サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
体力トレーニング
www.tsugami-workshop.jp
「国際貿易」誌に投稿した原稿に少し書き足しをしました。先走りすぎた見方かも知れませんが、習近平さんは、これをトランプ大統領と対峙する二期目の新外交ドクトリンにするつもりじゃないでしょうか。 1月17日、習近平主席がスイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムに出席して「時代の責任を共に担って世界の発展を共に促そう」という演説を行った。 このニュースを聞いた時は不思議に感じた。ダヴォス会議は総理や国家副主席の出番だったはず、しかも間近に迫った春節だけでなく、秋の党大会も控えて超多忙のはずなのに、と。 だが、演説を見て、疑問はハハンと氷解した。大略以下のような内容だった。 ① グローバリゼーションを敵視するのは誤りだ。プラス効果がもっと全世界に行き渡るように工夫して、適応していかなくてはならない ② 世界経済が直面する問題を解決するために、イノベーション型成長モデルを重視し、自由貿易にコミッ
環球時報の社説(仮訳) この問題については、日本で甲論乙駁、様々な議論があります。私個人は、たとえ原告の全てとの間の完全解決でないにせよ、和解を模索する同社の取り組みを強く支持する立場ですが、他の人に賛同を強要するつもりはありません。ただ、多くの人が知らない(と思われる)ことをお知らせしてご参考に供することはしてもよいのではないか・・・。 当時の史実については、それこそ調べれば調べるほど、知らない事実が出てきて慄然とする思いですが、ここでポストするのは、先月「マ」社の和解模索の動きを報じた7月24日付けの共同電(中日新聞ウェブ)を受けて、いつも「中国の産経新聞」と揶揄されるタカ派媒体、環球時報が掲載した社説の仮訳です(訳責は私です。不正確かもしれませんがお許しを)。 私はこの社説を読んで、中国の歴史問題に対する受け止め方の変遷に「あっ!」と言う思いでした。とくに、15年、20年前だったら、
このブログで以前した拙著への批判への反論に対して、神戸大学の梶谷懐教授が丁寧なコメントをくださったので、コメント返しです。 「超大国・中国のゆくえ4 経済大国化の軋みとインパクト」(丸川知雄教授と梶谷懐教授の共著 東京大学出版会刊)で丸川知雄教授からいただいた拙著への批判に対して、私が拙ブログで反論を試みたところ、今度は丸川教授の共著者である梶谷懐先生がご自身のブログ上で前編、後編の二回に分けて長文のコメントをしてくださった。きちんとしたルールに従って書かれた学者の論文でもない拙稿に対して、丁寧なコメントの労を執ってくださった梶谷先生にまず感謝したい。 梶谷先生からいただいたコメントに対して、改めてコメント返しや釈明をしたい論点は幾つもあるが、以下では3点に絞って書きたい。 (1) 拙著の立場は「清算主義」だとの批判について 梶谷先生は後編で、近著「巨龍の苦闘」で私が「生産性の低いプレイヤ
日米防衛ガイドライン改定、平和安全法制整備について、一点だけ以前からひっかっていることを書きます。 日米両国は防衛ガイドラインを改訂し、日米同盟の再定義を行おうとしている。平たく言えば、日本が米軍の役割を肩代わりする代わり、米軍の日本防衛に対するコミットメントを強化、せめて維持してもらおうというディールだ。 「日本の負担は明確に重くなる一方で、米国の負担は曖昧だ」として「割の合わないディールだ」という批判もあるが、中国の急速な軍拡、米国の国防予算削減という大きな流れを見ていると、致し方ないのだろう。中国との友好関係を増進し緊張を緩和することで安全を確保できればよいのだが、そうした努力で中国の軍拡が止むとも思えない。 ただ気になるのは、防衛ガイドライン改訂に伴って、自衛隊が南シナ海での哨戒活動に従事するよう米軍から求められるらしいことだ。これは良い考えだとは思えない。 中国は当然「当事国でも
