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ニュース 反復着床不全で子宮内膜症の患者、歯周病菌を子宮内から高頻度に検出 山梨大など 2024.10.02 難治性不妊症の反復着床不全で子宮内膜症を合併している患者は、子宮内膜症がない患者に比べ、子宮内に歯周病菌が増殖していることが山梨大学と手稲渓仁会病院(札幌市)の研究で分かった。反復着床不全は原因が明らかになるケースが珍しく、今回の研究で歯周病と不妊の関連性が示唆できるとしている。今後、歯周病の治療や予防が着床率の向上に効果があるかどうか、調べるという。 不妊症は妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性生活を送っているにもかかわらず、一定期間妊娠しないものをいう。近年は人工授精や体外受精といった数種類の不妊治療が保険診療で受けられる。ただ、体外受精の場合は年齢ごとに、保険診療で胚移植が行える回数に制限が設けられている。胚移植を何度行っても着床しない反復着床不全は医師と患者双方にとっても
ウミウシに擬態する新種のゴカイ「ケショウシリス」を名古屋大学大学院などの研究グループが発見した。発見場所は三重、和歌山各県と、ベトナムの海域。サンゴの仲間である「ウミトサカ」に共生しているが、なじむような柄ではなく、むしろ目立つ色や形をしていた。同じ海域に住み毒を持つミノウミウシに似せて外敵から身を守ることが考えられるという。今後、ケショウシリスの生態や擬態の詳しい理由について研究を続ける。 名古屋大学大学院理学研究科附属臨海実験所の自見直人講師(無脊椎動物系統分類学)の研究グループは、サンゴに生息するゴカイについて研究をしてきた。最初は、三重県鳥羽市にある菅島の漁師から、ウミトサカに「ウミウシのような生き物が付いている」と連絡を受け、譲り受けた。和歌山でもダイビング中のダイバーが見つけた。また、同じ生物をマレーシア、ロシア、フランスの共同研究チームがベトナム海域でダイビング中に発見したと
レビュー 全国でPFASの検出相次ぎ、政府が対応策 「水の安全確保」へ実態把握と対策急務 2024.09.06 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト、共同通信客員論説委員 発がん性など健康への影響が懸念される有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」が全国の河川や地下水などから相次いで検出されており、検出地点付近の住民の不安も高まっている。政府は事態を重視し、環境省を中心に対応策を進めている。同省では現在、PFASに特化した水道水の汚染状況調査を実施中で、専門家会議では水道水の暫定目標値の見直しに向けた議論を始めた。 PFASは人工的に作られた物質で長く身近な製品にも使われてきた。代表的な物質は既に製造と輸入が禁止されているが、自然環境では分解されにくく、過去に廃棄された分が残留している。米国の環境保護局(EPA)が厳しい飲料水基準を設けるなど、欧米では基準厳格化の流れになっている。「安心・安
ニュース ナノバブルは泡ではない? 重力により沈む様子を顕微鏡で観測 九州工業大など 2024.07.25 直径1マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルに満たない微細な泡(ナノバブル)が気泡ではないことを、九州工業大学などのグループが発見した。重力により水中で沈む様子を顕微鏡で観察し、ナノバブルの正体が非ガス粒子であることを突き止めたという。非ガス粒子は水中の不純物に由来すると推測しており、高いとされるナノバブルの洗浄機能などとの関連を探る。 理論的にはナノバブルは表面張力により内部のガス圧が高まることで収縮して消滅してしまう。しかし、九州工業大学大学院情報工学研究院の植松祐輝准教授(物理学)によると、2000年代に長時間安定するナノバブルが実験で観測されたとする発表が相次いだ。ただ、2018年と2019年には海外の研究グループがナノバブルの質量を計測し、気泡ではなく、固体か液体の微
