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1961年福岡県生まれ。86年岡山大学文学部卒業。出版社勤務、週刊新潮編集部次長などを経て、2003年より現職。著書に『墜落 「官邸一強支配」はなぜ崩れたのか』、『泥のカネ 裏金王・水谷功と権力者の饗宴』、『悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞』(2018年大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞受賞)など。 著書 9月29日、自民党が新たな総裁を選出し、10月4日には国会での首班指名を経て、新しい内閣が発足する。 今回の自民党総裁選は安倍、菅と2つの政権が不祥事やコロナ対策の失敗で国民の支持を失い、相次いで退陣に追い込まれたことを受けたものだ。当然、次の政権にとっては、何が安倍、菅政権が国民の支持を失うことになった原因だったと考えているかを明確にした上で、それをどう改めようと考えているかが最優先の課題とならなければおかしい。 ところが、メディアが連日連夜、時間を割いて総裁選の
世田谷区の保坂展人区長は、新型コロナウイルスの流行が始まった2020年春、PCR検査を通じて感染源を特定することの重要性を痛感すると同時に、現行の体制では保健所が早晩パンク状態に陥ることを予想した上で、民間の検査機関なども活用しながら独自に高齢者施設などを対象とする「社会的検査」の実施に踏み切った。これは高齢者施設や介護施設などを順次定期的に検査する定期検査と、感染者が出た施設は濃厚接触者に限定せず全入居者と全職員を検査する臨時検査の2本だてからなるもので、「いつでも、どこでも、何度でも」を合言葉とする「世田谷モデル」と呼ばれた。 しかし、保坂区長がこの方針を打ち出した当初、感染症の専門家やマスメディアからの激しい批判に晒されたという。専門家たちは口を揃えて「無症状感染者を検査しても意味が無い」といい、メディアは「そんなことをしていたずらに陽性患者数を増やせば、医療崩壊を引き起こして取り返
1962年東京都生まれ。87年東京学芸大学教育学部卒業。同年NHKに入局。ETV2001デスク、番組制作局チーフ・プロデューサーなどを歴任。2005年、ETV特集「戦争をどう裁くか」(2001年放送)の自民党幹部からの圧力による番組改変を内部告発。その後、NHK放送文化研究所主任研究員などを経て2009年退職。以後、東京大学非常勤講師などを歴任し現在に至る。 あれから20年の月日が流れた。いわゆるNHK番組改変問題だ。 これは2001年にNHKが教育テレビ(現Eテレ)で放送を予定していたETV特集「戦争をどう裁くか」の放送内容を事前に知った自民党の安倍晋三、中川昭一両議員がNHKの幹部に対して番組の内容に注文を付け、放送直前になってNHKの幹部が現場に番組内容の改変を命じたために現場は大混乱。番組を企画しNHKから制作を受注していた制作会社は、当初の企画意図とまったく異なる番組になってしま
1964年神奈川県生まれ。89年東洋大学経営学部卒業。89年公安調査庁入庁。2001年より東京、横浜、羽田などの入国管理局で入国審査官として勤務。2019年退職し、入管問題救援センター(現・未来入管フォーラム)を設立し代表に就任。同年、神奈川大学大学院法学研究科修士課程修了。 日本は「難民の地位に関する条約」(通称国連難民条約)のれっきとした批准国だ。条約に基づき、人種や宗教、国籍、政治的な意見のため母国で迫害を受けるおそれがある人が保護を求めてきた場合、これを保護する義務がある。しかし、日本は世界の中でも異常といって差し支えがないほど難民受け入れのハードルが高い。ちなみに「移民」受け入れの是非はそれぞれの国の政策判断だが、「難民」の受け入れは国際条約上の義務だ。もし難民を受け入れたくなければ、条約から脱退するしかない。 ところが日本には、どうやら世界とは異なる独自の難民の定義があるようだ