標題の反論を5回に分けて掲載します 東京大学社会科学研究所の丸川知雄教授が今年2月に刊行された「超大国・中国のゆくえ4 経済大国化の軋みとインパクト」(神戸大学経済学部梶谷懐教授との共著、東京大学出版会刊、以下「本書」と略称)の中で、私の著作を批判しておられることをツイッターで知った。 目を通すと、たしかに、丸川教授が執筆を担当した序章「経済超大国への道」の中で、「中国経済が崩壊すると論ずる著作二冊」の一つとして、私が2年前に刊行した「中国台頭の終焉」(2013年1月日経プレミア刊、以下「終焉」と略称)が批判されている。 私は今月刊行する「巨龍の苦闘」(2015年5月 角川新書刊)でも、中国経済の見通しについて「終焉」とほぼ同じ見方をしているので、丸川教授の批判には応えておかないといけないと思う。 丸川教授からの批判 丸川教授の批判を私なりに要約すると、以下の数点になると思う。 ① 津上は
重要なのに、ほとんど議論されていないこの問題を再度取り上げます。 アジアインフラ投資銀行(以下「AIIB」)は、アジアで各国に跨がる交通インフラなどの整備を促進して域内各国の「互連互通」を進めていく中国の構想だが、日本では情報が乏しいこともあって、まともに議論されたことがない。 報道もわずかで、7月初めに産経新聞が「中国主導のアジア支援銀行、日本は出資断る−影響力強化を警戒」と題して、「日本はアジア開発銀行(以下「ADB」)との役割分担が明確ではないとして応じず、現行計画のままでは参加を見送る意向を表明」、また「水面下で米国と協力し、東南アジア諸国やオーストラリアなどにも新銀行への出資を見送るよう求める方針」だと報じた程度だ。 この報道には違和感を覚えた。「参加見送りを表明」はまだいいとしても、他国に「参加するな」と働きかけるのは、日本の流儀ではないだろう。巷間交わされている議論も、昨今の
2005年に始めた弊ブログの累計アクセスが1000万を超えました。ときおりの更新を読みに来てくださる読者の方に、改めてお礼申し上げるほかないです。ありがとうございます。 2005年に始めた弊ブログの累計アクセスが1000万を超えました。一日に何十万、何百万アクセスを稼ぐ巨大サイトもあるなかで、「9年かかって1000万超えたからって、ナンダ?」という声もあるでしょうが、個人ブログなうえ、生来の不精で途中何度も長期にわたって更新をサボった(最長1年間)ことを考えれば、ときおりの更新を読みに来てくださる読者の方に、改めてお礼申し上げるほかないです。ありがとうございます。 今回は、中国が準備を進めている「アジア・インフラ投資銀行」について、連載している日本国際貿易促進協会の週刊「国際貿易」に二回続けて投稿したのを転載します。 「アジア・インフラ投資銀行(AIIB)」という構想がある。昨年10月イン
先日香港明報に 「習近平、就任前に百名を超える 『紅後代』 (革命元老の子弟)と密会」 という興味深い記事が載った(習近平上台前密晤逾百「紅後代」)。要旨以下のような記事である。 習近平が第18回党大会で総書記に選出される直前の9月、2週間ほど消息不明になったことがあった。諸説が取り沙汰されたが、実はこのとき、密かに百名を超える「紅後代」(革命元老の子弟)と集中して面談、自身の状況認識、今後の施政の方針を説明して、支持を訴えていたのだ。 「「紅後代」(革命元老の子弟)」は全国に4万人ほどいるが、影響力ある 「紅後代」 は北京に集中しており、約2千人。そのうち85%は 「左派」、改革志向の 「右派」は15%程度とされるが、習近平は、立場を問わずに重要人物と面談した。 その結果、8割の 「紅後代」 は支持を表明したが、明確に支持を表明しなかった者(胡耀邦の息子胡徳平(※先日訪日、安倍総理と会談
1937年に盧溝橋事件が起きた7月7日、習近平主席が盧溝橋の抗日戦争紀念館で行われた「抗日戦争77周年」記念式典に出席して講話を行った。○5周年でも○10周年でもない今年、最高指導者が式典に出席したのは異例であり、日本メディアだけでなく、中国メディアも、「安倍政権への批判のトーンをさらに一段上げるもの」と論評している。 このことについて、思いつくまま、何点かコメントをしたい。 (1)なぜ、いまのタイミングか? 共産党や中国政府の対日歴史批判は、この1ヶ月ほどボルテージが上がった印象がある。当初は習主席の訪韓を控えて、慰安婦など歴史問題で韓国との提携を図る「外交」作戦かとも感じられたが、それだけではない。 ネット上でも今月、日中戦争で殺された同胞を悼むために南京大虐殺記念館が開設した「国家公祭網」、旧日本軍の罪業を改めて宣伝するために国家档案局中央档案館が開設した「日本戦犯の中国侵略罪行自供
