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<ノーベル平和賞を受賞した人権活動家の劉暁波は獄中で末期癌になっているが、中国共産党は釈放どころか見舞いを受けるというまっとうな権利も与えていない> ここ数日、世界中の中国に関心がある人の間で一番話題になっているのが作家・人権活動家の劉暁波の病状(13日夕方に死去と報道された)だ。彼は「08憲章」を起草して08年に逮捕され、09年に「国家政権転覆扇動罪」で懲役11年の有罪判決を受けた。10年にノーベル平和賞を受賞した時は獄中にいた。授賞式の空っぽの椅子は、その1年の中でも記憶に残るニュースになった。 劉暁波は友人を通じて、同じ死ぬにしても中国国外でむしろ死にたい、という強い願いを公表。長期にわたり軟禁され、その結果鬱病になった妻の劉霞を心配し、彼女が彼と一緒に自由な世界に行くことを望んでいる。 刑務所に行く以前から、劉暁波には肝炎の病歴があった。しかし刑務所の極めて劣悪な住環境と飲食が彼の
<中国共産党が開始した、私営企業内に党組織を作る運動が中国の経営者たちを戦慄させている。私有財産を公有化した文化大革命時代の政策を連想させるからだ> 中国共産党は最近、すべての私営企業を対象に「党建設がすべてを覆う」という運動を始めた。中国の歴史を少しでも知っている企業主たちの中には仰天し、自分の会社を閉じて全ての家族を海外に移民させた者もいる。 中国共産党が全ての企業の中に党組織をつくるだけなのに、どうして彼らはこのように恐れるのだろうか。 49年の共産中国建国後、毛沢東は「公私共営」という社会主義改造政策の名の下に全ての非公営企業、全ての土地、無数の商人と企業主の財産を公有化した。多くの金持ちは迫害され死亡し、政治の動揺で中国経済は停滞。30年間も発展のチャンスを逃した。76年に毛沢東が死去すると文革は終わり、鄧小平が「改革開放」を始めた。 鄧小平とその後の共産党の指導者の戦術は、私有
<中国初の国産旅客機のニュースにネットでは称賛が溢れているが、エンジンシステムなど主要な部分はアメリカ製。それでも国産と宣伝される愛国主義こそが最大の「重荷」> 中国商用飛機有限公司(コマック)の開発する旅客機C919は5月5日午後、上海浦東空港で初飛行に成功した。これは、業界の二大巨頭ボーイングとエアバスに対する中国航空工業界の挑戦である。そして、かつての「中国商業航空の夢」が数十年後にようやく迎えた夜明けでもある。 今回、どの中国メディアも「中国初の国産旅客機が初めて公開飛行した」と報じた。しかし中国共産党は1970年、「運10」という旅客機プロジェクトを許可。独自に研究を重ね、1980年に「運10」の初飛行に成功した。その後、何度も飛行テストは行われたが、この後に生まれた「つくるより買う、買うより借りる」という風潮のせいで、最後は予算不足を理由に開発停止になり、研究開発チームは解散し
<北京市は今月、スパイ取締りの手がかりとなる通報を奨励する新規定を交付。市民を相互監視させるやり方は、まるで共産主義下の旧ソ連や毛沢東時代の中国の再現だ> 北京市当局は4月10日、「公民によるスパイ行為の手がかり通報奨励弁法」という新規定を交付した。新規定は市民が電話や投書、直接訪問するなどの方法で、スパイ取締部門の北京市国家安全局に手がかりを提供することを奨励。通報に対して最高で50万人民元(約800万円)の奨励金を支払い、通報者の個人情報と身の安全は守る、と定めている。 習近平が中国のトップに就任して以来、反政府的な主張をする人々への取り締まりはますます激しくなっているが、外国人の管理もどんどん厳しくなっている。布教活動やNGO、あるいは人権活動に関わる外国人がスパイの罪名で秘密裏に逮捕される事件はしょっちゅうだ。 現在、この新しいスパイ通報規定がとんでもない結果をもたらすのでは、との
