サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
衆院選
d.hatena.ne.jp/JD-1976
ニッセイ基礎研究所の久我尚子氏のレポートが、方々で話題になっている。 アベノミクスで苦しむ氷河期世代〜内定率上昇・雇用者増の一方、30代は正規雇用者が減少。就職期が生む雇用環境の格差。 http://www.nli-research.co.jp/report/researchers_eye/2014/eye150210.html 記事のタイトルだけを見て反発したり、逆に喜んだりする人もいるかと思われる。しかし本文は短いながらも、なかなかどうして興味深いものだ。 特に印象的な部分を引用させていただく。 第二次安倍政権発足直後と直近の雇用者数の増減を見ると、雇用者は100万人以上増えているが、増えているのは非正規雇用者であり、むしろ正規雇用者は減っている(図1)。年代別に見ると、25〜34歳以外では非正規雇用者の増加により雇用者全体は増加、あるいは横ばいだが、25〜34歳では非正規雇用者の増加
ESRI Discussion Paperより。 短期日本経済マクロ計量モデル(2015年版)の構造と乗数分析 http://www.esri.go.jp/jp/archive/e_dis/e_dis314/e_dis314.pdf 本論では、なにかと話題になる経済政策の乗数について、最新のシミュレーションが実施されている。詳細は現物にあたっていただくとして、概要のみ抜粋引用いたしましょう。 1) 公共投資の拡大 実質GDPの1%相当の公共投資の継続的な拡大は、実質GDPを1年目1.14%、2年目以降も概ね1%程度拡大させる。乗数の大きさは金融政策のスタンスにも依存しており、政策反応関数を短期金利一定の仮定で置き換えると、乗数は1.21%〜1.32%にまで拡大する。 2) 所得税減税 名目GDPの1%相当の個人所得税減税(継続減税)は実質GDPを拡大させる(1年目0.30%、2年目0.37
twitterにて、cloudyさんことkmori58さんの訃報に接しました。 病床にあっても常に批判精神とユーモアを忘れない姿勢に、陰ながら尊敬の念を抱いておりました。また、サブカルチャーから時事問題まで、該博な知識に裏打ちされた軽妙な語り口には、大いに楽しませていただいたものです。ときに私の何気ないつぶやきにも反応してくださったり、当方から教えを乞うたりしたことなどは、良い思い出です。 謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
本日の日経新聞にて、話題のトマ・ピケティがインタビューに応じている。 グローバル化に透明性を パリ経済学校教授・ピケティ氏 http://www.nikkei.com/article/DGXLASDF19H05_Z11C14A2SHA000/ ぶっちゃけピケティ関係の議論はほとんど追っていないんだけれども、例の「r>g」の話はそんな不心得者にさえも今やすっかりおなじみとなった感がある。インタビューではそれ以外の話がなかなか新鮮だったので、備忘録として一部引用させていただく。 ――グローバル化と格差の関係をどう見ていますか。 「グローバル化そのものはいいことだ。経済が開放され、一段の成長をもたらした。格差拡大を放置する最大のリスクは、多くの人々がグローバル化が自身のためにならないと感じ、極端な国家主義(ナショナリズム)に向かってしまうことだ。欧州では極右勢力などが支持を伸ばしている。外国人労
日本総研にて、研究員の小方尚子氏が興味深いレポートを執筆している。 地域的バラツキが広がる個人消費、その背景と課題 http://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/researchfocus/pdf/7765.pdf 概要はこうだ。 ◆本年4月の消費税率引き上げ以降、個人消費が弱い動きを続けており、とりわけ地方の消費の不調が顕著となっている。そこで、2011年以降の個人消費における地域的バラツキの実態を、ミクロの世帯ベース、マクロの地域全体の消費市場に分けて整理し、消費回復に向けた課題を考えてみた。 ◆地方の消費低迷の主因として世帯当たり収入の伸び悩みが指摘できる。この背景として、足許の景気拡大局面で、大都市に多く立地する大企業で賃金引上げの動きが先行したことが挙げられる。もっとも、影響としては、一人当たりの賃金の増加よりも都市部で急速に進んだ共
