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実際に「おじさん」ばかりだが…?8月21日、自由民主党が9月12日~27日に実施する総裁選挙に向けて、歴代総裁が登場する総裁選挙のポスターとウェブ動画を公開した。同日にTBS系の報道番組「news23」で、タレントのトラウデン直美氏が「おじさんの詰め合わせって感じがする」とポスターの印象を述べたところ、ネットを中心に賛否両論が起きている。 実際にポスターにいるのは「おじさん」や「おじいさん」と言っても良さそうな高齢男性ばかりだ。そして、そうした人々だけが自民党総裁を務めてきたことを端的に示すこのポスターは、日本の政治の男性中心主義とジェンダー不平等を反映している。タレントの「おじさんの詰め合わせ」発言を「男性差別」だと批判するなら、そもそも中高年男性だけが自民党の総裁や日本の首相という権力の座に就き続けてきた状況を下支えする、圧倒的な女性差別(加えてLGBTQをはじめとする様々なマイノリテ
「家族」を描くドラマとしてまさか、自分が朝ドラを毎日観見るようになるとは思わなかった。でも面白いから見てしまう、NHKプラスで。みなさんも、ですよね。 みなさんもご存じのとおり、2024年4月から朝の連続テレビ小説として放映されている『虎に翼』は、日本では最初の女性弁護士のひとりをモデルにした猪爪(佐田)寅子(ともこ)の物語である。 このドラマをフェミニズムに関係ない、という人はいないと思う。法律、憲法、人権といった多様な視点から語ることができるから、私よりよほどうまく語れる人はいくらでもいると思う。ただ、私はこの物語がもっとも中心的に描こうとしているものとして「法」のほかに「家族」があるのではないかと思う。だがその前に、少し本ドラマの根底にある姿勢のようなものについて書いてみたい。
表現の現場調査団が発表表現分野におけるハラスメントの問題がたびたび表面化していることを受け、2020年11月に設立された「表現の現場調査団」。6月24日に記者会見を開き、「ハラスメント量的調査白書2024」を発表した。 これまで調査や啓蒙活動を行い「表現の現場ハラスメント白書 2021」、「ジェンダーバランス白書2022」を公開してきた同団体だが、今回はハラスメントに関する量的調査の結果報告となる。 本調査は、「表現の現場」で活動した経験のある人を対象にハラスメントの実態や、キャリアにおけるジェンダーギャップを明らかにすることを目的としたもの。対象は「美術」、「演劇・パフォーマンス・ダンス」「映像・動画・映画」「デザイン」「音楽」「文芸・ジャーナリズム」「写真」「アニメーション」「ゲーム」「マンガ・イラスト」「建築」「服飾」「お笑い」「工芸・伝統芸能・伝統文化」の
日本美術の近現代史の歪みが生んだ、村上隆の「嫌われる理由」村上:今日はありがとうございます。山田さんのYouTube番組は、ずっと拝見していました。 山田:「村上隆 もののけ 京都」は、お世辞抜きで期待以上に良かったですよ。《お花の親子》(2020)が東山を借景にした日本庭園の池にじつによくフィットしていましたし、《風神図》《雷神図》(ともに2023〜24)にしても、《洛中洛外図 岩佐又兵衛 rip》(2023〜24)にしても、力作ですよ。 京都で開催する必然性のある展覧会になっているところがすばらしいと思いました。 村上:今日は山田さんに、クリティカルに忌憚(きたん)のない解説をいただけるという期待をしています。じつは、2020年オリンピックの東京開催が決定した2013年9月7日(日本時間8日)の、その5分後に、「村上隆だけにはキャラクターを作らせたくない」という言葉がTwitter(現