日本の権力の中枢には、何があってもオリンピックだけはどうしてもやりたい人がいるようだ。 東京五輪の開催を2ヶ月半後に控えた5月7日、菅首相は緊急事態宣言の5月末までの延長を発表し、これまでの東京、大阪などに愛知、福岡を加えた6都府県がその対象となった。 元々今回の緊急事態宣言は5月11日までの17日間と、過去2回と比べて極めて短期間で設定されていた。緊急事態宣言については、政府の基本的対処方針分科会で有識者たちが最低でも3週間は必要との意見が出されていたが、それをあえて11日までとした背景には、17日にIOCのバッハ会長の来日が予定されており、それまでに緊急事態だけは解除しておきたいという政権の意向が強く働いた結果だと考えられている。分科会のメンバーの中にはこのことに不満を表明する人もいた。 しかし、宣言発出後も感染者数は一向に減らず、しかも変異ウイルスへの感染者の増加に呼応するかのように
1987年東京都生まれ。2009年米ウェズリアン大学政治学部卒業。12年独ベルリン自由大学哲学科修士課程修了。15年独フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。ベルリン・ブランデンブルク科学アカデミー客員研究員、カリフォルニア大学サンタバーバラ校客員研究員などを経て、17年より現職。専門は経済思想・社会思想。著書に『人新世の「資本論」』など。 著書 月の5回目の金曜日に特別企画をお送りする5金スペシャル。 今年2回目の5金となる今回は、25万部の大ベストセラーとなっている『人新世の「資本論」』の著者で新進気鋭の経済・社会思想学者として今論壇の話題をさらっている大阪市立大学准教授の斎藤幸平氏をゲストに招き、資本主義の限界や成長が豊かさをもたらすという神話への疑問点などについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司との特別対談を無料でお送りする。 斎藤氏はマルクスが「資本論」の中
変異ウイルスの世界的な感染拡大が続くなか、遅ればせながら日本でもようやくワクチン接種が始まった。 世界の感染状況は、変異ウイルス出現の度合いやワクチン接種の進捗状況によって、日々変化している。現時点ではワクチン接種が進んでいるイスラエルやイギリスで感染が抑えられている一方で、インドやモンゴルなどで感染者が急増している。 WHOのまとめによると、ここまで中国のシノバク、英国のアストラゼネカ/オックスフォード大、アメリカのモデルナ、そしてファイザー/ビオンテックの4種類のワクチンが承認され実際に接種されている。それに加えて臨床試験の最終段階に入っているワクチンが80種類あまりあり、その中にはロシアやインド、キューバなどで開発されているものも含まれている。自国のワクチンを積極的に他国に提供するワクチン外交も、今後ますます盛んになるだろうと、国際保健の分野で市民社会の側から活動を続けてきたアフリカ
1940年秋田県生まれ。63年東京教育大学(現筑波大学)理学部卒業。68年名古屋大学理学部分子生物学研究施設大学院博士課程修了(分子生物学)。69年同研究施設助手、名古屋大学理学部大学院生命理学科助手を経て、2004年定年退職。1990年よりNPO法人チェルノブイリ救援・中部理事。遺伝子組換え情報室代表を兼務。著書に『チェルノブイリと福島』、共著に『チェルノブイリの菜の花畑からー放射能汚染下の地域復興』。 政府が福島第一原発に蓄積され続けている汚染水の海洋放出を認める決定をしたことを受けて、分子生物学者で放射性物質の人体への影響などに詳しい分子生物学者の河田昌東氏に、トリチウムの人体への影響について聞いた。 政府は今回海洋に放出されるトリチウム汚染水はICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に則った日本の放射性物質の海洋放出の安全基準を大きく下回る水準まで希釈されることが前提となるため、人体