<中国はトランプを「買収しやすいビジネスマン大統領」と見ていたが、トランプは初の米中会談に合わせてシリア空爆を実行するという想定外のパンチを習近平にお見舞いした> 終わったばかりの「川習会(トランプ・習近平会談)」のニュースは中国のネット上で大きな話題になっている。中国共産党は今回の訪問をかなり重視していたが、それは彼らが対面する新大統領が「想定外」のカードを切る人物だからだ。 トランプは当選する前から、中国に対する強硬な主張を繰り返していた。海外に流出した就業機会を取り戻す、あるいは米中間の貿易赤字を逆転させる......といった具合だ。昨年の米大統領選挙の期間中、アメリカだけでなく全世界の世論のかなりの部分は一方的にヒラリー・クリントンが当選すると考え、ビジネスマン出身のトランプを嘲笑した。中国も例外でなく、この候補者の勝利に対応する準備がまったくできていなかった。 トランプは大統領就
<日本はこれまで中国の人権問題に積極的に関わろうとしなかったが、最近は徐々に西側諸国のスタンスに近づいている。一方、トランプ政権のアメリカは、人道主義の旗を捨ててしまったようだ> カナダのグローブ・アンド・メール紙の最近の報道によれば、西側11か国の駐中国大使が2月27日、連名で中国公安部の郭声琨部長に対して手紙を出した。「709事件」(編集部注:15年7月に中国各地で人権派弁護士が一斉に当局によって拘束された事件)で捕まった多くの弁護士が拘束期間中に受けた残虐な取り調べについて、独自調査するよう要求したのだ。 長期にわたって拘束を続け、その間外部と連絡させないやり方は国際人権法に違反しており、中国当局は指定した住居に対象者を住まわせて監視するのをやめるべきだ、ともうながしたという。 11カ国の大使が連名で手紙を出した2日後、つまり3月1日から中国共産党は「宣伝マシーン」を起動。官製メディ
<西側の価値観の流入を防ぐため、中国政府は子供向けの外国製書籍の販売を規制する通達を出した。思想統制はますます強化されている> まもなく赤ちゃんが生まれる中国のお父さんお母さん! 輸入物の粉ミルクとオムツだけでなく、外国製の子供の読み物を買いだめしたほうがいい。なぜか。これらの本はもうすぐ読めなくなるからだ。 児童書は中国の書籍市場の中でもっとも良く売れているジャンルだ。しかし品質がいい中国語の優良書はとても少なく、それゆえ中国の出版社は海外の子供向け書籍を大量に買い付けている。 中国の若いお父さんお母さんの多くが、子供に外国絵本だけを読ませる。子供も外国絵本が大好きで、その結果イギリスやアメリカ、日本といった国の価値観が知らず知らずのうちに子供に浸透しているが、親たちはこういった外国絵本が子供たちの心をより美しくしてくれる、と感謝している。 しかし、最近ネット上で伝わった禁止令はこういっ
<ダライ・ラマを招待しないと表明しただけで多額の援助を中国から引き出したモンゴル。中国政府から金を出させるには、「偉大なる中華」の権威を承認するだけでいい> 昨年11月、チベットの精神的指導者ダライ・ラマ14世がモンゴルを4日間訪問したことが中国共産党の不興を招いた。中国外務省はモンゴルにダライ・ラマを受け入れないよう求めたが、モンゴル仏教の指導者はダライ・ラマの訪問が全くの宗教目的であり、政治と無関係だと反論。共産党はこの説明を受け付けず、両国の外交関係は急速に冷却化した。2国間の会議は無期限延期となり、経済協力も一時停止した。 しかし共産党はモンゴルの存在を無視できず、経済危機のモンゴルにとっても中国の投資と貿易は重要だ。結局、モンゴルは共産党に屈服した。外務大臣のムンフオリギルはダライ・ラマ訪問の影響が宗教の範疇を超え、モンゴルと中国の関係に悪影響が生じたと認め、ダライ・ラマをモンゴ
