サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
画力アップ
scienceportal.jst.go.jp
サイエンスクリップ 「3日取らないと命の危険」水が体を出入りする量の計算式、初めて開発 2023.01.27 青松香里 / JST「科学と社会」推進部 水は、私たちの体に欠かせない。ごく当たり前のことだが、体を日々出入りする量は、これまで科学的に明らかにされてはいなかったそうだ。その量を推定する計算式を、医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN=ニビオン)などの国際研究グループが初めて開発した。体や環境のデータを基に、1日に失う水分量の目安を算出できるという。人生のさまざまな時期や災害時などに必要な量を予測できれば、健康管理に役立ちそうだ。 「重水素」手がかりに大規模調査 私たちの体のおよそ半分は水。一般的な成人男性で体の53%、成人女性で45%、乳児では60%を占めるという。この量を維持するため、私たちは飲んだり、食事や呼吸をしたりして水分を取る。ここでストック、つまり体に含まれる水分
野球の投手が使う滑り止め剤の効果を初めて定量的に示した、と東北大学などの研究グループが発表した。米大リーグの公式球が日本のプロ野球のものより滑りやすいことなどを実証した。ボールの滑りやすさの議論は人の感覚に頼ってきたが、科学的に示したことで、滑りにくいボールや、良い滑り止め剤に関する認識が深まると期待されるという。 野球では投手が、ロジンと呼ばれる、炭酸マグネシウムと松やにを混ぜた滑り止め剤を指に着けることが認められている。しかしグリップ性やボールの回転数を上げるため、重量挙げで使われる強力な粘着物質などが不正に使われる例があり、問題視されているという。大リーグでは2021年6月に取り締まり強化に乗り出したものの、そもそも公式球が滑りやすく肘に負担がかかるとの指摘もある。ただ、滑りやすさや滑り止めの効果は主に投手の感覚に基づき、定量的に示されてはこなかった。 そこで研究グループは、大リーグ
ニュース JAXA精神ストレス研究で捏造、改ざんなど多数 研究者や古川飛行士処分へ 2022.11.28 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙生活を模擬する地上の閉鎖環境施設で行った精神ストレスの研究で、実験データの捏造(ねつぞう)や改ざんなどの問題が多数あったと発表した。学術論文などとして発表しなかったが、計画段階からずさんで「適切に遂行されず信頼性を損なった」とする報告書をまとめた。研究者2人や実施責任者の古川聡飛行士を含む関係者を処分するという。 問題があったのは、JAXA筑波宇宙センター(茨城県つくば市)にある閉鎖環境施設で2016~17年に5回行った実験。将来の火星探査など数年に及ぶ有人飛行を念頭に各回、成人8人が2週間滞在し、精神や心理状態の指標を作るなどの目的で実施した。生理データの測定に加え、心理面談の専門家であるJAXAの研究者3人が面談し、診断する計画だった。 とこ
日本に多くみられる海鳥のオオミズナギドリが、台風の中心へ飛ぶことを重要な手がかりとして、陸へ飛ばされないようにしていることが分かった。海鳥で初めての知見で、名古屋大学など日英の研究グループが発表した。野生動物に機器を取り付け生態の情報を記録する「バイオロギング」などの手法を用いた。野生動物の台風に対する行動が分かったのは珍しいという。 野生動物の台風への対応は、観察が難しい。特に海鳥は陸の生物よりはるかに強い風にさらされているはずだが、どう過ごしているのかは未解明だった。 そこで研究グループは新潟県の離島、粟島で繁殖するオオミズナギドリを対象に調査した。翼を広げた幅は120センチ程度。捕食者に襲われる恐れがあり、平地から飛び立つのも苦手のため、通常は陸の上を飛ばない。雛を育てるのは台風シーズンの8~11月で、何らかの対応をしていると予想された。2008~18年に計401羽について、緯度と経
