【解題】 僕はバッファロー・スプリングフィールドの「折れた矢」は、ロック史最重要の曲のひとつだとおもっているが、下の谷田部歩さんの曲考察はすごく緻密だった。歌詞は脚韻も視野に置きながら分解され、全体文脈を吟味される。「君は見たのか?」と列挙される一群の人々には、自分の意志に反して去らざるを得なかった事情が共通している、と谷田部さんは指摘する。そこにネイティヴ・アメリカンの姿が切断的に混入してくる。変拍子に注目するなど、谷田部さんの楽曲の分析も細かい。そしてアコギストロークがこれほど効果的な曲も少ない。 谷田部さんのレポートのなかには、僕の知らないエピソードがあった。演奏音に、付け足された観衆の拍手喝采が、ロサンゼルスでのビートルズ公演で採取されたものだったというのだ。この指摘によって「ミスター・ソウル」を演奏するバンドがロック史の波のなかで、自らを見失おうとしているという全体文脈がさらに明