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■古代核戦争 人類は、もう何度もやり直しているのかもしれない。我々現生人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)は、今から10万年前、アフリカ大陸の南部に出現した。一方、現在確認されている最古の町は、トルコのコンヤ高原で発見されたチャタル・ヒュユク。すでに、灌漑農耕が行われ、司祭や職人のような専門職も存在したらしい。 この町が成立したのは紀元前7200年頃なので、わずか1万年で、人類は農耕から原子爆弾に到達したことになる。一方、地球上に人類が誕生して10万年が経つ。では、人類は9万年の間、毛皮のパンツで過ごしたのだろうか?これが「人類は何度もやり直している」の根拠である。 では、人類は文明を何度もやり直したとして、なぜそんな羽目に陥ったのか?ちまたに流布する仮説の1つが「古代の核戦争」。人類は農耕からスタートし、原子爆弾を造りだし、全面核戦争で文明は滅亡、その後、農耕からやり直した・・・このルー
■チンギス・ハーンの死 中央アジア北部に広がるモンゴル高原の降雨量は年間50ミリにも満たない。大地をおおうはずの樹木もまばらで、空気が乾燥を極めているのはそのせいで、そこで暮らす人々の命を消耗させている。 モンゴルのチンギス・ハーンはこのような過酷な環境で戦った。それでも60年も生きたのは、英雄の命数は環境ではなく使命によることを示唆している。1227年8月18日、チンギス・ハーンはタングート王国を攻略中、陣中で没した。ユーラシア大陸を横断したもう一人の征服者アレクサンドロス大王。彼は死の床で、後継者を問われ、こう答えた。「最も強い者」この響きのいい無責任な遺言が王国を3つに分裂させた。 ところが、チンギス・ハーンには、このような軽率さはなかった。チンギス・ハーンはスターリンに酷似している。スターリンの側近はかつてこう回顧した。「スターリンは、自分が何を望んでいるかをはっきり理解していた。
■オトラル事件 1218年、小アジアの町オトラルで、ささいな事件が起こった。滞在中の隊商がスパイ容疑で逮捕されたのである。逮捕を命じたのは、この地方の知事イナルチュクで、ガイルハーンの称号をもつ気骨のある人物だった。イナルチュクは、隊商をスパイと断定し、直ちに処刑した。今なら外交問題にもなりかねないが、時代と場所を考えればありがちな話だった。ところが、この事件はユーラシア大陸の歴史を一変させる大事件に発展する。 問題はイナルチュクではなく、殺された隊商側にあった。この隊商はいつもの町を通り過ぎる交易商人ではなかった。イスラム教サルト商人450名からなる国の正式な通商使節団だったのである。そして、その国の名は「モンゴル帝国」といった。 地球の歴史にはカオスが潜んでいる。カオスは、初動のほんのわずかな差が、結果として巨大な差を生む。オトラルで起こったささいなスパイ事件が、やがてヨーロッパ全土を
■恐慌とは バブル崩壊は高波、恐慌は津波・・・2004年、スマトラ沖で発生した津波の映像を見てそう思った。分厚い海のうねりが、間断なく、陸に押し寄せ、建物も車も人も押し流していく。高波とは桁違いのエネルギー、破壊力だ。高波は面のパワー、津波は立体のパワーかもしれない。この津波で28万人が犠牲になったが、高波ではありえない被害だ。高波と津波は同じに見えて、実は別ものなのである。そして、バブル崩壊と恐慌も・・・ 2008年、サブプライムローン問題に端を発し、リーマンショック、AIG事件と続いた金融危機、さらに、ビッグスリーショックは、世界恐慌を暗示しているのだろうか、それとも、ただのバブル崩壊? 今、消費者は必要もないガラクタ商品を大量に買わされているが、それに気づいていない。ある日、株価が暴落し、金融危機が起これば、消費者は不安を覚え、ガラクタ商品を買わなくなる。それでも生きていけることに気
