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円安とは
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<中国政府が初めて承認した中国人ノーベル賞作家である莫言が、「幻覚的ナショナリズム」にとらわれた愛国者たちに訴えられ、全人民への公開謝罪を要求されている> 莫言(モー・イェン)は、中国政府が初めて承認した中国人ノーベル賞作家である。その作品は「幻覚的なリアリズムによって民話、歴史、現代を融合させた」と評価された。魔術的リアリズム(幻覚的リアリズム)の中国語「魔幻現実主義」という言葉は中国で一時的にブームになり、莫言自身も「創作の無限の可能性を掘り返せただけでなく、リアルな社会問題もよく表現できた」と、その評価に納得した。 しかし、受賞から12年たった今、莫言の作品は「革命英雄を侮辱した」と愛国者らに訴えられた。それだけでなく、全国人民への公開謝罪も要求されている。莫言の作品に登場する革命英雄は格好悪く、日本軍人などの悪役のほうが格好良く描かれている......といった理由からだ。 これは幻
<ナンバー2だった李克強の降格・引退、胡錦濤を途中退席させるなど、「一党独裁」から毛沢東時代の「一尊独裁」に戻ったことを世界に宣告。「一尊独裁」は、清朝末期を彷彿させる> 中国共産党の第20回全国代表大会(以下「二十大」)について、未来の歴史家はこう書くだろう。この会議で中国は一党独裁政権から、さらに悪い毛沢東時代の「一尊独裁」政権に戻ったことを世界に宣告した、と。 二十大の開催前、「習下李上」の噂が中国語のツイッターユーザー間で拡散した。習近平(シー・チンピン)国家主席は降格し、李克強(リー・コーチアン)首相が昇格するという意味だが現実は真逆だった。 李は来年、首相から降りる。共産党の最高指導部である政治局常務委員会メンバーは習以外すべて習の腹心である。共産党の集団指導体制による独裁時代が終結し、これからの中国が習1人による独裁時代を迎えることは明白だ。 特に、二十大の閉幕式で前国家主席
<天安門事件以降、経済を優先し、「自由は食えない」という考え方が中国社会に普及した。しかし、青年の勇気にアニメのテーマ曲「孤勇者」で敬意を表する人々が続出。その内容とは?> 「君が一人で暗い路地を歩く姿が好き/君がひざまずかない様が好き/君が絶望と対峙する姿が好き/泣くことはしない」 この「孤勇者(こゆうしゃ)」という歌は一晩のうちに、中国SNSの微信(ウェイシン)を席巻した。 「孤勇者」とは孤独な勇者の意味で、あるテレビアニメのオープニングテーマ曲。中国の小中学生に人気のこの歌が大人の世界で急に人気を呼んだのは、共産党第20回党大会直前の10月13日、北京市内の高架橋・四通橋に反政府・反独裁者のスローガンが現れたからだ。 「PCR検査は不要、ご飯が必要/ロックダウンは不要、自由が必要/文革は不要、改革が必要/領袖は不要、投票が必要/奴隷は不要、公民が必要」「独裁の国賊、習近平を罷免せよ」
<日本で第二次大戦中に実施された「隣組」のような制度に、最新のデジタル技術を組み合わせた住民監視制度で、中国社会に近づくディストピアの未来> 先日、四川省自貢市のある住宅街が「十戸長」制度を進めるため、ネットで十戸長を正式に募集し始めた。 十戸長とはなんだろうか。中国の「戸」は日本語と同じ「世帯」の意味で、十戸(10世帯)ごとに1人の管理人を選ぶことが十戸長制度と呼ばれる。その仕事内容は「大衆と連絡し、大衆にサービスを提供し、大衆を動員する」こと。 つまり最下部組織の管理制度で、里帰りした人々に対する聞き取り調査や健康QRコード読み取り、または上級の党組織からの指令の伝達に十戸長が責任を持つ。誰かが少しでもサボると、所属する十世帯全員の連帯責任となる。 「文革時代かと思ったら、秦の時代に後退していた」。中国人ネットユーザーも目を疑った。紀元前4世紀の秦にも、「什伍(じゅうご)の制」があった