竜脚類の恐竜が植物を食べていたことを、歯の化石の傷を立体的に分析して裏付けた。早稲田大学などの研究グループが発表した。これまでは歯や顎の形から推測されてきたが、岩手県久慈市で見つかった化石から、初めて客観的な証拠を得たという。食べ物で歯が摩耗した痕跡を3次元で調べる手法を、恐竜に初適用。恐竜の食べ物の物性を客観的に示したのは、世界初という。 竜脚類は首と尾が非常に長く四本足で歩く恐竜で、植物食と推定されてきた。ただ現在、似た形の動物がいないなどの事情で、決め手を欠いていた。 そこで研究グループは、食べ物により歯が擦れ、歯に微小な摩耗痕ができることに着目した。久慈市の中生代白亜紀の約9000万年前の地層から見つかった、竜脚類の歯の化石8本の先端の摩耗痕を、顕微鏡を使って立体的に測定。得られたデータを卵、肉、昆虫、植物、藻類、果実などさまざまな物を食べる現生のトカゲのものと比べ、食べ物の硬さを
ネコがマタタビの葉をなめたりかんだりすることで、蚊を遠ざけるマタタビの性質を強め、しかも同時にネコ自身をマタタビにより強く反応させることが分かった、と岩手大学など日英の研究グループが発表した。成果は身近な動物の行動の謎を解き、さらに蚊を避ける薬の開発に役立つ可能性もあるという。 ネコはマタタビを見つけると(1)葉をなめたり、(2)かんだり、(3)顔や頭をこすり付けたり、(4)葉の上でゴロゴロと転がったりする。10分程度続いた後は数時間、マタタビに全く興味を示さなくなる(岩手大学提供) ネコは、なめたりかんだり、顔や頭をこすり付けたり転がったりして、マタタビにじゃれつく。1950年代の研究で、ネコが化学物質「マタタビラクトン」の仲間を嗅ぐためとされた。これに対し研究グループは昨年、ネコが反応する最も強力な物質が「ネペタラクトール」であることを発見。これに蚊を避ける効果があり、じゃれると蚊に刺
ネオジム磁石は例えば、みなさんが肌身離さず持っておられる携帯電話に使われています。中に入っている超小型振動モーターには、100%ネオジム磁石が使われております。ネオジム磁石は現在最強の磁石です。計算では1グラムのネオジム磁石で1キログラムほどの鉄を持ち上げることが出来ます。そのような磁石をどのようにして見つけたのか、これからお話しします。 1. 新しい磁石を見つけるには まず原理的なことから。これは元素の周期表です。私たちの体を含めたあらゆる物は、この周期表に書かれている100余りの元素から出来ています。磁石の基になっているのは、元素番号26の鉄(Fe)、27番のコバルト(Co)、28番のニッケル(Ni)で、これらは「鉄属元素」(あるいは遷移元素:transitional metal)と呼ばれています。もう1つ、磁石の基になっているグループが「レア・アース」(Rare earth)と呼ばれ
サイエンスクリップ トンガ沖海底火山大噴火で発生した「揺れを伴わない津波」の解明進む 気圧波「ラム波」が大きな要因と判明 2022.05.24 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト 南太平洋・トンガ沖の海底火山が1月15日に大噴火した。その影響により日本の太平洋岸の潮位が最大1メートル以上も上昇し、全国8県で一時23万人近くが避難対象になった。潮位変化はまれに見る「揺れを伴わない津波」だった。津波などの研究者は噴火の衝撃波による空気の振動が関係しているとみていたが、詳しいメカニズムははっきりしなかった。 その後、気象庁はや理化学研究所(理研)、防災科学技術研究所(防災科研)などの研究者によって解明が進み、日本に到達した津波が予測よりなぜ早く到達したか、などいくつかの謎が解かれた。大きな要因と分かったのは「ラム波」と呼ばれる大気の波で、「揺れを伴わない津波」の構造が明らかになった。気象庁はこれら