■天才とは 物心ついたときから、 「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」 と教えられた。無口でふさぎがちな息子を励ますための親心からだと思うが、生まれてこのかた納得したことは一度もない。というか、完全に間違っていると思っている。 むしろ、個人的には、 「天才とは、99%の努力を無にする、1%のひらめきのことである」 が真実だと思っている。交流理論の先駆者「ニコラ・テスラ」の言葉である。 そもそも天才とは、読んで字のごとし、「天から降ってくる人」。大地からにじみ出た優等生とは違う。優等生の切り札は努力、つまり、己の目的意識によって奮い立たせた悲壮な精神力にある。一方、天才の努力は才能と完全に一体化し、その接点において間然とするところがない。これは、本質的に異なるものである。 困ったことに、最近はちょっと目立っただけで、「××の天才」という称号が授かることになっている。天から降ってく
■異形のテクノロジー 東京ドームの屋根はあんなに広いのに、柱が1本もない。一体、どうやって支えているのか? 答は空気圧。 ドームの中に空気を送り込み、内側の気圧を外側よりも高くして、屋根を押し上げているのである。アーキテクチャ(基本構造)の根本が違うわけで、まさに、異形のテクノロジーだ。 飛行船が浮く原理は風船と同じ。密封された袋の中に、空気より軽い水素やヘリウムつめ、浮力をえる。プロペラを回せば、水平移動もできる。この飛行原理は220年間変わることがなかった。ところが、20年前、飛行原理が全く異なる球体飛行船が登場した。球体を回転させながら、水平移動すると、球体の下部の圧力が上部の圧力より高くなり、浮きあがるのである(マグヌス効果)。原理は古いが、これで飛行船を飛ばすという発想が凄いのだ。ということで、こちらも異形のテクノロジー。 発明には、改良・改善を突き抜けて、発想からして違う革新的
■最悪 最悪の事態がじつは最悪ではなく、さらに悪化しつづけた~J・K・ガルブレイス~ 20世紀を代表する経済学者ガルブレイスは、1929年の世界恐慌をこう評した。当時のほとんどの投資家が、「恐慌」を「バブル崩壊」と見誤ったのである。 1929年10月24日、ニューヨーク株式市場で株が大暴落した。翌日は値を戻したものの、その後も暴落は続き、11月にはダウ平均は224ドルまで下落。3ヶ月間で半値という凄まじさだった。さすがに、ここまで下がれば底値だろうと、みんなが思った。ところが、株価はその後も下がり続け、底を打ったのは、3年後の1932年7月だった。その時の株価は58ドル、みんなが大底と信じた1/4。 そして現在、ニューヨークのダウ平均は、1年前の高値から半値まで下落したが、今のところ、下げ止まっている(2009年1月12日)。1929年11月同様、「半値=底値」と見ているのだろうか。だが、
■ユダヤ人 ユダヤ人は、なぜ差別され、迫害されるのか? なぜ、多数のユダヤ人が虐殺されてきたのか? ユダヤ人の受難はいつまで続くのか? そして、この問いは、ユダヤ人と対立するパレスチナ人にも、同じ意味を持っている。ユダヤ人国家イスラエルと、アラブ諸国との紛争は、4度の中東戦争をへて、いまだ終結していない。2006年7月12日から始まったイスラエルとヒズボラとの紛争では、すでに1200人が死亡したが、このような犠牲はすでに日常化している。 ユダヤ人が最新兵器でパレスチナ人に対抗するのは、彼らのテロを怖れてのことだが、パレスチナ人がテロ的行動に出るのは、ユダヤ人のようなハイテク兵器を持たないからである。「人を殺すのは間違っている」的論法で解決できる世界に、彼らは生きていない。彼らは、迫害と虐殺の被害者であり、同時に、加害者でもあるのだ。そして、いつ終わるともしれないこの戦いは、すでに3000年
