サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
iPhone 16
hidetoshi-iwasaki.cocolog-nifty.com
アベノミクスとは為替を円安にして株価を高め、その間に構造改革を進めて経済成長を図る政策である。 最初の1~2年(13年、14年)は上手く行ったが、15年夏以降に失速してしまった。 構造改革が思うように進まなかったからである。 何度か書いてきたが、民間部門の消費支出(個人消費)が一向に改善しない。 アベノミクスが始まる前の民間最終消費支出(2012年暦年)が308兆円。 昨年1年間の民間最終消費支出(2015年暦年)が306兆円。 むしろ悪くなっている。 なぜか。 若い、働く世代の年収が低いままだから、消費したくても消費できない。 もっと言うと結婚したくても結婚できないから人口も増えない。 20代後半の男性の非正規率は22%。 そもそも非正規社員の年収平均は230万円でしかない。 これではユニクロでさえ贅沢品になってしまう(だからGUが流行っている)。 30歳~34歳男性が結婚している率は、
昨日の朝のテレビ番組(テレ朝「モーニングショー」)で、大学の先生が、「(パナマ文書で問題となっている)キャメロン英国首相の亡父の投資ファンドがタックスヘイブンで上げた利益300万円は課税されていない」と説明していました。 (パナマ) これに対して番組のコメンテーターが「この300万円を英国に持ってくるときに税金を取られるのではないか」と質問。 大学の先生は「配当という形で持ってくることも出来るし、税金がかからないような、いろいろな方法をパナマの法律事務所の専門家たちが考えてくれると思うんです」との趣旨を回答。 * * * * * * * * * パナマ文書問題の本質はまさにこの質疑応答に隠されています。 どういうことでしょうか。 実は、300万円は英国に持ってくる必要がないのです。 「持ってこなければ使えないではないか」という質問が聞こえてきそうですが、そんなことはありません。 富裕層の人
RBSが投資家に対して 『Sell everything except high-quality bonds. This is about return of capital, not return on capital. In a crowed hall, exit doors are small.』 (質の高い債券以外は全部売れ。これは資本利益率(Return on Capital)の話じゃなくて、資本の回収、現金化(Return of Capital)の話だ。混雑した会場では、出口のドアが小さい) との warning (警告)を出したことで注目されています(『こちら』 及び 『こちら』)。 RBSは原油が16ドルになるかもしれないとの予想も・・(上記2つの記事およびインタビュー参照)。 原油は昨日一時的に30ドルを切りました(2003年以来)。 * * * * * 日曜日に発売され
キンキナトゥス(Cincinnatus)は共和政ローマ前期に登場する伝説的人物。 彼は紀元前5世紀頃の農民で、執政官に任命されて、ローマを外敵の襲撃から守ります。 そして敵を滅ぼすと、ただちに進んで政治権力を返上。 ふたたび農民に戻ったことで知られています。 2012年12月。 ブラジル、リオデジャネイロ。 ニューヨーク出身のジャーナリスト、グレン・グリーンウォルドは、この地に住みながら、英国ガーディアン紙などに寄稿していました。 12月1日。 彼は1通のメールを受け取ります。 コンピューターの画面に現れた差出人の名前は「キンキナトゥス」でした。 (グレン・グリーンウォルド) キンキナトゥスと名乗る人物は、メールでグレンに対して「あなたはPGPを使っていないのではないか、だとすれば、ぜひPGPを使ってほしい」と促してきました。 PGP は Pretty Good Privacy の略。 1
若くして亡くなられた中川昭一元財務大臣を初めてとして、興銀を辞めて政治家になった後輩たちが何人かいます(『こちら』に主な人たちの名前が載っています)。 その中の一人が少人数(10~20名)の勉強会を毎月催していて、私も時間が許す限り参加するようにしています。 2~3年前でしょうか、青山繁晴さんがこの勉強会の講師として招かれていました。 100名近くを集める政治家のパーティーと違い、少人数の勉強会です。講師の青山さんは、かなり「突っ込んだ、中身のある話」をしていました。 さてその青山さんが今般、福島原発内部に入り、現場で指揮を取る所長の吉田昌朗氏にインタビューしました。 そしてそのときの模様が、関西テレビ・スーパーニュースアンカー「青山繁晴のニュースdeズバリ!」で放映されました(4月27日)。 (なお一部はフジテレビのニュース番組でも放映されていたので、そちらでご覧になった方も多いと思いま
