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血液検査でアルツハイマー病を診断できれば画期的だ。新たに開発された血液検査は、成人のアルツハイマー病を90%の精度で診断できるという。現時点では、診断にはより体への負担が大きい脳脊髄液の検査やPET検査が必要だ。(PHOTOGRAPH BY FLORENTIN CATARGIU, 500PX/GETTY IMAGES) 科学者たちは長年、血液検査によってアルツハイマー病の証拠を見つける方法の開発に取り組んできた。このほど、平均的な医師の診断より精度が高い新手法についての論文が、7月28日付けで医学誌「Journal of the Medical American Association(JAMA)」に掲載され、米国フィラデルフィアで開催された国際アルツハイマー病学会(AAIC)でも発表された。この方法は今のところ、発症前の検査として使うことは推奨されていないが、発症後の検査が受けやすくなる
『サド侯爵の呪い』には、ギュスターヴ・フローベールの描くような愛書狂を魅了するさまざまな書物が登場する。愛書狂が求める書物の多くは、驚くほど美しい。 たとえば小口絵というものがある。分厚い本の側面の角度を調節すると、絵が現れるという仕掛けがほどこされているのだ。動画もみつかるので(Youtube「A Hidden Art Form You’ll Flip For」など)、機会があればぜひみてほしい。 もっと奇妙なところでは、人間の皮膚で装丁した書物がある。『サド侯爵の呪い』の登場人物のひとり、フレデリック・ハンキーは個人で大量のエロティカの本を英国に持ちこんでいた蒐集家だ。彼の厳選した数少ないエロティックな本のコレクションには、性や死や拷問を想起させる露骨な装丁が施されている。彼は人間の皮膚で装丁したいと考え、できるなら生きている若い女性から剥いだ皮膚を求めていたという。 実際に人皮装丁本
オニグモ(Araneus ventricosus)の網にかかったオスのホタル。オニグモは、ホタルが交尾相手を見つけるために使う生物発光のシグナルを操作できるのではと、研究者たちは考えている。(Photograph by Xinhua Fu) クモは、驚くほど様々な狩りのテクニックを進化させてきた。唾液を使って獲物をわなにかける種もいれば、ヘビさえも捕らえられる強力な網を張る種もいる。最新の研究では、日本でもごく普通に見られるオニグモが、とりわけ巧みな戦術を使ってホタルを自分の網に誘い込んでいるという。(参考記事:「クモの驚くべき世界」) 2024年8月19日付けで学術誌「Current Biology」に発表された論文によると、このクモは、網にかかったオスのホタルが発する光を操作して、あたかも交尾相手を求めるメスが光を放っているかのように見せかけ、別のオスをおびき寄せているようだ。 クモが
新型コロナウイルスのオミクロン株(黄色)に感染した細胞(青色)。着色処理した走査型電子顕微鏡画像。(MICROGRAPH BY NIAID/NATIONAL INSTITUTES OF HEALTH/SCIENCE PHOTO LIBRARY) 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)が始まってから、これで5度目の夏になる。そして2024年の感染拡大は、夏に起こるものとしてはこれまでで最大規模となることが予想されている。 米疾病対策センター(CDC)は、救急外来のデータに基づき、8月13日の時点で25の州で新型コロナの感染が増えつつあると推定している。一方で、入院および死者の数は、今も最低水準にとどまっている。 日本の厚生労働省が8月16日付けで発表した新型コロナの発生状況では、全国の定点当たり報告数や入院患者数が5月から増え始め、7月ごろから急増したこと
バトゥ・ハーンによるルーシ侵攻の過程で、1238年にウラジーミル大公国の首都ウラジーミルを包囲するモンゴル軍を描いた絵画。(GETTY IMAGES) 歴史はチンギス・ハーンを、冷酷な征服者と、陸続きでは史上最大の帝国の創始者という2つの異なる顔で記憶している。1206年、チンギス・ハーンは、モンゴル高原のすべてのテュルク系、アルタイ系の遊牧民を統一するという、他の多くの征服者がなしえなかったことをなしとげたが、それはほんの始まりにすぎなかった。モンゴル帝国の初代皇帝となった彼は軍事の天才で、軍隊を大胆に動かして領土を拡大し、状況に合わせて速やかに動き、ねばり強く戦った。 チンギス・ハーンの帝国はアジア全域に広がり、既存の国家を一掃した。東方では、現在の中国にあった女真族の金とタングート族の西夏を滅ぼし、西方では、中央アジア南部の契丹族の西遼とホラーサーン地方のホラズム・シャー朝を滅ぼした