というお話です。総務省情報通信政策研究所の情報通信政策レビュー第9号から、山口真一氏の論文。 ゲーム産業におけるインターネット上の著作権侵害と経済効果―ゲームプレイ動画とゲームソフト販売本数に関する実証分析― http://www.soumu.go.jp/iicp/chousakenkyu/data/research/icp_review/09/09-8yamaguchi2014.pdf 要旨だけですでにおもしろい。 本研究では、インターネット上の著作権侵害による経済効果について、ゲーム産業を対象に実証分析を行う。問題意識は、著作権法違反であるゲームプレイ動画について、ゲームソフト販売本数に与える影響を理論的に整理し、その効果を定量的に分析することにある。分析では、ゲームプレイ動画のゲームソフト販売本数に対する影響を明示的に組み込んだ、ゲームソフト需要モデルを用いた。また、推定においては、
GDP速報発表で沸き立っているようですが、ここで小巻泰之氏の2014年4月の論考を振り返ってみましょう。 消費税増税における「認知ラグ」の影響 http://www.nli-research.co.jp/report/nlri_report/2014/report140417.pdf 当時一部界隈で話題になり、私もおおいに感銘を受けたものだ。冒頭の要約よりも最後のまとめのほうがわかりやすいので、そちらを引用させていただく。 消費税増税の影響ついて,駆け込み需要とその反動減に限れば,安定的な経済活動を行う上での撹乱要因になることは間違いなかろう。撹乱要因として指摘できるのは,増加→減少→増加と経済の変動が増減を繰り返すことではない。駆け込み需要と反動減の規模やその持続性が当該期には正確に把握できないことにある。 一般的に,統計データ等から経済状況を認識するまでの「認知ラグ(recogniti
根井雅弘氏のエッセイにて、ケインズを取り上げた回でちょっと気になる記述を見かけたので、メモしておく。 古典を読む:第2回 ケインズ http://jiyugaoka-clweb.com/neimasahiro-essay02/ ケインズ体系のなかで産出量を決めるという意味で最も重要な戦略変数は投資だが、低金利政策に限界があるとき、『一般理論』のなかには「投資の社会化」を示唆する文章があるものの、示唆しているだけでそれ以上の記述はない。だが、『ケインズ全集』を読むと、1940年代の彼がどんなことを考えていたかはある程度わかる。—彼は、予算を「経常予算」と「資本予算」に分ける。経常予算は均衡するのが原則であり、余剰があれば資本予算に移される。公共投資は資本予算によって賄われるが、留意すべきは、公共投資が、短期的な景気対策というよりは、長期的な投資計画に基づいておこなわれるべきだということである
RIETIにて、研究プロジェクト「通商産業政策・経済産業政策の主要課題の史的研究」の一環として、安田武彦氏が論文を発表している。 中小企業政策情報の中小企業への認知普及—小規模企業を対象にした考察— http://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/14j049.pdf 小生、最近は概念の空中戦よりもこういう小回りの利いた実証分析のほうが好きだ。 まずは要旨である。 我が国において中小企業に対してはきめ細かな支援政策が講じられている。本稿はこうした中小企業支援施策の情報がどの程度、中小企業、特に昨年の中小企業基本法改正によって施策の重点化の対象となった小規模企業に認知されているのかについて独自の調査で概観するとともに、認知度を決定する要因を分析するものである。 調査の結果からは、2000 年代の主要中小企業施策について、総じて施策認知度が低いこと、施策認知
法人税減税と消費税増税ってバーターですよね、という話はよく聞かれるところだ。昨日もtwitterでそのような意味合いのつぶやきを見かけたので、ふとぐぐったら、こんな論文が見つかった。著者は関口智氏。 戦後日本の法人税制の分析視角 http://ritsumeikeizai.koj.jp/koj_pdfs/59618.pdf 「はじめに」から引用する。 本稿の焦点は,国際比較の視点をふまえつつ,戦後日本の法人企業の特色と法人税制との関係を考察することにある。特に留意するのは,日本の法人企業の国際比較からみた特徴と法人税の関係,所得税減税のメカニズムと法人税との関係,一般消費税導入プロセスと法人税との関係である。なお,本稿で対象とする期間は,主としてシャウプ勧告に基づく税制改正の行われた1950年以降から1980年代中盤までとすること,対象法人は主として法人税の大半を納付している大企業であるこ