<中国共産党は、歴史の真実の上に数えきれないほどうそをついている。南京大虐殺についても、2つの疑問が拭えない> ニューヨーク大学の学生2人が最近ネットにアップした映像が、中国だけでなく全世界に波紋を広げている。映像は、彼らが日本のアパホテルの客室でアパグループの元谷外志雄代表が書いた本が置いてあるのを見つけたが、本は南京大虐殺や慰安婦の強制連行の歴史を否定するものだった――という内容だ。ソーシャルメディア新浪微博(シンランウェイボー)の彼らのアカウント上で公開されたこの映像は75万回近く転送され、40数万個も「讃(いいね)」が付いた。再生回数は既に1億2000万回を超えている。 もともとあまり良くなかった日中両国の国民感情は、この事件でさらに悪化した。南京大虐殺をめぐる論争は再び中国の人々の怒りに火を付け、ネットユーザーは次々にアパホテルのボイコットを呼び掛けた。まず中国のホテル予約サイト
<中国政府が都市部で試行を開始した外国人の労働許可制度は、人材を3つのランクに分類して管理する「差別的」な仕組み> 1958年1月9日、毛沢東は「中華人民共和国戸籍登記条例」に関する主席令にサインし、この法律を公布した。中国人の戸籍を都市と農村の2つに分け、移住の自由を制限し、当局の許可がないまま元の居住地を離れた農民が「盲流」と呼ばれ、政府によって逮捕あるいは強制的労働教養所送りにされる制度だ。この時から農民は自由を失い、土地にしばりつけられた1ランク下の「賎民階級」となってしまった。改革開放後の数十年間で戸籍制度は何度も改革されたが、都市と農村という二元構造の本質はまったく変わることがなかった。中国が抱える都市と農村の隔絶、大き過ぎる貧富の格差という問題の根っこはここにある。 人をランク付けするこの種のやり方は重大な人権侵害だ。しかし戸籍制度のある社会で長く暮らし過ぎたため、中国人の感
<北京をはじめ中国の都市部は、環境基準をはるかに超える数値のPM2.5に襲われている。中国政府は、これだけひどい大気汚染を「気候災害」と位置付けようとしていて、人々もだんだん感覚が麻痺して「天災」と見なすようになってきている> PM2.5は空気中にある直径2.5マイクロメートル以下で、呼吸によって肺に入り込む微粒子状物質だ。PM2.5は人間の排出行為によって発生し、主に燃焼過程で生まれる。PM10(直径約10マイクロメートル)の粒子は鼻腔内の鼻毛によって食い止められるが、PM2.5は普通のマスクでは完全に防ぐことができない。微粒子状物質の吸着した化学物質が肺胞に侵入して、呼吸系を回復不能に傷つけるだけでなく、心臓や血管と神経系に悪影響を与える。WHO(世界保健機関)の環境基準によれば、PM2.5指数は10(1立方メートルごとに10マイクログラム)以下が安全値。ところが、中国の多くの場所のP
<トランプ次期大統領と台湾総統の電話会談に、中国政府は大いにうろたえた。しかも習近平は、最後の同盟国とみていたロシアからも裏切られた> トランプ次期米大統領と台湾の蔡英文総統が先週金曜日に電話会談したが、会話後のツイートでトランプは蔡を「The President of Taiwan」という肩書きで呼び、これが大騒ぎになった。トランプ支持で共産党シンパの中国人は目を覚まし、「トランプがどんな人間がようやく分かった。彼とわれわれは同じ船に乗っているわけではない」と、ソーシャルメディアに書き込んだ。その一方、トランプ支持でアンチ共産党の中国人は、トランプが期待外れの人物ではなかったと踊り上がって喜んだ。 【参考記事】トランプ・蔡英文電話会談は周到に準備されていた? 中国政府はこの電話会談で大いにうろたえた。それはトランプが79年の台湾断交以来の米中関係におけるタブー、すなわち「1つの中国」を認