『虎に翼』に女性画家の絵が登場朝ドラ『虎に翼』が大人気だ。基本的には法曹界を舞台にしながら、 “職業婦人”として、また主婦として忙しく働く女性たちにスポットを当てた本作は、現代の視聴者に気づきや驚き、共感などを持って受け止められている。 ドラマが進展するなか、物語はすでに戦後に入った。主人公・寅子と親しかった花岡悟判事が亡くなり、その未亡人として再登場した奈津子がじつは洋画家で個展を開催したことが判明(52話)。そして55話では、それまでのエピソードを回収するかたちで奈津子が描いた絵画が印象的に登場し、視聴者の涙を誘った。 様々な時代考証がなされ、歴史的な事実に基づき制作されている本作だが、当時における女性の画家の有り様や奈津子の絵画の描写には、どれほどリアリティがあるのか。戦前から戦後にかけての女性画家をジェンダーの観点から研究する美術史家の吉良智子さんに話を聞いた。
首里城から名護市庁舎、貴重な伝統的木造民家まで、沖縄を知るうえで重要な10の琉球・沖縄建築を建築家が解説する。 年間約1000万もの人が訪れる国内屈指の観光地の沖縄。透き通った青い海と雄大な自然の景観、琉球王国時代の旧跡や第二次世界大戦の戦跡など訪れたい場所は数多いが、優れた建築にも注目したい。独自の長い歴史を持ち、亜熱帯に属する沖縄は、日本の文化と風土の多様性を改めて教えてくれる名建築や歴史的遺産の宝庫だからだ。 本稿では那覇在住の建築家・福村俊治に、ぜひ訪れたい10の琉球・沖縄建築を挙げて解説してもらった。福村は1953年滋賀県生まれ。沖縄の自然と歴史に魅せられ約30年前に東京から移り住み、沖縄戦の犠牲者を慰霊し資料を展示する沖縄県平和祈念資料館(糸満市)の設計で知られる。公共建築や土地に根ざす住宅を手がけ、旧日本軍が首里城の地下に造った司令部濠など歴史的建造物の保存活動にも携わってい
フェミニズム・スペクタクルとしての「マッドマックス」『マッドマックス 怒りのデスロード』(以下、『怒りのデスロード』)は女性たちが無言で助け合う映画だった。女性たちを取り囲むのは家父長制の象徴のような支配者イモータン・ジョー、そして不毛な大地だ。 そこから逃げ出し希望を叶えるため、巨大な戦闘車両"ウォーリグ"を操るフュリオサ、ジョーの奴隷である女性たち、彼女たちを世話していた老女、大地で生きる集団"鉄馬の女"、たくさんの女たちが命懸けでともに助け合い、戦う。 スクリーンで見たことがあまりなかったそんなフェミニズム・スペクタクルに、私は心を揺さぶられた。 5月31日から公開となった『マッドマックス:フュリオサ』(以下、『フュリオサ』)は『怒りのデスロード』の続編であり、前作の主人公のひとりフュリオサの過去を描く映画だ。 しかし女性を主人公に据えたはずのこの映画には、女性同士が助け合うような描
アニャ・テイラー=ジョイ演じる若き日のフュリオサや、クリス・ヘムズワースによる敵役のディメンタスなど俳優陣の熱演、前作からさらにパワーアップした強烈かつアイデア満載のアクションシーン、そして崩壊した後の過酷な世界の描写など、本作の見どころは枚挙にいとまがない。そして何より、あのフュリオサが主人公として戻ってくるということで、前作で叩きつけられた新しい女性表象やそこに見られたフェミニズム的メッセージが、本作でどうアップデートされるのか、期待する人も多いのではないだろうか。私はまさにそのひとりだ。 ひと足早く試写で見る機会を得、手に汗握りながら見ていたところ、なんと見覚えのある絵画が登場して意表をつかれた。その絵は、19世紀後半から20世紀初頭に活躍したイギリスの画家、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス(1849〜1917)の《ヒュラスとニンフたち》(1896)だ。