レビュー 日本人祖先の「3系統説」、従来の定説に修正迫る ゲノム解析で進化人類学は「人類、日本人の本質」を探究 2024.07.24 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト、共同通信客員論説委員 「日本人の祖先はどこからやってきたのか」。このロマンに満ちた問いに対しては、祖先は縄文人と大陸から渡来した弥生人が混血したとする「二重構造モデル」が長くほぼ定説となっていた。そこに日本人のゲノム(全遺伝情報)を解析する技術を駆使した研究が盛んになり、最近の、また近年の研究がその説を修正しつつある。 日本人3000人以上のゲノムを解析した結果、日本人の祖先は3つの系統に分けられる可能性が高いことが分かったと理化学研究所(理研)などの研究グループが4月に発表した。この研究とは別に金沢大学などの研究グループは遺跡から出土した人骨のゲノム解析から「現代日本人は大陸から渡ってきた3つの集団を祖先に持つ」と発表し、
蛇口からでる水道水に含まれるミネラルなどの無機成分を、東京大学のグループが2019~24年に47都道府県1564地点で測定した。日本の水は世界保健機関(WHO)でミネラル分の少ない軟水に分類されるが、関東地方でカルシウム(Ca)やナトリウム(Na)など7つの主要無機成分の濃度が高めとなるなど各地で異なることが分かった。微量金属成分の含有に地域的特徴はなく、供給配管や蛇口設備などのインフラに依存しているとみられる。 1564地点の調査で分かった都道府県ごとの蛇口からでてくる水道水の硬度。硬度は水に含まれるカルシウムとマグネシウムの濃度から算出する(東京大学堀まゆみ特任助教提供) 主に分析を担った東京大学教養学部附属教養教育高度化機構の堀まゆみ特任助教(環境分析化学)は、2015、16年に六価クロムの地下水や土壌の汚染、その無害化プロセスを研究していた。研究で使う背景データとして水道水に含まれ
ニュース 複層ナノチューブに光照射すると電子の抜け道ができることを発見、筑波大など 2024.07.03 窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)の中にカーボンナノチューブ(CNT)が入った複層の構造体に光を照射すると、電子の抜け道ができてチューブ全体が速く振動する現象を、筑波大学などのグループが発見した。単独のBNNTに照射するより低いエネルギーの光で起き、電子のエネルギーが速やかに熱へと変わっていた。将来的には電子デバイスのスイッチングや排熱での応用が期待できる。 グラフェンやCNTに代表される1原子ほどの厚さしかない材料を層状、筒状に重ねた物質を「ファンデルワールスヘテロ構造体」と呼ぶ。筑波大学数理物質系の羽田真毅准教授(物理工学)によると、同構造体は半導体になったり超伝導体になったりすることが注目され、ここ10年ほどは機能の発現メカニズムを原子や電子レベルで解明する研究が増えているという
サイエンスクリップ 赤外光を吸収する透明な太陽電池 窓ガラスへの利用に期待、阪大などが開発 2024.07.01 長崎緑子 / サイエンスポータル編集部 太陽から降り注ぐ光エネルギーの半分近くを占める赤外光を吸収して発電する透明な太陽電池の開発を、大阪大学産業科学研究所の坂本雅典教授(光化学)らのグループが進めている。既存の黒い太陽電池が設置できない窓ガラスなどへの利用が期待される。変換効率や大面積化の課題を解決したうえで、2025年に手のひらサイズの電池を試作し、2030年には発電する窓ガラスをサンプル出荷するのが目標という。 見えない光でナノ粒子から電子を取り出す 太陽電池の基本構造には、光を吸収する層や電子を取り出す層、電子を受け取る層があり、光エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。現在一番普及しているのは、シリコン半導体を用いたシリコン系太陽電池。可視光から電気を生み出