<中国のネット社会で大きな話題となっている「二舅」の動画。不幸と不公平に耐えるその姿は、社会で高まる不満を和らげたい政府にとっても好都合だった> 「二舅」(アルチウ、母方の2番目のおじ)という動画が最近、中国のSNS上で話題になっている。 中国北部の農村に住む「二舅」は子供の頃から勉強が得意な村の天才少年だった。しかしある時、村のヤブ医者が打った注射のせいで片足に障害が残り、大学進学の夢も失われた。得意の大工仕事で村の人気者になったが、片足の障害のせいで66歳の今も結婚できず、88歳の母親の世話をし、それでも誰も訴えず、何の文句も言わない。 その生活ぶりを見て、大都会の北京に暮らす撮影者の「私」は癒やされた。苦労続きの二舅と比べてずっと幸せではないか......。 この話は中国政府が唱える「正能量」にぴったりで、官製メディアでも積極的にシェアされ、公開された動画サイトのbilibili(ビ
<中国では反応は真っ二つに分かれた。国内の社会の底辺に暮らす人々にとっては、権力者の死は「他人の不幸は蜜の味」。しかし、在日中国人の目に安倍元首相は「しなやかで強いリーダー」と映っていた> 日本の安倍晋三元首相が突然銃撃され、死亡した事件に対して、中国人の反応は真っ二つに分かれた。 中国社会の底辺に暮らす大量の人々にとって、「他人の不幸は蜜の味」。彼らは普段の生活の中でほぼ発言権を持たず、特権階層にいじめられる対象だ。 例えば最近、河南省の農村向け銀行で、数十万人の預金400億元以上が理由も分からず消失した。被害者が地元警察に通報したが、訴えを受理するどころか、抗議活動が広がらないよう健康碼(健康QRコード)を悪用して移動を封じられた。 虐げられている彼らが安倍氏の死を喜んだ理由は、幼い頃から「日本は侵略者で悪者」という教育を受けてきたから。一種の愛国心だが、彼らは自分たちを虐げる権力には
<ロシア国営テレビの番組で「反戦メッセージ」を掲げた女性が拘束されたが、中国のテレビにはそもそもこうした「事件」が起こらない仕組みがある> ロシア国営テレビの女性スタッフが現地時間の3月14日夜、生放送中のニュース番組に「闖入」して、番組キャスターの背後で、「戦争反対」「プロパガンダを信じるな」などとロシア語と英語で書かれたプラカードを掲げ、ウクライナ侵攻に抗議した。女性はその直後に拘束されたが、その動画はあっという間にネットで全世界へ拡散した。 このニュースに最も衝撃を受けたのは、ネットの「壁越え」で国外の記事に関心を持つ中国人たちだ。女性はその後モスクワ地方裁判所で3万ルーブル(約3万6000円)の罰金を命じられただけで保釈された。 「戦争中のロシアでも、言論の自由や司法の公正などの点で中国よりずっとマシだ」と、ある中国人知識人は言う。もし同じ事件が中国で起きたら、その女性スタッフは即
<中国ネット空間にはロシアを応援したり、プーチンを熱烈に支持する投稿が溢れる。中国政府にとっても、ロシア批判を許すことはできない状況だ> 「プーチン支持者が最も多い国はロシアではなく中国だ」 開玩笑(冗談)ではない。国連総会のウクライナ侵攻非難決議で中国政府は棄権したが、中国ネットでロシアやプーチン大統領を応援する投稿が大量に発生した。 経済制裁下のロシアを支援するため、中国の電子商取引(EC)サイトではロシア製品の爆買いが広がった。北京市内の在中国カナダ大使館が「われわれはウクライナを支持する」と中国語で記した看板を掲げると、その上に「FUCK NATO」と英語で落書きされた。 ロシアの電撃戦が停滞しているのはウクライナの必死の抵抗ではなく、「プーチンが手ぬるいから」だという投稿や、「この70歳(実際には69歳)の男を心がうずくほど愛している」という、プーチン宛ての中国語の愛の告白もあっ