1960年代の日本において、「イラストレーション」「イラストレーター」という言葉を広め、時代を牽引してきた宇野亞喜良(1934〜)。その初期から最新作までの全仕事を網羅する、過去最大規模の展覧会「宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO」が、東京オペラシティ アートギャラリーにて開催中だ。会期は4月11日〜6月16日。 本展を機に、宇野のオフィスにてインタビューをする機会を得た。横尾忠則や和田誠らとともに「イラストレーション」の時代を作った1960年代から現在までの仕事の歩み、そして社会との向き合い方など、話題は多方向に及んだ。【Tokyo Art Beat】 *レポートはこちら
コレクション活かし研究機能強化──大原芸術研究所が4月に誕生しました。公益財団名は「大原美術館」から「大原芸術財団」に変わり、別法人だった倉敷考古館と合併しました。大原美術館は1930年に開館した日本初の西洋美術中心の私立美術館、1950年に開館した倉敷考古館は遺跡が多い吉備地方の発掘調査も行う博物館です。大きな組織改編となりますが、芸術研究所はどのような役割を担うのでしょうか? 大原芸術研究所が財団の中心となり、大原美術館と倉敷考古館を運営します。先日の会見で代表理事の大原あかねさんが言われましたが、異分野の2館がタッグを組むことで展示活動や社会との連携、学術交流の幅を広げることができます。これまで以上にミュージアム活動を活発にして、いっそう地元に貢献できればと思います。両館併せて7人いる学芸員は研究員として活動してもらい、今後体制を増強していく方針です。 研究所設立のもうひとつの大きな
イスラエル人歴史家の言葉から1954年にイスラエルで生まれたユダヤ系イスラエル人歴史家のイラン・パぺは、2006年に『パレスチナの民族浄化——イスラエル建国の暴力』を著した。2017年に邦訳が出た同書は、パレスチナ人がアラビア語で「ナクバ(大災厄)」と呼ぶ1948年前後の出来事を詳細に描く。その年にイスラエルが建国されたとき、そこに先住していたパレスチナ住民は計画的に追放され、さらには組織的な虐殺さえ被った。「シオニスト」はパレスチナにユダヤ人の民族的拠点を創設することを悲願とする人々を指すが(「シオニズム」は、そのイデオロギー)、戦後、こうした人々はそこにあった元々のパレスチナ社会を不可逆的に破壊した。パぺの本は、このナクバを一貫して「民族浄化(エスニック・クレンジング)」として解析している。 そこでパぺは読者に、こう問いかける。 「こういうことを想像してほしい。あなたのよく知る国で、少
今回標的にされたバルフォア卿(アーサー・バルフォア、イギリス元首相)は、 パレスチナで後に民族浄化を引き起こす原因のひとつとなった1917年のバルフォア宣言に外相としてサインをした人物である。当時イギリスの領土でもない、かつ当時先住のアラブ人・キリスト教徒などが人口の90%を占めていたパレスチナに、シオニストの「郷土」を建てることへの支持を約束するその宣言は、中東におけるイギリスの戦争責任を問うものとして、現在でも国際社会で物議を醸している(*4)。こうした入植行為はセトラー・コロニアリズムと呼ばれ、植民者が特定の土地を永久的に占領し、すでに存在する社会を植民者のもので置き換える行為のことを指す。 今回絵画への攻撃を通して抗議を行ったパレスチナ・アクションは、こうしたイギリスの戦争責任を追及するとともに、イスラエル最大の武器会社であるエルビット社と、エルビット社に出資をするイギリスの共犯関
ヴェネチア・ビエンナーレではパレスチナは過去にナショナル・パビリオンを設置したことがないが、2022年にはパレスチナミュージアムUSが公式の関連イベントを主催した。サンパウロ美術館の芸術監督アドリアーノ・ペドロサによってキュレーションされる2024年のビエンナーレのメイン展示では、331人の中に、ダナ・アワルタニとサミア・ハラビを含むふたりのパレスチナ人アーティストが参加する。 また、過去には2003年のビエンナーレのキューレーターを務めたフランチェスコ・ボナミはその年のフェスティバルにパレスチナ・パビリオンの展示を提案。しかし、反ユダヤ主義だと批判を受けて、パレスチナ・パビリオンの展示は行われなかった。ただし、ボナミはメインの展示にアーティストカップルであるパレスチナ人のサンディ・ヒラールとイタリア人のアレッサンドロ・ペッティによる作品を含めた。
