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今回の音速の遅い読書で取り上げるのは、以下の一冊。 カスピ海に面した石油都市バクーでドイツ人技師の息子として生まれ、その後ドイツに渡り、最終的にソ連の諜報員となって東京から一級の情報を送り続けるも武運拙く特高警察に摘発されて1944年に刑死したリヒャルト・ゾルゲという人物がいる。 現代では「稀代のスパイ」という評価が一般的な彼だが、いやだからこそと言うべきか、彼は日本や中国といった極東情勢についての優れた観察者・分析者でもあった。ゾルゲは、記者としてその分析結果や今後の見通しを雑誌等に発表することで勝ち取った「彼はいい仕事をする人間だ」という評判を原資として、ナチス・ドイツの駐日大使であったオイゲン・オットーや近衛文麿のブレーンの一人であった尾崎秀実との間に一種の信頼関係を構築し、後の一大諜報網の基礎を築きあげていったのである。 本書は、そんなリヒャルト・ゾルゲの手による1930年代日本及
現在極東部において繰り広げられている領土問題についての管見。 中国 現時点での勝ち組 清朝時代に完成した東は遼東から西はカシュガルという広大な領域の大半を引き継いで成立した中華人民共和国だが、それゆえに隣接する国も多く、同時に国境を巡る紛争・対立も決して少なくはなかった。特に重要なのが、清朝の時代から度々北や西の国境で紛争を繰り広げてきたロシア勢力との対立で、特に中ソ対立以後は外モンゴルに駐留したソ連の機甲部隊が北京を伺い、その恐怖が晩年の毛沢東をして米国や日本との関係修復・強化に走らせたのである(注1)。 だが、1989年の冷戦崩壊、1991年のソ連崩壊という戦略環境の大規模な変動を経た後の世界において、中華人民共和国とソ連の後継国家たるロシア連邦共和国は長らく両国間紛争の火種となってきたアムール川中洲等の配分にけりをつけ、2004年に中露国境協定を締結した(注2)。これによって北方の憂
各国の選挙情勢を見ていると、国政選挙で「×××候補(若しくは×××党)が選挙で勝利しました」という発表がその国の選挙管理委員会等から発表された場合、日本や西欧、北米ではその結果が粛々と受け入れられ、結果によっては政権交代に向けた手続きが進んでいく。 対して、アフリカや中東、旧ソ連圏等々の国では、×××候補(若しくは×××党)とは競争関係にあった○○○候補(若しくは○○○党)から「選挙結果は不正なものであり、これを受け入れることはできない」という声明が出されて国内情勢が不穏化、双方の支持者が衝突し、結局どちらの組織が暴力面で強いのか、或いは軍や警察といった国家の実力機関の支持を得ているのかで事態の帰趨が定まるということが珍しくない。 この両者を分ける分水嶺について、昔から漠とした関心を抱いていたのだが、最近、「その答えは”引退”という生き方が権力者に許されていたか否かにあるのではないか」とい
2011年3月11日の東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故をきっかけとしてエネルギー問題を巡る議論が盛り上がり、それと連動する形で石油・天然ガスの一大産地であるペルシャ湾の安定に「イラン核問題」が及ぼす影響に注目が集まる中、割にその文脈の中では等閑視されている、「間の海域」にまつわる話。 そもそも現在の日本国という国家の枠組みは、南関東から東海、近畿中央部、山陽を経て北九州に至る産業・人口集積地(所謂「太平洋ベルト」)で富を生み出し、それを中央政府が徴収してその他の地方に分配する(地方交付税交付金等の直接的な再分配以外に防衛等各種公共サービスに変換した形での再分配も含む)ことで維持されている。 そんな日本国にとっての造血器官ともいえる太平洋ベルトへの各種産業や人口の膨大な集積を可能としているのは、当該地域と中東や豪州、南米、北米といった天然資源・農産物の一大生産地とを結ぶ海路の存在であ