<中国江蘇省徐州市の村で小屋に監禁されていた女性の映像がネットで炎上したが、妊娠させる目的での女性の誘拐・売買は今も少なからず発生している> 2022年の春節、中国では官製メディアが盛大な北京冬季五輪の開幕式を伝える一方で、江蘇省徐州市の村で小屋に監禁されていた女性の映像がネットで炎上した。女性は冬の寒さの中、薄着で首に鎖を巻かれてゴミだらけの小屋に閉じ込められていた。彼女は来歴も名前も不明。20年以上前から監禁され、8人の子供を産まされた。誘拐されたのではないかと疑われている。 中国には女性誘拐の伝統がある。そしてそれは貧しい農村部であればあるほど多発する。農民たちは跡継ぎを残すため、一生分の貯金を使って人さらいから女性を買い取る。誘拐された女性の中には未成年もいるし、大都会の女子大学生もいる。かつて上海の女子大学院生が社会調査をしていた時に誘拐され、2480元(約4万5000円)で農民
<共産党の意に反する行動をすれば「精神病患者」として強制入院させられる中国社会と、高倉健が主演した日本の名作映画の共通点> 李田田(リー・ティエンティエン、風刺画の右)は中国・湖南省の貧しい山村にある小学校の教員だ。彼女がまだ小学生だった時、通っていた小学校を訪問した複数の日本人と出会い、彼女の作文に感動した2人が小学校4年生から大学卒業まで、彼女を経済的に援助した。 「家は貧しかった。2人の日本人のお姉さんの経済的援助のおかげで大学を卒業できた」と、彼女は言う。日中国交正常化後、中国の貧しい農村部に住む子供たちを長期的に経済支援した日本人は多い。成人した李田田は立派な国語教師になった。個人で詩集を出版する優れた詩人でもある。 昨年12月、上海で専門学校の教師が授業中に、1937年の「南京事件」の犠牲者数について「データがない」と発言して生徒に告発され、除籍処分を受ける騒ぎがあった。責任感
<子供を産むか産まないか、産むなら何人産むか。中国では、これらを決めるのは親でなく共産党と国家。そこには政府の「焦り」がある> 「子供は1人でいい」。世界中の誰もが知る、この中国特有の人口抑制の国策「1人っ子政策」は2015年に「2人っ子政策」に、さらに最近突然「3人っ子政策」に変わった。 21年12月、中国の官製メディアは「3人っ子政策を実行するため、党員や幹部らは行動を見せるべき」という社説をネットに載せた。「あれこれと口実をつくって1人や2人だけで済ませるのはいけない。3人っ子政策の実行は、全ての党員と幹部にとって国の人口を増やすための責任と義務だ」という内容だ(なぜかすぐに削除されたが)。 1979年、中国政府は「一組の夫婦が子供を1人だけ産む」国策を実行し始めた。計画経済で生じた資本や資源、物資の不足を人口抑制で和らげることが目的だ。人口の急増は確かに抑えることができたが、急速な
<自宅から出ていなくても近所で感染者が出ればPCR検査を受けよと警告が。「中国に学べ」という主張は正しかったのか?> 「時空伴随者」―― SF小説の題名のようなロマンチックな言葉だが、これは中国政府の新型コロナウイルス対策の1つ。健康者と感染者が同じ空間(800×800メートル)に10分以上とどまり、それが14日以内に計30時間以上になると「時空伴随者」と認定され、スマホのアプリがPCR検査を受けよと警告する。四川省成都市の「時空伴随者」は、たった数日で8万2000人を超えた。 例えば、ある感染者の自宅が800メートルの範囲内にあれば、ずっと家の中に閉じ籠もっていても「時空伴随者」に認定される。「科学的ではない」と専門家が意見をSNS上に公開したが、直ちに削除された。 ロックダウン、通行規制、住宅街封鎖、強制隔離そして広範囲のPCR検査......という全面的で厳しい防疫措置は、中国人の日