レポート 《JST主催》わが国の論文力なぜ失速 第一線の研究者らシンポで激論白熱 2024.04.30 草下健夫 / サイエンスポータル編集部 日本の科学技術力が心配だといわれて久しい。象徴的に語られるのが、学術論文の地位の低下だ。論文は研究で得た新たな知見を整理して客観的評価を受け、学術の体系に組み込むもので、根本的に重要なはず。人々が科学技術の進展を通じ、知的で豊かに暮らすための基礎ともいえる。失速の背景に何があり、どうすればよいのか。多彩な分野のトップ級の研究者が国内外から集まり、シンポジウムで激論を交わすと、研究の自由度や国際化、若手育成といった基本的な論点があぶり出されてきた。 トップ10%論文、過去最低13位の衝撃 シンポジウムは「緊急シンポジウム 激論 なぜ、我が国の論文の注目度は下がりつつあるのか、我々は何をすべきか?」と題し3月11日、科学技術振興機構(JST)東京本部別
数学を活用してさまざまな物事を理解する分野「数理」を解説したポスター「世界とつながる“数理”」が完成し、文部科学省が公開した。学習資料として毎年作成する「一家に1枚」シリーズの第20弾。15~21日の科学技術週間に合わせたもので、日常生活の身近な事例から、社会の安全性や利便性の向上、先端科学に至るまで、数理が多彩に役立っていることの認識を深める一枚となっている。 数理は数学とよく似た言葉だが、違うという。ポスターは「数学を道具として使うこと」という基本を、まず中央で説明。人形を倒れないように置くことや、多数決で意見をまとめることなど、数理が暮らしの中で特に意識せずに活用されていることを例示した。 さらに、ふたが落ちないマンホールの形状や、鉄道の経路検索、薬が効き続けるための服用の量や回数、台風の進路予測といった社会への活用、宇宙の年齢の解明、生物由来の放射性炭素による年代測定などの学術への
サイエンスクリップ 日本人がん患者の遺伝子変異の全体像判明 国立がん研が初の5万人ゲノム異常解析 2024.03.25 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト 国立がん研究センター研究所は欧米人などと異なる日本人のがん遺伝子変異の全体像が明らかになったと2月29日に発表した。「がん遺伝子パネル検査」で得られた約5万人の患者のデータを活用し、遺伝子の変異を解析。がん治療薬の標的となる変異があった割合は平均で約15%だったという。遺伝子変異などを明らかにして治療効果が高いと見込める薬を選んで治療する「がんゲノム医療」に貴重なデータを与える成果で、国立がん研は今後も解析を続けて治療成績の向上につなげたいとしている。 一人一人に合った治療法見つけるゲノム医療 人間の体には約37兆個もの細胞がある。細胞内の核には遺伝子を乗せた染色体が入っている。染色体に含まれる遺伝子と遺伝子情報の総体がゲノムだ。1人のゲ
ニュース 中国で絶滅したはずのオオサンショウウオが東京と広島にいた! 京大などが発見 2024.02.28 中国で絶滅したとされる世界最大の両生類「スライゴオオサンショウウオ」が日本国内で東京の水族館と広島の動物園で飼育されていることを、京都大学の西川完途教授(動物系統分類学)らが発見した。日本固有種で国の特別天然記念物でもある「オオサンショウウオ」と外来種の交雑状況を調査する過程で分かった。クローン技術と人工繁殖でスライゴオオサンショウウオを保全し、将来的には元の生息地に返すという計画もあるという。 日本固有種のオオサンショウウオは1952年に国の特別天然記念物に指定された。1960年代以降、中国からイボや目の形態に違いがある「チュウゴクオオサンショウウオ」など外来種が持ち込まれているが、一部が野外の河川に逃げ出して日本のオオサンショウウオと交雑。中間の形骸をした交雑種が増えており、絶滅