当ブログ第三百七十七段で取り上げた中東及びその周辺諸国の原発事情だが、その後、色々な動きが出てきたので、追補的なものを一つ・・・・。 アルメニア 同国の電力の約40%を賄いながらも、老朽化や地震への懸念から新原発と交代する形で2017年の閉鎖が予定されていたメツァモール原発2号機だが、肝心の新原発の完成予定が2020年にずれ込んだことを受け、その閉鎖予定もまた2020年まで延長されることとなった(注1)。 なおメツァモール原発隣接地に建設予定となっている新原発の建設コストは、アルメニアの年間国家予算のほぼ1.5倍となる45億ドル程度と見積もられており、協力相手であるロスアトムやその背後にいるロシア政府からの資金援助が重要な位置を占めている。 また、メツァモール原発2号機稼働延長にしろ新原発稼働開始にしろ、「使用済み核燃料をどうするか?」という問題は避けては通れないが、国境線の8割を実質的な
先日、大衆居酒屋チェーンワタミ従業員の自殺が労災認定され、その遺書から浮かび上がった当該企業の労働環境がかなり過酷なものなのではないかということで人々の注目を浴びた。案件の概要は以下の通りである。 居酒屋チェーン「ワタミフードサービス」の新入社員の女性が2008年6月に入社2カ月で自殺したのは、連夜の過重労働で精神障害を負ったことが原因だったとして、神奈川労働者災害補償保険審査官は21日までに、労災を認定した。09年7月の横須賀労働基準監督署の決定は過労と自殺との因果関係を認めず、遺族が審査請求していた。決定は14日付。 遺族代理人の弁護士によると、同社元社員の森美菜さん=当時(26)=は08年4月に入社後、同社が経営する横須賀市内の居酒屋に勤務。深夜の勤務や残業が連日続き、休日も研修やリポート作成を余儀なくさせられ、極度の睡眠不足の状態だったという。 森さんは同6月12日、同市内で自殺。
身に沁みるような冷風の吹き荒ぶ昨今、叶うならば常夏の南国にでも我が身を移したい衝動にかられるが、そんな「常夏の南国」というと日本で真っ先に思い浮かぶのが沖縄本島を中心とした琉球諸島である。この琉球諸島、亜熱帯気候に属し、殆どの島々で稲作に適した平野や河川の存在を欠くために生活の活路を海に見出さざるを得ない、日本本土(注1)や朝鮮半島、中国大陸や台湾と海路を通じて隣接していると言った地理的条件を背景に日本本土とは大きく異なる独特の文化・歴史を展開させて今日に至っている。 こう言うと、かつては独立の王国であった「琉球王国」やそれに対する大日本帝国の「琉球処分」、1945年の地上戦を経た上での米国による占領と1972年まで続くその統治等がすぐさま連想されるであろうが、それ以外にも、琉球諸島を巡っては現代の我々がよく知る今の形、即ち、「日本国沖縄県」という形とは異なる状態になり得た動きが数々存在し
「ロシア-北朝鮮-韓国ガス・パイプライン敷設計画」というものがある。要は、ロシア産天然ガスを北朝鮮経由のパイプラインを通じて韓国に供給しようという計画である(注1)。今までにもサハリンで産出した天然ガスをパイプラインでウラジオストクまで運び、そこから韓国に出荷しようという話はあったが(注2)(注3)、ガス・パイプラインを北朝鮮を経由したルートで韓国まで敷設し、以てロシア産ガスを韓国に送り出そうという計画は今まで現実性のある計画としては語られてこなかったように思う。 そんな「ロシア-北朝鮮-韓国ガス・パイプライン敷設計画」が俄に具体性を持った話として浮上したのは、2011年8月8日のモスクワにおけるラブロフ-金星煥露韓外相会談の場においてであった。 当時の聯合ニュースは以下のように伝えている(赤太字は著者による(以下同じ))。 ロシアを訪問中の韓国外交通商部の金星煥(キム・ソンファン)長官は
最近のエネルギー資源関連のニュース・報道を見ていると、表題のような感想が脳裏をかすめることがある。とはいっても、ここでいう「天丼」とは、あのどんぶり飯の上に海老天等が乗っかった魅惑の食べ物のことではなく、「同じギャグ・ボケを繰り返す」ことでウケを狙うお笑いの手法のことだ。 具体的な「天丼」事例を挙げていくと、露-欧州間のガス・パイプラインでウクライナやベラルーシ経由のものがある所に、バルト海海底を経由して独露を直結する「ノルドストリーム」計画をぶち上げてこれを実現し(注1)、EUがトルコ、バルカン半島を経由してカスピ海地域等の天然ガスを欧州に運ぼうとする「ナブッコ・パイプライン」計画を立ち上げるや、同地域の天然ガスを黒海海底、バルカン半島を通じて欧州に運ぼうとする「サウスストリーム」計画を発表するといった具合である。 無論、露が実現させた或いは提唱している「ノルドストリーム」や「サウススト
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