<中国で日本に対する感情が8年ぶりに悪化した一方で、和食や茶道は「品格ある生活様式」として金持ちたちに人気を博している> 先日、ソニーの中国法人が北京市朝陽区の市場監督管理局に100万元(約1770万円)の罰金を科された。広告を出した新製品発表日が日中戦争の発端である盧溝橋事件の7月7日で、「中国の尊厳と利益を深刻に傷つけた」という理由だった。 大連の「盛唐・小京都」と名付けられた商店街が、開業してわずか1週間で休業状態に追い込まれたのは記憶に新しい。また南京でガイドらしき男性がミニサイズのこいのぼりを持ちながら歩いていたところ、「あんたは中国人だろ? 日本のこいのぼりを持つなんてやめなさい」と、通り掛かった人に非難された。中国の街頭で日本の着物を着るのもご法度。アモイの日本料理屋の店員が、着物姿で新型コロナウイルスのPCR検査を受けに行くと、「服装を変えろ」と、検査を拒否された。 今年8
<習近平による「共同富裕」方針の背景には、社会の「資本批判」も。ただ中国は平等をめぐって失敗を繰り返してきた歴史を持つ> 習近平(シー・チンピン)国家主席は最近、「共同富裕」という方針を打ち出した。高過ぎる所得の調整や、高所得の個人・企業に対して社会への還元を促す新方針──だが、そもそも中国が今も(建前上は)掲げる共産主義の核心は「財産を共同所有する平等社会」の実現にある。 1949年の建国以来、共産党政権は何回も共同富裕の実現を目指してきた。例えば1950年の土地改革法は、農村の地主たちの私有地を没収して、無償で貧しい農民たちに再分配した。地主などの富裕層はもともと農村のエリートとして地域の秩序維持や文化伝統の継承も担っていたが、この運動で地主と彼らが維持・継承してきた秩序や伝統は崩壊した。 そして1958年に実現不可能な目標を掲げた大躍進運動と人民公社制度が始まり、農民たちに配ったばか
<日本でもエンターテインメントとして人気の長編小説だが、そこには社会主義中国の伝統的価値観が色濃く反映されている> 『三体』は中国の代表的なSF作家・劉慈欣(リウ・ツーシン)のSF小説。2019年に日本で第1部が発売されるとたちまち10万部を売り、続く第2 部『黒暗森林』、第3部『死神永生』も予想どおり大人気だ。 日本の読者は『三体』を純粋なエンターテインメントとして読んでいるだろう。だが中国人の目から見ると、このSF長編小説には社会主義中国の発展史と中国人の伝統的価値観が隠れている。 例えば第1部の主要人物の物理学者・葉文潔(イエ・ウエンチエ)。彼女は文化大革命で物理学教授である父親が紅衛兵の批判大会によって死に追いやられ、地球人類に絶望してひそかに宇宙に電波を送る。そこから地球は異星人の「三体世界」と関わりを持ち始めるのだが、その姿は中国の社会主義に絶望し、欧米の先進文明に憧れる伝統的
<かつては犯罪とされていた同性愛への差別が依然として残る中国社会だが、習近平体制の下で支援者の声は弱まるばかり> 7月6日、中国の大学で活動するLGBT団体のSNS微信(ウェイシン)アカウントが、一晩のうちに全て凍結された。政府の検閲かどうかなど、今も原因は不明だ。SNS上で抗議の声も上がったが、すぐ消えてしまった。 「性的少数者」という概念は、中国でまだ定着していない。LGBTと聞いて、多くの中国人の頭に浮かぶ言葉は「同性愛」。同性愛者は中国語で「同志」ともいう。共産党を熱愛する同士の意味だった毛沢東時代の「同志」とはもちろん違う。 1997年まで、中国で同性愛は刑法の「流氓罪(チンピラ罪)」で取り締まられていた。同年の刑法改定でやっと同性愛行為は合法化されたが、中国社会に受け入れられたわけではない。政府は犯罪者として取り扱わないが、社会は依然「変態」として差別している。 このため、若者
<香港警察の暴力を支持した中国本土の学生たちだが、自分たちが被害者になったときに同じ目に遭ってしまった> 「私は香港警察を支持する」。一昨年、南京師範大学中北学院の学生が中国SNS上でデモを取り締まる香港警察の暴力を支持したとき、たった2年後に自分たちが香港の学生と同様に警察の暴力を受けることなど全く想像できなかっただろう。 6月4日、南京師範大学中北学院など江蘇省・浙江省の5つの大学で大規模な抗議活動が起きた。この5つの大学に属する「独立学院」は、教育省の命令で別の高等職業学校と合併し、職業大学に変わることになった。4年制大学に入学したはずの学生たちは、短大卒業に近い学位になってしまう。 明らかな権利の侵害だが、中国メディアはほとんど報じず、その上、地元警察が大量に出動して抗議する学生たちを殴り、催涙スプレーを吹き付けた。怒った学生たちは中国SNSの微博(ウェイボー)で助けを求めたが、受