培養骨格筋組織の収縮で動く二足歩行ロボットを東京大学大学院情報理工学系研究科知能機械情報学専攻の竹内昌治教授(機械工学)らが開発した。世界初という。バスケットボールで見られる軸足を支点にして回る「ピボットターン」を行い、ロボットの大きさの2分の1の回転半径で方向転換できる。筋組織を駆動源とするロボットの開発やヒトの歩行メカニズムの理解につながるとしている。 生体由来の材料と機械部品を融合してつくるロボットは「バイオハイブリッドロボット」と呼ばれる。ロボットの駆動源として筋組織を用いたものの研究が進んでおり、芋虫のようにはって動くものや魚のようにひれを使って泳ぐものが海外で発表されているが、方向転換中も前進をやめられないため、小回りで旋回するのは難しかった。 竹内教授らはヒューマノイド研究の一環で、細やかな旋回動作ができるバイオハイブリッドの二足歩行ロボットの製作を企画した。3Dプリンターで
レポート 脳オルガノイドは「人」と見なせるか 若手の生命倫理学者と法学者が別々の観点から考察 2024.02.02 滝山展代 / サイエンスポータル編集部 近年、iPS細胞やES細胞に関する研究が進んでいる。そうした多能性幹細胞から、人体を構成する末端細胞にとどまらず、人間の脳組織である「脳オルガノイド」も作られている。2023年、脳オルガノイドを法的に「人」と見なせるかという論文を広島大学などの研究グループが発表した。若手の生命倫理学者の観点からの問いかけだ。同じく若手の法学者はこれにどんな観点で答えただろうか。 海外では倫理が議論される一方で開発競争が激化 オルガノイドとは試験管内やシャーレ上で多能性幹細胞を培養し、自発的な複製と分化を誘導して得られる3次元の構造体だ。「臓器(organ)のようなもの」という意味でオルガノイド(organoid)と命名された。脳オルガノイドは脳に似た3
豊富な海水を電気分解して水素を工業的に製造できるようにする合金電極を、筑波大学などのグループが開発した。チタンなど化学反応を起こしやすい9つの卑金属元素で構成する。加速劣化試験で10年以上は使える耐久性を確認。イリジウムなど高価な貴金属を用いなくてすむため、海に面する砂漠地帯などで安価に水素が作れる可能性があるという。 脱炭素が求められる昨今、水素は化石燃料に代わるエネルギーとして注目されている。再生可能エネルギーを使って海水を電気分解するのが手っ取り早いが、海水中の塩化物イオンが電気化学反応を起こして電極(陽極)が劣化するのを防ぐには、イリジウムや白金、ルテニウムなどの貴金属を材料として使う必要がある。 筑波大学数理物質系の伊藤良一准教授(電気化学)らは、コストの安い卑金属で耐久性のある電極づくりを目指した。5つ以上の多元素がほぼ同じ原子量で溶けて均一に固まった「高エントロピー合金」は強
北陸電力が、8年前、定期検査中の誤操作により原子炉が臨界状態になりながら、国へ報告していなかったことが、15日明らかになった。 経済産業省原子力安全・保安院は、原子炉を停止し、安全対策の総点検と、事故原因の徹底的な究明を北陸電力に指示することを決めた。 事故隠しは、データ改ざんについての総点検を原子力安全・保安院から指示されていた北陸電力からの同院に対する報告で明らかになった。 報告によると、1999年6月18日、定期検査のため停止していた志賀原子力発電所1号機の原子炉から89本ある制御棒のうち3本が引き抜かれ、原子炉が臨界(再稼働)の状態になった。 誤操作によるもので原子炉自動停止信号が発生したが、3本の制御棒が引き抜かれる原因となった最初の誤操作による影響などから、すぐに制御棒が挿入できなかった。3本の制御棒が挿入され、臨界状態が収束するまで15分を要した。
父親の加齢が精子の遺伝子の働きに影響し、子の神経発達障害のリスクになることがマウスの実験で分かったと、東北大学の研究グループが発表した。既に、DNAやDNAを巻き取るタンパク質への物質の結合による影響について示していたが、遺伝子の働きを調整する「マイクロRNA」も変化していることを、新たに明らかにした。 メスは出生時に持つ卵母細胞が卵子となり、1個ずつ排卵されていくのに対し、オスの精子は精巣で次々作られる。卵子の老化は広く知られてきたが、精子の側について、後天的に遺伝子の働き方が変わる「エピジェネティック」な変化に焦点を当てる成果となった。 対人関係を苦手とする「自閉症スペクトラム障害」などの神経発達障害の発症リスクには、母親より父親の加齢の影響が大きいことが報告されている。研究グループはこれに着目し、エピジェネティックな変化の要因を明らかにしようと、マウスの実験を続けた。これまでに精子の