投資家ウォーレン・バフェットは個人資産4兆円強を有し、世界で3番目の金持ちと言われています(『こちら』)。 彼が運営する投資会社バークシャー・ハサウェイはニューヨーク証券取引所にも上場しており、誰でもこの会社の株を買うことができます (今では1株1000万円以上します(『こちら』)が、バフェットが最初にスタンフォード大学にゲスト・スピーカーとしてやってきた時はたったの60ドルでした(『こちら』))。 今年81歳になるバフェットの後継者については、これまでおおよそ3名の名前が上がってきました。 1人は天安門事件の際、学生として天安門広場でデモ隊を組織した経験を持つリ・ルー氏 以下は昨年7月のウォールストリート・ジャーナル紙からの抜粋です(全文は『こちら』)。 「リ氏は毛沢東元国家主席による文化大革命が始まった1966年に誕生した。 同氏が9カ月の時、技術者だった父親は「再教育」のため炭鉱に、
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)傘下の三菱UFJモルガン・スタンレー証券が、自己売買部門での債券業務の不振で約800億円の損失を出したとのことです(『こちら』、あるいは『こちら』)。 この結果、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の証券持ち株会社「三菱UFJ証券ホールディングス」は11年3月期決算で500億円規模の最終赤字を計上する見通し(『こちら』)。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券は60%がMUFGによって所有され、40%は米国のモルガンスタンレーが持っています。 (過去1年間の三菱UFJフィナンシャルG株価推移) 800億円(961百万ドル)の損失の4割にあたる385百万ドルの損は、今月に発表される米国モルガンスタンレーの第1四半期決算に反映されるとウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)は報じています(『こちら』)。 (過去1年間のモルガンスタンレー株
政府は22日、東京電力の原子力発電所の事故で被害を受けた周辺住民らへの損害賠償について、 「国も負担する方向で検討に入った」 とのことです(3月23日、読売新聞 『こちら』 )。 一般に、企業が環境汚染を引き起こしてしまった場合、「汚染を除去し環境を復元すること」や「被害にあった方たちに対して補償する」ことは、 「汚染を引き起こした企業が負担する」 ことになります。 これを Polluters Pay Principle(汚染者負担の原則;略してPPPの原則)といいます(『こちら』を参照)。 しかし原子力発電の場合には「原子力損害の賠償に関する法律」(『こちら』)が定められていて、この法律にそって誰がどこまで負担するかが決められることとなります。 所管官庁という言葉があるのかどうか、詳しいことは私にはわかりませんが、この法律を読むと、文部科学大臣に主たる権限と責任を課していることがわかりま
S&Pが日本国債を格下げ(AA→AA-)。 このニュースがきょう午後4時過ぎに伝わると外国為替市場では円が対ドルで1円近く下落。 もっとも格付についてはこんな事実もあります。 リーマンブラザーズが破綻する1週間前。 この段階に至っても、リーマンのS&P格付はシングルAでした。 S&Pによって「リーマンブラザーズは新日鐵や日立よりも安全性が高い」と評価されていたのです(『リーマン恐慌』54頁)。 したがって格付というのは実はあまりあてになりません。 むしろCDS市場での日本国債CDS保証料率(『こちら』)や国債の流通利回り、新発債への応募状況などを見ていった方が良いと思います。 以下のグラフは日経新聞1月19日付のウェブサイト(『こちら』)から取ったものです。 * * * * * * そうは言ってもAA-というのはどのくらいの格付なのか、他国と比較してみましょう。 AAAの国 米国 英国 ド
