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物価が上昇し続ける今、どれだけの人が、本を書店でためらわずに買うだろうか。中古本を購入したり、少し待って図書館で借りたりする人もきっと少なくないはずだ。 しかし、Amazonなどの中間業者を通して古書を購入すると、その書籍の著者には印税が入らない。たとえその本を書いてくれたことに感謝の意を示したくても、古書の購入ではそれが難しいのだ。では、読者、書店、著者のすべてにとって喜ばしい古本買取システムは、どうすればつくれるのだろうか。 そうした問題に立ち向かう組織がある。大手サイトに代わるエシカルなオンライン小売業者として、2020年に設立されたイギリスのBookshop.orgが、今回「Bookloop」という古本オンラインプラットフォームを立ち上げたのだ。 Bookloopの仕組みはこうだ。まず、読者が不要になった本をアップロードし、オンライン査定を受ける。そして査定を通った書籍は、特定の配
市民に一律の金額を定期的に、無条件で支給するベーシックインカム。こうしたベーシックインカムの導入は、特に2010年以降、世界各地で草の根レベルで活性化してきており、これまでもフィンランドやスイスなどで試験導入がされてきた。 そんな中で2024年4月、タイのセター・タビシン首相が、一定の所得制限や貯蓄制限を設けたベーシックインカムプログラムを導入すると発表した。年収が84万バーツ(約347万円)、貯蓄が50万バーツ(約207万円)を超えていないことを条件に、約5,000万人の国民に1万バーツ(約4万2千円)のデジタル通貨を支給する。 タイの人口は約6,600万人であり(※1)、この取り組みの規模の大きさがうかがえる。プログラムへの登録受付は2024年8月から開始し、2024年10月には支給が始まるという。支給されたデジタル通貨は受給者が住んでいる地域内でのみ使用でき、6か月以内に使用しなけれ
11歳の子どもは研究者に、こんな質問を投げかけた。 「もし人類が絶滅したら、1年後の地球はどうなっているの?」 この質問は、研究に基づいたニュースと分析を提供するメディア「The Conversation」の、子どもたちが持つさまざまな質問に専門家が答える教育的な取り組み「Curious Kids」で問われたものだ。 人類滅亡……映画や小説ではよくあるシチュエーションだが、人新世の時代に生きる私たちにとって、それが現実世界に起こることだとは到底考えられない。 しかし、この質問に答えた、アイオワ州立大学の都市デザイン・コミュニティ/地域計画准教授であるカールトン・バスマジアン氏は、人類がいなくなったあとの地球の姿を想像することで、私たちがこれまで地球に与えてきたダメージを明らかにすることができると話す。 まず、人類が姿を消した1年後、地球に戻ってきたときに初めに気づくことは、目に見える変化で
運賃が高すぎて仕事に行けない、給料のほとんどを通勤に使ってしまう──日本でそんな経験をすることは少ないかもしれない。しかし、こうした課題に日々直面してきた人たちがいる。インドの女性たちだ。 2022年時点でのインドの労働参加率は、男性が73.6%であるのに対し女性は24%にとどまり、中東諸国に次いでジェンダーギャップが最も大きい国のひとつとなっている(※1)。さらに、女性が仕事を得たとしてもその所得は非常に少ない。インド全体における女性の平均月給は、正規雇用で1万2,667.5インドルピー(約2万2,800円)、非正規雇用では5,156.5インドルピー(約9,280円)であり、どちらも男性より低額であることが指摘されている(※2)。 こうしたインドにおけるジェンダー格差を是正する希望となっているのが、女性客のバス料金無料化の動きだ。このプログラムは「Shakti(ヒンディー語で強さの意)」
赤道直下に位置するインドネシア。高温多湿の熱帯性気候で、通年27~28度の気温が続く。乾季は湿度があまりなく、さわやかで過ごしやすいが、10月~3月の雨季は湿度も高くなり、ムシムシとしている(※1)。 そんなインドネシアの高温多湿な気候は、ハエが繁殖しやすい条件でもある。どこにでもいる虫に思えるが、ハエが媒介する細菌によって、腸チフス、コレラ、下痢など65種類以上の病気にかかることがあり、その存在を甘くみてはいけない。 ハエが媒介する細菌によって特に影響を受けやすいのは、子どもたちだ。インドネシアの学校の食堂は屋根や窓がないオープンエアであることが多く、ハエが食堂の中に入ってくることが珍しくない。また、注意しないといけないとはわかっていても子どもたちは食事に集中したり、友達と話したり、ちょっとした隙にハエが食べ物の上にとまる。少しの油断で、重大な病気にかかってしまうことがあるのだ。 そんな