直径約10万光年に及ぶ天の川銀河の中心は、地球から見るといて座の方角にあり、強い電波やエックス線を放つ「いて座Aスター」が観測されていた。これが大質量の小さな天体であり、ブラックホールとみられることを示した2人の研究者が2020年にノーベル物理学賞を受賞した。ただ、撮影できておらずブラックホールであるとの確証はなかった。 そこで研究グループは、日本が主導する南米チリのアルマ望遠鏡など、世界6カ所にある計8つの電波望遠鏡を連携させ、仮想的に直径1万キロに匹敵する高性能の望遠鏡「イベント・ホライズン・テレスコープ(事象の地平面の望遠鏡)」を構築。2017年4月、いて座Aスターを観測した。5年間の解析作業を経て、輝くガスのリング状の構造と、その中の光を放たず暗い領域の画像が得られた。この暗い領域がブラックホールの本体で、いて座Aスターの正体を視覚的に実証した。 質量は、周囲の星の運動から求められ
サイエンスクリップ 生き物の形、遺伝子によらず幾何学的に決まる仕組みを発見 金沢大など 2022.05.09 草下健夫 / サイエンスポータル編集部 昆虫の目の多くは六角形の小さなレンズ「個眼」がびっしり集まった複眼だが、どうして六角形になるのだろう。そういえばハチの巣も、六角形の穴が集まっている。こうした自然界が織りなす図形の不思議に斬り込み、2つの単純な力で幾何学的に決まる仕組みがあることが、ハエの目を使った実験で分かった。金沢大学などの研究グループが明らかにした。遺伝子が関わっていない面白さがあるという。 六角形に四角形…どうして 生活を見渡すと、お風呂のタイル、ブロック塀、ボードゲームの升目などなど、同じ形が敷き詰められたパターンはわりと四角形が目につく。これに対し生物界では、冒頭に挙げたように六角形が多いという。この理由は、六辺の長さの合計が短くしかも構造が強くなるため、低コスト
サイエンスクリップ こっそりサクッと…都市のタヌキとアナグマ、気遣いの食生活 農工大 2022.04.07 青松香里 / JST「科学と社会」推進部 野生動物の活動が都市部にも及び、農作物の被害や鳴き声の騒音、交通事故など、人間への影響をしばしば見聞きする。一方、動物たちは都市部にいることでどんな影響を受けて暮らしているのだろうか。その理解の手掛かりとなる成果を、東京農工大学などの研究グループが発表した。タヌキとニホンアナグマが、人目を避けるような時間帯と場所で、短時間に食事を済ませているというのだ。 きっかけは犬の散歩 都市化が影響する程度は、野生動物の種によって異なる。海外ではさまざまな生物種について、大規模都市開発による行動変化を調査することがあるのに対し、日本では昆虫や鳥の例はあるものの、哺乳類では行われてこなかった。 そこで、東京農工大学大学院グローバルイノベーション研究院教授の
サイエンスクリップ 現代人の虫嫌いは「都市化に原因」、東大の研究で明らかに 2021.03.24 草下健夫 / サイエンスポータル編集部 「キャーーーッ!」。家族の金切り声を聞き居間に駆けつけると、壁に小さな虫が1匹。こんな経験をした人は多いだろう。個人差も大きいようだが、虫が嫌いな人は多い。なぜ? 気持ち悪いから? では、一体どうして…? 現代人に虫嫌いが多い原因について「都市化で野外より室内で虫を見るようになり、また虫の種類を区別できなくなったため」とする見方を、東京大学の研究グループが明らかにした。1万3000人の大規模調査を通じた研究成果だ。コトは生物多様性の保全にまでかかわるとみて、対策も提言している。 リスク高い虫、多くないのに 昆虫やクモなどの虫を嫌う感情は世界中、特に先進国や都市部に多くみられるが、これまで原因はよく分かっていなかったという。 「人間の負の感情は大きくは、恐