<中国の指導者の中でも最高位の呼称「核心」を自分に対して使わせるようになった習近平は、かつて毛沢東が歩んだ終身独裁者への道を歩みつつある> 2016年10月27日は習近平にとってかなり重要な1日だった。共産党の機関紙「人民日報」は党の重要会議「6中全会」閉幕を伝える社説の中で、正式に「習近平同志を核心とする党中央」という表現を使った。 「核心」は中国政治の中でとても大きな意味がある言葉だ。中華人民共和国の創建した第1世代の指導者で、独裁者でもあった毛沢東にしてみれば、「核心」の肩書を持つ者は自分一人で十分。ところがその後任者の鄧小平は、自分の呼称に「鄧小平を核心とする党中央」という言い方を使い、さらに後継者として江沢民を指定した後、この称号を江に贈った。しかしその後任の胡錦涛は権威が足らず、江は胡にこの称号を授けなかった。習近平が自分で「核心」の帽子をかぶり始めたことは、彼が「皇帝の夢」へ
<香港の学生運動のリーダーがタイ入国の際に警察に拘束され、国外追放となった。最近、中国共産党は弾圧の手をタイにまで伸ばしている> 「雨傘運動」で活躍した香港の著名な学生リーダー黄之鋒(ジョシュア・ウォン)が、バンコクで76年に起きた学生運動の40周年記念活動に出席するため当地に向かったのは10月4日のこと。ところが思わぬことに、バンコクの空港に到着すると彼はたちまちタイ警察に拘束されてしまった。 全世界が注目する中、12時間の拘束の後、ウォンは国外追放処分になった。香港に到着後、ウォンは記者に対して拘留時にタイ警察から「どのようにでも処分できる」と威嚇されたことを明らかにした。国外追放にあたって、タイ当局は出入国に関する法規によってウォンの入国を拒絶し、すでに彼をブラックリストに入れた、と文書で告知した。 ウォンの拘束を知った時、私がまず思ったのは「彼は中国に送還されて、中国中央電視台(C
<10月から中国では、ネット上で発信されるすべての情報が犯罪捜査の証拠となる。これまでにも中国人の言論の自由は著しく制限されてきたが、今後その捜査対象はさらに拡大することになる> 今週の土曜日は中華人民共和国の建国記念日である国慶節だ。国を祝う祝日に何とも皮肉なことだが、この日から中国ネットの言論空間はさらに一歩、暗闇へと足を踏み入れる。 最高人民法院と最高人民検察院、公安部が先日、ソーシャルネットワークの微博(ウェイボー)や微信(WeChat)、そのほかのブログだけでなく、ショートメッセージやメールで発信される情報についても10月1日から犯罪捜査の証拠にできる、という新規定を公表した。ユーザーの登録情報や身分証情報、電子商取引記録、通信記録、文章、写真、音楽、映像も例外ではない。 政府系メディアはこの重大な決定について報じる時、次のような恐喝的な言葉を使った。「あなたが微博や微信で発表し
<中国共産党はこれまで北朝鮮を対アメリカの「防護壁」と見なしてきたが、金正恩が戦争の準備を進めていることで、逆に中国が北朝鮮の「防護壁」になってしまった> 北朝鮮の金正恩政権は、核実験とミサイル発射で絶え間なく東アジアの秩序に挑戦してきた。北朝鮮の核兵器とミサイル技術の成熟に伴い、韓国は国防上の必要性からついにアメリカの地上配備型迎撃システムTHAAD配備の受け入れを決めたが、それに最も強く反応したのは中国だった。 昨年9月、中国共産党は北京で盛大な軍事パレードを開催したが、そこで公開されたさまざまな射程の新型ミサイルはその後、ネット上で「東風宅急便」と呼ばれ始めた(「東風」は中国製ミサイルの名前だ)。ポータルサイト新浪の軍事ページのある記事は、射程距離ごとに東風15Bを「台北便」、東風21を「東京便」、東風31を「ハワイ便」、東風5を「ニューヨーク便」と命名。愛国主義者たちはキラキラ輝く
<来月のG20サミット開催を前に、会場となる中国の杭州では、常識をはるかに越える厳重な警備が実施され、市民は通常の生活ができない状況に陥っている> 今年のG20サミットが9月4日から5日にかけて、中国浙江省杭州市で開かれる。中国がG20を開催するのも、習近平が中国最高指導者に就任した後このような会議を主催するのも初めてだ。中国政府はかつてなくこの会議を重視し、浙江省は7月から道路、鉄道、航空など公共交通機関の安全検査を強化してきた。 しかし中国では、G20の安全確保のための措置が住民にひどく迷惑をかけている事実がまったくニュースとして伝えられていない。杭州市民はネット上で自身の体験を語っているが、その内容はあきれるものだ。8月以降、杭州の多くの企業は休業に追い込まれ、大量の店舗とレストランが閉店を命じられた。反政府派の人々は強制的に地方観光に行かされ、杭州向けの宅急便業務も停まった。観光名