<貧乏な「田舎のブタ」が、恵まれた「都会の白菜」に突き付けた挑戦状。だが実態はもっと複雑で...> 「我就是一只乡下来的土猪,也要立志去拱了大城市的白菜(俺は田舎から来た田舎ブタ。それでも大都会の白菜を押しのけようと決意した!)」 先日、中国のテレビ演説番組で大きな話題になった河北省・衡水中学の生徒、張錫峰(チャン・シーフォン)君の言葉だ。 衡水中学は主に農村出身の学生が学ぶ進学校で「大学受験工場」と呼ばれる。受験生たちは学校の寮に住み、朝5時半に起き、夜10時10分に寝る。食事とトイレも駆け足で時間を惜しみ、毎日十数時間勉強し続ける。 それほど必死に頑張るのは、ただ1つの目標──有名大学に合格し大都会に出て運命を変えるためだ。張君の「田舎ブタと大都会の白菜」という言葉は「ガマガエルが白鳥の肉を食べたがる」という中国のことわざと同じ意味がある。富と名声など大都会のエリート層しか属しないもの
<中国の若者たちの間で、資本家への抵抗として急激に広がる「躺平(タンピン)」主義が見落としている重要な事実> 王さんはごく普通の大学生だった。卒業後、大都会の会社に就職して食費を切り詰め節約し、3年間でやっと5万人民元(85万円)をためた。しかし故郷でも不動産価格は最低1平方メートル当たり1万人民元。しかも高騰し続けている。休まず毎日残業するほど働いても、給料では不動産に手が出ない。マイホームを持てなければ結婚もできない。全ては自分と無縁。なら「躺平(タンピン)」するしかない──。 「躺平」は中国で最もはやっているネット用語だ。何もせず横になって寝るという意味だが、転じて全く努力せず、ただ最低限の生活を送ることを指す。今の中国では王さんのような何千何万もの若者が「躺平」主義を選ぶ。彼らはどんなに努力しても運命を変えられず、将来に希望を見いだせない。 「われわれは躺平を選んだ。これ以上、資本
<新疆綿の取り扱いを止めたブランドへのネット上の不買運動と、実店舗での長い行列が矛盾しない不思議な考え方> 最近の中国はスウェーデンのアパレルメーカーH&Mをボイコットしている。理由は新疆ウイグル自治区の人権問題で、H&Mが原料に使う新疆綿の取り扱い中止を発表したためだ。「新疆綿を応援しよう、H&Mはボイコット」というスローガンが中国ネット上にあふれ、人気芸能人もH&Mとの契約の解除を発表。オンラインモールの淘宝網(タオパオワン)や京東商城(JDドットコム)で「H&M」が検索できなくなった。ナイキやアディダスも同じ理由でボイコットされている。 しかし、ネット上と実店舗は違うようだ。例えば、河南省鄭州市にあるH&Mの専門店はいつものようににぎわっている。ある地元の若い女性が店の前で不買運動を呼び掛けたが、みんなに無視され、揚げ句警察に拘束された。湖南省長沙市内のナイキ専門店でもレアシューズ特
「アメリカは中国に偉そうに上から物を言う資格はない。中国人はこの手は食わない」 先日の米中外交トップ会談で、中国外交のトップ楊潔篪(ヤン・チエチー)は、ブリンケン米国務長官の批判に強く反論。この発言は直ちに中国国内に広がった。「今の中国は昔のように貧しくない。中国人はもう誰の顔色も気にせず大声で『ノー!』と言える時代なんだ!」。楊の発言は中国SNSであふれるほどシェアされた。ネット通販サイト「淘宝(タオバオ)」も、赤地に白文字で楊の言葉をプリントしたスマホケースやTシャツを即座に売り始めた。 世界第2位の経済大国になり、中国人には金持ちの自覚が生まれた。アメリカのコロナ対策失敗を見て、「中国の特色ある社会主義」に自信も持つようになった。民主や自由は大したことない。カネも儲けられないし、コロナ退治もできない。欧米に偉そうなことを言われる筋合いはない──「もうこの手は食わない」という言葉の背景