■格差 地球上で生きる生物は数百万種、一説には一億種を超えるともいわれる。この無数の生物種の中で、根拠のない「格差」が存在するのは人間のみ。 人間は表向き、平等を標榜しながら、世界中が格差で埋め尽くされている。日本では、「格差」は流行語になり、アメリカでは格差は広がる一方である。さらに、格差がないはずの「共産主義国」中国でさえ、大きな格差が生まれている。「格差」と「違い」は本質的に異なる。「違い」は自然が創り出した物理的、本質的な差異で、格差は人間の脳が生み出した「差別意識」による。その象徴が「奴隷制度」である。 黒人奴隷が首を数珠(じゅず)状につながれ、裸で歩かされている絵がある。絵の中央には女奴隷もいる。母親と思われる女奴隷は哀しそうに下を向き、それを子供が不安そうに見上げている。小さな子供には、この行進が何を意味するか理解できないだろうが、その先に待っているのは地獄の奴隷船である。行
■完全無欠の電気自動車 100%Electric! テスラモーターズ(TeslaMotors)のウェブサイトに刻まれたキャッチコピーだ。イーロン・マスク率いるこの無名のベンチャー企業が2008年から量産する「テスラロードスター」は、バッテリーとモーターで走る完全無欠の電気自動車だ。あのコピーは、ハイブリッドカー、つまり、世界のトヨタを挑発している。 自動車も、やっと本来の姿に戻るのかもしれない。今から100年前、自動車の動力はまだ定まっていなかった。ガソリン自動車は爆発の危険があり、電気自動車や蒸気自動車の方がまだマシだった。ところが、不世出の天才ヘンリー・フォードとそのライバルたちの不屈の努力によって、ガソリン自動車が勝利したのである。 あのサバイバル競争で、電気自動車が勝利していたら、世界はどうなっていただろう。電気自動車は「電動モーター+バッテリー」で動くので、排出ガスはゼロ、完全無
■ジョージ・ルーカスの秘密 映画「スターウォーズ・エピソード3~シスの復讐~」が好調だ。この作品は、ゲームソフト、キャラクターの版権ビジネスも同時進行しているので、大きな成功をおさめるだろう。ジョージ・ルーカスが他の映画監督と違うのは、キャラクタ版権への執拗なこわだり。それが結果として、彼を大富豪へと導いたのである。スターウォーズシリーズ5作で、グッズの売り上げは映画の興行収入の2.5倍で、約1兆円!映画の世界ではありえない。ということで、ジョージ・ルーカスは商売上手なのだ。スターウォーズは、1977年「スペースオペラ」の歴史年表にその名を刻んだ。 それまで、SF映画といえば、宇宙空間を航行すること自体が大変という設定で、こじんまりとした話が多かった。地球の近場、せいぜい金星や火星をウロウロする程度で、ワープ航法で太陽系を飛び出すなどというのは、例外中の例外であった。その例外の1つに、SF
■空爆 1945年2月19日午前6時、太平洋戦争における最大の激戦が始まった。硫黄島を包囲するアメリカの大艦隊が、一斉に砲撃を開始したのである。戦艦、巡洋艦、駆逐艦から発射された無数の砲弾が硫黄島を直撃した。つづいて、空母から発進した爆撃機が絨毯爆撃する。さらに、ナパーム弾が硫黄島の大地を焼き尽くした。通常爆弾は運動エネルギーで、ナパーム弾は熱エネルギーで兵士と施設を破壊する。物理的打撃にくわえ、熱エネルギーですべてを焼き尽くそうというのである。圧倒的な物量を誇るアメリカ軍お決まりの先制攻撃だった。これだけ叩けば、日本軍は相当な損害が出ただろうし、今頃はおじけついているかもしれない。 アメリカ軍は、上陸前の華々しい攻撃に満足し、硫黄島への上陸を決断した。だが、敵前上陸ほど危険な任務はない。海岸には一切の遮蔽物がなく、平坦な海と砂浜が広がるだけ。逃げも隠れもできないのだ。一方、陸に潜む敵から