1967年福井県生まれ。92年一橋大学社会学部卒業。94年同大学大学院経済学研究科修士課程修了。97年同博士課程単位取得退学。経済学博士。高崎経済大学経済学部助教授、立命館大学国際関係学部教授などを経て、17年より現職。11年経産省総合資源エネルギー調査会基本問題委員会委員。著書に『原発はやっぱり割に合わない 国民から見た本当のコスト』、『原発のコスト エネルギー転換への視点』など。 著書 三重水素とも呼ばれるトリチウム水の分子構造は水とほとんど変わらないため、人体にそれほど重大な影響は及ぼさないと政府はいう。しかし、分子生物学者はむしろそれは逆だという。ほとんど水と変わらないがゆえに、人体はトリチウムを水と区別できず容易にこれを体内の組織に取り込んでしまう。そのためトリチウムは微量でも体内に長期間とどまり、その間人体を内部被ばくにさらし続ける危険性があるのだという。 福島第一原子力発電所
世界的に新型コロナウイルスのワクチン接種が始まっている。このワクチンが新型コロナウイルスに対して変異種も含めて一定の予防効果があり、大きな副反応を引き起こさないことが確認され、保存や輸送などのロジスティックの問題さえ解決できれば、人類は恐らく21世紀最大のピンチといっても過言ではない新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を克服し、コロナ以前の日常を取り戻せるかもしれないとあって、ワクチンに対する期待はことのほか大きい。 しかし、その一方で、通常のワクチンであれば安全が確認され承認を得るまでに優に10年の年月を要するのに対し、今回の新型コロナワクチンは非常時とはいえ1年にも満たない短期間で承認を得たこともあり、ワクチンに対してそこはかとない不安を抱いている人が少なからずいるのも事実だろう。特にピーク時には毎月万人単位で死者が続出していた欧米諸国と比べ、感染者数も死亡者数もはるかに少ない日
1967年愛知県生まれ。90年東京大学法学部卒業。東京大学助手、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス客員研究員、東北大学大学院法学研究科教授等を経て、2013年より現職。博士(学術)。専門は行政学、日本政治史。著書に『崩れる政治を立て直す』、『安倍一強の謎』、 『内閣政治と大蔵省支配』など。 著書 かつて日本は、政治は二流でも中央官僚が飛び抜けて優秀だから持っていると言われた時代が長らくあった。実際、霞ヶ関の高級官僚の枢要なポストは大半を東大法学部卒のスーパーエリート官僚が占めてきたし、それは今も大きくは変わっていない。 しかし、昨今の国会などを見るにつけ、その超エリート官僚たちが、耳を塞ぎたくなるような恥ずべき答弁を真顔で繰り返している。その厚顔無恥ぶりからは、焼け野原から世界有数の経済大国に至る戦後の日本を率いてきたエリート官僚の矜持や面影といったものは微塵も感じられない。 それが強
1959年島根県生まれ。82年京都大学文学部卒業。88年京都大学大学院文学研究科単位取得退学。99年博士(文学)。慶應義塾大学商学部助教授、准教授を経て、2011年より現職。著書に『健康リスク・コミュニケーションの手引き』、共著に『危機管理マニュアル どう伝え合う クライシスコミュニケーション』など。 著書 新型コロナウイルス対策では、政府や地方自治体の情報提供がうまくいっているとはとても言えない状況にある。ビデオニュースでは去年3月の時点で、リスク・コミュニケーションの重要性を指摘する番組を放送したが、それから一年たった今も、一向に改善されているとは言い難い。 本来は理念や大きな戦略を語ることで国民を安心させたり、リードしていかなければならない政治的なリーダーたちは、重要な時に限って場違いな布マスクを配布してその装着方法を実演してみせたり、ウケ狙いのイタいダジャレで場を凍らせたかと思うと