幻冬舎がMBOで上場廃止となる旨が発表されました(『こちら』)。 (幻冬舎株価推移) 金曜日の株価146,000円に対して、公開買付価格は220,000円(50.7%のプレミアム)。 過去3ヵ月平均株価147,565円、6ヶ月平均株価150,012円に比してもプレミアムはそれぞれ49.1%、46.7%となっています。 このためレックス(6ヶ月平均に比し▲18.1%のディスカウント)やサンスター(6ヶ月平均に比し18.6%のプレミアム)などの時のように買付価格が問題とされる可能性は低いと思われます。 幻冬舎はこれまで自己株の市場買付を積極的に行ってきており、発行済み株式総数36,000株のうち自己株式が24%強の8,650株にも上ります。 公開買付では自己株式は取得しないとしています(『こちら』)ので、買付予定株は(新株引受権行使を勘案しても)最大27,449株、買付代金は最大 6,039百
実質実効為替レートで見てみます(下図)。 青線が実質実効為替レート(右目盛)。 赤線がドル円スポットレート(左目盛)。 なおグラフの上でクリックするとグラフは大きくなります。 上図で明らかなように、現在の為替レートは、実質実効ベースでは、2005年のレートとさほど変わりません。2008年の後半よりも現在の方がむしろ円安ということになります。 なお実質実効為替レートについては日銀のウェブサイトに詳しい説明が載っています(『こちら』)。 また上のグラフの出所は同じく日銀のウェブサイトです(『こちら』の頁から『為替』のところをクリックする)。 昨日放送された日経ヴェリタストーク(『こちら』)で五十嵐さん(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)が実質実効為替レートとこれを踏まえた為替レートの考え方について、分かりやすく説明してくれています。 番組の再放送は・・・8月16日(月) 24:00~、8月
昨日のNY(ダウ平均)は一時、10,000を割り込み、9,869を記録しましたが、その後、急速に回復。為替も3円ほど円高に振れました。 (さて前回からの続きです) 4.中国について 今回の出張では中国を訪問してから、シンガポールにやってきた。 中国では何人かの政策決定者と面談した。 周小川中国人民銀行(中国の中央銀行)総裁とも面談した。 (周小川総裁) 中国経済の将来の成長について中国の要人たちは、「謙虚なレベルの心配(modest degree of worry)」を持っているのかもしれないと、私は感じた。 人民元については切り上げが起きるとしても、ドル単独に対して、というよりも、通貨バスケットに対してペッグさせて再評価させる ― こういった方向もあるように感じた。 中国の要人たちは、中国の輸出産業のコスト構造の構造的変化を心配している。 中国内陸部から珠江デルタ地域への労働者の移住のペ
こちらの写真はGreenlight Capital のDavid Einhorn 社長。 今年42歳になるヘッジファンド・マネージャーです。彼を初めとする有力なヘッジファンドのマネージャーたちが “ある夕食会” に招かれ、通貨ユーロについて話し合ったことが今、話題を呼んでいます(詳しくは『こちら』)。 * * * すでに何度も報道されているように、ギリシャの問題を受けユーロがじりじりと値を下げています。 (過去3ヶ月間のユーロ対ドル) (過去3ヶ月間のユーロ対 円) * * * 冒頭の “ある夕食会” の話ですが、ウォールストリート・ジャーナル紙の報道(2月26日付け、詳しくは『こちら』)によると、 2月8日に Monness, Crespi, Hardt & Co.(『こちら』)が、ニューヨーク、マンハッタンで、"idea dinner" と称する夕食会を開催。 夕食会には、SAC Ca
水俣病訴訟で被害者団体と国などとの和解協議が熊本地裁で始まっています。 小沢鋭仁環境大臣は先月「5月1日の慰霊式を念頭に全面解決に向けて努力したい」と発言(『こちら』)。 5月1日まで残り2ヶ月ちょっと。 救済問題は大詰めを迎えつつあります(『こちら』)。 * * * 水俣病については下記の通りこのブログでも何度か書いてきました。 『金融機関から見た水俣病(その1)』 『金融機関から見た水俣病(その2)』 『金融機関から見た水俣病(その3)』 『金融機関から見た水俣病(その4)』 『新聞協会賞』 『水俣から、未来へ』 『Chisso accountable to public』 『オバマ大統領と水俣病』 * * * チッソ水俣工場による水俣湾の水銀汚染は既に第二次世界戦前から始まっていたといいます。 水俣湾で魚が浮上しネコの狂死が相次いだのが1953年。 水俣病公式発見の日とされるのが19