■奴隷制プランテーション 奴隷制度には3つのタイプがあるが、15世紀から始まったアフリカ黒人奴隷制度は、地球をまたにかけ、奴隷の数も桁違いだった。この奴隷制度は、19世紀にアメリカ南部の産業をささえたが、それがもとで暗部と北部は対立し、南北戦争にまで発展した。 翌年、1862年9月、アメリカ合衆国大統領リンカーンは「奴隷解放宣言」を行ったが、解放された奴隷はわずかだった。この奴隷制度で、1000万人以上の黒人奴隷が西アフリカからアメリカに送り込まれたが、そのほとんどを、アメリカ南部の奴隷制プランテーションがのみこんだ。奴隷制プランテーションとは、奴隷を使って単一作物を栽培する大規模農園のことである。 16世紀、アメリカ南部の奴隷制プランテーションは、タバコ栽培から始まった。ところが、タバコは価格が不安定で、投機性が高かった。タバコ栽培に嫌気がさしたプランター(プランテーションのオーナー)は
■地球最古の町 歴史の始まりは、宇宙の誕生に似ている。始点の前は、何もない無辺世界がつづくだけ。一方、歴史を文明ととらえれば、「歴史の始まり」は地球最古の町となる。地球最古の都市はシュメールだが、最古の”町”なら時代はさらにさかのぼる。1950年後半、トルコのコンヤ高原で発見された「チャタル・ヒュユク」だ。成立は紀元前7200年頃。つまり、歴史の始まりは今から1万年前。驚くべきことに、チャタル・ヒュユクは文明の基本要素をほとんど備えていた。 まずは灌漑農耕。灌漑農耕とは、遠く離れた水源地から農地まで水路を引き、農業用水を確保する方法。これなら、雨が降らない地域でも農耕が可能になる。結果、耕地面積が拡大し、収穫も増える。一方、「天水農耕」は雨水に頼るため、農耕地は限られ、収穫も減る。同じ農耕でも、灌漑農耕と天水農耕では文明のレベルが違う。チャタル・ヒュユクは、1万年も前に灌漑農耕を獲得し、小
■アップル神話の始まり ハンサムで才能に恵まれたスティーブは、エンジニアを目指して大学に進んだものの、わずか1学期で中断してしまった。とはいえ、その頃は珍しいことではなかった。当時のアメリカはベトナム反戦デモが吹き荒れ、多くの若者が既成社会に反発していたからである。彼らはドロップアウトし、旅をし、集団で気ままな毎日を送っていた。 一方、それを苦々しく思う大人たちは、侮蔑の意をこめて、彼らを「ヒッピー」と呼んだ。ヒッピーの中でも、インドに行く者は格上で、ビートルズのジョン・レノンもその1人だった。そして、ハンサム・スティーブもインドに旅立つことにした。そこで、彼は深淵なヒンズー教に触れることになる。 ヒンズー教は開祖をもたない多神教である。多神教は読んで字のごとく、複数の神が存在する。ただ、神と言っても、土地に根付いたものが多く、一神教の神のようなカリスマはない。また、万人が納得できる倫理や
■核戦争 かつて、核戦争の脅威が叫ばれた時代があった。アメリカとソ連が全面核戦争を引き起こし、地球人類が滅ぶというシナリオだ。ところが、最近あまり聞かない。大騒ぎしている間は大丈夫で、忘れたころにやってくる、というのはよくある話。もし、核戦争が起こったら、勝者は誰か?かつて、アメリカのアイゼンハワー大統領はこう言った。 「核戦争は、敵を倒すことと、自殺することが一組になった戦争だ」 たしかに、勝者を予測するのは難しい。ただし、生き残るのは間違いなく原子力潜水艦だろう。海底深く潜航すれば、地球上の探知機はもちろん、軍事衛星からも探知できない。さらに、食糧の問題さえクリアすれば、一度も浮上することなく、20年間も潜り続けることができる。 原子力潜水艦は攻撃力も凄まじい。射程距離1万kmの戦略核ミサイルを20発も搭載し、地球上のあらゆる都市に撃ち込むことができる。1発で、1つの都市を壊滅させる破
■鉄の技術は東高西低 子供の頃、科学技術では日本は欧米にはかなわないと教えられた。歴史年表をみれば明らかで、言うまでもない。16世紀、ヨーロッパ人たちは遠くアメリカ大陸やアジアまでやって来て、町や村を荒らし回り、植民地にした。原因は白人だけがもつ「命知らずの冒険遺伝子」にあるが、大砲とガレオン船もこれに劣らず重要である。ここで、「命知らずの冒険遺伝子」はものの喩えではなく、実在する遺伝子である。 当時、アジアの貧弱な船では、太平洋や大西洋を航海するのはムリだった。その頃、インド商人やイスラム商人はヨーロッパとアジアを結ぶ交易を行ったが、陸地を見ながら陸沿いに航海したのである。太平洋のど真ん中を突っ切ったわけではない。そんな大技ができるのはヨーロッパのガレオン船ぐらいだった。 また、ヨーロッパ人が大砲をぶっ放せば、アジア人は蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。少なくとも、近代から現代の歴史では
