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<国境地帯では、反移民政策の下で中東やアフリカからの難民が非人道的な扱いを受けている> これまで、ポーランドは隣国ウクライナからの約97万人の難民に仕事や住む場所を提供するなど寛容な受け入れ政策を取ってきた。しかし、ベラルーシとの国境地帯に広がるビャウォビエジャの森では、中東やアフリカからの難民が反移民政策の下で非人道的扱いを受けている。 ビャウォビエジャの森を越えようとする難民たちは、水も食料もない過酷な「ジャングル」に数カ月も身を潜める。冬は低体温症による死の恐怖と隣り合わせだ。国境警備隊に見つかれば、ベラルーシ側の森の中に夜のうちに置き去りにされる。手持ちの携帯電話を壊され、誰にも連絡できない状況のこともある。 発端はベラルーシが意図的に難民を受け入れ、経済制裁を続ける欧州に圧力をかけようとしたことだ。昨年にはポーランド政府が移民防止のフェンスを建設。人道的支援を行うボランティアへの
<今も3分の1以上がPTSDに苦しみ、テロの背景となった極右的憎悪の検証を望んでいる> 2011年7月22日、ノルウェーの爆破・銃乱射テロで77人の命が奪われてから今年で10年。労働党・青年部(AUF)のサマーキャンプが行われていたウトヤ島での銃乱射では、犠牲者69人のほとんどが子供や若者だった。 翌年8月に独立調査委員会が発表した報告書は、政府と警察の対応を激しく批判。警察は首都オスロの政府庁舎爆破を防げたし、もっと早くウトヤ島に到着して犯人アンネシュ・ブレイビクを捕らえられたはずだと結論付けた。 私はテロ後の数カ月間に、銃撃を生き延びた若者43人を撮影し、12年に写真集『歴史上のある一日』として出版した。それから9年がたち、彼らの何人かを再び撮った。 パートナーや子供たちと静かに暮らしている人もいれば、政治家になった人もいる。よりよい世界を目指して闘っている人もいる。今もPTSD(心的
10キロ以上のサトウキビの束を頭に載せて運ぶ17歳の少女。過去に2度の流産を経験し、現在も妊娠5カ月。過酷な肉体労働と妊娠と流産の繰り返しで体調に不調をきたした女性をカモにする医師たちがいる <かつて医師の稼ぎの中心は中絶手術だったが、避妊が容易になったことで子宮摘出が新たな儲けの手段になっている> 2019年4月、インドのマハラシュトラ州のサトウキビ農園で働く数千人の女性たちが不必要な子宮摘出術を受けさせられている事実が発覚し、スキャンダルとなった。女性たちが十分な知識を持たないことに付け込み、健康診断などの際に子宮摘出が必要だと信じ込ませていたという。 かつて医師たちの稼ぎの中心は中絶手術だったが、避妊が比較的容易になったことで、子宮摘出が新たな儲けの手段になったようだ。その標的として、農園の女性は最適だった。大規模農園の多くは法規制を無視した違法状態にあり、労働組合や社会・医療保険も
総延長距離2000キロに及ぶロシア連邦道路R504(通称コリマ道路)はスターリン時代に強制労動を科された政治犯たちによって建設された <スターリン時代、この道を通って100万人を超える政治犯が強制労働収容所へと送られ、その多くは過酷な労働で命を失った> 冬の平均気温がマイナス38度にも達するロシア極東のコリマ地方。スターリン時代、ここには政治犯の強制労働収容所があり、彼らの多くは過酷な労働で命を失った。大規模な道路建設もその1つだ。 「骨の道」と呼ばれるようになったこの道路(冒頭写真)は、ヤクーツクの対岸の町と港町マガダンを結ぶ。道路が完成すると100万人を超す新たな囚人が連行され、金やすず、ウランなどの採掘を強いられた。美しくも過酷な自然が広がるコリマへの道は、人生最後の旅路となる。 スターリンが1953年に死去すると収容所は閉鎖されたが、「高給」のうたい文句に誘われて採掘現場にやって来
