個体。(NATIONAL GEOGRAPHIC/JAMES BLAKE) 米国ニューヨーク州ロングアイランドの砂浜を埋め尽くす海水浴客は、この温暖な海が海水浴に最適な場所だと感じているのは自分たちだけではないと知って、驚くかもしれない。実は、ニューヨーク湾と呼ばれるロングアイランド沖の海域では、何百匹ものホホジロザメの赤ちゃんが餌のとり方、移動の仕方、捕食者を避ける方法を学んでいる。研究者たちは、この海域がホホジロザメにとって、北大西洋の主要な、そしておそらく唯一の生育場だと考えている。 かつて乱獲によって絶滅寸前まで追い込まれた北大西洋のホホジロザメは、近年、その餌であるハイイロアザラシが増えるにつれて回復している。現在、その数は約800匹と推定されている。 「私たちが知る限り、ロングアイラン
エジプトのルクソール近郊の町エスナにあるクヌム神殿から煤や泥を取り除いたところ、天井や円柱が2000年前の色鮮やかな姿を取り戻した。(ELIZABETH BEARD/GETTY IMGAGES) およそ2000年前につくられた古代エジプトの神殿の天井を研究者チームが復元したところ、驚くべき発見がもたらされた。黄道12星座やその他の星々を描いたフルカラーのレリーフのほか、ヒエログリフ(象形文字)の碑文も見つかり、これらの天体図に隠された意味を解くカギとなりそうだ。(参考記事:「ヒエログリフを解読した「エジプト学の父」シャンポリオンの生涯」) 天井が復元された神殿は、エジプト中南部の町エスナに残るクヌム神殿だ。プロジェクトには考古学者でエジプト学者のヒシャム・エライシー氏を中心とするエジプト観光・考古省と、ドイツのテュービンゲン大学から計30人の研究者が参加。5年余りに及ぶ作業で、当時の色彩を
2023年の米国の独立記念日にドローンを使ってニューヨークの夜空に描き出された自由の女神像。(PHOTOGRAPH BY DAVE KOTINSKY, NBC, GETTY IMAGES) 毎年7月4日、米国の独立記念日を祝う多くの米国人に祝典の終わりを告げるのは、ごう音と共に夜空を照らす花火だ。しかし今、米国の各地、そしてこれまで花火を打ち上げてきた世界各地のイベントで、花火を中止するケースが増えている。代わりに夜空を彩るのは、ドローンの大群が一斉に描き出すアニメーションだ。(参考記事:「アメリカ独立記念日、俗説の真相」) ドローンショーが増えているのは、今ドローンへの関心が高いからとも言えるだろう。しかしドローンショーを推進する人々は、人にも動物にも環境にも悪影響を及ぼす花火はもうやめるべきだと言う。今年は、米国各地でドローンショーが見られそうだ。 はたして、ドローンショーは花火にとっ
65歳の女性の骨盤を撮影した着色X線画像。子宮内に石灰化した筋腫(中央の青い部分)が確認できる。子宮筋腫は線維組織と筋肉組織からなる良性の腫瘍であり、ほとんどの場合治療の必要はないものの、出血や痛み、その他の婦人科疾患を引き起こす可能性がある。(PHOTOGRAPH BY SCIENCE SOURCE) 古代ローマの医師たちは紀元200年ごろにはすでに、女性の子宮壁には良性の腫瘍ができる場合が少なくないことを認識していた。米国では白人女性の約70%、黒人女性の80%以上が、50歳までに子宮筋腫ができると推定される(編注:日本では生涯に30~50%がかかると推定される)。しかし、子宮筋腫にはいまだに多くの疑問が残されており、なぜ発生するのか、何が成長を促すのかといった基本的なこともわかっていない。 子宮筋腫は、子宮壁の内側にできる平滑筋細胞と結合組織の塊だ。筋腫が大きくなると、女性の生活の質
このフロリダオオアリ(Camponotus floridanus)が負傷した仲間の脚を切断して治療する姿が初めて観察された。(PHOTOGRAPH BY WAFFA/SHUTTERSTOCK) 近年、野生動物がさまざまな方法で治療を行うことがわかってきている。キツネザルは腸内寄生虫から身を守るため、かみ砕いたヤスデを使うことがある。チンパンジーとオランウータンは傷に湿布を貼る姿を目撃されている。そしてついに、フロリダオオアリ(Camponotus floridanus)が「切断手術」を行っていることが、7月2日付けで学術誌「Current Biology」で報告された。ヒトは3万年以上前から切断手術を行ってきたが、動物界では初の事例だ。 フロリダオオアリのコロニーでの生活は、特にほかのコロニーが近くにある場合、危険と隣り合わせだ。日没後、近くのアリ同士が戦争を繰り広げ、多くの負傷者が出るこ
