共産主義の礼賛にその罪の隠蔽(いんぺい)、そして中国へのおもねり―。今年3月に文部科学省が検定合格を発表した中学校の歴史や地理など社会科教科書・教材には、共産主義の思想や体制に肩入れする内容が目立った。周辺国への軍事的威圧を強める中国、ウクライナで侵略戦争を続けるロシア、ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮。共産主義をルーツとする独裁・強権体制が国際秩序と平和を乱す世界情勢にあって、共産主義についての教育には「負」の側面を含めることが重要なはずだが、適正さを欠く教科書が多いようだ。 台湾の民意に反しまず取り上げたいのは、地図帳と地理の教科書の台湾をめぐる表記である。今回検定に合格した地図帳は、帝国書院(帝国)と東京書籍(東書)の2点。両者には東アジアの地図が数点ずつ掲載されているが、いずれも台湾が中国(中華人民共和国)の領土であるかのような図柄となっているのだ。中国と台湾の間の台湾海峡に中間線な