透過型電子顕微鏡で見たエムポックスウイルス粒子。通常は、アフリカ中央部と西部の熱帯雨林の近くで見つかる。自然宿主はげっ歯類だと考えられているが、ヒトからヒトへの感染も可能で、発熱、リンパ節の腫れ、水疱などが見られる。(Micrograph by UK Health Security Agency/Science Photo Library) アフリカでのエムポックスの流行を受け、世界保健機関(WHO)は国際保健規則(IHR)に基づく緊急委員会を開催した。コンゴ民主共和国では、2024年に入ってからの患者数が1万5600人以上にのぼり、537人が死亡している。心配なのは、ブルンジ、ケニア、ルワンダ、ウガンダなど、これまでエムポックスが確認されたことのない近隣諸国にも広がっていることだ。この状況を重く見たWHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」を宣言した。 緊急委員会の
約6600万年前、現在のユカタン半島付近に隕石が衝突し、恐竜時代を終わらせた大量絶滅が起きた。今回の研究で、その隕石が木星より外側からやってきたものであることが明らかになった。(Illustration by Nicolle R. Fuller / Science Photo Library) ティラノサウルスやトリケラトプスをはじめとして、鳥類を除く恐竜、翼竜や海竜などの爬虫類を絶滅させ、白亜紀を終わらせた直径10キロを超える隕石は、木星の向こう側からやってきたことが明らかになった。8月16日付けの学術誌「Science」で発表された論文によると、この巨大な岩の塊は地球の近くを周回していたのではなく、太陽系をはるばると旅してきたあと、地球に衝突したという。 6600万年前の衝突でできた巨大クレーターは、現在のメキシコ沿岸の海底にあり、チクシュルーブと呼ばれている。衝撃時には大規模な灼熱の
ハプロルキス・プミリオの兵隊が別の吸虫(Philophthalmus gralli)の体に張り付いて穴を開けようとしているところ。アリやシロアリが兵隊階級をつくることは知られているが、ヒトに感染する吸虫で兵隊が確認されたのは初だ。(VIDEO BY DANIEL METZ PHD) ハプロルキス・プミリオ(Haplorchis pumilio)という名前を聞いたことがあるという人はあまりいないだろうが、この小さな寄生虫が恐ろしい戦略をとっていることを科学者らが報告した。学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に掲載された新たな論文によると、この吸虫(寄生性の扁形動物)には、巨大な口をもつ極めて攻撃的な兵団を作り出す能力があるという。兵隊たちの目的はただひとつ、他の吸虫を見つけて張り付き、相手の中身を吸いとることだ。 特殊な兵隊型の個体には生殖器官がなく、自身のコピーを作れない。これは吸
新石器時代の人々がストーンヘンジの建設に使った石は、イングランドとウェールズ産だったことがすでに分かっている。新たな研究により、祭壇石はスコットランド産の可能性があるという。(Photograph by Reuben Wu, Nat Geo Image Collection) 100年以上にわたる探索の結果、研究者たちはストーンヘンジの中央に横たえられた「祭壇石」の起源を突き止めた。鉱物の年代と化学的性質に基づき、この石がストーンヘンジから750kmも離れたスコットランドから来ていることを、英アベリストウィス大学の地球科学者であるリチャード・ベビンズ氏らは2024年8月14日付けの学術誌「ネイチャー」に発表した。 英エクセター大学の考古学者であるスーザン・グリーニー氏は、研究チームが祭壇石の起源をスコットランドのはるか北東部と特定したことに胸を躍らせている。スコットランド北東部なら、新石器