11月4日に実施された第18回経済財政諮問会議の議事要旨が公表されている。 http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2014/1104/gijiyoushi.pdf この中で民間議員(サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)の新浪剛史氏がだいじなことを言っているので、備忘録として引用しておく。 もう一点、ぜひ考えていただきたいのは、5.5兆円を使った経済対策の結果がどうなったのか。つまり3%上げるに当たって、本日もヒアリングをしてみると、5.5兆円を感じないという消費者団体の方がいた。実際に5.5兆円を使って、反動減がどのようになったのか、これはしっかりトレースし、しっかり見て、今後の経済運営に活かさなければいけない。やり方そのものが本当によかったのか、もっと効果が出る方法はなかったのか、こういうことを考えなければいけな
いささか旧聞に属する話だが、ESRI Discussion Paperにて宇南山卓氏と古村典洋氏が共同で論文を発表している。以下は発表当時に私がtwitterでつぶやいた感想のリメイクになる。 株価が消費に与える影響:アベノミクス期を用いた資産効果の計測 https://www.mof.go.jp/pri/research/discussion_paper/ron263.pdf まずは概要。 本稿では、第2次安倍内閣の発足前後から2013年の前半にかけての急激な株価の上昇を自然実験として、資産価格の上昇が消費を増加させる効果、いわゆる資産効果の大きさを計測した。家計レベルでの株式保有と消費の情報が利用可能な家計調査を用いることで、株価以外の要因をコントロールして資産効果の大きさを計測することを可能にした。推計された資産効果の大きさは、株価上昇がもたらすキャピタルゲインの限界消費性向が2.2
日経新聞にて、一部界隈でやたら人気の高いスコット・サムナーがインタビューに応じている。 欧州危機再来を懸念 サムナー米ベントレー大教授に聞く http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM18H01_R21C14A0FF2000/ 備忘録として引用させていただく。 ——株式市場の振れ幅が大きくなっています。 「足元の株安は世界的に成長への期待が弱まりつつあるためだが、震源はユーロ圏だ。深刻な低インフレと需要の不足、賃金の低迷で名目の国内総生産(GDP)が伸びない結果、政府債務のGDP比が上昇し続けている。ギリシャ問題に揺れた2011年型のユーロ債務危機が再来する可能性を市場が強く意識し始めている」 「向こう数年、米国は安定成長が続くだろう。だがロシアや中国、ブラジルなど有力な新興国の景気は思わしくない。米経済も数カ月前に投資家が考えたようなテンポの速い回復は難
タイトルは軽い因縁であって、深い意味はない。 内閣府のマンスリー・トピックスにて、消費税増税に関するレポートを大坂恭子・荻島駿両氏が共同で執筆している。 消費税率引上げ後の個人消費の動向 http://www5.cao.go.jp/keizai3/monthly_topics/2014/1021/topics_036.pdf まずはお約束通り概要。 1.我が国の個人消費をみると、消費税率引き上げ後も、基調としては持ち直しの動きが続いているものの、夏場の天候不順の影響などもあり、最近では足踏みがみられる。本稿では、消費税率引上げ後の消費の持ち直し局面について、品目・業種ごとに特徴を確認する。また、最近の個人消費の足踏みの背景について、所得や世代といった階級毎の動向を考察していく。 2.2014年1−3月期の消費の伸びと4−6月期における落ち込みの大きさを前回1997年4月の消費税率引上げ前後
ちょっとおもしろかったのでメモ。 バーナンキ前FRB議長、サマーズ・ピケティ両氏なで斬り http://www.nikkei.com/markets/column/ws.aspx?g=DGXLMSFK09H18_09102014000000&df=1 サマーズ氏によれば、米経済は金融危機に先立つ2000年代前半に、すでに長期の停滞に入っていた。住宅バブル期ですら経済の過熱やインフレが起きなかったのは、その何よりの証拠だという。人口の伸びの鈍化などで米国内での投資機会が減り、米経済が十分な需要を生み出せなくなったのが停滞の原因だと説いている。 その結果、米国では完全雇用は難しくなり、政策金利の適正水準もマイナス圏に落ち込んだとサマーズ氏は指摘。インフラ投資などの積極的な財政支出とともに、緩めの金融政策を長く続け、若干のバブルも容認すべきだとの対応策を訴えている。 これに対し、バーナンキ前議長