サイエンスクリップ 「貴金属、全員集合!」の合金作ってみたら 元素の性質一変 京都大など 2022.03.25 草下健夫 / サイエンスポータル編集部 人類は古来、金属にさまざまな元素を混ぜて合金を作り、利用してきた。元素の組み合わせや比率により多彩な性質が生まれるが、組み合わせる方法が分からず、精密な原子のレベルでまだ実現していないものも多いという。こうした中、貴金属の8元素全てを使って合金を作ることに成功したと京都大学、信州大学などの研究グループが発表した。物質の性質を大きく左右する電子の詳しい状態も調べた。各元素がバラバラの時とは性質が一変しており、この成果を手掛かりに、化学反応を促す優れた触媒が生まれるかもしれない。 スパイスを自由自在に 化学者の夢 「僕ら化学者の夢ですよ、原子を自由自在に混ぜるのは。まるでインドのトップシェフがスパイスを鼻と舌を利かせて使い分け、100人のお客さ
サイエンスウィンドウ 乳がんの早期発見・治療を目指して起業《東志保さんインタビュー》【未来を創る発明家たち】 2022.03.09 2016年に創業し、異例のスピードで「乳房用リング型超音波画像診断装置 COCOLY(ココリー)」の実用化を達成した、東大発ベンチャー企業のLily MedTech(東京都文京区)。今回は、社会課題の解決を目指す発明家の一人として、乳がんの見落としを改善し、的確に早期発見を行う新たな技術を発明して起業した、同社代表取締役の東志保さんにお話を伺った。 マンモグラフィーのがん見落とし問題 2020年、女性の新規罹患者数が肺がんを上回り、世界第一位に上った「乳がん」。高齢で患うことの多い他のがんとは異なり、働き盛りの30代後半から罹患率が大きく上昇する傾向にある。現在、乳がんの罹患者および死亡者数は、世界的に増加傾向にあり、生活習慣の改善による予防をはじめ、国や地域
メスのマウスが孤独を感じ、仲間を求めるための神経の仕組みを発見した、と理化学研究所などの研究グループが発表した。群れで暮らし、子育ても共同で行うタイプの哺乳動物が持つ、高度な社会性の解明につながる成果。人間の孤独や社会性の理解も進む可能性があるという。 研究グループは、子育てに関わる脳の働きの解明を目指している。これまでの研究で、メスのマウスの生殖ホルモンが働くと、脳の子育てに重要な部位で「カルシトニン受容体」が増えることを発見。また、これによってこの部位の神経細胞が活発になり、危険を冒しても子を守るなど、子育ての意欲が生じることを明らかにしている。 カルシトニン受容体は、脳ではホルモンの一種「アミリン」が結合し活性化する。研究グループは、群れのメスを1匹にすると、アミリンがほとんど作られなくなることを発見。さらに、マウスの社会性に関するこうした脳内の働きを解明しようと、一連の多くの実験を
世界の博物館が参加する国際博物館会議(ICOM)の定義には、「博物館とは…有形、無形の人類の遺産を収集、保存、調査研究、普及、展示する常設機関」と書かれている。博物館にとって「収集・保存」はもっとも基本的な機能なのだ。その中で、自然科学に関するものを扱うのが広い意味での「科学博物館」ということになる。 自然史と科学技術、2つの流れ 科学博物館には「自然史博物館」と「科学技術博物館」という2つの大きな流れがある、と有賀さんは説明を続ける。前者の自然史博物館は、主に、動物・植物・鉱物・化石といった自然界にあるものを対象としてきたものだ。 「西洋的、すなわち、キリスト教的な世界観では、自然界のものはすべて神様が作ったという考えが根底にあるので、それらを集めて自然について知るということ自体が意味のある活動だったわけです」 現在のような公共施設としての博物館の先駆けは、1753年に設立された大英博物
南極のアザラシは秋に外洋から沿岸に流れ込む暖かい海水(暖水)を上手に利用して餌を確保している―。こうした観測調査結果を国立極地研究所と北海道大学の研究グループが明らかにした。第58次南極地域観測隊(2016年~2018年)による観測の一環として、昭和基地周辺に生息するウェッデルアザラシに負荷の少ない記録計を取り付けるなどして調べた成果だという。 環境省によると、南極にはヒョウアザラシ、ウェッデルアザラシなど5種のアザラシとナンキョクオットセイという種のオットセイが生息。これら6種はアザラシ保存条約で保護されている。世界のアザラシの約60%が南極海に生息している。このうち昭和基地付近に生息しているのは、主にウェッデルアザラシ。体長はオスが約280センチ、メスが約330センチで、体重は400〜450キロ。体色は季節により変化し、春は全体的に茶褐色になり、その他の季節は黒褐色に淡黄白色の斑紋が全
