ソフトバンク、東京電力、マイクロソフトの三社が手を組んで乗り出した無線インターネット接続サービスの「スピードネット」は、「ベンチャーと重厚長大産業が手を結んだ」と、ネットバブル真っ只中に大々的に発表された。 孫社長は、小中学校に十年間の無料サービスを提供すると言い、「東電のファイバー網を使うのだから、高額の回線使用料を払わなくて済む・・・もちろん、我々は慈善事業者ではない。ユーザーのすそ野の拡大が狙いだ。偽善ではなく、二、三十年先をみて、最も重要な見込み客に“試食品”を提供するようなものだ」(九九年八月十四日、日本経済新聞)と、将来構想を語っていた。 しかし、事業パートナーである東京電力の荒木浩会長自身、実は孫社長と顔を合わせたのは記者会見で同席した時が二度目だった。つまり両社のトップは発表までたった一回しか会っていなかったという。荒木会長は、この会見を「拙速だった」と回想する。 「もとも