※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「Circular Yokohama」からの転載記事です。 IDEAS FOR GOODを運営するハーチ株式会社では、横浜市保土ヶ谷区にあるサテライトオフィス兼サーキュラーエコノミー推進拠点「qlaytion gallery(クレイション・ギャラリー)」において、地域のシェア本棚「めぐる星天文庫」の普及を進めている。 めぐる星天文庫は、誰かが読まなくなった本を次の誰かへバトンタッチするための循環型の本棚だ。本がまちの中を旅をしながら循環することで、地域の人々がもつ知識や物語がぐるぐるとシェアされていくことを目指している。 2023年12月某日、地域における同取り組みを加速させるとともに、社会全体における本の循環の現状を学ぶため、長野県上田市に拠点を置くバリューブックス株式会社(以下、バリューブックス)を、めぐる星天文庫を運営するCircular Yoko
「映画に出てくる『アジア人』って、少し馬鹿にされてる?」 アメリカや、ヨーロッパの国々にいるときに何度か感じていた違和感。東アジア人は勤勉で大人しく、(他の移民と比較して)犯罪率も低い、いわゆる「モデルマイノリティ」とされている。ただのマイノリティではない。規範的で、「比較的成功している」マイノリティなのだ。 日本人をはじめとした東アジア系の人々は、貧困層のマイノリティとは違い、家が比較的裕福で学歴もある人が多いが、背が低く痩せていて、見た目から軽視されやすい。また、何かあったときに「自分で経済を支えられるので、支援の優先度は低い」と判断されるが、彼らはそんな状況にあまり文句も言わない。そんな偏見が、モデルマイノリティの概念には含まれている。 今回この「西洋社会でのアジア人の見られ方、表現され方」について書こうと思ったきっかけは、世界最大級の写真画像代理店ゲッティイメージズ(Getty I
中米ホンジュラスにある小さな町ヨロでは、春から夏にかけて「魚の雨」が降る。今回は、そんな空から降ってきた魚が、地域経済を支えるブランド魚になった取り組みについて紹介しよう。 そもそも、なぜ空から魚が降ってくるのか。この不思議な現象は「ファフロツキーズ(fafrotskies)」と呼ばれ、科学者たちによると天候によって発生したサイクロンが海から魚を吸い上げ、乾いた土地に魚の雨を降らせるのだと考えられている。魚の他にも、カエルが降ってきたりと、通常では考えられないものが空から降り注ぐことをこう呼ぶのだ。 以前から世界各地で注目されていた異常気象だったが、ヨロの住民たちは、そうして魚に恵まれる時期を「奇跡」と呼ぶだけだった。そんな彼らの平均的な給料は、1日1米国ドル(150円相当)ほどと少ない。 そこで何かできないかと動いたのが、世界で数々の広告を手掛けてきたオグルヴィ社である。同社は、中米地域
※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「Life Hugger」の記事を一部改変したものです。 近年、継ぐ人がいない、管理料などの費用がかかるといった理由から、「お墓はいらない」と考える人が増えてきている。そんななか、大阪府豊能郡能勢町に位置する能勢妙見山では、火葬後の遺骨を粉骨し、森林の土中に直接埋葬する「循環葬® Return to Nature」が始まった。 遺骨を堆肥化するとなると、墓石はどうなるのか、循環することで自然環境にはどう影響するのかなど、気になることもたくさん。循環葬®を手がけるat FOREST株式会社の小池さんと正木さんに話を聞いてみた。 森を守り、森に還る循環葬®とは 循環葬®は、火葬後の遺骨を粉骨し、森林の土中に直接埋葬する葬法である。 従来の葬法と異なる大きなポイントは、火葬後の遺骨の扱いだ。今まで遺骨は骨壺に収められ、そのまま墓石の下に埋める、もしくは納骨堂な
教育先進国と言われている北欧諸国では、ICTを活用した学習を進めてきた。例えば、スウェーデンのソレントゥナ市は、2010年にタブレットやPCを1人1台付与する計画を進め、紙の教科書を原則として廃止するなど、思い切ったIT活用に踏み切った。これは、デジタル社会にいち早く対応した取り組みとして、日本にも紹介され、評価されてきた。 しかし現在、それに逆行する流れが生まれつつあるようだ。 2023年8月中旬から始まった新学期では、スウェーデン全土の学校で、印刷された本や静かに本を読む時間、手書きの練習に重点が置かれている。その分、タブレットを使った自主的なオンライン調査、キーボード操作のスキルに割く時間は減らされた。 この動きを主導しているのは、約1年前にスウェーデンの学校担当大臣に就任したロッタ・エドホルム氏である。彼女はテクノロジーの全面的な導入に以前から反対してきた。エドホルム大臣は2023