China's Twisted Love / (c)2021 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN <「愛ちゃん」は中国のトップ選手にはまず勝てなかった、だからこそ中国人は「かわい過ぎる」存在として認めてきた> 卓球女子元日本代表の「愛ちゃん」こと福原愛の家庭危機が最近、日中両国のSNSで大炎上した。日本では不倫疑惑への批判が多かったが、中国では彼女の夫で台湾人の江宏傑(チアン・ホンチエ)のモラハラが注目され、福原愛を無条件に応援し、江宏傑を一方的に罵倒するファンが多い。 「愛ちゃん、さっさと離婚しよう! あの台湾蛙人は愛ちゃんの夫になる資格がない」「なぜ愛ちゃんが謝罪するのか。あの蛙蛙こそ謝罪するべきではないか」 SNSの新浪微博で9500を超えた江宏傑への罵りでは、「台湾蛙人」「蛙蛙」という言葉がよく使われた。「蛙」は見識がないことを軽
China's Latest Emperor / (c)2021 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN <真実を歪めなければ、わずか15年で滅亡した秦の歴史に学べるはずだが...> 「神州大地」とは古くからある中国の自称だが、近年ブームになった荒唐無稽な抗日神劇(神ドラマ)や、最近盛んに作られている歴史神劇を見ると、「神州大地」というより「神劇大国」が適しているのではないかと思えてくる。 いま話題の連続ドラマ『大秦賦(ターチンフー)』もその1つ。暴君として有名な始皇帝が、今作中では人々に敬愛される仁君で、人民を苦難に満ちた生活から解放するため中国を統一し、幸福な生活をもたらす救世主として賛美されている。歴史の真実から乖離した内容に歴史学者らはあきれているが。 中国を統一した始皇帝は強かった。その強さ故、「百家争鳴」といわれた春秋戦国時代の思
Youth Heaven, Elder Hell / (c)2020 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN <日常生活の隅々まで浸透したキャッシュレス決済などのハイテクは、スマホに慣れた若者には便利だが、老人などの弱者には全く配慮していない> 湖北省で1人の老人が雨の中、役所を訪れ医療保険金を納付しようとした。だが現金はだめ、スマホのキャッシュレス決済でしか支払えないと言われて茫然となった......。 安徽省では別の老人が、スマホを持たないため個人の健康QRコードを提示できず、バスに乗車拒否された。仕方がないので1000キロほど離れた親戚の家に徒歩で向かった......。 どちらも最近、中国で報道されたニュースである。中国ではスマホによるキャッシュレス決済が日常生活の隅々まで浸透している。買い物はもちろん地下鉄やバスの運賃支払い、タクシー
<ポルノも海外SNSも禁止。それを破れば罰金や逮捕、収監される可能性も──。ただし、それは普通の中国人だけの話> 先日、駐英中国大使である劉暁明(リウ・シアオミン)のツイッター公式アカウントがポルノ投稿に「いいね」したことが発見され、大騒ぎになった。目ざといツイッターユーザーは素早くスクリーンショットして中国のネットへ転載。駐英中国大使館はすぐ「これは反中国勢力の悪質な攻撃だ!」とツイッターで非難。タブロイド紙の環球時報も「ネット上の各位、デマを信じるな! 拡散するな!」と呼び掛けたが、中国人ネットユーザーの間では「劉大使は外国勢力の性的誘惑に我慢できず思わず『いいね』をしたが、責任は全て外国側だ!」という皮肉な投稿が広がった。 少し前にも、中国外務省の報道官である趙立堅(チャオ・リーチエン)が日本の元セクシー女優・蒼井そらをツイッターでフォローしていることを発見された。蒼井そらは中国で超