2022年12月25日と26日、研究者たちはノルウェーのロングイェールビーン(写真)で珍しい「電子の雨(ポーラーレイン)」によるオーロラを観測した。一般的なオーロラとは異なるメカニズムで形成され、観測は極めて困難だ。(PHOTOGRAPH BY FREDRIK MELING, 500PX/GETTY IMAGES) あるクリスマスの明け方近く、ノルウェーの北極圏にあるスバールバル諸島で、魚眼レンズが鮮やかな緑色の夜空を捉えた。ヘビのように細い構造が星座の下で織りなすような荘厳なオーロラとは異なり、ほぼ均一な緑色の毛布のように空一面に広がっていた。 「このオーロラは非常に滑らかな形をしており、緑がかったものがただ広がっているような構造でした。まるで大きな緑色のケーキのようでした」と宇宙物理学者である電気通信大学大学院の細川敬祐(ほそかわ けいすけ)教授は言う。細川氏らは、このオーロラが「電子
水分摂取を制限したマウスは、通常のマウスに比べて便通が悪くなるだけではなく、腸内細菌のバランスが崩れ、病原菌の排出にも時間がかかることを、北里大学などの研究グループが明らかにした。水分量を通常の半分に減らすと、腸の免疫に著しい乱れが生じ、感染症にかかりやすいことが確認できた。今後はヒトでも同様の結果が生じるかどうかを調べるという。 北里大学薬学部微生物学教室の金倫基教授(腸内細菌学・免疫学)らのグループは、食事が腸内環境に与える影響は多く研究されているが、水分に着目した研究はなかったことから、今回の実験を始めた。一般的に「水分不足で便秘になる」と言われているものの、それ以外の影響もあるのかを調べる狙いもあった。マウスは実験ごとに3~20匹ずつ使った。 マウスは1日3~5ミリリットルの水分を摂るとされている。通常のマウスと飲水を25%制限したマウス、50%制限したマウスの3群を用意して比較し
親しい人の顔を覚えられなかったり、目の前にいる人の顔を識別できなかったりする「相貌失認」の人は、これまで考えられていたよりも多い可能性が研究で明らかになった。(PHOTOGRAPH BY BALLBURN_PHOTOGRAPHY, GETTY IMAGES) 伝説の霊長類学者ジェーン・グドール氏、俳優のブラッド・ピット氏、そして『妻と帽子をまちがえた男』の著者として知られる神経学者の故オリバー・サックス氏の共通点は何か? 答えは親しい人や有名人の顔を覚えられなかったり、見分けがつかなかったりする「相貌失認(そうぼうしつにん)」だ。 長年、相貌失認はまれな障害とされてきたが、2023年に学術誌「Cortex」に掲載された論文によれば、相貌失認の人はこれまで考えられていたよりも多い可能性があるという。この研究では、相貌失認の重さや症状は連続的で、その有無を単純に判定できず、使用する基準によって
森林において樹木が生育する土壌に特有の微生物の集まり(微生物叢)が落葉を効率的に分解していることを東京大学などの研究グループが野外実験で実証した。森林生態系の物質循環を担う微生物叢の働きに差があることを示しており、今後の森林保全において場所ごとに特有の微生物叢を保つことが重要だとしている。 森林生態系では、地面に落ちた樹木の葉が土壌中の微生物に分解され、分解の過程でできた栄養分を根から樹木が吸い上げて成長し、茂った葉がまた落ちて微生物に分解される――という、落葉と分解を伴う物質循環が起きている。落葉の分解速度については、「温度が高い方が微生物は活発に働く」「柔らかくて栄養分豊富な葉では分解が進みやすい」など、地域の気候や落葉自体の性質によって主に決まると考えられていた。 一方で、樹木が育つ場所(ホーム)はほかの場所(アウェー)より効率的に落葉を分解するという「ホームフィールド・アドバンテー