森が燃えていました。 森の生きものたちは われ先にと 逃げていきました。 でもクリキンディという名の ハチドリだけは いったりきたり 口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは 火の上に落としていきます。 動物たちがそれを見て 「そんなことをして いったい何になるんだ」 といって笑います。 クリキンディはこう答えました。 「私は、私にできることをしているだけ」 これは、『ハチドリのひとしずく(※)』という本のなかの言葉。ただ自分にできることをひたすらしているのが、ハチドリのクリキンディだ。そんなハチドリのように「想いを持った人たち」が集い、つながり、そして語り合える。そんな場所が、広島にある──。 Social Book Cafe「ハチドリ舎」だ。 ※ 『ハチドリのひとしずく いま、わたしにできること』 辻信一/監修 木製の家具や小上がり、カラフルな装飾で彩られた店内。すべて手づくりだというお店
慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム)とは? 慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム:Benevolent Sexism)とは、一見善意や親切心のように見える方法で表現された性差別のこと。例えば、「女性のためにドアを開ける」「重い荷物を持ってあげる」などの行為がそれにあたる。 「親切な」「優しい」「慈悲深い」といった意味を持つ「ベネヴォレント(Benevolent)」。「女性は弱く繊細な存在だから男性が保護し養ってあげないといけない」等、騎士道精神や伝統的な父権主義の価値観から、慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム)は生まれた。一見優しさのように見えるが、「女性は男性に対して劣る存在だ」という考え方を前提とした性差別である。 慈悲的性差別(ベネヴォレント・セクシズム)の例 善意のように見える性差別とは、具体的にどのようなことだろうか。ベネヴォレント・セクシズム(慈悲的性差別)の例
クィアベイティングとは? クィアベイティングとは、実際に同性愛者やバイセクシャルではないのに、性的指向の曖昧さをほのめかし、世間の注目を集める手法である。 性的マイノリティや、既存の性のカテゴリに当てはまらない人々の総称であるクィア(Queer)と釣りなどに使うエサを意味するベイト(bait)を組み合わせた言葉だ。由来の通り、同性愛者やバイセクシャルであるかのような匂わせをすることで、LGBTQ+の人々をはじめ、世間の人々をひきつけようとするマーケティング・ブランディング手法である。 クィアベイティングはテレビ番組、映画、音楽、演劇といったエンターテイメント分野や、本、広告、ファッションなどの分野で見られることが多い。作品の登場人物が LGBTQ+である可能性を繰り返し示しているにもかかわらず、セクシュアリティに言及することを避けている場合などに、クィアベイティングが指摘される傾向にある。
ガスライティングとは? ガスライティングとは、加害者側が些細な嫌がらせを継続的に行ったり、わざと誤った情報を提示し続けたりすることで、被害者が自身の記憶や知覚、正気を疑うよう仕向ける心理的虐待の手法。被害者の現実感覚を狂わせることで、被害者が「自分が間違っている」と自分自身を責めて自尊心をなくし、精神的に追い込まれるよう仕向ける行為を指す。 米国心理学会によると、以前は精神疾患を誘発したり、被害者の精神病院への入院を正当化するような極端な行為を指していたが、現在ではより一般的に使われるようになっているという。 ガスライティングはDV(家庭内暴力)の一種として取り上げられることが比較的多く、2018年にはイギリスで流行語となり、一般的に定着した。そのほか、2021年から韓国でたびたび有名人が被害を告白したり、2022年にはアメリカでも辞書出版会社であるメリアム・ウェブスター社発表の「今年のワ