サイエンスクリップ 日本人の多くは風邪を記憶した免疫細胞が新型コロナも攻撃、「ファクターX」の可能性 理研が発見 2022.01.04 内城喜貴 / サイエンスポータル編集部 日本人に多い特定の白血球の型を持つ人は、風邪の原因となる従来型のコロナウイルスを記憶した免疫細胞が新型コロナウイルスの感染細胞も認識して攻撃することが分かった。免疫細胞の1つ「キラーT細胞」が2つのコロナウイルスに共通する分子「エピトープ」に反応することを理化学研究所の研究グループが突き止めた成果だ。新しいタイプの治療薬開発につながる可能性もあるという。 日本の新型コロナの感染者数が欧米と比べて少ないのは日本人特有の要因「ファクターX」があるのではないかと指摘されている。研究グループはこの特定の白血球型「HLA-A24」がファクターXの1つである可能性もあるとしている。日本国内でも感染力が強いとされるオミクロン株の感
深刻な問題となっている地球温暖化と農業には深い関係がある。農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、強い温室効果があるメタンが水田で発生していることに注目して、その発生を抑える“中干し”と呼ばれる手法を高度化した。その一方で、温暖化にも強いイネの育種を推進。この2つの取り組みは、日本全国、さらには世界への展開可能性を持つことが高く評価され、2019年度「STI for SDGs」アワード「優秀賞」を受賞した。 人間活動による排出の45%が稲作から 産業革命以降、人類は石炭や石油を使うようになり、二酸化炭素をはじめ、さまざまな温室効果ガスを排出し続け、地球温暖化を招いている。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)※第5次評価報告書によると、2100年の世界地上平均気温は1986-2005年と比較して最大4.8度上がる可能性があると予測されている。 ※「気候変動に関する政府間パネル(IP
レビュー 国民の半数が2回接種を終え、ワクチンの高い効果と限界明らかに 「接種後感染」増え「3回目」へ議論 2021.09.15 内城喜貴 / サイエンスポータル編集部、共同通信客員論説委員 新型コロナウイルスに対するワクチン接種が日本でも進み、全人口の半分が2回目の接種を終えた。先行した欧米での膨大なデータから、ワクチンは重症化・発症予防や死亡率低下だけでなく、感染予防もある程度期待できることがはっきりしてきた。 その一方で2回接種しても感染する「ブレークスルー感染」例が、割合は少ないものの欧米だけでなく日本でも増えている。ワクチンが万能でないことは当初から指摘されていたが、国内では死亡例も出て、心配している接種者も少なくない。イスラエルでは3回目を打つ「ブースター接種」が既に進み、米国などでも近く予定されている。日本政府も準備を進め、対象者や実施体制などについて本格的な議論を始める。
地球全体の表面がほぼ氷に覆われたおよそ6億年前の「全球凍結」の時代にも光合成をする生物がいたことや、その後に細胞内に核を持たない真正細菌(バクテリア)、核を持つ真核生物が栄えていった証拠を発見した、と東北大学などの国際研究グループが発表した。全球凍結が生物の盛衰に与えた影響を明らかにし、また動物の種類や数が爆発的に増えた5億年あまり前の「カンブリア爆発」に至る経緯を説明できる可能性もあるという。 全球凍結は24億年前と7億年前、6億年ほど前の少なくとも計3回起きたことが、近年の研究で分かっている。一方、生物は40億年ほど前にまず真正細菌が誕生し、30億年前に古細菌、そして20億年前に真核生物が出現してきた。真核生物から8億~7億年前に多細胞動物が現れ、海綿動物からイソギンチャク、クラゲなどの刺胞(しほう)動物、さらに節足動物や脊椎動物などの左右相称(対称)動物へと進化してきたとされる。ただ