■ツングースの大爆発 地球には、毎日何十個もの隕石が落ちてくる。隕石とは、正確には地球に落下した固体をさすが、その正体は太陽を周回する「小惑星」である。とはいえ、「隕石」のほうがなじみがあるので、ここでは「小惑星」を「隕石」にくくることにする。 このような落下物はたいてい1センチにも満たないので、地球に衝突する前に燃えつきてしまう。これが流れ星で、子供の頃、消えるまでに3つの願いごとをすると、それが叶うと教えられた。とはいえ、そんなロマンチックな話も直径が数十mまで。それを超えるととんでもないことになる。 1908年6月30日、そのとんでもないことがシベリアで起こった。直径100mほどの隕石が地球の大気圏に突入、シベリア・ツングースの上空で爆発したのである。成分が石(隕石)か、鉄(隕鉄)かにもよるが、直径が120m以下だと、地上に衝突する前に空中爆発する。大気との猛烈な摩擦熱で固体を維持で
■ハンガリー人宇宙人説 現代社会は、天才であふれている。はずみで大魚をつかんだ運才、自称天才、エセ天才、ただの詐欺師。もちろん、本物の天才もいる。もっとも、本物の天才ともなれば、ヒトとは限らない。染色体の数が47本、つまり両親から受け継がない秘密の染色体を持っている可能性もある(人間の染色体は46本)。ところが、さらに恐ろしい仮説もある。 1950年代、アメリカの名門プリンストン大学に、ジョン・フォン・ノイマンという数学者がいた。彼は非常な変わり者だったので、こんな陰口をたたかれていた。「ノイマンは人間そっくりだが、本当は宇宙人」(※1)。たいていの本では、ジョークですませているが、中には真に受けている本もある。いずれにせよ、それが本当なら、染色体の数どころの話ではない。染色体があるかどうかも怪しい。宇宙人なのだから。 アメリカのニューメキシコ州に、歴史上初の原子爆弾を開発したロスアラモス
■エニグマ暗号機 第一次世界大戦が終わり、ヨーロッパが一息ついた頃、ポーランドはまだ暗号解読に精を出していた。ポーランドは、東西をロシアとドイツにはさまれ、地政学的には最悪の位置にある。そして、第一次世界大戦でそれを身をもって体験した。ドイツとロシアに同時に攻め込まれたのである。 ポーランドは、事が起こる前に、必ずサイン(兆候)があると考え、情報収集に余念がなかった。もちろん、重要な情報はすべて暗号化されている。1926年のある日、ポーランド暗号解読班は、突如、解読できない暗号に遭遇した。ドイツのエニグマ暗号である。 エニグマ(enigma)はドイツ語で「謎」を意味するが、その名に恥じない難攻不落の暗号だった。ただし、方式はオーソドックスな「文字の置き換え」。平文の文字を「変換ルール」に従って、置き換えるのである。当然、変換のルールが鍵となる。平文を秘密の鍵で暗号文に変換すれば、同じ鍵をも
■不条理 「天才は天から降ってくる炎である」ナポレオンの言葉である。人目を盗んで積み重ねた努力も、泥水をすすって生きのびた苦労話も、すべて空しく思えるほど、神々しい才能が存在する。もちろん、才能が偉業に直結するとは限らない。わずかだが、運も必要だ。だが、それさえあれば、圧倒的な才能はたちまち花開き、偉大な業績が生まれ、彼あるいは彼女の名は歴史年表に永遠に刻まれる、と誰もが思っている。 ところが・・・天賦の才に恵まれ、歴史的偉業を成しながら、無実の罪で辱めを受け、死に追い込まれた科学者がいる。アラン・チューリングである。才能、業績、すべてが燦然と輝いているのに、最期だけが映画のように悲劇的だ。チューリングの偉業は、デジタルコンピュータの基礎理論に貢献したこと、第二次世界大戦中、ドイツの軍事用エニグマ暗号を解読し、イギリスを破滅から救ったことに集約される。つまり、チューリングの業績は、科学と政