レビュー 「何百万人もの命救った」とカリコ氏らを高く評価 130億回投与の新型コロナワクチン開発、今年のノーベル生理学・医学賞 2023.10.10 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト、共同通信客員論説委員 今年のノーベル生理学・医学賞はメッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる遺伝物質を使った新型コロナウイルスワクチンの開発に道を開いた2人の研究者に贈られることになった。受賞者はドイツのバイオ企業ビオンテック顧問で米ペンシルベニア大学のカタリン・カリコ客員教授(68)と、同大学のドリュー・ワイスマン教授(64)の2人。スウェーデンのカロリンスカ研究所は2日の記者会見で「世界中で130億回も投与され、何百万人もの命を救った。社会が通常に戻ることを可能にした」と2人の研究業績を高く評価した。 カリコ氏らはmRNAを構成する物質の一部を置き換えることにより、炎症反応を起こさずに体内に入れる技術を
レビュー 「最も暑い夏」の影響でコメや野菜、果実に高温被害 異常気象の恒常化で急がれる適応策と支援 2023.11.16 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト、共同通信客員論説委員 日本列島は11月中旬になると上旬までの猛暑から一転、各地で今季一番の寒さとなった。四季のうち春や秋がなくなる「二季」になったかのようだ。今年の7~9月の月平均気温は3カ月連続して統計史上最高値を記録し「最も暑い夏」になった。その猛暑があまりに強烈だっただけに忘れそうだが、1月には「10年に1度」の強い寒波が日本列島を襲っている。 日本だけではない。地球規模の気候変動により、世界各地で熱波の一方で寒波が、豪雨の一方で干ばつが観測されている。気象学者はこうした極端な気象は今後国内外で頻発し「恒常化」すると指摘している。 日本の「最も暑い夏」がコメや野菜、果実の品質や収穫量に深刻な影響を与えている。極端な暑さや寒さが恒常
強い恐怖の体験をいつまでも忘れられない「トラウマ記憶」が脳でつくられる仕組みの一端を解明したと、自然科学研究機構生理学研究所(愛知県岡崎市)などの共同研究グループが発表した。マウスの動物実験で、恐怖の体験をすると脳の「前頭前野」に新しい神経細胞ネットワークができることを確認。研究成果は心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの難治性精神疾患の治療法研究につながる可能性もあるという。 トラウマ記憶は突然呼び起こされ、フラッシュバックとも呼ばれる。実生活にさまざまな不自由を強いることがある。これまでの研究で大脳皮質の前頭前野が関わり、多くの神経細胞の集団によって保持されていることなどは分かってきた。しかし、脳神経細胞の情報処理ネットワークの構造は複雑でトラウマ記憶ができる詳しいメカニズムは解明されていなかった。 生理学研究所の揚妻正和准教授、鍋倉淳一所長や大阪大学産業科学研究所の永井健治教授のほ
サイエンスクリップ 鮮やかな高山植物は虫のおかげで子孫を維持している 北大研究者が30年間の大雪山系調査で確認 2022.06.24 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト 種子植物が子孫を残すための受粉には「自家受粉」と「他家受粉」がある。鮮やかな高山植物の多くは他家受粉だけに頼り、虫に花粉を運んでもらって子孫を維持しているー。北海道大学の1人の研究者が大学院生と約30年間、美しい大雪山系で生態調査を続け、高山植物の繁殖はハチなどの昆虫に託されている実態を明らかにした。これまで高山植物は環境の厳しさなどから自家受粉が多いとみられていたが、長い間の地道で粘り強い野外調査がこれを覆した。