ふと気づいたら、NRI金融市場パネル7月の議事概要が公開されていた。中でもアベノミクスの評価に関して植田和男氏の「総括」要旨がひとつの視点としてなかなかおもしろかったので、一部を引用させていただく。 植田氏は日銀のQQEについて、理論的には「効果には疑問の余地があった」としつつも、「外国為替市場と株式市場に大きな影響を与え、それが実体経済にもある程度の効果を及ぼしている」と見る。そして、かのKrugman(1998)における主張の眼目は、日銀による高めのインフレ目標へのコミットメントと、政府による財政政策との協調にあると指摘した上で、こう論じている。 日本銀行による「量的・質的金融緩和」は、Krugmanのこうした提案に近い面がある。例えば、インフレ目標を従来の1%から2%に引き上げることでコミットメントを強めるとともに、長期の国債も大量に買入れることにした。同時に、政府は財政政策だけでな
JCERの「日本経済研究」では、ときに興味深い論文が公表されている。今月はそのうちの2本がとくに目を引いた。 まずはこちら。 景気後退と自殺、そのプロセス—都道府県別パネルデータによる考察 薄田 涼子 以下は概要である。 自殺者の多くが、生前に精神的ストレスや精神疾患を抱えている。既存の経済学的な自殺研究は、不況や失業と自殺リスクの相関を分析し、その間に精神衛生が徐々に乱れるプロセスがあることを暗示している。本稿は、精神衛生に関する都道府県別パネルデータを用いて、不況期に自殺率が上昇するだけでなく、精神的ストレスが増大すること、精神疾患への罹患リスクや精神科治療への需要が増大すること等を示している。精神科治療に対する認識を高め、精神科治療体制を強化することを視野に入れた自殺防止策の重要性を示唆している。 それだけなら堅気の衆には「うん、知ってた」でかたづけられてしまう話かもしれない。だが、
財務省広報誌「ファイナンス」の「シリーズ日本経済を考える」に、折原正訓研究官がなかなかおもしろい論文を寄稿している。 上場企業と非上場企業の設備投資 法人企業統計を活用した記述統計に基づく分析 http://www.mof.go.jp/pri/research/special_report/f01_2014_04.pdf 目を引いたのは以下の記述だ(p.83)。 グラフ2は、上場企業と非上場企業の設備投資比率に関する明確な違いを示している。すなわち、すべての年度において、非上場企業の方が上場企業よりも設備投資を活発に行っていることが見てとれる。全期間を通じた年度の設備投資比率の平均値は、上場企業については約4.3%、非上場企業については約6.9%である。 なぜ上場企業の設備投資比率は、非上場企業の設備投資比率よりも低いのであろうか。この違いに関する説明として、Asker, Farre-Me
いまいち騒がれていないようなので、こちらにメモ。まあ、たかが日銀総裁のコメントなので、あんまり騒ぐような話でもないのかもしれない。 2014年 9月12日 【挨拶】黒田総裁(政策研究大学院大学 学位記授与式) http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2014/data/ko140912a.pdf ちなみに邦訳だそうな。以下、個人的に「おう!?」となった箇所を引用。ただしそのままだと読みづらいので、適宜分割させていただく。 例えば、私は1970年代後半に主税局の課長補佐として、1980年代後半から1990年代初めにかけて主税局の課長として、消費税導入や所得税減税の検討作業に参画しましたが、その際には、「最適課税論」を英国の大学院で学んでいたことが非常に大きな意味を持ちました。 「最適課税論」とは、簡単に言うと、「課税に伴う損失の発生を最小化
良書に出会うとうれしくなる。うれしくなると、140字では飽き足らず長文をしたためたくなる。松田茂樹氏の『少子化論』は、久方ぶりにそんな思いにかられた一冊だった。ちなみにポストの記事名は、本書の没タイトルから拝借した。 日本で少子化対策がはじまってから、およそ二十年。保育所の拡充、育児休業や短時間勤務といった仕事と子育ての両立支援など、政策は一歩づつ前進してきたにもかかわらず、出生率の本格的な回復にはいたっていない。その理由のひとつとして、少子化に取り組む専門家たちによってつくられた「少子化論」の側に問題があったのではないか、と松田氏は指摘する。 ありていにいえば、巷間流布されている少子化論は一定の方向にかたよっていて、そのかたよりのせいで少子化の全体像がみえづらくなってしまっており、もっと本質的な問題がなおざりにされている、ということだ。 こうした問題意識に立ち、松田氏は過去から現在にいた