前回のポストで書き切れなかったことを書きます。前回お断りしたように、内容が「オタク」 な上、自分の学習ノートのつもりで文献を引用するので長文です。お許しください。 天安門事件によって、思想信条の空白と共産党の正当性の失墜という問題に直面した共産党政権は、思想と正統性の立て直しのために、毛沢東時代にいったん断絶していた愛国主義教育を復活させた。「勿忘国恥」 という 「被害者の物語 (マスター・ナラティブ)」 が 「中国という国に構造的に組み込まれ、政治機構に深く根を下ろし、共産党の新たなイデオロギー上のツールとなった。」 というのが前回書評で取り上げた 「中国の歴史認識はどう作られたのか」(以下原著名の 「勿忘国恥」 で引用する) の著者汪錚(ワン・ジョン) の基本認識だ。 そのことは、こんにちの日本で半ば 「常識」 と化しているが、最初にこの問題を指摘した鳥居民氏の 「『反日』で生きのびる
よく 「軍事的脅威は、他国の軍事力と意図の積である」 と語られる。公表される国防予算だけみても、この10年の間に4倍増を果たした中国軍事力の増強ぶりについては、いまさら語るまでもない。では、中国の 「意図」 とは何か。 ―― 中国がその力をどのように使おうとするか ―― こそが、平和か戦争かを決するのである。 (スーザン・シャーク) “Never forget national humiliation” ( 勿忘国恥:国の受けた恥辱を忘れるな) を原題とする本書は、19世紀中葉以降100年間にわたって外国の侵略を受け、領土の割譲・賠償金の支払い・国権の喪失 (不平等条約) を強いられ、辱められてきたという 「歴史的記憶」 が中国の国民アイデンティティを形成しただけでなく、中国の内・外政に対して如何に強い影響力を与えてきたことを論ずる本である。かねて自己流で中国の「歴史トラウマ」を論じてきた
今年2月初めの日経ビジネス・ウェブに 「ビッグデータ分析で、中国政府による検閲の中身が明らかに ゲイリー・キング米ハーバード大学教授に聞く」 という記事が載って、非常に興味深く読んだ。 ちなみに、この記事の基になったキング教授の論文 “How Censorship in China Allows Government Criticism but Silences Collective Expression”(原載:American Political Science Review)はこれ(pdf)。 計量政治学者キング教授の主張をまとめると、次のようになる。 (1)中国のネット検閲は、少なくとも3つの方法で行われている。 第1:GFW(Great Fire Wall:長城ウォール) 中国国内から外国ウェブへのアクセスをブロックする仕組み 第2:キーワード・ブロッキング 禁止された語句を用い
BLOGOS上の田原総一朗氏と木走正水氏の投稿を見て、前から感じたことをひとつ。 BLOGOSに田原総一朗氏がした『ワシントン・ポスト』など外国主要メディアの安倍首相批判、ここが大間違いだ!という投稿に対して、木走正水氏が田原総一朗氏の主張が日本の国益に沿うとは到底思えないという反論を載せている。 形勢判断や結論においては木走氏と同じだが、いま「アメリカに逆らいちゃぶ台返し」するのはまずいという木走氏の理由付けだけでは残尿感(笑)があるので、二つの論点について、私なりの「補助線」を引いて考えてみたい。 1)「太平洋戦争」は「日本の侵略」ではない (太平洋戦争は「侵略国」であるイギリス、アメリカなどの連合国、 そして同じく「侵略国」である日本との闘いだった) これは「日中戦争は侵略で、申し訳なかったが、太平洋戦争は「普通の戦争」で、悪びれるところはない」といういわゆる「二つの戦争」論だ。 真