アフリカ東部に生息するハダカデバネズミの体内では、加齢に伴い蓄積する老化細胞が細胞死を起こしてたまりにくくなっていることを、熊本大学大学院生命科学研究部の三浦恭子教授(長寿動物医科学)らのグループが発見した。寿命が3年ほどのハツカネズミ(マウス)より10倍ほど長寿とされるハダカデバネズミの細胞・個体の仕組みを解明。ヒトでのより安全な老化細胞除去・抗老化技術の開発につながる成果が期待できるという。 マウスやヒトなどの細胞では、一般的に遺伝情報であるDNAが傷つくなどすると、その細胞は分裂して増殖するのをやめて老化細胞となる。老化細胞は「死ねない細胞」などと呼ばれており、免疫細胞によって除去されないでいると加齢に伴い蓄積していく。生体の恒常性維持に役立つものの、蓄積が進むにつれ、炎症性タンパク質の生産など体に害になる作用を引き起こすようにもなる。 ハダカデバネズミは、アフリカのサバンナの地下に
高校物理の知識では、斜面に違う重さの箱を置いても摩擦係数が一定のため、皆同じ加速度で滑る。立教大学理学部の村田次郎教授は「重い人(大人)ほど滑り台を速く滑っていた」という経験則との矛盾を感じ、学生の卒業論文題材に採用。研究の結果、ローラー式滑り台では重い箱ほど速く、ある時点ではそれぞれ加速がなくなり、一定速度(終端速度)で滑ることが分かった。探究的学習により、法則から外れる現象を発見できた事例と捉えている。 高校物理の教科書では、空気抵抗のない月面で羽とハンマーが、ピサの斜塔からは重い鉛玉と軽い鉛玉が同時に落ちる例とともに自由落下が紹介される。自由落下は、運動方程式F=ma(Fは力、mは質量、aは加速度。地球上ではaは重力のgとなる)に従っていると書かれている。自由落下と同じように教科書では箱が斜面を滑り落ちる現象が紹介され、質量に比例する摩擦力が登場する。教科書では、その摩擦力には止まっ
サイエンスウィンドウ 新種の古細菌の発見から探る「私たちはどこから来たのか?」の謎≪特集 令和2年版科学技術白書≫ 2020.10.15 潜水調査船による深海探査で見つかった、新種の古細菌のCGイメージ。 ※画像提供:JAMSTEC 「私たちはどこから来たのか?」このシンプルな問いは、2020年の今もなお解明されていない。ヒトを含むすべての生命は、どのように地球に生まれてきたのか、そしてどのように進化し、繁栄を遂げてきたのか。誰しも一度は考える謎は、これまで多くの科学者たちを引きつけ、そして悩ませてきた。海洋研究開発機構(JAMSTEC)と産業技術総合研究所 (AIST)の研究グループは、深海底に眠る新種の古細菌「MK-D1」を探ることで生命の謎説きに挑んでいる。 ※ 令和2年版科学技術白書のトピックとなった研究を詳しくご紹介します。 地球上の全ての生き物は真核生物、細菌、古細菌の3種類に
誤情報を信じている人の43%がインターネット上で示された該当情報に関する訂正記事のクリックを避ける傾向にあることを、名古屋工業大学の田中優子准教授(認知科学)らが明らかにした。訂正の効果をあげるには訂正情報をアクセス可能な状態にするだけでなく、誤情報を信じている人に届ける社会的・技術的仕組みが必要だとしている。 フェイクニュースやデマなどの誤情報は、それが正しいと信じている人がインターネット上でSNS(交流サイト)などを通じて共有し、拡散してしまう。誤情報の広がりを抑える対策として、ファクトチェックで訂正記事を出すなどの取り組みが世界中に広がるが、必ずしもうまくいっていない。田中准教授らは、「誤情報を信じている人がその誤情報に対する訂正記事のクリックを選択的に避けることがあるのか」との問いをたて、行動を分析する実験を行った。 実験ではまず、20~69歳の男女に年代や性別に偏りがないように呼