<同じ社会主義の旧ソ連から挙国体制も学んだ中国では、オリンピックでのいびつな「金メダルコンプレックス」によってスポーツ選手への組織的なドーピングが横行していた。こうした「ドーピング」的思考は経済統計等にまで影響を及ぼしている> 日本を含む世界はこのところ、ブラジルで開かれているリオデジャネイロ五輪に注目している。中国のメディアや国民も例外ではない。ただ中国の場合、オリンピックは共産党政権が愛国主義的宣伝を強化する場でしかない。普通まともな国家では、スポーツはまず個人の趣味・嗜好であり、選手は自分の夢を成し遂げるため努力する。今回のオリンピックでイギリスの射撃選手が金メダルを獲得した後、あたふたと農地の収穫のために帰国した、というエピソードを聞くと、中国人は不思議に思う。 中国のスポーツ選手は国家が資金を使って育成するため金メダルはまず国家の栄誉であり、選手個人の成果は二の次だ。中国のスポー
<南シナ海を領海とする中国の主張を否定した仲裁裁判所の判断に中国政府は強硬に反発。しかし奇妙なことに各部門は国内向けの「戦時状態」に入ったことを通知した。共産党政府が本当に恐れているのは、愛国主義の熱にうなされた国民の抑制がきかなくなることなのだ> 2016年7月12日、国際仲裁法廷が裁定結果を公表した。5人の仲裁員は全員一致で国連海洋法条約上、「九段線」の「歴史的な権利」に基づく中国の南シナ海の天然資源に対する権利は認められないと結論づけた。裁判所はまた中国の南シナ海における埋め立て工事が環境に取り返しのつかない損失を与えたとも判断。中国政府に南シナ海における行動を停止するよう求めた。 南シナ海問題は一時的に中国社会で最も注目される話題になった。共産党政府は裁定が出る前から強硬な態度を示し、7月5日から11日の間、海南島の南方にある西沙諸島付近で軍事演習を実施。12日に裁定が出ると、共産
<国政上の重要な決断を国民投票で決めたイギリスのEU離脱は、中国人にとって驚きの事件。一方、村民選挙で選ばれた広東省の村長に関して汚職事件が「捏造」される中国では、民主化への道はまだはるかに遠い> EU離脱を問うイギリスの国民投票は、中国のネットでも大きな注目を集めた。開票が始まった直後は票数が接近し、その後離脱と残留が何度もリードを奪い合ったが、次第に離脱が残留を引き離し始め、最後は離脱が勝利した。これはわれわれにとってとても意義のある政治的な出来事、そして重大な決断だ。政治家が決断できない状況で、すべてを国民の票決に委ねる......中国人にとって衝撃は大きい。イギリスの首相は直ちに辞任を発表し、演説でこう述べた。彼自身は離脱に反対だが、国民がはっきりと別の道を選択した以上100パーセントその決断を尊重し、離脱手続きがスムーズに進むよう責任を持って努める、と。 このような政治文化を多く
今年で文化大革命が始まって50年だが、中国政府はいかなる記念活動も開催せず、官制メディアも一貫して沈黙を守っている。記念日の5月16日がすぎ去った後、ようやく17日未明に人民日報が1本の評論記事を公表しただけだ。記事は文革を災難と認める一方で、中国共産党に教訓を学ぶ能力がある、と強調し、国民に対してすでに終わった文革に引き寄せられるな、と呼び掛ける内容だ。 しかし私は聞きたい。文革は本当に終わったのだろうか? 1966年5月に中国共産党中央政治局の拡大会議が北京で開催され、会議で「5・16通知」が決定された。歴史学者はこの「5・16通知」を文化大革命の始まりと見なしている。76年9月9日に毛沢東が死去し、10月6日に華国鋒首相が副主席の葉剣英と共産党中央弁公庁主任の汪東興と共に「懐仁堂の政変」で王洪文、張春橋、姚文元と毛沢東夫人の江青(いわゆる4人組)を逮捕して、10年の文化大革命は終わっ