1951年埼玉県生まれ。76年東京外語大学英米語科卒業。同年共同通信社に入社。ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを経て2015年退職。同年、青山学院大学地球社会共生学部教授、20年より関西大学客員教授。著書に『追跡アメリカの思想家たち』、『トランプ現象とアメリカ保守思想』、訳書に『政治の起源』など。 著書 茶色い毛糸のミトン手袋が全てを物語っていた。 1月20日、トランプ大統領がメラニア夫人と共に大統領専用ヘリコプター「マリーン・ワン」に乗り込みホワイトハウスを去った。ヘリが飛び立った瞬間、世界のメディアが集結するホワイトハウスのメディアルームでは歓声があがったという。 確かに大変な4年間だった。マル激では「トランプが去ってもトランプ現象は終わらない」ことは繰り返し解説してきたが、それでも自身の価値観が「真空」であるがゆえに、政治的に有利になるネタは理念を超越してどんな荒唐
1974年東京都生まれ。2000年東京大学医学部卒業。医学部在学中の1998年司法試験合格。04年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。東大病院、日本赤十字社医療センター循環器科勤務医、東北大学大学院法学研究科准教授、東京大学大学院法学政治学研究科准教授などを経て、17年より現職。現在、東京都健康長寿医療センター勤務医(循環器内科)を兼務。専門は民法・医事法。著書に『医事法講義』、共著に『生命科学と法の近未来』など。 著書 ついこの間までGOTOキャンペーンの中止さえも躊躇していた菅政権は、ここに来て、首都圏に続き関西圏、福岡などでも相次いで緊急事態宣言を発出するなど、ようやく本気でコロナの抑え込みに本腰を入れ始めたように見える。しかし、やや遅きに失した感は否めず、感染拡大は一向に衰えを見せていない。 菅首相は関西地方や福岡の緊急事態宣言発出を発表した1月13日の記者会見で、コロナ特
これが2021年最初のマル激となるが、残念ながら2020年はコロナ禍に明け暮れる1年となってしまった。そして、新たな年が明けた今も、そのような状態はまだ当分は続きそうだ。 確かにコロナの感染拡大を抑え込まない限り、オリンピックは言うに及ばず、自由な経済活動すら完全に再開することは難しい。デジタルだのITだのとは言ってみても、結局のところ、21世紀の2合目を過ぎた今になっても、人間にとっての経済活動は人が動くことによって初めて成り立つものであることを、今回のコロナがいみじくも証明してしまった。しかし、特に無症状感染という類い希な性質を持つこのウイルスは、人が動けば必ず感染が広がってしまうという特徴を持つため、それを完全に抑え込むことは容易ではない。 東京五輪について日本政府は今のところ、「人類がコロナウイルスに打ち勝った証」(安倍前首相)として、何が何でも21年7月開催の方針を、少なくとも表
1974年東京都生まれ。2000年東京大学医学部卒業。医学部在学中の1998年司法試験合格。04年東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了。東大病院、日本赤十字社医療センター循環器科勤務医、東北大学大学院法学研究科准教授、東京大学大学院法学政治学研究科准教授などを経て、17年より現職。現在、東京都健康長寿医療センター勤務医(循環器内科)も兼務。専門は民法・医事法。著書に『医事法講義』、共著に『生命科学と法の近未来』など。 著書 欧米諸国で新型コロナウイルス感染症が猛威を奮うのをよそ目に、日本では中国や韓国などとともに過去半年の間、世界中が羨み不思議がるほどコロナ感染症の流行が抑えられていた。特に日本がこれといった対策を打っているわけではないにもかかわらず、感染者数はアメリカの100分の1、人口あたりで見てもアメリカやフランスの30分の1から50分の1程度しかコロナの感染は広がらなかった。
政治絡みのニュースでは、巷では桜を見る会での安倍事務所の関与が明らかになったことが大きく注目されているようだが、実はその背後についこの間まで菅政権にとって喉元に突き刺さった棘のような存在になっていた学術会議の任命拒否問題での進展がある。 桜を見る会の問題が表面化する直前の11月5日、参議院予算委員会で今回の学術会議の任命拒否問題をめぐる政府側の主張を根本から打ち崩す証拠が、立憲民主党の小西洋之参院議員から提示された。 それは、政府がこれまで学術会議法7条二項が定める学術会議の会員は、会議側からの「推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する」とする条文を、首相は推薦された委員を形式的に追認するだけでなく、場合によってはそれを拒絶することもできると主張する根拠のもっとも根幹の部分が、まったく誤りだったことを明確に証明するものだった。 政府はこれまで、教育公務員特例法の10条に謳われている文部大臣が国
