本記事執筆の動機 2019年の年始に仕事でSuicaの開発経緯やそのアーキテクチャなどについて各種文献を調べていた。[1], [2] Suicaの開発ストーリーは、日本の大企業というイノベーションが生まれそうもない組織の中で、いかに未来のビジョンを掲げて組織を説得し、幾多の困難を乗り越えて世界屈指のサービスを生み出すか、というプロジェクトXそのものだった。 リリース後すでに20年近く経過しているSuicaは、ICカード乗車券としてだけでなく電子マネーとして駅ナカだけでなく街ナカへと浸透しており、その利便性は今も圧倒的だ。[3] もともとICカードとして始まったSuicaは、その後モバイルSuicaとして携帯電話、スマートフォンからも利用できるようになった。それに加えて、近年Apple PayがSuicaに対応したおかげで、Apple Watchをかざすだけで乗車や買い物ができるというユーザ