ニュース エキノコックスに糸状菌の生理活性物質が有効、酸素環境によらず 長崎大など 2023.05.30 主に北海道で発症するエキノコックス症の原因となる寄生虫エキノコックスに対して、糸状菌が作る生理活性物質の「アスコフラノン」が有効であることを、長崎大学大学院熱帯医学・グローバルヘルス研究科の遠海(えんかい)重裕客員研究員(小児科学・感染症学)らの研究グループが発見した。酸素に富んだ(好気的)環境でも酸素が乏しい(嫌気的)環境でも、短期間で作用が見られた。新薬開発の手がかりができたとみて、今後、マウスでの動物実験に移るという。 エキノコックスは野生のキツネの腸内に寄生する。エキノコックス症には数種類あることが確認されているが、研究グループは特に複雑な形態のこぶを作り、国内での感染者が確認されている「多包虫エキノコックス」に限定して研究を進めた。エキノコックスが細胞に入り込むと、好気的な環
サイエンスクリップ 地下深部の水が断層のずれに関係か 石川県能登地方の震度6強地震 京都大など 2023.05.08 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト 石川県の能登地方で5月5日午後、震度6強、5強の大きな地震が発生し、その後も地震が相次いでいる。能登地方ではここ数年、地震活動が活発化していた。京都大学などの研究グループや政府の地震調査委員会(平田直委員長)は地下にある水などの流体が断層のずれに関係して地震を起こしたとみている。同委員会は一連の地震はこの流体の移動により次々と発生するタイプで、当分続くとの見方を示した。 気象庁によると、5日午後2時42分ごろ、石川県珠洲市で最大震度6強の地震が発生した。震源の深さは12キロ、地震の規模はマグニチュード(M)6.5と、20年12月から続いていた能登地方の一連の地震で震度、地震の規模ともに最大。同日午後10時前にも最大震度5強の地震があった。5
レビュー プレート境界で長大な活断層が動いたトルコ大地震 もろい建物を直撃し、犠牲者3.5万人を超える 2023.02.14 内城喜貴 / 科学ジャーナリスト、共同通信客員論説委員 トルコ南部で2月6日の午前と午後、それぞれマグ二チュード(M)7.8と7.5の大地震が発生した。トルコ周辺は日本と同じく4つのプレートが複雑に入り組み、震源はプレート境界付近の断層にひずみがたまりやすい地域だった。今回もプレート境界にある長大な活断層が大きく動いたとみられ、強い揺れがレンガ造りで老朽化したもろい建物を直撃。多くの建物が倒壊し、多数の犠牲者を出してしまった。 国連など国際機関や各国が緊急救援活動を続けているが、トルコと隣国シリアでの犠牲者は日本時間14日午前段階で3万5000人を超え、歴史的な大惨事になった。犠牲者は今後さらに増えると強く懸念される。世界保健機関(WHO)はトルコ、シリア両国で約2
サイエンスクリップ 「3日取らないと命の危険」水が体を出入りする量の計算式、初めて開発 2023.01.27 青松香里 / JST「科学と社会」推進部 水は、私たちの体に欠かせない。ごく当たり前のことだが、体を日々出入りする量は、これまで科学的に明らかにされてはいなかったそうだ。その量を推定する計算式を、医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBIOHN=ニビオン)などの国際研究グループが初めて開発した。体や環境のデータを基に、1日に失う水分量の目安を算出できるという。人生のさまざまな時期や災害時などに必要な量を予測できれば、健康管理に役立ちそうだ。 「重水素」手がかりに大規模調査 私たちの体のおよそ半分は水。一般的な成人男性で体の53%、成人女性で45%、乳児では60%を占めるという。この量を維持するため、私たちは飲んだり、食事や呼吸をしたりして水分を取る。ここでストック、つまり体に含まれる水分
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