A Sino-American Tragicomedy / ©2020 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN <千年不朽の伝説の実写化にディズニーが2億ドルを投じ、中国市場で大儲け!のはずだったが......> 中国でムーランを知らない人はいない。読み人知らずの漢詩「木蘭辞」に由来するムーランは、現代でも国語教材として子供たちに暗記させているからだ。 中国人のムーランに対するイメージは「孝」だ。体が弱い父親の代わりに男の姿をして戦場に行き、故郷に凱旋した時は朝廷の俸禄を断って、娘の姿に戻り昔のままに生きていく。ムーランの伝説には古代中国の伝統的な美意識が宿っている。 ディズニーが実写版の映画『ムーラン』に2億ドルを投じた理由は言わずとも分かる。中国人にとって千年不朽の伝説であり、中国市場での大儲けが期待できる。しかしその狙いは外れ、9月4日
Racism With Chinese Characteristics / (c)2020 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN <中国の少数民族弾圧を、欧米の人種差別の考え方で解釈すると誤解することになる> 「1つの民族を滅亡させたいなら、まずその民族の文化を崩壊させる。その文化を崩壊させるため、まずその民族の言葉を消滅させる」――中国人の間で有名なこの言葉は、日中戦争を描く「抗日神劇」のセリフとしてしばしば登場する。旧満州における日本語教育も「日本侵略者の罪」であると、中国政府は愛国教育の中で中国の子供たちに教えてきた。 皮肉にもこれと全く同じことが中国国内で起きた。内モンゴル自治区の学校で始まった、標準語教育を強化しモンゴル語教育を減らす政策への抗議運動に対し、中国政府は「民族分裂」という罪をかぶせてモンゴル人住民を拘束。民族弾圧や人
TikTok's Dilemma / (c)2020 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN <創業者が本土の保守派から「売国奴」呼ばわりされるTikTok。国内からは「両面性」を非難され、アメリカからの信頼も得られないという始末> トランプ米大統領は8月6日、中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)や華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)に続き、大人気のTikTok(ティックトック)やWeChatの運営会社との取引を禁止する大統領令を出した。その前日にはマイク・ポンペオ国務長官が、アメリカの通信ネットワークから中国の影響力を排除する「クリーンネットワーク」という構想を発表している。 中国の企業は全て共産党のスパイ? それは考え過ぎだろう。WeChat を運営する騰訊(テンセント)の創業者・馬化騰(マー・ホアトン)は財界人として最近、名誉的に地
China's "Positive Energy" / (c)2020 REBEL PEPPER/WANG LIMING FOR NEWSWEEK JAPAN <ほぼ同時期に発生したにもかかわらず、中国では自国の洪水よりも九州の豪雨被害を心配する声のほうが多かった。その原因は中国の災害報道に> 先日、中国のネットでこんなジョークが流行した。 「日本のNHKは九州の豪雨被害をずっと報じていたけど、わがCCTVも九州の豪雨被害をずっと報じていたよ!」 九州の豪雨被害は中国中央電視台(CCTV)で確かに大きく報じられた。もちろん、ほぼ同時期に発生した中国南部の洪水被害も報じられたが、九州豪雨を心配する中国人ネットユーザーのほうが多かった。 なぜか。中国人は自分たちには無関心なのか。そうではない。原因は中国の災害報道にある。 日本メディアは災害を報道するとき、被災状況の深刻さや被災者の大変さを詳し
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