<海水面が今より3メートル以上、上昇すると、国土の一部を放棄して大都市を移転させることが必要になる可能性も> 1953年に発生した高潮による北海大洪水は、オランダ南西部の広い地域を冠水させ1900人近い死者を出した。国土の4分の1が海面より低いこの国にとって、堤防などの治水対策は不可欠の存在だ。その後、南西部を堤防や水門などで高潮から守るデルタ計画が進行。53年のような高潮被害は理論上、1万年に1回しか起こらなくなった。 だが、その状況が変わろうとしている。気候変動により、今世紀末には海水面が1~3メートル上昇する可能性があるからだ。これまで以上の排水施設と堤防のかさ上げは不可欠だが、それでも対応が可能なのは3メートルの上昇までだという。 それ以上になれば国土の一部を放棄し、アムステルダムやロッテルダムなどの大都市の移転が必要との指摘もある。海面上昇はもはや時間の問題であり、いずれ治水対策
【台西 2009】夜明けの空に美しく輝くのは台湾最大の石油化学工業団地。手前にはカキ養殖場が広がる。工業と漁業、どちらも人々の生活を支えるのに欠かせないものだが、ここでは2つがあまりに近接しており、経済活動と環境のバランスを考えずにいられない <急激な近代化は台湾の環境に何をもたらしたのか> 夜明けの海辺や夕闇迫る水田......台湾の美しい自然の風景の背後に、アンバランスな建築物や照明が写り込む。「台湾『美景』」と題した一連のシリーズで私は、急激な近代化が台湾の環境に何をもたらしたのか、私的な観察と肌で感じた経験を形にした。 それぞれの風景の中に忍び込むのは、私自身だ。大画面をバックにたたずみつつ、顔にはストロボを当てて白く飛ばした。台湾の美しい風景の前に立つ顔のない人間からは感情が読み取れず、制御不能で視界を奪われ、方向性を見失った者の姿が現れる。 一見すると壮観な自然の風景にも、不条
スペイン・バレンシアで開催される「エクスポ・ドールショー」は、リボーンドール作家や収集家が集う欧州最大の展示会。作家のビアンカ・フランケ(左)は「子供」たちの細部の作りを熱心に見ていた <赤ちゃんの超リアルな質感が再現された人形は、世界中で多くの人の孤独を癒している> 本物の赤ちゃんのようなシリコン製の人形「リボーンドール」がアメリカで生まれたのが1990年代。今やロシアから中国、カナダ、日本まで世界中で愛され、多くの収集家や人形作家がいる。 リボーン、つまり「生まれ変わった」赤ちゃんのすごさは徹底的なリアリズムにある。世界に約2万人いるという作家の手で、あざや血管、髪、毛穴といった細部や、赤ちゃんの超リアルな質感が再現されている。 人形を求めるのは、子供を失ったり持てない人だけではない。癒やしを求める人もいれば、アルツハイマー病の高齢者を安心させたり、小児科医の研修目的で使う人もいる。
<ハリケーンの壊滅的被害から復活を遂げた原動力は、この町の独自の死生観と個性的な文化を生んできた住民の力強さ> ジャズ発祥の地で知られる米南部のニューオーリンズ。強烈な個性を持つこの町では「文化は上から降りてくるのではなく、道端から湧き上がる」と言われる。 写真家のアカシャ・ラブットは、10年にわたり町と住民を撮り続け、写真集『デス・マジック・アバンダンス』にまとめた。追い掛けたのは、個性的な町の文化を道端から生み出してきた個性的な人々。黒人女性だけのバイククラブ「キャラメルカーブス」のメンバーは、ピンクの煙を吐く大型バイクにまたがり、現代のカウボーイチーム「サザンライダーズ」は町なかで馬を乗り回す。 そして毎週日曜に行われる、ブラスバンドを中心としたパレード「セカンドライン」。町を音楽とダンスで埋め尽くす催しで、ジャズ葬と呼ばれる葬儀パレードが発祥だ。 ニューオーリンズは2005年のハリ
