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1. 音楽理論は必要か? 序論の始まりとなるこの記事では、まず音楽理論がどんなものであるかの全体像を掴もうと思います。 そもそも、まだ音楽理論というものに対し疑問や疑念を抱いたままここに来たという人もいるはずです。 でも、これは答えの出ない質問です。なぜなら、ひとくちに「音楽理論」といってもその内容は実にさまざまだからです。そこには「ドレミファソラシド」という言葉も含まれるし、オーケストラの編曲法だって含まれる。それらを全部ひとまとめにして「要る?要らない?」と問うのは、そもそもちゃんとした議題になってないわけなのです。 たとえば「数学って必要ですか?」と訊かれても、それが「中学・高校で習う数学の知識」なのか「パーセントや時間の計算なども含めた全ての知識」なのかでは、まるで返答が変わりますよね。 だからこの序論ですることは、そのような漠然とした問いに無理やり答えを出すことではありません。「
この記事は、「調性引力論 ❸ カーネルについて」までの内容を踏まえたうえで、これを歌モノのメロディではなくラップを素材にして論じるものです。ラップと関わりのない方は全く読まずに先へ進んでもなんら問題ありません。 1. ラップとピッチ感 ラップというのはそのフロウのバリエーションが非常に広く、ピアノの鍵盤で表現できるような“音階感”が全く想起されないような、言わば「喋り」に近いトーンでのラップもあれば、ほぼ歌モノと同じようなメロディラインを有しているものもありますね。それから本来は音階関係なしにラップしているのをオートチューンで音階状に均す場合もある。 基準となるピッチが見えるラップ 中には、“音階を見据えて歌っている感”をさほどリスナーには感じさせないけども、実際にはあるピッチを中心にフロウが動いているということがあります。いくつか実例で確認しますね。 BUDDHA BRAND – 人間発
先日Twitterでちょっぴり話題になっていた、Diminished Chordの表記についてのお話をしたいと思います。 ことの発端 きっかけは(多分)こちらの呟きです。 まずはCのコードを基準に勉強しようかと、おバカな私にもわかるあいうえお表みたいなコード表作りました。 pic.twitter.com/H2uAzzsK9N — SEA@楽器LOVE (@sea_piano_flute) January 23, 2019 1000回以上RTされたこの投稿に対し、「dimだったらラの音は要らないのでは!?」なんて話があちこちで沸き起こっていたのです。 dim7が場合によって「7」を省略して「dim」と書かれることがあり、「dim」というコードネームが三和音なのか四和音を指すのかは曖昧であるということは、このサイトのコンテンツ内でも解説しています。 これってシンプルなように見えてなかなか奥の深
1. コードスケール理論 もう一度、ジャズ編前半の内容を思い出してもらうと、ジャズの理論システムにおいてスケールの存在が非常に重要になってくるという話でした。コードクオリティが指定されても、それは基本的に1・3・5・7度の音しか示さなくて、2・4・6の音選びが分からない。「コード」という状態は、インプロビゼーション(即興演奏)を主眼に置くジャズ理論にとっては不完全とも言えます。 そこで、一部のジャズ理論においてはコードとスケールを表裏一体の存在として捉えて精密に理論化していて、これをコードスケール理論Chord Scale Theoryと呼んでいます(以下、適宜「CST」と省略します)。 The Chord Scale Theory describes the interrelation between chords and scales. They form a functional u
さて、VIII章はいよいよ古典派クラシック理論とモダンジャズ理論のどちらにもあてはまらない特殊理論や、流派を超えた和音の解釈といった、研究的要素の強いマニアックな領域へと進んでいきます。ここでは、それにさしあたって極めて重要となる理論を先に紹介したいと思います。 1. メタ音楽理論 「メタ○○」という言葉があります。「次元が上の─」とか「超─」といった意味を持つ接頭語です。 アニメ「くまのプーさん」に登場するネズミのゴーファーは、「俺は原作には登場しないんだけどな!」といった自虐ネタを言うことでおなじみです。アニメの中のキャラクターが“原作”という“外の視点”を理解している構図が面白いわけですが、このときゴーファーは「アニメの世界」という次元を超越して、私たちと同じ現実世界の立場からコメントをしています。この「次元が上」の発言を、「メタ発言」といいます。 「メタ」という言葉にはこんな風に、
しかし、これはちょっと不思議なことではないでしょうか? だって、白鍵だけを使ってるんだったら、どこが中心だろうと同じことでは? 音符は規則正しく並んでループしているのだから。それは螺旋階段のように、どこから見たって同じはずなのです。 黒鍵を使ったりしたら雰囲気が変わるのは分かります。でも同じ白鍵の7音を使っているのに、場所をずらしたら印象が変わる。何故なのでしょう。ここからさらに、音を理論的に分析する試みがはじまります。 鍵盤をじっくり見る 改めて、音楽を分析する基本となる「鍵盤」をきちんと眺めてみます。
