スタジオジブリが残した傑作『耳をすませば』という映画は、むずがゆい思春期の恋や進路といった悩みや喜びを描いた“だけ”の物語なのだろうか。もちろん、雫と誠司による恋模様のエバーグリーンな尊さは、歳を重ねるごとに染み入るし、自分の才能を信じてみることの過酷さも、より実感を持って響いてくる。しかし、この映画のなにより素晴らしいところは、特別な恋をしている若き2人を群衆に紛れませていくような感覚にあるように思う。そのなによりの証左は、この映画のオープニングとエンディングにあるだろう。エンディングではわかりやすく、1本の道にカメラを固定し、そこ通り過ぎる人々の中に主人公たちが紛れ込み、同等に扱われることで映画の幕を閉じていく。 オープニングはどうだろう。はるか上空からカメラが東京の夜景を俯瞰で捉えたところから映画が始まる。煌めく街の灯りの中で、電車が画面上をスーッと走っていき、その運動性が視聴者の目