沖縄県の西表島(竹富町)に生息する国の特別天然記念物で絶滅危惧種のイリオモテヤマネコとカンムリワシは、食物連鎖の頂点にいるにもかかわらず、互いに競合しないで餌を分け合っていることを、琉球大学などの研究グループが明らかにした。フンに含まれるDNAから食性を解析し、季節を違えて同じ種類の餌を食べていることがわかった。沖縄には相互扶助の「ゆいまーる」という文化があるが、2種も同様の形で生き残ってきた。 イリオモテヤマネコ(左)とカンムリワシは季節でエサを食べ分けて共存できていることが分かった(イリオモテヤマネコ:琉球大学理学部動物生態学研究室提供 カンムリワシ:沖縄こどもの国提供) 食物連鎖の頂点同士の共存 世界自然遺産である西表島は沖縄島から約400キロメートル離れており、島の大半を環境省・林野庁が管理している。独自の生態系が存在し、県内の他の離島に比べて手つかずの自然が残る。この西表島で食物
西アフリカの国ベナンで、低木に留まって休むヒメアカタテハ(Vanessa cardui)。(PHOTOGRAPH BY GERARD TALAVERA) ヨーロッパで生まれたチョウが、西アフリカを経て南米まで7000キロを旅した可能性を示す研究結果が発表された。昆虫の渡りとしては最長クラスの記録となる。研究は6月25日付けで学術誌「Nature Communications」に発表された。 10年ほど前のある秋、論文の筆頭著者でナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)のへラルド・タラベラ氏は、南米フランス領ギアナの海岸で「いるはずがない」ものを探していた。ヒメアカタテハ(Vanessa cardui)と呼ばれるチョウの仲間だ。 トラのような体色のヒメアカタテハは、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、北米、オーストラリアでよく見られる。南米には生息していないのだが、時折そこでヒメア
スピリチュアルなメロディーとアンデスの楽器をヒップホップのビートと融合させるハビエル・クルス。彼のラップネームであるサラ・クタイは「トウモロコシをひく」という意味だ。クルスは少年時代、両親を手伝い、穀物をひいていたという。(PHOTOGRAPH BY VICTOR ZEA DIAZ) ケチュア語を話す若いミュージシャンたちが、ヒップホップ音楽を自分たちの言語と文化を表現する手段に変えた。 それは2024年、ある晴れた1月の午後のことだった。ここは、ペルー南部のチチカカ湖畔近くにある都市フリアカ。1年前に政府の治安部隊に虐殺された18人のデモ参加者と見物人を追悼するため、先住民のケチュア族とアイマラ族の人々が何千人も広場に集まっていた。そのなかに、黒い上着、つばの広い黒い帽子、黒と金のブーツに身を包み、黒い馬にまたがった男性がいた。その姿は、スペイン帝国に対する反乱を指揮し、アンデス地方にお
古代都市ペトラで最もよく知られている名所であり、別名「修道院」とも呼ばれる「エド・ディル」。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL O. SNYDER) ヨルダン南部の街ワディ・ムーサで少年時代を過ごしたモハマド・アルファラジャト氏が、かつて父親から聞かされた話によると、昔このあたりの砂漠の峡谷には緑の小麦が揺れる段々畑が広がり、実り豊かなアプリコットの果樹園やイチジクの木が、地元の人々のお腹を満たしていたという。 現在、ヨルダンのマアーン近郊にあるアル・フセイン・ビン・タラール大学の地質学者となったアルファラジャト氏は、そうした恵みの痕跡は今ではほとんど残っていないと語る。乾燥した時期が長くなるにつれ、父親やその前の世代を養ってきた畑を維持するのは困難になっていった。 「40年前に気候変動が始まると、肥沃なエリアは徐々に狭くなっていきました」と氏は言う。「以前は自給自足で暮らしてい