■フィラデルフィア実験 1943年、第二次世界大戦のさなか、アメリカのフィラデルフィアで驚くべき実験が行われた。アメリカ海軍が行ったこの実験は、 「軍艦をレーダーから見えなくする」 もちろん、これだけなら驚くにあたらない。現代では「ステルス技術」としてすでに実現されている。レーダーから放射された電波を吸収すれば、電波が戻らないので、レーダーはキャッチできない。つまり、レーダーでは不可視となる。 ところが、フィラデルフィア実験では、軍艦はレーダーから消えたのではなく、人間の目から消えたのである。実験台となった軍艦エルドリッジは、いったん消滅し、数百マイル離れたノーフォークに現れ、再びフィラデルフィアに現れた。つまり、ワープしたのだ!話はこれにとどまらない。還ってきた軍艦エルドリッジの中で、異常現象が起こっていた。乗組員の身体が、甲板や壁にめり込んでいたというのだ。1つの空間に2つの物体が共存
■コンピュータ知名度ランキング 歴史上最も有名なコンピュータはなにか?退屈な教科書や歴史年表の露出度からいけば、「ENIAC(エニアック)」だろう。なにしろ、肩書きがすごい・・・歴史上初のデジタルコンピュータ!今は使われない電子部品「真空管(※1)」を使い、1秒間に5回のかけ算ができた。少年少女の科学書では「大砲の弾道計算に使われた」と必ず紹介されている。 「IBM360」も、年季の入ったビジネスマンには懐かしい響きがあるだろう。1960年代、コンピュータの巨人IBMが開発した大型汎用コンピュータで、世界中のライバルを打ちのめした。IBM360は、一世代先をいくIC(集積回路)が使われ、大型から小型まで共通のOSが搭載された。このような洗練されたアーキテクチャ(基本概念)と高度な実装技術はライバルの想像を絶するものだった。 IBM360の開発費は280億ドル(現在の価値で3兆円)。ちなみに
■原子の灯 1938年クリスマスも近いある日、ドイツの小さな実験室で原子物理学の実験が行われた。 この実験は後世、地球と人類を破滅の縁にまで追い込むことになる。化学者オットーハーンは、ウランの原子核に中性子を衝突させ、割れるはずのない原子核を分裂させたのである。これが「核分裂」だと最初に気づいたのは女流物理学者リーゼ・マイトナーだった。著名な物理学者フェルミは、この核分裂を連続的におこせば、莫大なエネルギーが取り出せるかもしれないと考えた。核分裂のさいに、2、3個の中性子が放出され、それが隣のウラン原子核に衝突し、次々と核分裂を起こす。核分裂の回数が多いほど放出するエネルギーも大きいので、「核分裂の連鎖→莫大なエネルギーが放出」と考えたのである。 1942年12月2日、フェルミらは、シカゴ大学の粗末な原子炉で、核分裂を連鎖的におこすことに成功する。歴史上初めて、原子の灯がともったのである。
■謎の球体飛行船 この奇妙なイラストは何か?じつは「飛行船」なのである。それも、模型やラジコンではなく、ホンモノ。上が飛行船の正面図で、下がは側面図である。それにしても、見るからに異形。ジュール・ヴェルヌの小説に出てきそうな夢ふくらむ飛行船だ。 この異形の飛行船を開発したのは、フレデリックファーガソン社長率いるカナダのバンデューゼン社。飛行船の大きさは18階建てビルに相当し、60トンの貨物を運べる(はずだった)。しかも、最高速度は時速120km、航続距離は800kmとスペックもなかなかのもの。 ヘリコプターが積める荷物は15トン程度なので、重量貨物の輸送を一変させる(はずだった)。世界の航空技術者たちも「100年先をいく飛行船」と絶賛したものだった。 この飛行船のユニークな点は、球体を回転させることで浮遊すること。球体を回転させながら、水平移動すると、 「球体の下部の圧力>球体の上部の圧力