眼球運動を用いたソマティックセラピーを受けるロヒンギャの女性たち。バングラデシュ、コックスバザールのRWウェルフェア協会ヒーリングセンターで撮影。ソマティックセラピーは従来の治療法に行き詰まりを感じている人々に、体への気付きによってトラウマや不安を和らげるという選択肢を提供している。(PHOTOGRAPH BY ALLISON JOYCE, GETTY IMAGES) 近年、より多くの人がメンタルヘルスについて助けを求めるようになっており、さまざまな治療法を模索している。状況が大きく進化するなかで、心と体をつないで回復を促す「ソマティックセラピー」が、従来のトークセラピー(心理療法)に行き詰まりや物足りなさを感じている人々の間で、有望な治療法として浮かび上がっている。 米国ソルトレイクシティ在住のジェイ・ヒューズさんも、従来の治療法を8年間にわたって受けた末、そのような岐路に立たされた。「
NASAのルナー・リコネサンス・オービター(背景に地球を配置したイメージ図)。「静かの海」と呼ばれる太古のマグマの海の下に、溶岩チューブの存在を直接的に示す証拠が発見された。(ILLUSTRATION BY UNIVERSITY OF TRENTO/ A. ROMEO/ NASA/ JPL-CALTECH (BRIAN KUMANCHIK/ CHRISTIAN LOPEZ)/ BILL ANDERS) アポロ計画以来の有人月面着陸が2020年代後半に予定されている。米航空宇宙局(NASA)のアルテミス計画だ。順調に進めば、水が豊富とされる月の南極域に、持続的な活動拠点が段階的につくられる。(参考記事:「人類を再び月面へ、NASA「アルテミス計画」ビジュアルガイド」) 2024年7月、この計画に朗報が届いた。月周回探査機のレーダー観測のデータを分析したところ、かつてアポロ11号が着陸した地点
透過電子顕微鏡(TEM)で撮影後、着色した組織内のリステリア。2024年夏、米国で数十人が感染し、2人が死亡した細菌だ。(SCIENCE SOURCE) 気温が上昇するにつれて、食中毒のリスクも高まる。2024年夏の記録的な暑さは、米国ですでに1件の大規模な食中毒を引き起こしている。米国当局は5月以降、加工肉食品に関連したリステリア症の急増を調査している。これまでに数十人が体調不良を訴え、2人が死亡している。(参考記事:「人は驚くほど空気温の変化に敏感、1℃未満の差でも気づく、研究」) 米食品医薬品局(FDA)によれば、米国では毎年、約4800万人(約6人に1人)が食中毒になっている。 「食中毒はよくあることで、食中毒と診断される件数より、実際の件数はさらに多い可能性が高い」とジョンズ・ホプキンス大学医学部の助教で、感染症を専門とするギーティカ・スード氏は述べている。 しかし実は、「良いこ
ブラジル沖のイタチザメの体内から、携帯電話などの電子機器に含まれる金属が検出された。(PHOTOGRAPH BY JEFF ROTMAN / NPL / MINDEN PICTURES) ブラジル南岸沖のイタチザメは、携帯電話や電気自動車などのテクノロジー機器に含まれる汚染物質を大量摂取している。こんな研究結果が2024年8月、学術誌「Environmental Pollution」に掲載された。論文の執筆者によれば、このような発見が発表されたのは今回が初めてだ。 これらの汚染物質には、私たちの世界を動かしているレアメタルが含まれている。国際的な規制当局がレアメタルの深海採掘にゴーサインを出すことを検討し、電子廃棄物の海洋への流入が増加している今、サメの体内からレアメタルが発見されたことは憂慮すべきことだ。 論文の執筆者の1人で、バハマのケープ・エルーセラ研究所でサメの研究保護プログラムを
ネッタイシマカ(写真)はデング熱をはじめとする多くの感染症を媒介する。研究者はネッタイシマカの遺伝子を改変し、デング熱感染地域の蚊の数を減らそうとしている。(Photograph by Joel Sartore, National Geographic, Photo Ark) 殺虫剤や蚊帳の普及により、蚊が媒介するマラリアやデング熱などの感染症にかかる恐れは、数十年にわたって軽減されてきた。けれども近年、蚊がこれらの対策を逃れるように進化しており、蚊媒介感染症の根絶に向けた戦いは失速し、押し戻されつつある。気候変動による温暖化も、蚊の生息域を拡大させ、蚊媒介感染症の蔓延を助長している。2023年は米国で約20年ぶりにマラリア感染が発生し、7月27日付けの医学誌「The Lancet」の巻頭言によると、2024年のデング熱の流行は史上最悪となった。 伝統的な蚊の駆除法の効果が失われてきた今、