十分に推敲できていませんが、これはちょっと一言言わせてもらいたい。 本5月8日付けの朝日新聞オピニオン欄に神戸女学院大学の内田樹名誉教授が「(寄稿 政治を話そう)壊れゆく日本という国」と題する寄稿をしている。内田氏の文章は嫌いではないが、この寄稿についてだけは、一言言いたい。 グローバリゼーションへの評価が一方的すぎる 貿易や投資の障壁を多角的に削減する自由貿易の取り組みが世界経済を成長させてきたことは事実である。その障壁の除去、冷戦の終結に伴う国際貿易投資参加国の拡大、製造業、輸送、通信、金融面の技術革新などがグローバリゼーションの現象を生んだ。そのおかげで、世界中の途上国で何億人もが貧困や病気、無就学といった悲惨から解放されている「正の側面」はいっさい評価されないのだろうか? 或いは、内田氏はグローバリゼーションというより、その根底にある自由貿易や市場経済原理を信じられないのかもしれな
今日読んだ新聞記事に触発されて、前回ポストの続編みたいなポストです。時間の関係で、書き殴り。熟考も経ていませんが、とりあえず「思い」だけ、汲んでください。 先日、緊急経済対策は成長戦略に役立つ中味にしてほしいというポストをしたが、今日の新聞によると18日の産業競争力会議は農業強化策の検討に入り、安倍総理は「農業を成長分野と位置づけて産業として伸ばしたい」と強調したという(19日日経新聞「首相「農業、成長産業に」 競争力会議」(有料記事))。後に控えるTPP加盟問題にも関わる懸案の検討が始まったということだろう。 同会議の席上、林農水大臣は「(1)農産物の輸出拡大(2)農商工連携の強化(3)農地の有効活用――の3本柱で農業の競争力を高めると説明した」のに対して、民間議員からは(農家の経営規模の拡大など)「より踏み込んだ農業改革を求める意見が出た」そうだ。 双方とも気持ちは分かるが、おもてだっ
本書は1920〜1930年代の広東省で、中国共産党が如何に軍隊を組織していったのか、それは当時の広東社会との、どのような関わりの中で行われたのか、を研究した学術書である。著者は東北大学大学院法学研究科の阿南友亮准教授、名前を聞いて「もしや」と思う方も多いだろう。阿南惟茂元中国大使のご子息である。 実証アプローチ 本書は足で稼ぐ実証アプローチを最大の特徴とする。著者は当時の文献を豊富に収蔵する広東省档案館(ダンアングァン)を始めとする現地のアーカイブに幾度も足を運んで、当時の実情を赤裸々に語る共産党内部文件を丹念に漁った。また、共産党と軍隊の組織化の舞台であった広東省の農村地帯にも足を運んだ(書中に写真・地図多数)。このアプローチには同じく研究者である母君の薫陶があるのかもしれない。 共産党の档案館で、外国人が共産党内部文書を閲覧できるのか? もちろん研究者だから許されるのだろうし、思想
参照:FT中文網「専欄」 2週間ほど前、フィナンシャル・タイムス中文ネット版に載った許知遠氏のコラムです。読んでみてください。 許知遠という作家が中国にいる。彼とは10年ほど前、北京で一度会ったことがある。当時新興クォリティペーパーだった「経済観察報」が日・中・米三国関係の未来を語るエズラ・ヴォーゲル教授のインタビューを載せたことに興味を覚えて、「主筆」に会いに行ったのだ。 約束場所にしたスタバに現れた「主筆」は、20歳代、長髪の若者だった。中国には、こういう柔軟な見方をする新しい「知識分子」がいるのかと、新鮮な感動を覚えた。彼はその後「経済観察報」を離れて、いまはフリーのコラムニストをしている。 本稿(原題「日本因素))は、2週間ほど前の9月27日、FT中文網(フィナンシャル・タイムス中文ネット版)に載った彼の最新作、尖閣問題に端を発して、彼の「日本観」を吐露する印象深いコラムだ。 植民
書名:「台湾海峡1949」 出版社: 白水社 (2012/6/22) ISBN-13: 978-4560082164 定価:2,940円(税込み) 「国共内戦」について、我々が知っていることは「日本が敗戦で撤退した後、中国大陸では毛沢東の共産党軍と蒋介石の国民党軍の間で、戦後中国の支配権を巡る内戦が起き、国民党軍は1949年、大陸での闘いに敗れて台湾に逃れた」という程度ではないだろうか。もう少し歴史に詳しい人なら、国民党軍が台湾に逃れた直後に「2.28事件」という民衆大虐殺事件が起きたことも知っている。しかし、たいていはそこまでだろう。 本書は、台湾の運命が大きく変わった1949年を軸に、戦中から戦後つい最近まで、こんにち台湾(一部は香港、大陸)に暮らす著名・無名の人々がどのような日々を送ったのか、をオーラルヒストリーの手法で著した本である。 大方は80歳を超える人々が戦中戦後のいっとき送
