抑留者が埋葬された日本人墓地。最長11年に及んだ抑留で、日本人およそ6万人が亡くなった=ロシア・ハバロフスク北方のフルムリで2008年8月、栗原俊雄撮影 ひつぎの中の顔は、穏やかだった。 10月6日に92歳で亡くなった村山カズさんの家族葬に、私も参列させてもらった。顔の横には夫・常雄さんの写真が添えられていた。 夫婦と初めて会ってから16年。「ありがとうございました」と、2人に手を合わせた。 第二次世界大戦は1945年夏に終わったと考えられている。しかし「終戦」から始まった戦争被害もある。 抑留はその一つ。ソ連は旧満州(現中国東北部)などにいた日本人兵士や民間人およそ60万人を、自国領やモンゴルに拘束した。抑留は56年12月まで、最長11年に及んだ。強制労働と極寒、飢えなどで6万人が命を落としたとされる。 2008年9月、私は抑留の取材で新潟県糸魚川市の村山さん夫妻の家を訪れた。 常雄さん