サイエンスクリップ 生態系がコントロール? ヤクシカ、定説に反し自然に減っていた 2021.06.18 草下健夫 / サイエンスポータル編集部 屋久島(鹿児島県)に住むニホンジカの亜種のヤクシカが、駆除されなくても自然に減り続けている、という調査結果を北海道大学などの研究グループが明らかにした。「シカは繁殖力が強く、放っておけば増える一方」との従来の見方とは異なり、生態系がコントロールしている可能性があるという。農作物を荒らすなど、深刻な被害を受けて全国的にニホンジカの駆除が進む中、生息数の管理のあり方に重要なヒントを与えるデータとなった。 日本文化を育んだ動物、今は… 「夕されば小倉の山に臥(ふ)す鹿の今夜(こよい)は鳴かず寝(い)ねにけらしも」(雄略天皇、万葉集) 「奥山にもみぢ踏みわけ鳴く鹿のこえ聞く時ぞ秋はかなしき」(詠み人しらず、古今和歌集) シカはこのように古来、和歌に多く描か
ヤシガニは甲殻類の中でも世界最大級の大きさで知られ、インド洋や西太平洋などの熱帯域、亜熱帯域のほか、日本では沖縄県周辺の島しょ部に生息する。そのヤシガニのハサミの硬さは鋼鉄並みで、100枚ほどの層からなる壊れにくい特殊な内部構造を持っていることを、物質・材料研究機構(NIMS)と沖縄美ら島財団の研究グループが明らかにした。複雑な組織を3次元(3D)可視化することにも成功し、研究成果は軽量で強靱(きょうじん)な材料開発に役立ちそうだという。 ヤシガニは体長30~40センチで、絶滅危惧種に指定されている希少生物。研究グループによると、貝殻は持たないが、外敵から身を守る鎧(よろい)のような甲羅で覆われている。単位体重あたりの挟む力(把持力)は体重の90倍以上という生物最強クラスで、ライオンの把持力に匹敵するという。 NIMS構造材料研究拠点の井上忠信グループリーダー、原徹グループリーダーや沖縄美
サイエンスクリップ 気候システム解明のカギを握る「磯の香り」成分の実計測に成功 2017.09.07 橋本裕美子 / サイエンスライター 地球の気候システムは、さまざまな要素や条件、時間スケールで時々刻々と変動している。その解明には、「カギ」となる物質の量を正確に把握し、気候システムモデルを精緻化していくことが求められる。2017年7月、大森裕子(おおもり ゆうこ)筑波大学生命環境系助教、谷本浩志(たにもと ひろし)国立環境研究所地球環境研究センター地球大気化学研究室長と、岡山大学、北海道大学、東京大学の研究グループは、新たな実計測手法を確立し、そのカギとなり得る「硫化ジメチル(DMS)」の、海洋から大気への放出量の実計測に成功したと発表した。 雲をつくる「磯の香り」とは? 海水浴、潮干狩り、シュノーケリング、スキューバダイビング、磯遊び…。夏らしい遊びを求めて、今年も海へ遊びに行った人も
サイエンスクリップ 驚きの協力関係! 血縁などから雌雄産み分けるハチ発見 明治学院大など 2021.05.17 草下健夫 / サイエンスポータル編集部 科学記事や番組などで、生き物たちが厳しい自然界を巧みに生きる姿を知るにつけ、感心させられる。今度はごく小さなハチの一種が、自分の子孫を多く残そうと驚くような協力関係を築いていることが明らかになった。周囲で産卵するメスの数と血縁関係に応じてオス・メスを産み分けていることを、明治学院大学などの国際研究グループが発見したのだ。このようなタイプの生物が見つかったのは初めてという。 2%しかオスを産まない?“不可解”なハチ 一般に生物のメスが産む子のオス・メスの割合は、そのメスが最も効率よく自分の子孫を残せるよう進化する。一緒に育ったオスとメスとが交配する生物では、自分の息子同士が配偶相手を得るため競争するのを避けようと、オスを少なく産む。ただし、他