昨日ご紹介したスピーチの中には既に日本語に翻訳されているものもあります。 特に Steve Jobsのスピーチ は翻訳されたものが何種類かあり、ネット上でも各所で紹介されています。ここでは私なりに抄訳版を作成し載せてみます(必ずしも正確に訳されていないところもあります。悪しからずご了承下さい。また全訳ではなく、あくまで抄訳です)。 * * * 『死ぬ前にどう生きるか』(スタンフォード大学に招かれた時のスピーチ) 大学の卒業式にこうやって招かれているが、正直なところ私は大学を卒業したことがない。 ところで今日は3点についてのみお話したい。 まず最初は、点と点とを繋ぐということについてお話する。 私は大学に6ヶ月間行っただけでドロップ・アウトした。 正式に退学したのはそれから18ヶ月くらい後だ。 どうしてドロップ・アウトしたか。 実はこの話は私が生まれる前に遡る。 私の生みの親は若い未婚の大学
「責任の付回しはしない。責任はここで取る」という意味の英語で、the buck stops here と言います。 元々はポーカーのゲームから来た言葉で、かつてアメリカ大統領の机の上に、この言葉のプレートがあったとのこと(詳しくは『こちら』)。 私は興銀の審査部に5年間勤務していました。 審査部では1つの会社を1ヶ月くらいかけて審査します。 相手が中小企業であったりすると、1ヶ月間のうち、10日間くらい毎日のように社長の下を訪れて時間を共有し、いろいろと話を聞きだすようなこともしました。 1ヶ月後、結論を出さなくてはなりません。 貸して良いか、貸しては駄目か。マルかバツか。 正にバック・ストップス・ヒアの状況です。 どんなに立派な分析をして、どんなに大量のレポートにしてまとめても、重要なのは、結論だけです。マルかバツか。 私は、マルかバツかをはっきりさせることのみが審査部の使命と考えていま
『23andMe』というの名の会社があります(『こちら』をクリックしてください)。 日本語に訳すと『23と私』となりますが、なぜ『23』なのでしょうか。 実は23というのはヒトの染色体の対の数なんですね。 米国のタイムという雑誌は毎年その年で最も優れた発明(Time's Best Invention)を発表していますが、2008年度でトップ(詳しくは『こちら』)に選ばれたのが、この会社が提供するサービスです。 (ちなみにこの年の2位はテスラの電気自動車で、第3位がNASAの月探査衛星Lunar Reconnaissance Orbiter でした)。 さて『23andMe』という会社は何をする会社なのでしょうか。 ひとことで言うと、オンライン上の遺伝子診断サービス会社です。 自分の遺伝子情報を知りたいと思う人は、この会社のサイトに行きクリックをすることでサービスを申し込みます(料金は399
NHKスペシャル『マネー資本主義』を見ましたが、正直がっかりしました。 この番組では、いろいろな方にインタビューして、それをひとつの番組にまとめているのですが、インタビューに答える一人ひとりの方のコメントは正確でも、これを繋ぎ合わせる際に、ある種の無理が働き、まとまったものとして見ると、間違ったものになってしまっています。 (1)この番組を作った方は、おそらく自己勘定取引というものを誤解していて、モーゲージ債の単純な引受・販売を自己勘定取引と呼ぶくだりがあります。 確かに引受業務にはリスクが伴いますが、自己のキャピタル(資本)を使って積極的にリスク(ポジション)を取りに行く自己勘定取引(Proprietary Trading)と、引受とは一般的には分けて考えています。(『こちら』の記事などを参考。) 投資銀行は昔から引受業務を行っていたのであり [日露戦争の時、日本国債を引き受けたのも投資
『イタチごっこ』とでもいうのでしょうか。 死にゆく企業のモルヒネと批判されたこともある『MSCB等』。 《【注】『MSCB等』とは、東証の定義(下記『要請』参照)によると、行使価額が6ヶ月間に1回を超える頻度で修正される条項が付与された新株予約権、新株予約権付社債及び取得請求権付株式》 MSCBについては手前味噌になりますが、既に2005年5月発行の拙著『サバイバルとしての金融』でもその問題点、危険性を指摘。 しかしオプションを利用した『この種のファイナンス』(金融商品)を考案する証券会社や投資銀行は、MSCBへの批判が高まると、新たにエクイティ・コミットメント・ライン、TIPS、STEPといった商品を開発。 姿・形を変えたこれらの金融商品を、資金繰りに苦しむ企業を相手に売り込んでいきます。(いずれも新株発行がかなりの規模で行われ、その結果、既存株主が保有する株式の価値が希薄化する懸念が高