■古代マヤの暦 古代マヤ人は複雑な暦(こよみ)をあやつったが、驚嘆すべきは、気の遠くなるような大周期。1872000日、つまり、5128年が1つの周期なのである。そして、現在の大周期は、紀元前3114年8月13日に始まり、2012年12月22日に終わるという。これが、「2012年12月22日に地球は滅亡する」の根拠である。 5128年とは気の長い話だが、これに比べれば、コンピュータ業界の周期など無に等しい。そして、このコンピュータ業界でも、大きな周期が終わろうとしている。古代マヤの暦にくらべれば一瞬だが。 ■消えたパソコンの未来 パソコンはコンピュータの大進歩というよりは革命だった。専門家が作り、専門家が使う特権階級の道具だったコンピュータを、広く大衆に開放したからである。つまり、パソコンは、「大衆の、大衆による、大衆のためのコンピュータ」かつて、パソコン業界は夢の楽園だった。歴史上珍しい
■機動部隊 「戦場の華は陸軍」は今も昔も変わらない。空軍や海軍は見た目は派手だが、しょせん戦争の支援戦力。敵の首都を制圧し、王手をかけられるのは陸軍だけ。 敵の船を何百隻沈めてみたところで、陸上にいる指導者は痛くもかゆくもない。爆弾を何万発落としても、指導者は地下壕にいる。陸軍が敵の議事堂を占領して、指導者をふん捕まえない限り、戦争は終わらないのだ。これは、人類1万年の歴史で、今も変わらない戦争の大原則である。 そして、陸軍の主戦力となるのが機動部隊である。機動部隊は、戦場を歩兵の何倍もの速度で移動し、強力な打撃力で敵を蹴散らす。古代ではチャリオット、次に騎馬兵、そして、現代の戦車へと進化している。 ■古代の戦車 ところで、戦車といえば「タイガー戦車」。戦車に興味がない人でも、名前ぐらいは聞いたことがあるだろう。タイガー戦車は、第二次世界大戦で活躍したドイツ陸軍の重戦車である。分厚い装甲、
■プレイステーション3 本日、2006年8月12日はパソコンにとって記念すべき日である。パソコンのデファクトスタンダード「IBMPC」が誕生して、ちょうど25年経ったのだ。たかが4半世紀と言うなかれ、コンピュータの世界は他の業界の7倍の速さで進歩する。初代IBMPCのメモリ容量は16KBだったが、今はその3万2000倍。25年間で3万2000倍の進歩!?他の業界ではありえない。 マイクロソフトは黄昏れて、パソコンが「情報加工処理業」のITに併合される。そんな暗い現実に、一筋の光がさしてきた。ソニーのプレイステーション3である。ソニーのプレステ3はゲーム機なのに、「ハードディスク+Linux」を装備している。読み書き可能な記憶装置と汎用OSがあれば、パソコン同様、プログラムが自由につくれる。 現在、パソコンの世界では、フリーのプログラマーたちが様々なソフトを制作し、公開している。「Vecto
Topics! 2024 06.02週刊スモ 第570話 本の歴史(4)~本が消える日~ 2024 05.13週刊スモ 第569話 本の歴史(3)~謎の叙事詩 ウズ・ルジアダス~ 2024 04.28週刊スモ 第568話 本の歴史(2)~イーリアスとオデュッセイア~ 2024 04.07週刊スモ 第567話 本の歴史(1)~ホメーロスと吟遊詩人~ ガイアチャンネルは 地球の歴史をCG再生するソフト 地球の歴史&地理をリアルタイムで3D再生するソフト。 政治・首都・宗教・言語など、地球の国情報を調べる 国籍・特産品・気候区・地形など、世界の町情報を調べる。 地球の歴史を物語として、丸ごと連続再生する。 日付を決めて、地球5000年の歴史をタイムトラベル。 世界七不思議や地球の歴史的遺産もCGで再現。 王・征服者・探検家・聖人など、歴史を彩る英雄の人生。 歴史上行われた陸戦・海戦・空爆・ミサイ
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