体調不良で会社を休むより、頑張って出勤して仕事を片付ける。 一見美徳に思える働き方が実は労働生産性を落としている。いわゆる「プレゼンティーイズム」である。睡眠問題に悩む労働者も例外ではない。睡眠問題で体調が悪くなっても労働者本人は「休む理由にはならない」と深刻に受け止めず、それだけに長期に続き、悪影響も大きくなりがちだ。 睡眠不足や睡眠障害が労働生産性の低下や産業事故の発生に深く関わっていることは今では広く認知されているが、この問題を多くの人々に周知せしめた金字塔的レポートがある。1993年に米国睡眠障害調査研究委員会が米国議会で報告した「Wake Up America(目覚めよ、アメリカ)」がそれである。 その少し前に、スペースシャトル・チャレンジャー号爆発事故(1986年)やスリーマイル島原子力発電所事故(1979年)が米国民に大きな衝撃を与えていた。また交通事故死が年間7万人以上に達
クマムシの現生種(写真はオニクマムシ属)はその並外れた生存能力で知られるが、化石は極めて珍しい。(Micrograph By Ruben Duro / SCIENCE PHOTO LIBRARY) 小さな体のクマムシは、究極のサバイバーだ。5億年以上もの間に世界中に広がり、地球で最も厳しい環境のなかも生き延びてきた。そして最新の研究で白亜紀の琥珀に閉じ込められていたクマムシの化石を分析したところ、新種や進化の歴史に加えて、ほかの生物を軒並み絶滅に追いやった大災害をどう生き延びたかについての手掛かりも見つかった。論文は2024年8月6日付けで学術誌「Communications Biology」に発表された。(参考記事:「地上最強生物!? クマムシ」) 今回発見されたクマムシは、8300万年前から7200万年前の今のカナダで、木の樹脂のなかに閉じ込められた。同じ針葉樹林には、巨大なティラノサ
光害と霧で霞んで見える夜のニューヨーク。光害は自然に混乱をもたらしており、人工の光が樹木に与える影響により、昆虫が好まない硬い葉が育つようになっているという。(PHOTOGRAPH BY JIM RICHARDSON, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 人工の光によって夜空は過去10年ほどの間に毎年10%ずつ明るくなっており、過剰な人工の光がもたらす「光害(ひかりがい)」は、人類が環境にもたらした最も劇的な変化のひとつとなっている。そしてその変化には、世界中の昆虫たちも気がついている。(参考記事:「鳥がビルに衝突死も、野生生物を惑わす光害を減らそう」) 2024年8月5日付けで学術誌「Frontiers in Plant Science」に掲載された新たな論文によると、街灯のように夜通し点灯されている人工の光は、木々の葉を硬くし、昆虫にとってあまり食欲をそそらないものにし
米国メイン州ロングポンドでカヌーの船首に座るイングリッシュ・スプリンガー・スパニエル。(Photograph by Mauricio Handler, Nat Geo Image Collection) この夏、米国カリフォルニア州に住むアナイス・フェルトさんは愛犬「コーラ」をタホ湖に連れていった。タホ湖はシエラネバダ山中の湖で、人気の避暑地だ。美しい湖でほかの人たちがイヌを泳がせているのを見て、彼女もコーラを泳がせた。ところが「それから1時間もしないうちにコーラの具合が悪くなり、3時間も経たないうちに息を引き取ってしまったのです」。彼女は7月3日に公開したTikTokの動画で涙ながらにそう語った。(参考記事:「ペットロスを癒やす有名な詩『虹の橋』、謎だった作者が判明か」) フェルトさんによれば、原因は「有害藻類ブルーム(HABs)」であるという。生態系に普通に生息している藻類が大発生して
ヒメレンジャクはベリーを大量に食べるが、ときには発酵した果実を食べてしまい、方向感覚を失ったり、動きが鈍くなったりすることがある。(PHOTOGRAPH BY ROBBIE GEORGE, NAT GEO IMAGE COLLECTION) ブラジルのリオデジャネイロの海に暮らすブラジルヒラガシラの体内から、水路にしばしば投棄される違法薬物が検出されたという研究結果が発表され、「コカイン・シャーク」が話題になった。(参考記事:「『コカイン・シャーク』 ブラジルのリオデジャネイロから初の報告」) この現象は「多くのジョークを生んでいますが、事態はかなり深刻です」と、米テキサス州公園野生生物局の野生動物医であるサラ・ワイコフ氏は述べる。 「動物たちは、麻薬鎮痛剤のオピオイドや違法薬物だけでなく、避妊薬から抗生物質まで私たちが使用するあらゆるもので汚染されています」 もちろん、アヘンの原料となる