1953年群馬県生まれ。76年東京大学経済学部卒業。81年同大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。博士(経済学)。東京都立大学経済学部助教授、東京大学社会科学研究所助教授などを経て98年より東京大学社会科学研究所教授。2019年定年退任。著書に『企業中心社会を超えて 現代日本を〈ジェンダー〉で読む』、『生活保障のガバナンス ジェンダーとお金の流れで読み解く』など。 著書 安倍政権下の社会保障政策を一言で言い表すとすれば、このタイトルに尽きるだろう。問題は国民の間でそれが必ずしも広く認識されていないことなのではないか。 以前、この番組で、「アベコベノミクス」という名言で安倍政権の経済政策を評した東大名誉教授の大沢真理氏は、安倍政権は給付抑制と負担増が徹底して行われた7年8カ月だったと指摘する。また、その中でも特に低所得層に対する負担増が顕著だった。実質賃金が低下するなかで、労働時間あた
7年8ヶ月の長きに渡り政権を担った安倍内閣の政策と、その下で日本がどう変わったのかを検証する安倍政権の検証シリーズ第二弾。今回は第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏と、慶應義塾大学ビジネススクール准教授の小幡績氏の気鋭のゲストを迎え、前半、後半の二部構成でアベノミクスに代表される安倍政権の経済政策に注目した。 次期首相就任が有力視される菅義偉官房長官は、特に経済政策面ではアベノミクスを継承する意思を明確に示している。しかし、そこでいうアベノミクスとは何を指しているのか、その中身については必ずしも明確ではない。 当初、アベノミクスとは①大胆な金融緩和と②思い切った財政出動と③産業構造改革の「3本の矢」を柱とする経済政策だと説明されてきた。特に重要な鍵が3番目の産業構造改革にあり、それを可能にするためにある程度の後遺症は覚悟の上で①と②を大胆に実行していくという話だった。 ところが、
憲政史上最長の政権となった安倍政権が終わろうとしている。 約5年半続いた小泉内閣の後、自民党は安倍、福田、麻生と1年前後しか持たない不安定な政権が3代続き、2009年には政権政党の座から転落した。しかし、2012年に捲土重来、安倍晋三総裁の下、政権の奪還に成功し、そこから7年と8ヶ月の長きにわたる安定政権を維持してきた。安倍政権前半はアベノミクスを前面に押し出すことで経済的な安定を確保した上で、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使を可能にする安保法制、共謀罪など、歴代政権がたびたび挑戦しては挫折してきた大きな政策課題に積極的に取り組み、足並みの揃わない野党にも助けられ、これをことごとくクリアしてきた。特に上記の3つはいずれもアメリカの意向を強く反映したものだった。 その一方で、政権の後半はこれといった成果もあげられず、次々と噴出するスキャンダルで立ち往生する場面が多かった。政権としては憲法改
スウェーデンのコロナ対策に色々な意味で注目が集まっている。 新型コロナウイルスが猛威を奮う中、欧米諸国が軒並み外出禁止や都市封鎖など強制力を伴う強い行動制限を導入する中、スウェーデンはロックダウンを行わず、コロナへの対応を国民の自主的な判断に委ねることを選択をした。当初、その「英断」が話題になり、ロックダウンされたパリやロンドンがゴーストタウン化する中、ストックホルムのカフェで普段通りに家族との外食や友人との会話を楽しむ市民の姿とともにスウェーデンの独特なコロナ対策が紹介され、世界から羨望の眼差しが注がれた。 ところが4月以降、スウェーデンの死亡者数が急増したため、「スウェーデンのコロナ対策は失敗だったのではないか」との観測が拡がり、打って変わってスウェーデンのコロナ対策に対する報道は批判一色になった。 しかし、スウェーデンはそうした批判も、死亡者の急増もものともせず、ロックダウンを拒否す