江蘇省の常州外国語学校は2015年9月、常州市の中心部から郊外の新しい校区に移転した。中等部と高等部が併設されたこの私立学校は常州市で一番の実力校だ。教育環境と教師の人材が一流なだけでなく、中産階級以上の家庭でしか負担できない授業料の高さも一流だった。 昨年の12月、この学校は異常な臭いに包まれた。腐ったバナナの臭いに似ていると言う人もいれば、殺虫剤のようだとも言う人もいた。学校に子供を迎えに行き、いつもこの異臭を嗅いでいた保護者の1人は「しばらく嗅いでいるとめまいがした」と証言している。常州市は化学工業が発達した都市で、人々は化学工場から出る異臭には慣れっこだった。しかし学校に現れた消えない異臭に、保護者たちの間に緊張が広がった。 12月末、一部の子供の体に赤い発疹やできものが現れると、保護者たちは連れだって子供を検査に連れて行き、多くの子供のリンパ腺と甲状腺に異常があることが判明した。
今から1年前、ある匿名の人物が一千万件を超すパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の機密文書を南ドイツ新聞にリークした。同新聞はこの膨大なデータを「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)と共有。ICIJは全世界の100余りのメディアの記者にこの情報を精査させ、そしてついに4月3日、最初の調査結果を公表した。完全なデータベースは5月初めに公開される。この一連の資料は「パナマ文書」と呼ばれている。 リークされた文書は国際的に権威のある高官とエリートたちがどのように租税回避しているか、そして莫大な財産を移転したのかを示すものだ。文書に自身や家族の名前が出る世界の現職・前職の国家元首や政府首脳の数は100人以上。パナマ文書の嵐は世界を大きく揺さぶり、アイスランドの首相は民衆の抗議で辞職に追い込まれた。イギリスのキャメロン首相はどうして文書に父親の名前が現れるのか、メディアと国民に苦しい説
中華人民共和国の創設者である毛沢東(マオ・ツォートン)は、その時代に比類なき声望と権力を欲しいままにした。しかし毛沢東は何度も「革命運動」を発動して国家を崩壊の瀬戸際に追い込んだ。その後、鄧小平(トン・シアオピン)による経済領域の「解放」によってこの国は生き返るが、鄧が指定した後継者の江沢民(チアン・ツォーミン)と胡錦涛(フー・チンタオ)は鄧の政策に従うだけの「国家の看守」に過ぎず、共産党政権を自分の代で壊さず平穏無事に次の世代に引き渡せばそれでよかった。 しかし、習近平(シー・チンピン)は前任の2人とは違う。彼は正真正銘の「紅二代(編集部注:いわゆる「太子党」の中でも49年の新中国成立以前に共産革命に参加し、日中戦争や国民党との内戦で貢献した党幹部の子供)」で、毛沢東は彼の精神の上の父である。彼は自分をこの国の「所有者」と考えている。けっして「経営者」などではない。この国を自分の家と考え
2016年が始まると、中国の経済・政治はますます「非正常」な状態に陥った。上海と深センの株価は猛スピードで続落し、外貨準備は記録的な量が国外に流出した。毎年春節前夜に放送されるCCTV(中国中央電視台)の番組「春節聯歓晩会」は、最も共産党イデオロギー宣伝色の濃い中身だった、と視聴者に批判された。先日、習近平はCCTVと人民日報、新華社の3社を視察し、こう強調した。 「党のニュース・世論監督業務は党の原則を堅持しなければならない。最も根本的なのは、ニュース・世論監督業務における党の指導性を守ることだ。党・政府のメディアは党と政府の宣伝のための陣地であり、党の子供でなければならない。党メディアのあらゆる業務は党の意志を体現し、党の主張を反映し、党中央の権威を守り、党の団結を守り、党を愛し、党そのものを守り、党のためにならなければならない」。 CCTVは習近平を迎える際、局に掲げた看板の上に「C