エルヴィス・プレスリーとプリシラ・プレスリーとの出会いから結婚・離婚までを、プリシラが1985年に出版した自伝をもとにソフィア・コッポラが映画化した『プリシラ』。シェイクスピア、舞台芸術史、フェミニスト批評を専門とする批評家の北村紗衣がレビューする。4月12日、TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
その「声」は誰のためにあるのか?このエッセイは、初めて自分から「掲載してほしい」と申し出たものだ。掲載を許可してくれた、編集部の福島夏子さんに謝辞を申し上げる。また、このエッセイを書くにあたり重要な情報を提供してくれた多くの友人——とくに、滝朝子さん——に感謝の意を伝える。 2023年3月11日、「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?——国立西洋美術館65年目の自問 | 現代美術家たちへの問いかけ」の内覧会が開催された。参加作家の飯山由貴と遠藤麻衣、美術家の百瀬文らが抗議のアクションを実施した。今回の報に接し、ぼく自身、恥ずかしさを覚える。この問題に対し、自分なりに知ろうとしてこなかったことについて。現代アートの領域で、「脱植民地化」を語ってきた研究者であるにもかかわらず。いまガザで起きていることに対して声をあげることは、まぎれもなく脱植民地化の問題だ(その関連性は、次
ヴェネチア・ビエンナーレやドクメンタにも参加。クスノキを素材に大理石の目をはめ込んだ、内省的で静謐な半身像で知られ、2005年からは半人半獣・両性具有の「スフィンクス・シリーズ」を手がけた
大きな特徴として、これまでの「現代アート界」の主流を占めてきた”白人・欧米・男性”という属性を持つアーティストはほぼ選ばれておらず、アジアやアフリカ、南米出身のアーティストが多数を占め、それぞれの地政学的状況やアイデンティティと深く関係する政治的な作品が数多く並んでいる。それらは既存のシステムや体制、支配に対し批判的な目を向け、時に反逆し、のらりくらりとすり抜け、オルタナティヴな自治や個人の生き方を探るような作品たちだ。現代アートに通じた人でも、本展で初めて見る作家はかなり多いのではないだろうか。 また、約3年にわたる大規模改修工事を経てリニューアルオープンした横浜美術館に足を運ぶことができるのも、本展の大きな楽しみだ。 丹下健三によるポストモダン建築である横浜美術館だが、そこに使われている御影石から抽出されたサーモンピンク系統の看板が新たに美術館周辺に設置され、「横浜トリエンナーレ202
ホーム / ニュース・記事 / 美術館はこれまでも抗議活動の場であった。国立西洋美術館で起きた抗議を機に、海外の事例や理論的な積み重ねを解説(文:五野井郁夫)
ホーム / ニュース・記事 / 国立西洋美術館で飯山由貴らアーティストがパレスチナ侵攻に抗議、美術館パートナーの川崎重工に訴え。遠藤麻衣と百瀬文の抗議パフォーマンスも
東日本大震災がターニングポイント──現在開催中の「奈良美智 The Beginning Place ここから」展は、奈良さんの創作の原点を様々な角度から浮かび上がらせる展覧会です。奈良さんは、この展覧会は同じ青森出身の高橋さんが担当だったからこそできたものだとおっしゃっています。故郷が大きな鍵となるこの企画を、高橋さんはどのように発想されたのでしょうか。 青森県立美術館では、2012年から翌年にかけて奈良さんの個展「君や 僕に ちょっと似ている」が巡回開催されました。当時、10年後にまた個展を行うとしたら、ほかからの巡回企画ではなく、自分たちの企画でやれたらいいなと夢想していました。 奈良さんは、2000年のドイツからの帰国後、出身地の弘前市を会場にした展覧会を何度か行っていますが、自作への故郷の地の影響のようなことはご自身では積極的には口にしてこなかったし、周囲の人々によるそのような語り