1967年奈良県生まれ。91年大阪大学文学部卒業。同年産経新聞社大阪本社入社。香港支局長、中国総局特派員などを経て2009年独立。著書に『新型コロナ、香港、台湾、世界は習近平を許さない』、『コロナ大戦争でついに自滅する習近平』、『ウイグル人に何が起きているのか 民族迫害の起源と現在』など。 著書 中国政府が6月30日に香港を対象とする国家安全維持法を制定したことを受けて、香港では早くも言論を含む多方面で甚大な影響が出始めている。 国家安全維持法は「国家分裂」や「政権転覆」、「テロ活動」、「外国勢力と結託して国家の安全に危害を加える行為」などを罰することを定めた法律で、最高刑として終身刑までが科せられる。問題はこの法律の条文が非常に広く解釈が可能な曖昧な文言になっているため、統治権力側が言論や市民運動などの弾圧にいくらでも恣意的に利用することが可能になっていることだ。 法律施行の初日となった
1963年愛知県生まれ。87年南山大学外国語学部英米科卒業。88年ロイター通信東京支局勤務を経て、95年東京大学大学院人文社会学研究科修士課程修了。97年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(社会情報学)。2002年ドイツ、ハンベルグ大学社会学講座客員研究員、04年東京大学社会情報研究所助教授、09年より現職。著書に『メディア不信 何が問われているのか』、共著に『足をどかしてくれませんか。 メディアは女たちの声を届けているか』など。 著書 「普段研究者として指摘しているメディアの問題を、身を以て体験しました。」 東京大学大学院情報学環教授でメディア学が専門の林香里氏は、自身が3月に新型コロナ感染症に罹患し、右へ倣えの貧弱なメディア取材の現実を自ら経験する貴重な機会を得たという。特にメディア報道については、発症した当初、どれだけ自分の味覚や嗅覚に異常があることを訴えても誰も相手に
北海道生まれ。1982年毎日新聞入社。86年東京新聞(中日新聞)転社。社会部警視庁公安担当、NY支局長などを経て96年に退職し、独立。NY在住25年を経て2018年に帰国。著書に『火の記憶』、訳書に『LGBTヒストリーブック 絶対に諦めなかった人々の100年の闘い』など。 毎年6月19日はアメリカではジューンティーンス(Juneteenth=June Nineteenthがなまってジューンティーンスになった)としてアフリカ系アメリカ人、とりわけアメリカ南部に住む黒人の間で大切な祝日として、バーベキューなどをして祝う習慣がある。テキサス州では州の正式な祝日に指定されているが、それは1865年の6月19日に、その2年前のリンカーン大統領による奴隷解放宣言の後も奴隷を解放していなかったテキサス州に北軍の部隊が進軍し、25万人といわれる奴隷を解放した日だったからだ。特にこの日にバーベキューに興じる
1953年東京都生まれ。77年東京大学医学部卒業。博士(医学)。専門は内科学、分子生物学。東大病院内科、東京都立駒込病院、マサチューセッツ工科大学生物学部研究員などを経て、96年東京大学先端科学技術研究センター教授。2018年より現職。著書に『内部被曝の真実』、共著に『逆システム学―市場と生命のしくみを解き明かす』、『日本病 長期衰退のダイナミクス』など。 2001年2月に産声をあげたマル激トーク・オン・ディマンドも今回で第1000回の放送を無事迎えることができた。会員の皆様に支えられてここまでやってこれたことに、あらためて深く感謝したい。 さて、その記念すべき第1000回放送については当初、会員の皆様をお招きした公開イベントを予定していたが、新型コロナのために大規模なイベントを開催することが困難となったため、記念イベントは近い将来のお楽しみとさせていただき、粛々といつも通りの番組をお送り