最近よくニュースになるのが、激しい乱気流による航空機内での事故だ。シンガポール航空、エア・ヨーロッパ(スペインの航空会社)、カタール航空と、相次いで乱気流事故が発生し、骨折などのけが人や、心臓発作による死者を出す事態になっている。 乱気流と気候変動について研究している英レディング大学の気候科学教授ポール・D・ウィリアムス氏は、気候変動のせいで同様の事故が起こりがちになっていると話す。 「衛星による観測が始まった1979年と比べると、今では北大西洋上空で起こる激しい晴天乱気流が55%増えています。この先も温室効果ガスの大量排出が続くと仮定すると、2060年代までには180%増加すると予測されています」。そうなれば、機内で負傷者が出るほど強い乱気流が起こる空域は3倍近く広がることになる。 研究者によれば、その理由は、西から東に向かって大気の上層を流れる強いジェット気流の速度が速まっているためだ
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)の中、シフトの合間につかの間の休息を取る看護師たち。ベルギー、モンス。(PHOTOGRAPH BY CEDRIC GERBEHAYE, NAT GEO IMAGE COLLECTION) ストレスの増加、不安、腰痛、高血圧。オフィスで長時間働いている人であればおそらく、働きすぎが健康にどのような影響を与えるかについて、多少は心当たりがあるだろう。 週4日勤務に切り替えるべきかどうかの議論が高まる中、それでも逆の方向へ向かっている職場もある。ギリシャでは7月、一部の雇用者に週6日勤務を義務付けることを許可する法律が可決され、また、サムスンは自社の経営陣に週6日勤務を要求している。 2021年、世界保健機関(WHO)と国際労働機関(ILO)は、働きすぎの健康リスクに関する論文を発表した。これによると、2016年には、週55時間以上をベースと
『サド侯爵の呪い 伝説の手稿『ソドムの百二十日』がたどった数奇な運命』は、手稿の受難、サド自身の波乱の生涯、投機詐欺という3本の糸がからみあうミステリー小説のようなノンフィクションだ。 さまざまなエピソードが盛り込まれており、翻訳中は調べものが多かった。ただおかげで、翻訳書には入りきらない興味深い話がたくさんみつかった。今回、それらをご紹介いただく機会をいただいたので、全3回でお届けしたいと思う。 第1回は、サドを取り巻く女性たちについてお話しさせてください。この本には、貴族の出であるサドの妻や義母から娼婦まで、さまざまな立場の女性が登場する。 まず注目したいのは、サドの妻ルネ=ペラジの母マリー=マドレーヌ・ド・モントルイユ。モントルイユ家でおとなしい夫を差し置いて決定権を持ち、「閣下(プレジデント)」の呼び名で知られていた女性だ。 1768年にサドがアルクイユ事件(物乞いの女性を暴行した
現在五輪の祭典で盛り上がるパリ、その喧騒からやや東にずれた場所では、およそ230年前にサド侯爵がバスティーユ監獄で『ソドムの百二十日』を書いていた。ノンフィクション書籍『サド侯爵の呪い 伝説の手稿『ソドムの百二十日』がたどった数奇な運命』では、この問題作の流浪と、文学や手稿をめぐる強烈な人々などを描いている。連載では、本書に関連するが詳しくは触れられていない、フランス史や文学史の印象的なエピソードを紹介する。『サド侯爵の呪い』を読んでいなくても楽しめる内容です。
カーキ色はもともと、19世紀のインドに駐留する英国兵の制服だったが、瞬く間にファッションの主流となった。写真は1976年に撮影されたカーキ色のパンツ。(PHOTOGRAPH BY BRIDGEMAN IMAGES) 19世紀初頭のインド、岩だらけの丘に草木がまばらに生えている乾燥地帯では、英国軍の象徴である赤いコートが軍人たちを無防備にしていた。英国軍は初めて、あまり目立たず、華やかに見せないことを考えなければならなくなった。 「19世紀は小さな植民地戦争が続いた時代で、英国軍は帝国の外れで多くのことを学びました。彼らは制服について多くを、そして制服を戦略的に使う方法を、つまり、制服を戦場に不可欠なものとして使うにはどうすればいいかを学んだのです」と文化史学者のジェーン・タイナン氏は話す。氏は『British Army Uniform and the First World War: Me
