言志、Vol. 4, pp. 81-87, 2012. メディア対する海外の諜報機関工作――ミトロヒン文書を読み解く 藤井聡 <外患を招くマスメディア> 日本人はどういう訳か、新聞やテレビで報道されているものは、正しいものだと思いこんでしまう傾向が強い。もちろん、国民の中に新聞・テレビに対する懐疑の念が皆無だというわけではないのだが、その懐疑の念が、多くの先進諸国の中でもとりわけ「弱い」のである。例えば、マスメディアの影響を分析対象としてきた政治心理学の実証的な分析によれば、日本人は欧米諸国のおおよそ倍程度の水準でマスメディアの情報を「信頼」してしまうと報告されている。逆に言うなら、日本人のマスメディアに対する「懐疑の念」は、先進諸外国の半分程度しかない、という訳だ。 それだけ懐疑心が弱いということは、メディアに対する国民の監視の目が脆弱だ、という事を意味している。 そうなると始まるのが、