という内容の論文を、沖縄国際大学の松崎大介氏が2005年に発表している。 物価硬直的な経済における流動性制約と消費税 http://ir.okiu.ac.jp/bitstream/2308/275/1/13405497_13_matsuzaki_daisuke.pdf 【概要】 本稿では,流動性制約下における消費税政策の有効需要に対する影響について考察する.特に,現在においては物価調整が緩慢である一方,将来においては十分な調整がなされるため完全雇用が実現するという経済を考える.本稿における結論として,将来における消費税率の変更は,有効需要に対し何ら影響を与えないが,物価調整が緩慢な今期における消費税率の減少(増加)は,常に今期の有効需要を増大 (減少)させることを示した. もちろん私ごときが申すまでもなく、経済モデルの常として、さまざまな仮定に依存した結論であることには注意が必要だろう。
金融政策決定会合議事要旨(4月26日開催分)が公開された。その中で、おや、と目にとまった部分があるので、メモしておく。 金融政策決定会合議事要旨(4月26日開催分) http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/minu_2013/g130426.pdf 「2.経済・物価情勢の展望」と題された章に、このような記述がある(p.10)。 消費税率引き上げの影響について、ある委員は、極めて緩和的な金融環境のもとで、消費税率引き上げ分を含むインフレ率の上昇が国民の予想を大きく上回った場合、家計の実質所得減少の影響が想定以上になるリスクがあるとの見方を示したうえで、消費税率引き上げ分を含めた物価見通しについても、国民に認識を浸透させていくことが重要であると述べた。 後のほうを読むと、「ある委員」とは白井さゆり委員のことだろうと見当がつく(p.16より。なお、記法の都合
あいかわらずこの著者は本当に「希望的観測」を許さないのだな、というのが第一印象である。ヌリエル・ルービニはおろかフランク・ナイトもかくや、といったおもむきだ。 竹森俊平氏の『通貨「円」の謎』は、素朴な疑問から出発する。 経済危機が起こると、ふつうは通貨安に振れる。これによって輸出が伸び、やがて経済のV字型回復をもたらす。しかし、日本ではなぜか円高になる。リーマン・ショックのときも東日本大震災のときもそうだった。為替市場において、経済学でいう「価格シグナル」が正常に機能していないということだ。いったいなぜ? この謎解きの道行きで安部首相の「アベノミクス」を評価する、というのが本書の構成である。いわゆるアベノミクス本の一種であって、しかも好意的な立場であるものの、記述のほとんどは世界各国の、おもに金融政策の解説で占められている。アベノミクスが成功するか否かは世界経済の動向に依存し、かつ、その鍵
4月28日の日経新聞に黒田日銀のいわゆる「異次元緩和」、すなわち「量的・質的金融緩和政策」について、マイケル・ウッドフォードのインタビュー記事が掲載されている。以前のインタビュー(こちらを参照)に関連して、なかなか興味深い論点を含んでいるので、備忘録がてら抜粋引用させていただく。 「黒田流緩和、「私ならそうしない」 米第一人者の懸念 http://www.nikkei.com/markets/column/ws.aspx?g=DGXNMSGN27016_27042013000000&df=3 ――過去の日銀の政策の問題点について、どう考えますか。 「これまで日銀は緩和的な政策が将来にわたり続くと断言することに非常に慎重だったと思う。多くの劇的な政策がとられたが、それらが効果を生むまで続くという点が強調されていなかった。例えば最初の(2001〜06年までの)量的緩和にしても日銀のバランスシー