思春期早発症とは第二次性徴が平均より2~3年早く現れることを指す。日本では女の子の場合、乳房の発達が7歳未満あるいは7歳6カ月未満で始まるなどの定義がある。(PHOTOGRAPH BY SDI PRODUCTIONS, GETTY IMAGES) 思春期が始まる平均的な年齢は、20世紀以降、下がり続けており、中には6〜7歳から胸の発達が始まる女の子もいる。こうした早い時期からの生殖機能の発達は、女性の体と心の健康に深刻な影響を及ぼす可能性があると専門家は言う。 世界的に女の子の間で、思春期が始まる平均年齢が、1977~2013年の間に10年ごとに3カ月ずつ早まっていることが、2020年に医学誌「JAMA Pediatrics」に掲載されたレビュー論文で示されている。つまり、この傾向が今も続いていれば、思春期が合計で1年以上も早まっていることになる。女の子の場合、思春期の最初の兆候は乳房の成
コロンビア、ボゴタの主要な飲料水源であるサン・ラファエルダムは、エルニーニョ現象による高温のため、危険なほど水位が低下している。(PHOTOGRAPH BY IVAN VALENCIA/AP) メキシコの首都のメキシコシティが今、歴史的な水不足に陥っている。記録的な暑さと長年の干ばつに加え、2023年6月にはエルニーニョ現象のせいで雨期が縮まり、2024年6月の時点で、ダムの容量は27%未満だ。夏が始まる中、2300万人が暮らす巨大都市は災害の瀬戸際に立たされている。 メキシコシティが受けている影響は、今のところ壊滅的だ。地元の水道局のデータを分析したところ、550以上の地区で水道水が止められたり、水圧が下げられたりしている。これらの節水措置により、住民は不定期で高額な給水車の水を、集められる限りの容器に溜めなければならない状況だ。 すぐにでも豪雨が降らなければ、メキシコシティのカツァマラ
冬眠中のシリアンハムスターは爪の伸びが止まる一方、爪自体に異常は生じず綺麗に保たれていることを北海道大学などの研究グループが発見した。哺乳類の爪は根元にある幹細胞が分裂と分化を繰り返すことで伸びる。冬眠の極端な体温変化では細胞分裂が停止するにもかかわらず組織構造を維持する仕組みを調べることで、人の爪の健康にもつながる知見が得られる可能性があるという。 冬眠して丸まっているシリアンハムスター。ほぼ外気温まで体温が下がる。冬眠中も綺麗な爪を保つことができる(北海道大学低温科学研究所の山口良文教授提供) 哺乳類の爪は、病気や栄養不足といった過度なストレスがかかると変色や変形が起きることが多い。冬眠をする小動物は、体温が外気温近くに下がる。北海道大学低温科学研究所の山口良文教授(分子冬眠学)らはこの低体温状態というストレス下で、爪に何か変化が起こるのかどうかを、調べることにした。 山口教授らは実験
2024年の夏に東京・上野の国立科学博物館で開催される特別展「昆虫 MANIAC」。みなさんに昆虫の深くて豊かな魅力を知ってもらいたい! そんな思いを込めて、同展の監修者である昆虫博士たちによるエッセイを掲載します。
2021年、米カリフォルニア州のデスバレー国立公園で温度計の写真を撮る職員。1975年、メートル法は国が推奨する単位であると正式に宣言されたが、一般市民への普及はなかなか進まない。(PHOTOGRAPH BY ROGER KISBY, REDUX) 米国、ミャンマー、リベリアの共通点をご存じだろうか。「この3カ国には恥ずかしい類似点がある」とメートル法支持者は主張する。メートル、グラム、キロメートルではなく、フィート、ポンド、マイルという帝国単位(ヤード・ポンド法)を使用しているのだ。 しかし、実は、話はもっとややこしい。米国ではフィートやポンドといった単位が広く使われているが、実際に国が推奨しているのはメートル法だ。 では、なぜ米国人はメートル法を使わないのか? メートル法の発展の歴史と、なかなか日常生活に定着しない理由を見ていこう。 実は推奨されていた まずはこんな事実から。「米国では