満月の頃と重なった秋分の日、ストーンヘンジに集まる大勢の人々。満月の時期には、人々の睡眠時間が短くなるという証拠が見つかっている。(PHOTOGRAPH BY ALICE ZOO, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 太古の昔から、世界中の人々は、満月が心と体に変化をもたらし、われわれをより暴力的にしたり、奇妙な行動をとらせたりすると信じてきた。研究者らは長い間、そうした主張を否定してきたが、最近の研究では、月のサイクルが一部の人々にかすかな影響を与えることが示唆されている。とりわけ、睡眠、女性の月経周期、双極性障害の人の気分の変動といった、周期的な現象においてだ。 月の周期の影響を受ける動物はいる。海では、月は潮の満ち引きだけでなく、そこで暮らす生物にも影響を及ぼす。多くのサンゴや多毛類(ゴカイなど)、ウニ、軟体動物、カニが満月の前後に産卵するのは、光の増加によるものだと
パリのカタコンブにある納骨堂。何百万ものパリ市民の骨や頭骨が整然と積み上げられている。(PHOTOGRAPH BY STEPHEN ALVAREZ, NAT GEO IMAGE COLLECTION) フランスの首都パリの伝説的なモニュメントや荘厳な教会、その他の象徴的な場所をつくりだしているのは、中世以降、広大な迷路のような地下の採石場から掘り出された石灰岩だ。時間の経過とともに放棄されたトンネルは全長300キロを超え、立ち入りを厳しく制限されてきた。 しかし、「カタフィル」と呼ばれる都市探検家たちは、歩道のマンホールや秘密の扉から地下の迷宮に侵入したいという誘惑に勝つことができない。そして、彼らの物語は伝説になった。古い採石場は、壁に落書きがされ、夜のディスコ、非合法なアートショー、秘密の映画会の会場となってきた。「光の都」パリの地下に秘められた、「闇の都」のディープな歴史をご案内しよ
米スタンフォード大学の研究チームが、生物学に基づくうつ病の6つの「バイオタイプ」を明らかにし、各タイプに特有の脳活動のパターンと、行動の特徴、適切な治療法を提供できる可能性について報告している。(IMAGE BY SCIEPRO, SCIENCE PHOTO LIBRARY) うつ病を患っている人の多くは適切な診断を受けておらず、手探りの治療を受けている。うつ病と診断された人の約30%が、複数の治療を受けても症状が改善していないという推定もある。このような状況では治療は高くつき、効率が悪く、患者を失望させ、ときに有害でさえある。 米スタンフォード大学医学部の精神医学・行動科学教授であるリアン・ウィリアムズ氏の研究チームは、うつ病のタイプごとの生物学的な指標(バイオマーカー)を特定することで、このような状況を変え、標的を絞った治療を行えるようにすることを目指している。氏らは2024年6月17
古代エジプトで、ワニはスピリチュアルな存在として重要な役割を果たしていた。このワニのミイラは、エジプト南部のワニ崇拝の中心地コム・オンボで発見された。(PHOTOGRAPH BY KENNETH GARRETT, NAT GEO IMAGE COLLECTION) 古代エジプトでミイラにされたナイルワニの3次元X線CTスキャンを行ったところ、ワニの最後の数時間の行動が明らかになった。胃の中の釣り針をはじめ、今回の驚くべき発見は、古代エジプト人がこの危険な爬虫類をどのように見て、どのように扱っていたかについての重要な証拠となる。論文は学術誌「Digital Applications in Archaeology and Cultural Heritage」の9月号に掲載された。 古代エジプトでは多数のワニが供物にするためにミイラにされた。「このワニは、ナイル川の漁師が偶然捕獲したものかもしれ
オゼンピックやウゴービなどのGLP-1受容体作動薬は、主に減量を助ける優れた効果によって非常に高い需要がある。最近の研究によると、特定の肥満関連がんの発生リスクを下げる可能性もあるという。(PHOTOGRAPH BY LISE AASERUD, NTB/ALAMY STOCK PHOTO) もとは糖尿病のために開発され、その後、同じ成分が肥満症の治療薬としても使われるようになったオゼンピックやマンジャロなどの薬には、糖尿病や肥満の改善にとどまらない利点があることを示す証拠が増えつつある。最近の研究によると、心臓病や腎臓病の予防、全身性の炎症の減少のほか、2024年7月5日付けで医学誌「JAMA Network Open」に発表された論文では、10種類のがんのリスクを下げる効果も示唆されるという。(参考記事:「「やせ薬」は炎症も抑える、驚きの効果を解明、幅広い応用に光」) 「GLP-1受容体
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