現下の尖閣問題を巡る論調に違和感を覚える毎日です。「門外漢」ですが、領空侵犯して「突飛な想定」をしてみました。 尖閣の島の譲渡を巡る議論が喧しい。東京都にせよ官邸にせよ、譲渡推進派は、(1) いまの 「緩い実効支配」 は中国による軍備増強、領海侵犯の常態化にさらされており、これ以上放置すれば、やがて中国に尖閣を奪われる、(2) 中国はいま政権交代に加えて薄煕来事件など不安要素を数々抱えており、対外的に強い動きができる状況にない、(3) したがって、いま実効支配の強化に動くべきだ、といった考えに立っていると感じられる。今回は(2) の 「中国はいま対外的に強い動きがしにくい」 という判断を中心に、門外漢ながら私見を述べたい。 紛争本格化は譲渡後の実効支配強化のとき 所有権譲渡は中国や台湾の反発を買うだろうが、所詮 「紙の上」 の話である。取得者が外交主体でもある 「国」 になるとギラつき方が
陳光誠氏の事件は、中国の人権問題を考えさせる新たなきっかけになりましたが、本稿では、こういう問題が起こる「背景」「構造」について、考えてみました。 この連休中、陳光誠氏の事件が米中両国政府間の大懸案となって、世界中のメディアを賑わわせている。今日4日現在、彼と家族が無事に中国を出国できるか?が注目の的になっているが、本稿ではこの 「本題」 から離れて、彼が山東省の自宅から単身脱出に成功した後、youtube に投稿した温家宝総理宛のビデオレターで訴えた、ある問題について書きたい。 このビデオレターは、北京在住のフリーランスライター、ふるまいよしこさんが Newsweek 日本語版ウェブ上のコラム 「中国 風見鶏便り」 (「盲目の活動家、陳光誠氏の訴え」) で披露してくれた全訳で読んだ。語るも涙の訴えの中で、とくに以下のくだりが目を惹いた。 「安定維持」 経費を巡る腐敗の構造 昨年8月、彼ら
通産省は私の古巣ですが、その看板であった「産業政策」について、私は以前から本ポストのような見方をしてきました。なので、農協のTPP反対論にも「違う」という思いを禁じ得ないし、いまの中国を見ていても「・・・」としか思えないのです(笑) 小説 「官僚たちの夏」 (城山三郎著 新潮社刊) は1975年に出版されたが、「国家を熱く語り合い、産業振興に邁進する役人」 の姿は、いまも日本人の郷愁を誘うらしく、昨夏には改めてTBSでドラマ化された。「坂の上の雲−戦後経済版」 とも言える。かく言う筆者も大学時代にこの本に魅了されて通産省に入った、ところがある。 しかし、役所で仕事をし勉強もしていくと、本書で描かれた 「特振法」 的な産業政策に疑問を覚えることが多くなった。もちろん、1950年代と1980年代という時代の違いがあるが、それだけではない。根底にあるのは 「市場経済」 というものをどう捉えるかと
本書は20世紀初頭、日本が日露戦争の戦費を調達した国際債券市場という視点から、当時の日本という国や日本が置かれた国際環境を活写した本である。内外の証券界で働き、今も一線にある著者板谷敏彦氏は、本業の傍ら本書執筆のために、当時の新聞から日露両国の公債価格を日計りで調べ上げた。未だ大陸間の往来に船便で数週間を要し、電信も十分発達していなかった時代だが、両国の公債価格は戦局その他の事件に敏感に反応しており、国際金融界が戦況に寄せた関心の高さは半端なものではなかったことが分かる。今日に至る金融のボーダーレス性をそこに見る思いがする。 「いちか、ばちか」 の戦争 読後にまず痛感することは、ロシア南進によって朝鮮半島を脅かされ、安全保障の崖っぷちに立っていたとはいえ、日本はなんと無謀な戦争に踏み切ったことか、ということだ。海戦では奇跡的大勝利も収めたが、陸で兵力も弾薬も使い果たし、賠償金を取れない不本
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『津上俊哉オフィシャルサイト 津上工作室』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く