『結局のところ、日本には資本主義が根付かないのだ』 残念ながら最近このように発言する(外資の)市場関係者が増えてきています。 先日ある外資系投資銀行大手のアジア・太平洋地域のCEOが東京から香港に移り住むことになりそうだとの話を耳にしました。 従来の『ニューヨーク・ロンドン・東京』の3極体制から、中国を視野に入れた『ニューヨーク・ロンドン・香港』の3極体制への動きが少しずつ水面下で進行しつつあります。 背景にあるのは世界第2位の経済力(生産・消費力)を持つ日本が金融面ではなかなかそれに見合った力を発揮できずにいることに対する失望かもしれません。 最近株式トレーダーを『バカで浮気で無責任』と批判する経済産業省次官の発言がニュースになりましたが、トレーダーや外国人投資家を排除しようとする動きは東京市場を異質なものとして世界で孤立化させ、上述のようなジャパン・パッシング(Japan Passin
最近読んで面白かった本を2つ。 【1】清原達郎著 『わが投資術 市場は誰に微笑むか』 間違いなく今年読んだ本でいちばん面白かった本です。 生きるか死ぬかの市場を生き抜いて、最終的には抜群のパフォーマンスを手にした著者の言葉はさすがに重さが違います。 アマゾンの書評欄に『一万円出しても読みたい本』と載っていましたが、私も全く同じ感想。 この本が世に出たことを感謝したい、そんな読後感を持ちました。 きっと1回だけでなく、何回か、読み返す本になりそうです。 【2】ビル・パーキンス著『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』 先日、日経新聞の方が来社され、この本の話が出てきたので、買って読んでみました。 本書のエッセンスをひとことで言うと、 「多くの人はお金を残して死ぬ。 お金よりも人を幸せにするのは"経験"なので、その為にお金を使いなさい」 という内容の本。 これだけ書く
最近良く耳にするパイプス(PIPEs) という言葉。(まだ余り金融の教科書などには載っていません。) 投資銀行やプライベート・エクウティの仕事に従事されている方は、ご存知なんでしょうが、パイプス(PIPEs) とは、Private Investment in Public Equity の略です。 一般に、プライベート・エクウティと称されるファンド(特に企業再生を得意とする再生ファンド)は、上場会社を100%(か、それに近い形で)買収して、非公開化してから経営を立て直し、再び上場させて上場益を得ます。 例えば、2000年11月に Silver Lake を中心とするファンドなどが Seagate の経営陣と共に22億ドル(2600億円)を投じて、Seagate(ハードディスク・ドライブで有名です)を買収。非公開化して経営を強化した後、2002年12月に再上場し、更に2003年7月に株式のs
スティール・パートナーズ対ブルドックソースの攻防。 連日のように新聞紙上を賑わしています。 スティール・パートナーズがブルドックソースの株式を保有していることが最初に判明したのが、2002年12月。その直前のブルドックの株価はほぼ600円。 株式市場は、ブルドックソースの企業価値(ここでは簡略化のため、株主価値=企業価値と置きます。後述するようにブルドックの借入金は殆どありませんので、本件では株主価値=企業価値と置いても特段の問題はありません)を、 600円×19百万株(ブルドックの株数)=114億円 とみていた訳です。 ブルドックの営業利益や経常利益は9~10億円のレベルであったので、DCF (Discounted Cash Flow) で算出しても (あるいは超簡便法で年間の営業利益の10倍という方法をとっても)、まあ、株式市場は、それなりに妥当にブルドックの企業価値を把握していたのだ
NECは子会社NECエレクトロニクスを上場させ、引き続き65%の株式を所有し続けています。 これに対し、NECエレクトロニクスの海外株主2社が、NECの持分割合を5割未満にするように要求したとの報道がなされています。 NECの側に立てば、『もともとNECが5割超の株式を持っているのを分かった上で、NECエレクトロニクスの株を買ったじゃないか。何を今さら・・』 ということなのでしょう。 しかし、海外株主の側に立てば、『上場した以上は、Public Company でしょう。少数株主の利益も考えて行動して下さい。本当にNECが5割超を持ったままで、少数株主の利益もきちんと考えてくれるフェアな経営が期待できるのですか』 ということになります。 こういった問題は、何も親子上場に限った問題ではありません。 東証第一部上場の保土谷化学工業の場合。 昨年3月の時点では、東ソー㈱が同社の株式24%を所有し
