鱗翅目は16万種を数える大きな昆虫のグループだが、その8割以上をガが占める。ガの中には色鮮やかな翅や体をもつ昼行性種もおり、アゲハチョウの仲間に擬態するアゲハモドキや、透明な翅に黄と黒の縞模様という、ハチそっくりの姿をもつスカシバなどが有名だ。またメスが翅をもたないフユシャクの仲間や、自身を包む殻をつくり、そこにカタツムリの中身を引き込んで食べるHyposmocoma属など、ユニークな姿や生態をもつさまざまなガが見つかっている。さらに「ミクロガ」と呼ばれる小型のガのグループには、未だ同定されていないが新種とみられる種が、少なくとも現在の10倍、多ければ30倍いると予想されており、その多様性はまだまだ底が知れない。私は鱗翅目、特にガの多様性がどのように形づくられてきたのかに興味をもって研究を続けている。 チョウとガを見た目や活動時間だけで区別する定義は存在せず、両者を系統的にどう位置づけるか