このイラストのように、恒星は燃料を使い果たすと爆発する。天文学者は毎年、何千もの爆発を目撃しているが、そのほとんどは地球から比較的近い場所で起きている。ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の新しいデータから、宇宙初期の超新星が多く発見され、太古の宇宙で起きた爆発の記録が急増した。(ILLUSTRATION BY MEHAU KULYK, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 遠く離れた超新星を観測することは、過去をさかのぼるようなものだ。超新星爆発は天文学者に、何十億年も前の宇宙がどのような姿だったかを教えてくれる。天文学者たちは現在、遠くにある宇宙初期の超新星をこれまでより10倍も多く発見しており、6月7日付けで査読前論文を投稿するサーバー「arXiv」に発表した。その中には、観測史上最も古く、最も遠い超新星が含まれる。 これらの超新星は、米航空宇宙局(NASA)のジェームズ・ウェッブ
トラウマが遺伝子のオン・オフを変化させ、世代を超えて受け継がれる可能性があることを示唆する科学的証拠が集まりつつある。(PHOTOGRAPH BY TEK IMAGE, SCIENCE PHOTO LIBRARY) 最新科学の知見によると、戦争や大量虐殺から虐待や環境要因まで、さまざまなトラウマの影響が世代から世代へと受け継がれている可能性があるという。 「あなたのお母さんやお父さんが経験した深刻なトラウマが、自分に影響を及ぼしているような気がすることはないでしょうか?」と、米マウントサイナイ医科大学の精神医学と神経科学の教授で、トラウマについて研究しているレイチェル・イェフダ氏は問いかける。氏の研究は、人生を変えるほどのトラウマが、「エピジェネティックなシグナル」として子孫に受け継がれることを示している。 「エピジェネティクス(後成遺伝学)」は、遺伝子のオン・オフのしくみを研究する学問分
2024年6月、米国イエローストーン国立公園内のラマー・バレーで、白いバイソンの赤ちゃんが生まれた。白いバイソンは、米国先住民の文化においては聖なる動物で、「神の祝福であると同時に警告でもある」と考えられている。(Photograph by Erin Braaten, Dancing Aspens Photography) 野生動物の誕生が大きな話題になることはあまりないが、米国ワイオミング州で撮影された白いアメリカバイソンの赤ちゃんが、人々の関心をさらっている。「数分違いで誕生の瞬間を逃してしまいました」。6月4日、写真家のエリン・ブラーテン氏はフェイスブックにこう投稿した後、イエローストーン国立公園で白いバイソンが誕生したニュースは瞬く間に世界に拡散した。 キリン、バク、サルからピューマ、アナグマ、そしてカエルやヘビに至るまで、白、黄色、またはブロンドの個体は人々を魅了する。しかし今回
温度知覚に関する実験のため、イタリア、ボルツァーノの人工気象室に座るギュンター・コローニャさん。実験中は数秒ごとに無線機で連絡を取り、温度の変化を感じたかどうかを伝えた。この研究では、人はわずかな温度変化にも敏感であることがわかった。(PHOTOGRAPH BY GAIA SQUARCI) 私たち人類は歴史を通じて、地球に少しずつ影響を与え続けてきた。1850年ごろの産業革命以来、地球は着実に温暖化しており、1982年以降、その速度は3倍に増している。2100年までに、地球の平均気温は産業革命前に比べて2.7℃上昇し、さまざまな影響がもたらされると専門家は予測している。 2023年は観測史上最も暑い年として記録され、2024年夏も米国とヨーロッパ全域で猛暑が予想されている。こうした平均気温の上昇がどんなものかを理解するのは難しいかもしれないが、あなたの体は気温が1℃でも違えば感じ取れるよう
ジョン・エベレット・ミレーによって1878年に描かれた「塔の中の王子たち」。英ロンドン大学ロイヤルホロウェイ校ピクチャーギャラリー所蔵。エドワード5世(1470~83年?)(右)と弟のヨーク公リチャードは、1483年にロンドン塔に幽閉された後、姿を消した。(PHOTOGRAPH BY ROYAL HOLLOWAY, UNIVERSITY OF LONDON, BRIDGEMAN IMAGES) 1483年の夏、イングランド王エドワード5世と弟のリチャードは、ロンドン塔に幽閉されたのを最後に、消息を絶った。それから何世紀もの間、叔父であるリチャード3世が2人を暗殺したのではないかと、確かな証拠もないまま言われてきた。 そこで調査に乗り出したのが、2012年に英国レスターの駐車場からリチャード3世の遺骨を発見したことで知られる歴史家のフィリッパ・ラングレー氏だ。映画『ロスト・キング 500年越