新型コロナウイルス感染症に対する緊急事態宣言の発令が続く中、国会では検察幹部の定年延長を可能にする法案の審議が山場を迎えている。 なぜ今この時期にこのような法案を急いで通さなければならないのかについては誰もが首を傾げるところだが、与党は来週にも委員会通過を強行する構えを崩していない。 与党が法案可決を急ぐ理由として、一部で安倍政権の守護神と目される黒川弘務東京高検検事長の定年が迫っているという事情を指摘する向きもあるようだが、仮にこの法案が可決しても施行は2022年4月となっているため、今年8月の黒川氏の定年には直接影響しない。また、この法案が通れば検事総長の定年が現在の65歳から68歳に延長が可能になることから、8月の定年前に黒川氏が検事総長に就任した場合、5年にわたり検事総長の座に君臨できることになり、それが与党にとっては好都合になるとの指摘もあるが、実際は黒川氏は改正法が施行される前
私たちの身体には病原体の侵入や拡散を防ぐためのさまざまな仕組みが存在する。皮膚表面の角質や、気道や腸管内部の粘液、唾液、涙などの「物理的なバリア」には、「化学的バリア」として機能する殺菌性の物質が含まれ、相互的に機能している。そしてそれらの壁を乗り越えて入ってきた外敵に対しては、白血球が殺菌性物質を放出したり食べたりして戦ってくれる。これは「細胞性バリア」という。物理的、化学的、細胞性バリアを「自然免疫機構」と呼ぶ。そして、「自然免疫機構」が破られた時に出てくるのが、2種類の白血球とリンパ球から成る「獲得免疫機構」だ。これは一度出会った病原体を記憶する「免疫記憶」という能力を持っていて、特定の病原体を選択的にやっつけてくれる。ワクチンはこの機能を利用したものだ。 今、世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルスは人類にとっては未知の存在、つまりこれまで出会ったことのない病原体だった。だから
1964年広島県生まれ。90年長崎大学医学部卒業。長崎大学熱帯医学研究所助手、京都大学大学院医科研究科助教授、長崎大学熱帯医学研究所助教授、外務省国際協力局を経て07年より現職。99~00年JICAジンバブエ感染症対策プロジェクト・チーフアドバイザー、03~04年ハイチ・カポジ肉腫・日和見感染症研究所上級研究員。著書に、『感染症と文明 共生への道』、『新型インフルエンザ 世界がふるえる日』など。 著書 新型コロナウイルス感染症は一時は収拾がつかなくなっていた欧米諸国が、落ち着きを取り戻しつつあるのに対し、日本は依然として正確な感染状況が把握できていないこともあり、早くも2週間後に控えた緊急事態宣言の期限の延長が取り沙汰される事態となっている。まだまだ行動制限による新型コロナウイルスの抑え込みが必要な日本ではあるが、同時に、抑え込みに躍起になっている今だからこそ考えておかなければならないこと
新型コロナウイルスが人類にとって、100年に一度あるかないかの最悪の感染症になりつつあることが、次第に明らかになってきている。 ダイヤモンド・プリンセス号の内部の問題点を告発したことで話題を呼んだ神戸大学医学研究所の岩田健太郎教授は、自身が長年国内外で感染症に取り組んできた経験から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は人類にとって20世紀初頭に5億人が感染し、何千万人もの死者を出したスペイン風邪に次ぐ最悪の感染症になってしまったと言う。 しかも、その理由が「恐くないところが恐い」という厄介なものだ。つまり、5割の人が無症状、3割も軽症のため、感染の自覚がないまま社会生活を続けることでウイルスをバラマキ続けてしまう。ウイルス自体はそれほど病原性が強くないので感染者が少ないうちは簡単に抑え込めるが、甘く見ていると無症状者や軽症者が感染を広げ続け、いつの間にか水面下で感染爆発が起きてい
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