しろがねの葉 作者:千早茜 新潮社 Amazon 戦国末期、シルバーラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈のありかを授けられ、女だてらに坑道で働き出す。しかし徳川の支配強化により喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界にひとり投げ出されて……。 物語の舞台である間歩(まぶ。銀山の坑道)の、情景や温度が迫ってくるような描写に圧倒される。行ったことも見たこともないのに、底なしの暗さに息の詰まる感じとか、体に触れる石壁の冷たさとか、外に出たときの空や緑の明るさが手にとるように感じられる文章。 全編を通じて夜、闇、冷たさ、雪、静けさ、暗さの印象が漂っているからこそ、ときおり描かれる海のまぶしさ、ツツジの花びらが乱れ散るさま、女郎のうなじの白さ、着物の赤色がものすごく鮮烈。その色と視覚のイメージが、生きていくための執念とか官能とか、忍び寄る病への