同じような状況下にあっても、それをポジティブに捉えることが出来る人と、どうしてもマイナス面ばかりに目が行ってしまう人がいます。 ポジティブな人は前向きで、チャレンジ精神旺盛。 逆境にあっても、「自分の力で何とかしてやろう」と考えることが出来る人です。 一方、ネガティブな人は、何で自分だけこんな目に会うのだろうと考えてしまいます。 ポジティブな人は回りに元気を与えますが、ネガティブな人は、回りを暗くします。 JPモルガンのSandy Warner会長(CEO)(当時) をニューヨークの自宅に訪ねた時。 リーダーの資質について話が及びました。 「どんな組織にも問題点がある。そこを指摘し『冷笑する批評家』は、リーダーにはなれない。 リーダーとは、そういった問題点を『チャレンジ』と考えて、解決しようとする、実行力のある人。 回りを元気づける(energize)人だ。」
今年1月12日のブログに載せたトヨタの理論株価算出に関するスプレッド・シート(エクセル・シート)。金融に携わっている方たちはともかくとして、そうでない方たちには 『分かりづらい』 というご意見を多く頂いてきました。 要は、 『会社四季報に載っている数字だけで理論株価が出せる簡易バージョンを作って欲しい』 との話です。 確かに、『事業に必要とされる現金』 はどうやって出すのかなど、会計や簿記をやったことがない方には少し分かりにくかったかもしれません。(すみません。) そこで、思いきって簡易バージョンを作ってみました。切れ味は少し落ちるかもしれませんが、チャートを見て売り買いする手法や、PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)だけに着目する手法、その他のいろいろな手法(営業利益の10倍を株数で割る方法など)に比べれば、信頼度は高いと思っています。 簡易バージョンに慣れたら、会計や簿記の入
水俣病公式発見の日とされるのが、1956年5月1日。もう少しで、ちょうど50年になります。 ということで、朝日新聞などのマスコミが特集記事を組むようになりました。 私が、この問題について、時折ブログを書いているのは、(ちょうど50年になるというマスコミ的発想とは関係なく)水俣病問題がいまなお極めて今日的な問題を我々の前に提示していると考えるからです。 たとえば資本主義、市場主義を考える上で、国や県はどこまで市場に立ち入っていくべきかという問題があります。 チッソは、1400億円を超える債務超過にあっても、閣議決定のもと、国、県、民間金融機関が支援をしていて、ある意味で絶対につぶれない会社になってしまっています。 その結果、本来、市場が持つ discipline (鍛錬、規律)が働かない会社になってしまっています。 Market Discipline (市場が持つ鍛錬、規律)とはどういうこと
耐震強度偽装の被害にあわれた方々をどう救うか?肝心の企業の方に補償する能力の無い場合、被害者は泣き寝入りするしかないのか? 実は、内容はかなり異なり同じ土俵での議論はおそらく出来ないのですが、この種の問題は、私自身がずっと悩んできた問題でもあります。 それは私が、水俣病問題を引き起こしたチッソ(株)に対する融資業務を興銀時代に約4年間にわたり担当したからです。 現在のチッソの財務状況を見てみますと、1,400億円を超える債務超過に陥っていることが分かります。 水俣病の被害にあわれた方々への補償金支払いなどがかさみ、多額の水俣病関連累積損失を抱えるに至ったチッソは、本来であれば、企業として存続していくことさえ難しいような状況にあるわけですが、国、熊本県、および銀行などが協力して支援にあたり、被害者の方々への補償金などの支払いに支障の無いように留意しています。 チッソの方でも、業態を汎用化学か
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『Hidetoshi Iwasaki's Blog』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く