ニューロダイバーシティとは? ニューロダイバーシティ(Neurodiversity)とは、ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)など、発達障害を神経や脳の違いによる「個性」だとする概念のこと。日本語では、「脳の多様性」あるいは「神経多様性」などと訳される。 神経学的少数派であるニューロマイノリティも、ジェンダー・人種・障害などと同じように、一つのカテゴリーとして尊重されるべきだという立場に立つものだ。企業や社会が脳の多様性を正しく理解し、当事者の特性が輝く社会の実現を目指す社会運動とも解されている。 この言葉は、1990年代にオーストラリアの社会学者Judy Singer氏が提唱。自らや家族が当事者であると公表するSinger氏は、彼らが社会で誤解され、低く評価されている状況に対し、危機感を抱いていた。そこで、社会的不平等や差別を知ってもらう社会運動
死んだ後、自分の体がどのように扱われるか考えたことがあるだろうか。日本では多くの場合、遺体は火葬され、残った骨は墓に納められる。一部の人は宗教的な理由で土葬を選ぶかもしれない。 世界でも火葬と土葬の2種類が主要な葬送方法となっているが、人間の遺体を栄養豊富な土に生まれ変わらせる「堆肥葬(有機還元葬)」が新たに始まる。ワシントン州における人間の遺体をコンポストする法案が、2019年4月に可決され2020年5月から施行されるのだ。 そんな中、アメリカ・シアトルで施設の準備を進める企業「RECOMPOSE(リコンポーズ)」が、堆肥葬を実用化させた。RECOMPOSEが2021年にオープンを予定している施設は、世界初の堆肥葬を行う場所となる予定だ。より環境負荷の低い葬送方法として台頭する堆肥葬はどのようにして生まれたのだろうか。そして、RECOMPOSEが目指す未来はどのようなものなのだろうか。
2022年11月、世界の総人口が80億人を突破したことが、国連の「World Population Prospects 2022(世界人口推計2022年版)」で明らかになった。 増え続ける人口に、減る地球の資源。よくわからないのに、漠然と不安になる。そんな状況をなんとかしたいと考えたときに大切なのが、まずはじっくり事実に向き合うことだ。ここでは、世界経済フォーラムがまとめた世界人口に関する5つの事実をご紹介する。 (以下、世界経済フォーラムが運営するアジェンダページの「世界人口が80億人を突破した今、知っておくべき5つの事実」の全文掲載)
デザイン人類学とは? 「デザイン人類学(Design Anthropology)」とは、新しい製品、サービス、慣習、社会の構造を開発するために民族誌(エスノグラフィー)を用いた応用人類学の一種である。 民族誌とは、文化人類学などで用いられる中心的な研究手法で、実際に研究対象の地域に赴いて観察を行い(フィールドワークと呼ばれる)、人々や場所、制度について記録に残すことを指す。 なお文化人類学とは人類学の一分野であり、人類の社会・文化の側面を研究するもので、『精選版 日本国語大辞典』(小学館、2003年)によると、「生活様式やものの考え方、言語や慣習など、多様な人間の諸文化を、フィールドワークによって記録・記述し、それを比較研究して、文化の側面における人類の共通の法則性を見出そうとするもの」と記載されている。 またノース・テキサス大学のクリスティーナ・ワッソンは自身のウェブサイトにて、デザイン
インターネットやアプリをはじめ、私たちの生活で大きな役割を担っているAI(人工知能)。ポーランドに本社を置く、グローバル企業である酒造メーカーのディクタドールは、なんとAIロボットをCEOに採用し、グローバル企業初の「AI社長」誕生を発表した。 こうしたロボットやAIは、私たち人間に取って代わる脅威となるのか、それとも、民主主義を促進したり、サステナビリティに寄与したりと私たちの社会を豊かにする存在となるのだろうか。 そんな議論があるなかで、デンマークにAIが主導する政党、Det Syntetiske Parti(人工党)が誕生した。人工党は、芸術家集団「Computer Lars」と技術系非営利団体「MindFuture」が協力して設計・プログラミングした政党だ。AIによる政策立案プラットフォームを持ち、政策はすべてAIが担当。2023年のデンマーク総選挙に立候補する意欲を示しているのだ