強い父が不在のエディプス・コンプレックスフロイトの精神分析的な主体化の構図が現在では変わってしまっていることを寓意的に描く神経症コメディであり、おそらくはユダヤ民族の歴史と深く関わる寓話であろう。 フロイトの図式では、男の子は母を独占する父と対決し、象徴的に殺すことで一人前の大人として主体化する、とされてきた。その過程で、男の子は、父からの近親相姦の禁止を内面化し、法や倫理の命令の源泉として個人の中に「超自我」が形成されるとした。そこには、母親との近親相姦の欲望と、それへの懲罰としての去勢という脅迫が関わっている。これらが複合した葛藤を「エディプス・コンプレックス」と呼ぶが、本作は、まさにそのようなコンプレックスを映像化したような作品である。ただし、もはや強い父はおらず、強大な母がおり、息子も反抗や対立もしない(現代人も、そうなってきているように)。
相次ぐ「大吉原展」への批判ここ数日、「大吉原展 江戸アメイヂング」(以下、本展)がSNSを賑わせている。本展は、かつて江戸/東京にあった公娼街・吉原遊廓を取り上げたもので、今年3月から東京・上野の東京藝術大学大学美術館で開催される美術展である。本展公式サイトのステートメントには「『江戸吉原』の約250年にわたる文化・芸術を美術を通して検証(改行)仕掛けられた虚構の世界を約250件の作品で紹介する」とある。 マンガ家・瀧波ユカリ氏のX(旧Twitter)では、前述のステートメントに続く序文を指して、「ここで女性たちが何をさせられていたかがこれでもかとぼやかされた序文と概要。遊園地みたい。」と非難するコメントをポスト。ここを起点にSNS上での意見対立を生んでいたようだ。 筆者の私は遊廓を専門に扱う書店・カストリ書房を経営しているが、同店は吉原遊廓が戦後に何度か看板を掛け替えて現在は吉原ソープ街
『へレディタリー/継承』(2018)、『ミッドサマー』(2019)で、ホラー映画のジャンルを刷新する表現を見せ、多くの映画ファンの心を鷲掴みにしたアリ・アスター監督。その最新作『ボーはおそれている』が2月16日から全国公開される。 主人公ボーを演じるのは名優ホアキン・フェニックス。 日常のささいなことでも不安になってしまう男ボーは、母が突然怪死したことを知る。母の家へ駆けつけようとするが、奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、その道行きは夢か現実かもわからない神話的なファンタジーの様相を帯びていく。ブラックユーモアに彩られた鮮やかな場面展開、続々と登場する怪しすぎる人物たち、やがて明らかになる母親の威圧的な存在感──。母と息子における支配と服従、愛と憎しみ、帰郷と脱走、といった複雑怪奇な(そして普遍的な?)関係をめぐる壮大な“オデッセイスリラー”だ。
アーティスト・奈良美智にとっての故郷、そして「はじまりの場所」がテーマの個展「奈良美智: The Beginning Place ここから」(10月14日〜2024年2月25日)が行われる青森県立美術館でインタビューを行った。後編では、展覧会のハイライトとなる部屋と平和への思い、旅やコミュニティ、自由など、作家を貫く思想について話が及んだ。(聞き手・文:宮村周子)
──青森県立美術館は、大きな《あおもり犬》をはじめ、奈良さんの初期からの作品を170点以上も、世界一収蔵している縁の深い美術館ですね。 ここは建設される前から関わり合っていて、青木(淳)さんがどんなコンセプトで設計したかもわかるし、スペースも全部知っているからやりやすかったよ。 それに、この展覧会が特別なものになったのは、企画を担当した高橋しげみさんのおかげ! 彼女は美術館で唯一の青森県出身の学芸員で、歳下だけど同じ弘前市出身だから、俺の奥深くにある故郷というものをはっきりと見ることができるの。青森出身の写真家・小島一郎をはじめ、土地に根ざした作家の研究をずっとしてきた人で、俺のことは個の部分でも知ろうとしていただろうから、ほかの人ができないような発想が自信をもってできる。もし担当者が県外から来た人だったら、もっとサブカル寄りになったりとか、まったく違う切り口になっていたと思う。そういう、