南極の巨大ウミグモの一種。南極のデイトンズウォールとよばれる多様な生物が生息する場所で、2015年に撮影。(PHOTOGRAPH BY ROB ROBBINS) タツノオトシゴのお父さんが子育てすることはよく知られている。しかし、ウミグモも似たようなことをすることは、あまり知られていない。(参考記事:「【動画】一気に2000匹!タツノオトシゴのオスの出産シーン」) 長い脚を持つウミグモは、世界中の海に1500種ほどが生息している。潮の満ち引きの合間に潮だまりをうろつく小さなものから、極地の深海を歩きまわる大型のものまで、ほとんどのオスのウミグモは生まれる前から子どもを大切にする子煩悩な父親だ。そして、このほど発表された南極に生息する巨大なオオウミグモ(Colossendeis megalonyx)の研究で、父親の子育てがどのように始まったのかについて、新たな手がかりがもたらされた。 かつて
フン・フンアフプーは斬首されたが、木に吊るされていた頭が乙女を孕(はら)ませ、こうして生まれた双子の英雄フンアフプーとイシュバランケは、犠牲と復活を繰り返しながら見事父の仇を討った。トウモロコシの枯死と芽生えは、双子の英雄の死と再生の象徴とされている。 バルケラ氏は、マヤの人々は、生贄の子どもたちが埋葬された洞窟のような地下構造物を、冥界への入り口と見なしていたと考えている。そして、トウモロコシの豊作を祈願するため、英雄と同じ双子の少年や、その代わりとなる近縁にある少年を生贄にしていたのかもしれないという。 「別の方法」で殺された? バルケラ氏らの研究は、考古学者にさらなる疑問を投げかけた。1つは子どもたちの死因だ。すぐ近くにある水をたたえた陥没穴の「聖なるセノーテ」にも遺体が沈められているが、それらの遺骨と違い、この洞窟で見つかった骨には人為的な損傷の痕跡が見られなかったのだ。(参考記事
マヤ文明の古代都市チチェンイツァの大ピラミッド「エル・カスティージョ」。生贄を埋葬した貯水槽チュルトゥンと聖なるセノーテは、ともにこの近くにある。(PHOTOGRAPH BY CRISTINA MITTERMEIER, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 1967年、古代マヤで最も栄えた都市の1つチチェンイツァの貯水槽「チュルトゥン」とそこにつながる洞窟で、考古学者たちが多数の人骨を発見した。このチュルトゥンは8世紀にわたって若い成人や子どもの生贄の埋葬に使われ、遺体のほとんどが若い女性とされてきた。マヤ文明は儀式の生贄に女性を捧げることを好んだと考えられていたからだ。(参考記事:「チュルトゥンの図解も、知ってるようで知らないマヤ文明」) しかし、2024年6月12日付けで学術誌「ネイチャー」に発表された論文が定説を覆した。回収された64体の遺骨のDNAを分析したところ、す
山形県山辺町の湖沼、「畑谷大沼」で遺伝子型が異なるミジンコの2集団が共存しているのは、飼育下では負けて絶滅する側の集団が休眠卵を早めに産むことで長期に生き残る戦略をとっているためと東北大学などのグループが明らかにした。9年にわたる観測で休眠卵が不適な環境を乗り越えるだけでなく、競争による絶滅の回避や共存にも重要であることがわかった。今後その生態的意義や進化、分子機構の解明が期待されるとしている。 山形県の畑谷大沼において共存しているミジンコのJPN1(左)とJPN2。見た目の違いはほぼ無いが、遺伝子型で区別できる(宇都宮大学の丸岡奈津美博士研究員提供) ミジンコ類は湖沼に生息する代表的な動物プランクトン。日本にいるミジンコは北米大陸からの侵入種で、オスとメスが交尾して子どもができることはなく、単為生殖によってクローンを生産し続ける。 水温20度下では約3日のペースで全く同じ遺伝子をもつ卵を
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