内閣府ESRIで『バブル/デフレ期の日本経済と経済政策』が読めるのは衆知のことと思う。 私が最もおもしろく読んだのは、第1巻『マクロ経済と産業構造』所収の中島隆信氏の論文「サービス産業の生産性」(PDF)だった。 以下、要旨を引用させていただく。 日本経済浮揚のための条件としてしばしばあげられるものとしてサービス業の生産性向上がある.生産性は経済成長のうち投入量の貢献だけでは説明しきれない残差とでもいうべき指標として計測されるため,それが向上することは思いがけない天からの贈り物であるかのように解釈されることもある.まさに困ったときの生産性頼みとでもいうべきものだろう. しかし,そうした議論の根拠となるべきサービス業の生産性指標はきわめて心許ないといわざるをえない.まず,生産性の分子となるアウトプットの定義が不明確である.たとえば,GDPの4-5%程度を占める小売サービスはしばしば低生産性産
今年も残すところあとわずかとなりました。恒例の「今年の10冊」を挙げていきたいと思います。私が今年読んだものなので、新刊だけではありません。 毎年ことわっていることではありますが、あくまで印象深かった本を選んでいるのであって、必ずしもベストテンというわけではありません。もちろん個々の書籍の内容に全面的に賛同するものではありませんので、あしからず。 ●ケインズ『雇用、利子、お金の一般理論』 いまさら私ごときがどうのこうのと言いつのるべくもない、経済学の古典です。この汲めども尽きぬ泉のごとき豊穣な書籍が、新鮮かつ明解な訳文で読めるのは、まことに重畳と申せましょう。 ネットには誤訳の指摘も散見されますが、本格的な研究者ならざる市井の読書人がひとまず有名な「古典」に触れてみたいという願望を満たすには、格好の訳本かと思います。クルーグマンのイントロダクションとヒックス論文が収録されているのもポイント
東日本大震災以後は『国策民営の罠』等で原発問題に取り組んできた印象の強い竹森俊平氏だが、新著はひさびさに本来のフィールドに帰還した感がある。 「ユーロ」という通貨政策が政治的にも経済的にも無理筋の企てだったという視座は、『中央銀行は闘う』から一貫するものだ。無理を通せば道理が引っ込む。道理の消えた世界が呼び寄せるのは、もちろん混沌にほかならない。 もっとも、これは著者独自の視点というわけではなく、たとえばクルーグマンの『さっさと不況を終わらせろ』でもそうした考えは示されている。本書の大半は、ユーロのどこがどう無理筋なのか、その無理を通した(通している)ことによってどのような道理が引っ込められ、そしてどんな混沌たる危機が起きた(起こっている)のか、という記述に割かれているので、くわしくは直接あたられたい。 しかし、竹森氏の思考がおもしろいのは、今そこにあるユーロ圏の経済危機を前にして「いった
本日の日経新聞に「FRBは成長目標明示を」と題したマイケル・ウッドフォードのインタビューが掲載されている。おもしろいので、備忘録として以下に引用させていただく。 ——緩和手段の一つとして、ゼロ金利を解除するメドを2015年中に先送りする案が取り沙汰されます。 「現在は『14年終盤まで』としている継続期限をその通り実行するとの確約はなく、15年にしたところで緩和効果の点からはほぼ意味をなさない。市場はFRBの見通しが一段と悲観的になったと考え、消費者心理に悪影響を与えるだけだ」 「時間軸の効力を高めるには、金融引き締めに耐えうる将来の名目国内総生産(GDP)の伸びや物価水準などを設定し、そこに至る道筋を示す必要がある。あまり信用されていない時期を設けるよりも、目標の米成長率に達するまでは短期金利を上げないという方針をはっきりさせたほうが緩和効果が大きい」 ——8月の雇用統計悪化で、量的緩和第
7月31日、日銀HPにて2002年1月から6月の金融政策決定会合議事録が公開された。 金融政策決定会合議事録等(2002年1月〜6月開催分) http://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/record_2002/index.htm 当時の議論をうかがい知ることができる貴重な資料だけれども、ここでは2002年3月19日、20日の議事録から、一部で話題を呼んだ発言を備忘録として引用しておく。なお、引用元はこちら(PDF)である。 p.95より。 山口副総裁 一つ二つコメントがあるが、一つは中原眞委員が言われたインフレ・ターゲティングの問題で、政策のフレームとして政府と共通の目標を共有することには、それなりに意味があるのではないかという趣旨のことを言われたと思う。しかし問題はやはり、中原眞委員も言われたことだが、仮にそういう目標を共有したとして、どうやってそれを実
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『d.hatena.ne.jp』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く