青木淳(建築家、京都市京セラ美術館館長)(A)偶然は用意のあるところに 西澤徹夫(TOTOギャラリー・間) (B)さいたま国際芸術祭2023 メイン会場(旧市民会館おおみや) (C)空間に、自然光だけで、日高理恵子の絵画を置く(多摩美術大学八王子キャンパス・アートテークギャラリー) 展覧会とは作品を見る機会であり、美術館等の展示室はそこで作品を見るのに最良の空間としてつくられる。ほとんどの展覧会はその枠組のなかにあるし、もちろん、そういうなかですばらしい体験を与えてくれた展覧会は今年も数多くあった。とはいえ、この枠組にアプリオリに乗るのではなく、この枠組の存在自体に拘った、あるいは拘らざるをえなかったものもあり、そこから大きな刺激を受けた展覧会を3つ挙げたいと思う。 「偶然は用意のあるところに 西澤徹夫」は、建築展という、作品である実際の建築を展示できるわけではない、展覧会としてそもそも矛
11日には空山自身がInstagramアカウントで本件に言及。 ビヨンセに対し、「あなたは私に“正式に”お願いすべきだった。そうすればザ・ウィークエンドのようにもっとマシな作品を提供したのに」とコメントするとともに、ビヨンセのライヴ写真と自身の作品画像を投稿した(ザ・ウィークエンドはカナダのシンガーソングライターで、空山が「Echoes of Silence」のMVを手がけるなど協働の経験がある)。 この空山の投稿について、15日に所属ギャラリーであるNANZUKAの代表 南塚真史が声明を発表した。内容は以下の通り。 空山基のInstagramにおけるBeyonceの衣装デザインに関するポストについて、 空山の主張は、シンプルです。今回のビヨンセのツアーで使用された一部の衣装デザイン、および関連するツアー商品は、「自分が手がけたものではない」ということです。その事を公表する理由は2つありま
初期から晩年まで、約115点でその画業の全貌を辿る本展。 10月に開催された内覧会を訪れたが、まず、ロスコ作品がこれほどまで一堂に会していることにひたすら圧倒された。フランク・ゲーリーにより設計されたフォンダシオン ルイ・ヴィトンの入り組んだ建築には11の展示スペースがあるが、小さなオープンスペース2室を除いてすべてにロスコの作品が展示されている。ロスコ、ロスコ、ロスコ……。精神的・感覚的な変化を味わいながら大作・傑作の大波に飲み込まれるようにして館内を歩き回り、もう終わりかなと思うとまだ展示室がある。絵画好きにとって、途方もなく贅沢な展覧会だ。
アート界の影響力ランキング「Power 100」毎年恒例のアート界でもっとも影響力のある100組をランキングで発表する「Power 100」の2023年版が発表された。イギリスの現代美術雑誌『ArtReview』が2002年から毎年発表しており、全世界のアート界の識者から匿名で寄せられた意見をもとに、この12ヶ月間に現代アートの発展に貢献した100組をリストアップする。 1位はナン・ゴールディン2023年の1位には、アメリカのアーティスト、ナン・ゴールディンが選ばれた。 ここ数年の1位を振り返ると、2022年は「ドクメンタ15」で芸術監督を務めたインドネシアのアート・コレクティヴ「ルアンルパ」、2021年は「ERC-721」(NFT[非代替トークン]の取り扱いをするための規格)、2020年は「Black Lives Matter」、2019年はグレン・D・ロウリー(ニューヨーク近代美術館館
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