このビンタはいったい誰の顔に向かって放たれたのだろうか。 北朝鮮が今月2日に「8日から25日の間に『光明星号』を発射する」と発表した後、米高官は北朝鮮が弾道ミサイル技術を利用して発射することは国連安保理、中国そして国際社会の軽視であり、北朝鮮への追加制裁に反対する国へのビンタだ、と発言した。3日、中国外交部のスポークスマンはアメリカに対してこう反論した。「6カ国協議が中断し、一部国家が圧力と制裁を叫ぶ中、北朝鮮は核実験を始め、その後も実験を重ねてきた。その意味では、北朝鮮は確かにある国家に対してビンタを放ったと言える。それが誰の顔に向けられたものだったのかは、ビンタを受けた者だけが知っている」 北朝鮮は7日、人工衛星「光明星4号」を発射した。この人工衛星を載せたミサイルの射程は約1万3000キロで、理論上ではアメリカ大陸のどんな場所にも到達できる。しかし、一方で今回発射された軌道は中国沿岸
私はつい先日、台湾で初の女性総統が誕生するのを自分の目で見てきたばかりだ。独裁国家・中国から国外に「亡命」した華人の1人として、台湾の人々が自分たちの投票で今後4年間の指導者を決めるのをとても感慨深く、またとてもうらやましく見つめた。 選挙前には、台湾の選挙情勢に影響を与える重大な事件が発生した。韓国で人気のある台湾女性アイドル周子瑜(チョウ・ツーユィ)が、出演した韓国のテレビ番組の中で中華民国国旗を掲げたことを、同じ台湾出身で中国で活動する歌手の黄安(ホアン・アン)が「周子瑜は台湾独立を支持している」と微博(ウェイボー)で告発。黄安と愛国ネットユーザーの攻撃で、中国のテレビ局が彼女が所属するグループの出演停止を宣言し、周子瑜の所属する韓国の芸能プロは中国市場を失わないため、この16歳の少女にテレビで中国人に向かって謝罪させた――のだ。 これはISIS(自称イスラム国、別名ISIL)の人質
2015年12月22日、北京市第二中級人民法院は弁護士の浦志強(プー・チーチアン)に懲役3年、執行猶予3年の刑を言い渡した。その日の午後、彼は1年7カ月の間勾留された拘置所を出た。浦志強は中国の有名な人権派弁護士であり、89年の天安門事件では所属する中国政法大学で初めてハンストに参加した学生の1人でもある。 浦志強が天安門事件後、公安当局によって逮捕されずに済んだのは、当時、彼が学生リーダーではなく、さらに学内で教師や学生たちにかばわれたためだった。このことについて、私は以前「天安門事件で彼は幸いにも逮捕されなかった。今回はその『借金』を返したことになるのでは?」と冗談を言ったことがある。ただ、私はこうも考える。浦志強自身もこんな風に考えていたのではないか? この種の「借金返済」の心の準備と覚悟はかなり前からあったのではないか?――と。 2014年5月4日、天安門事件25周年の1カ月前の夜
北京市は今月7日、深刻な大気汚染に対して「赤色警報」を発令した。中国が最高レベルの赤色警報を出すのは初めてだ。 中国政府は13年に汚染が続く予測日数に基づき、大気汚染のレベルを「青色(24時間)」「黄色(48時間)」「オレンジ色(72時間)」「赤色(72時間以上)」の4つに分類した。しかし今月7日の前には一度も赤色警報を出したことはなかった。 今回の深刻なPM2・5の発生は先週に始まり、先月30日に政府はオレンジ色警報を発令。ニュース記事によれば、北京の空気中に含まれるPM2・5の微粒子は1立方メートルあたり900マイクログラムを超えた。この数字は、WHO(世界保健機関)の定める上限値の25マイクログラムを大幅に上回っている。PM2・5の状況があまりにひどいため、庶民は政府の警報発令基準に疑いを持つようになった。政府はこれまで何度も特に華北地域のひどい大気汚染問題をなんとかする、と請け負っ
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