「男性」であることと「女性」であること。それに伴って生まれる差異を、比較的意識しないで済む生き方や所属をしてきたと思う。お互いが平等で対等な個人としてかかわることを前提とする、比較的「リベラル」な文化・環境に身を置いてきた。 そんな自分も、やはり男性であり、そしてそれが社会的には「マジョリティ」である。そのことを強烈に意識させられた本が、『82年生まれ、キム・ジヨン』(著: チョ・ナムジュ, 訳: 斎藤真理子, 筑摩書房)だ。 1982年生まれの33歳、夫と1歳の娘の3人で暮らす女性、キム・ジヨンが、ある日突然母親や同級生が憑依したかのような奇妙な言動を取るようになったことをきっかけに精神科を受診。男性の精神科医による症例報告というフォーマットで、彼女が生まれてから2016年現在に至るまでの人生が語られる。韓国で「社会現象」と呼ばれるまでの大ベストセラーとなったのち、日本でも2018年に翻