ネコがてくてくと安定して歩く「反射」の仕組みを、神経や筋肉の特性を再現するネコ型ロボットを開発して明らかにした、と大阪大学の研究グループが発表した。動物愛護の観点から実験に制約もある中、ロボットを活用して神経科学の研究をするニューロロボティクス分野の一環。より動物に近いロボットを実現するロボット工学の観点からも意義があるという。 反射は、ヒトなどの動物が熱い物に触れると瞬間的に手を引っ込めるなど、刺激を受けて無意識に起こる反応の仕組みだ。動物が歩くためには脳や脊髄の複雑な回路ではなく、この反射回路をうまく使って動きが生まれていることが、近年の研究で分かってきた。それに関わるとみられる個々の神経回路は過去の研究で分かっていても、歩行を実現するための全体的な配線は未解明という。生体を動かす神経の仕組みを調べることには限界がある上に、動物愛護のため動物実験が厳しく管理、制限されるようになっている
サイエンスクリップ 「ネコにマタタビ」は蚊を避けるため 謎の行動を遂に解明 2021.01.28 草下健夫 / サイエンスポータル編集部 ネコがマタタビにじゃれつくのは常識だが、どうしてかは誰も知らなかった。この謎の行動に岩手大学や名古屋大学など日英の研究グループが挑み、「蚊を避けるため」という明快かつ意外な結論を導き出した。原因となるマタタビの成分は従来の説とは異なり、蚊の忌避剤として人間に役立つ可能性まで見えてきて、基礎研究の急展開に研究者たちも驚いている。 素朴な疑問から異分野コラボ ネコはマタタビが大好きだ。マタタビは日本や中国、朝鮮半島などに分布する落葉つる性植物。ネコがこの匂いを嗅ぐと、なめる、かむ、顔や頭を擦りつける、ゴロゴロ転がるなどの「マタタビ反応」を示す。江戸時代の浮世絵や農業書に書かれるなど、日本人には古くから馴染みの現象だ。誰かにとっての大好物や効き目が大きいことを
江戸時代末期の医師、蘭学者の緒方洪庵(1810~1863年)が使ったガラスの薬瓶の中身を、瓶を開けずに突き止めた、と大阪大学などの研究グループが発表した。大強度陽子加速器施設「J-PARC(ジェーパーク)」(茨城県東海村)の分析装置で透過性の高い素粒子「ミュー粒子」(ミュオン)を使い成功した。医薬品の文化財の成分を非破壊で解明したのは世界初といい、当時の治療戦略の解明や、医療関係の文化財の継承に役立つ成果という。 洪庵は大阪大学医学部の源流で、福沢諭吉、大村益次郎らを輩出した蘭学塾「適塾」の開祖。同大は洪庵が壮年期と晩年に使った2つの薬箱を所蔵しており、晩年のものには液体と固体の製剤が入ったガラス瓶22本と木製容器6本が入っている。うち数本は栓が固く開かない状態。洪庵は瓶の上部に独自に「甘」「下」「酒」などと漢字1文字のラベルをつけたが、何を意味するかは本人にしか分からない。貴重な文化財を
地球史上2回目の生物大量絶滅が、大規模火山の噴火で起きたことを突き止めた、と東北大学などの研究グループが発表した。動植物が陸に進出した古生代「後期デボン紀」の約3億8000万~3億6000万年前に起きたもので、高温でできる有機分子を決め手とする独自の手法を用いた。同グループは昨秋、3回目の原因も大噴火だったことを同じ手法で示しており、火山が生き物の命運を握る地球の歩みがより鮮明になった。 後期デボン紀の地層には水銀が多く含まれており、大噴火が大量絶滅の原因であるとの見方が強まっていた。ただ、水銀は噴火以外に陸上植物に由来する可能性もあるため、決め手を欠いていた。 そこで東北大学の海保邦夫名誉教授(地球環境史)らの研究グループはこの時代に海で堆積した地層の岩石を、2005~15年ごろにかけフランスとベルキー、中国で採取。分析の結果、水銀に加え炭化水素の「コロネン」が多く含まれていることを突き
次のページ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く