聴覚障害は、「見えない障害」とも呼ばれることをご存知だろうか。その理由は、障害にあまり触れてこない人にとって、聴覚障害はその有無や程度が見た目からは判別しにくいからだ。 そのため聴覚障害を持つ方々は、周囲から誤解されやすく、コミュニケーションに困難を抱えやすい特性があるという。例えば、会話についていけず、返答が満足にできないことで「おとなしい」「やる気がない」「意見がない」というレッテルを貼られてしまうこともあるそうだ。 そうした困難を多くの人に認知してもらうための広告が、英国で話題になった。その広告は、英国の菓子・飲料メーカーのCadbury(キャドバリー)が難聴児を支援する団体と共同で制作したもので、耳の不自由な方が味わう「会話についていけない」という孤独感を体感できる内容になっている。 広告は、女性が手話で「耳が聴こえない私は、会話に置いてけぼりになることがよくあります」と語りかける
今年5月、米国カリフォルニア州の裁判所で実に珍妙な判決が下された。なんとミツバチを魚の一種と認めるという内容だ。なんとも冗談のような話だが、もしかするとこれが人類の未来を救う判決として歴史に刻まれる可能性もある。 この裁判では、カリフォルニア州の環境保護団体が、同州の絶滅危惧種保護法(California Endangered Species Act、以下CESA)のもとでミツバチの一種であるマルハナバチを保護対象とするよう求めたもので、訴えを認める判決が下された。CESAでは「魚」を保護対象としており、さらには「魚には軟体生物、甲殻類、無脊椎動物が含まれる」と定義されていることから、無脊椎動物の一種であるマルハナバチは保護対象となるというわけだ。これにより農薬の使用等に制限が及ぶことを懸念する農業団体は、この判決を不服として控訴しており、現在も係争中である。 この裁判の背景にあるのは、2
「地域による格差はたしかにあります。でも、今に満足してる同い年の子たちにまで格差の現状を伝えることが、本当にその子たちを幸せにするのかなって。いつも自分に問いかけてます」 そう語るのは、青森県に住む高校2年生の木村栞(しおり)さん。木村さんは、都市と地方の情報格差・機会格差・意識格差に取り組む学生団体「LINDEAL(リンディール)」の活動メンバーである。 LINDEALは、「東北の高校生が “自分の未来は自分で作る” という意識を持つ」ことを目指して、青森の高校生らが立ち上げた団体だ。地方でのあらゆる格差をゼロにすべく、同じ世代に向けたサマースクール・課外活動についての情報発信や、高校生同士の交流の場の提供などを行っている。 都市と地方の格差。街の規模も、環境も、文化にアクセスする機会も、将来の選択肢も違うなかで、青森に住む若者たちには、格差の実態がどのように見えているのだろうか。「格差
グローバルサウス(Global south)とは? 明確な定義はないが、主に新興国・発展途上国・第三世界と同様の意味で用いられる。1964年に77か国の発展途上国で発足した国連の「G77」に中国を加えた「G77プラス中国」を指す場合もあるが、近年では中国を除く意味で使われることが多い。 南北問題とも言われるように、新興国や発展途上国の多くが南半球に位置することに由来してグローバルサウスと呼ばれており、アフリカ、ラテンアメリカ、アジアの新興国・途上国などが当てはまる。対義語として、経済的に豊かである国々を「グローバルノース」と呼ぶ。グローバルノースとグローバルサウスは地理的な分類ではなく、資本主義やグローバリゼーションの文脈を考慮したうえでの社会経済的な分類であると言える。 グローバルサウスは冷戦の文脈において、東西陣営のどちらにも属さない「第三世界」を表現するときにも使われてきたが、政治的
トーンポリシングとは? トーンポリシング(Tone Policing)とは、社会的課題について声を上げた相手に対し、主張内容ではなく、相手の話し方、態度、付随する感情を批判することで、論点をずらすこと。話し方のトーン(Tone)を取り締まる(Policing)という意味から、「話し方警察」等とも訳される。 Collins dictionary.comによると、トーンポリシングは「議論の内容ではなく、口調を理由に議論を拒否すること」と定義されている。 この言葉は2000年代初頭にアメリカで広まり、SNSの浸透により世界中に広がった。日本で使われるようになったきっかけの一つは、2017年にアメリカのWeb漫画『「冷静に」なんてなりません!』が日本語で紹介され、SNSで話題になったことだった。 近年、インターネットやソーシャルメディアが普及したことで、差別やハラスメントといった社会問題に対し人々