「自由派音楽理論」は、クラシック理論・ジャズ理論それぞれの哲学を平等な基盤としながら、さらにポピュラー音楽が生み出してきた新しいスタイルまでもを理論体系の一部として取り込んだ、ポピュラー音楽をメインターゲットとする新しい音楽理論体系です。 音楽理論には流派があって、それによって中身が大きく異なるということをご存知でしょうか? 現行の一般的な「音楽理論」は、J-Popやヒップホップ、テクノといった“いわゆるポピュラー音楽”が誕生するよりも前の、ジャズやクラシックの世界で作られた音楽理論を基盤にしています。 だからもしあなたが音楽理論の「ルール」や「禁則」といったものを目にしていたとしても、それはそうしたジャンルの慣習として形成されてきたものにすぎません。そのうちの一体どれくらいが、現代のポピュラー音楽にとっても大事なものなのでしょうか。 自由派は、「正しい音楽」という観念を学ぶ人に押し付けま
前回は、理論に縛られないためには理論の生まれ・育ちを知っておくのがよいという話で終わりました。歴史の勉強というと堅苦しく感じますが、これは最初の重要なワンステップです。 というのも、これを通っておかないことにはいつまで経っても「音楽理論」という言葉が持つ威光から真の意味で自由にはなれないからです。 本当は、クリエイターは理論に「従う/従わない」という立場ではなく、理論を「従える」立場にあるべきです。そしてその関係性を築くための最速の手段が、けっきょく相手を知ることなのです。 これは言わば“ワクチン”のようなもので、一度アトラクションのように歴史を擬似体験しておけば、後のさまざまな場面で効果を発揮することになります。だから作曲家や時代の名前を暗記する必要はありません。 音源に関しても、「興味を持った人向けの資料」として置いている側面が強いですので、全部きちんと聴く必要はなく、雰囲気を感じても
1. 4度で重ねる コードは基本的に1・3・5・7という風に「3度間隔」で重ねていくのが基本でした。しかし前回の「トーン・クラスター」でやったとおり、配置を変更することによってさらにクリエイティブな世界が広がっていきます。 では、トーン・クラスターの逆、つまり間をもっと開けてみたらどうでしょう? つまり、和音を4度間隔で重ねてみるのです。それが、四度堆積和音Quartal Chordです1。 2. やってみる 何はともあれ、聞いてみるのがいちばん速い。簡単なサンプルを聞いて、四度堆積のサウンドを体感しましょう。 こちらは本当に、ただ完全4度で音を積み重ねたもの。ここが今回のスタート地点ですね。見てのとおり、Cメジャーかと思いきやどんどんフラットが増えていって、最終的にはフラットだらけになります。それもそのはず、完全4度で積んでくということは、五度圏を周っていくのと同じことですから。 そして
ザックリですけども、こうなります。「古典派理論」と「モダンジャズ理論」が、理論界における二大流派である。その傾向と特色は、端的に言い表すならば以下のようなイメージでした。 そして、どちらも現行のポップス・ロック・EDMといった「現代のポピュラー音楽」のために作られたものでは当然ない。それでは、いわゆる普通の“ポピュラー音楽理論”はどちらの流派から来ているのかという話になりますね。 6. “普通”の音楽理論とは? しかし実のところ──クラシックやジャズの理論もそうだったように──日本の一般的な音楽理論というのもその内容が決して統一されてはいないのです。「古典派理論」と「モダンジャズ理論」が入り混じったような形で各コンテンツが形成されていて、そこには著者のバックグラウンドが反映されます。 おおむね共通した部分が多くありますが、一方でどの流派の意見を採用するかで内容が割れる箇所や、異なる表記のバ
1. Blackadder Chordとは “Blackadder Chord“とは、Joshua Taipaleという音楽研究家が名付けたとある現代ポップスのコードの名称です。2017年にYouTubeの動画で解説がなされた、「名付けられたてホヤホヤ」のコードなのです。 解説動画 英語の分からない方のためにかいつまんで説明すると、「ラブライブ!サンシャイン!!」の「Guilty Eyes Fever」という曲に、すごく聞き慣れないコードが登場した。 驚いてコードを分析したがイマイチ解釈が分からず放置していた。しかし後に、別のいくつかの曲で同じコードに遭遇したため、ジャズファンの人々に見覚えがないか訊いてみたが、誰からも返答はなかった。 そこで改めてきちんと分析して、「Blackadder Chord」というクールな名前をつけた・・・という話です。御本人はこのコードを使用した楽曲を7曲見つ
禁則のない自由な音楽理論。自由派は、古典派理論・ジャズ理論・ポピュラー音楽を包括した、多様性を尊重する新しい体系です。YouTube・Spotifyで実例を聴きながら学習ができます。WEB上で知識の定着を試せる「ゲートウェイ」も。
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