スペイン領カナリア諸島に属するフエルテベントゥラ島沿岸の大規模開発プロジェクトを空から撮影。ホテルや介護施設などが建設される予定だったが、自然公園を保護するため開発中止の司法判断が下った <世界金融危機でバブルがはじけたスペインでは、空き家や開発途中のプロジェクトなど全土で140万の物件が放棄された> 2007年からの世界金融危機で大打撃を受けたスペインには、今も「夢の跡」が各地に残る。 36年余り近く続いたフランコ独裁政権の崩壊後、1980~90年代にかけてこの国は自由主義経済の優等生へと変貌。00年代前半からは低金利を背景に主要都市や沿岸部の開発で不動産産業が急成長した。経済は潤い、多くの国民が「自分の家を持つ」という夢を思い描いた。 ところが金融危機でバブルは盛大にはじけ、不動産市場は崩壊。銀行は巨額の不良債権を抱え、開発業者の多くは破綻した。経済状況はみるみる悪化し、13年1~3月
DISCLOSURE–RWANDAN CHILDREN BORN OF RAPE Photographs by JONATHAN TORGOVNIK <殺人者であるフツの血を引く赤ん坊は忌み嫌われ、母と共に周囲から孤立した> アフリカ中部の小国ルワンダで、多数派のフツ人が少数派のツチ人100万人近くを殺害した「ジェノサイド」から25年がたった。 殺戮の間に、フツの民兵集団によって25万~50万人ものツチの女性が性的暴行を繰り返し受け、およそ2万人の子供が誕生したといわれる。極めて父権的な地元社会では、子供は父の一族と見なされるため、殺人者であるフツの血を引く赤ん坊は忌み嫌われ、母と共に周囲から孤立した。 今では「アフリカの奇跡」といわれる発展を遂げるルワンダの中で、母子たちは何世代も受け継がれる複雑なトラウマと戦い続けている。 写真家のジョナサン・トーゴブニクは、2006年から3年間彼らを
<寧夏は今やゴールドラッシュを彷彿させる開拓者であふれている> 昼近くになっても、中国内陸部の広大な平原はやや肌寒い。辺りに漂う霧の間から見える山脈は絶景だ。秋はブドウの収穫が真っ盛り。数十人の女性たちがジーンズや薄手のジャンパー、それに色とりどりのスカーフをまとうのは、ここがイスラム教徒の地、寧夏回族自治区の銀川郊外だからだ。 20年以上前には貧農が寄り添っていた砂漠地帯が、今ではワインの新天地になった。子供の頃、砂漠で遊んだというレン・ヤンリンはフランスのワインメーカー、ペルノ・リカールで働く。彼女は中国にワイン革命をもたらした1人だ。寧夏には現在、4万ヘクタール以上のブドウ畑と199の醸造所があり、ビンテージワインを中心に年10万本近く生産している。 寧夏ワインは既にいくつかの国際的な賞を受賞しており、欧米や中東のドバイ、香港など一流のレストランでも味わえる。 80年代に中国ワイン革
【Lynn, Brett, Joe】<銃規制にはいろいろな選択肢があるが、私たちはこう理解している「警察は常に全ての場所にはいない」>(キャプションは本文後に続く) <銃を持つことで平等を感じたいLGBTと、そうせざるを得なかった彼らの脆弱さ> 銃を持つことで平等を感じたい――。LGBT(性的少数者)による銃クラブ「ピンク・ピストルズ」に所属するある会員の言葉だ。クラブの理念は、「自分の銃口で黙らせろ」。 ピンク・ピストルズだけではない。16年6月、フロリダ州オーランドのLGBTが集まるナイトクラブで銃乱射事件が起きて以降、同じような銃クラブが誕生した。トリガー・ウォーニング・クイアー&トランズ・ガン・クラブもその1つ。 「私たちのような『奇妙な』存在は自衛できない弱者と見なされている」と、クラブ創設者のジェイク・アレンは言う。「白人至上主義者やネオナチのような(LGBTを嫌悪する)奴らに
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