素材の生産につかう水の量、製造にかかるエネルギー、輸送で出るCO2の量……。1枚のTシャツを購入したとき、何の気なしに見たレシートにこんなことが書かれていたら、あなたはどうするだろうか。 スウェーデンのメンズウェアブランドAsketが、販売する衣服に特殊なレシートをつけるキャンペーン「The Impact Receipt」を始めた。値段ではなく実際にかかる環境負荷を書き込むことで、商品を手に取った人に、責任ある買い物について考えてもらう取り組みだ。 レシートに書かれているのは、購入したアイテムの「原料生産、素材製造、製品製造、仕上げ、輸送」といったそれぞれの工程の「CO2インパクト(kg)、水(㎥)、エネルギー(mJ)」の内訳で、合計部分には商品の「真のコスト」と書かれている。 Tシャツの「真のコスト」は、CO2インパクト(189kg)、水(35.10㎥)、エネルギー(44.1mJ)だとい
少子高齢化が進む日本社会で近年深刻なのが「空き家」問題だ。日本政府によると、日本の空き家は1998年から2018年20年間で、約1.9倍(182万戸から347万戸)に増加しており、今後も急速に増加していくと予想されている。空き家が放置されると、建物の劣化による倒壊や崩壊、火災、ごみの不法投棄など様々な悪影響が生じる。 そうした課題に対して、従来の不動産の構造を再考しているのが、「さかさま不動産」だ。彼らはプラットフォーム上で「物件」ではなく、「借りたい人」の情報を公開することで、空き家問題を解決するだけではなく、新たな地域の文化の潮流を生み出そうとしている。今回は、さかさま不動産屋代表の水谷さんに空き家問題とその解決に向けた取り組みについてお話を伺った。 話者プロフィール 水谷岳史(みずたに・たけふみ) 株式会社On-Co 代表取締役 1988年生まれ。三重県桑名市出身。高校時代から商店街
シーライオニングとは? シーライオニング(Sealioning)とは、本当は理解する気がないのにもかかわらず、相手に礼儀正しく素直なふりを続けながら、執拗に質問を繰り返し相手を疲弊させる(やる側が無意識であっても)嫌がらせや荒らし、ハラスメントのこと。主に、オンライン上での行為に対して使われる。 語源は、英語のシーライオン(アシカ)から。2014年の9月にアメリカのデザイナー David Malki !(デイヴィッド・マルキ !)氏がWondermark(ワンダーマーク)という自身が運営するWebサイト上のページで紹介した漫画が発端だ。タイトルは「The Terrible Sea Lion(訳:ひどいシーライオン)」(※1)。 漫画では、女性が「シーライオンが苦手なんだよね」と公共の場で発言したところ、突如シーライオン(見ず知らずのしつこい他人のメタファー)が出現。「より良い対話のために聞
家庭や地域などの「生まれ」によって学力や学歴など教育の結果に差が出ることを「教育格差」とよぶ。世界でこの教育格差は、学業不振や退学を増加させ、人種差別や社会的分断を引き起こしている。そして、さらなる社会的格差や貧困を生みだす悪循環に陥る原因にもなっているのだ。 人種や民族、言語の違いなどがあるマイノリティが学ぶ環境は、富裕層と比較すると劣悪であることが多く、教育によって引き出されるはずの人間のポテンシャルが十分に発揮できない。これは社会全体にとっても大きなマイナスだ。 こうした課題の一つの要因になっているのが、「学校間格差」だといわれる。自分の周りにどんな同級生や友人がいるかといった「環境」は教育の成果に大きな影響をもたらすのである。 そんななか、フランス南西部のトゥールーズ市は学校間格差を断ち切る、思い切ったプロジェクトによって大きな成果を上げている。トゥールーズ市には、人口の90~95
クィアとは? クィア(Queer)とは、性的マイノリティや、既存の性のカテゴリに当てはまらない人々の総称である。性自認(自分で認識している自分の性)や、性的指向(好きになる性)が、その人のいる時代や文化のなかでマイノリティとされるときに使われることが多い。「クィア・ジェンダー」とも呼ばれる。 もともとは、英語で「不思議な」「風変わりな」「奇妙な」といった意味合いを持つ言葉だった。性自認といえば「男か女」、恋愛といえば「異性愛」以外への理解がなかった時代では、変態という意味を込めた同性愛者への蔑称でもあったのだ。しかし現在では、性的マイノリティ当事者が自分から、ポジティブな意味でクィアという言葉を使うことが増えている。 自分の性を定めきっていない、揺らいでいる「クエスチョニング(Questioning)」と同様、LGBTQの「Q」にあたる。 クエスチョニングやXジェンダー、ノンバイナリーとの
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