立原道造(1914〜1939)は叙情的な詩人としてよく知られているが、24歳の若さで世を去っている。たくさんの詩を残し、多くの人に愛された。 春の風は 窓のところに かへってきて 贈り物のことを ささやいている おしゃべりな言葉で まつたく微笑が 少女の頬に ふかい波を 皮膚の内からおこさせて また 消してゆくようにー それは ためいきにも似て(「窓辺に凭りて」『立原道造詩集』岩波文庫) 立原は詩人として多くの人に愛されたが、職業として目指したのは、建築家であった。しかも、東京帝国大学の建築科に入り、最優秀の賞を取っていた。 立原の1年下には、丹下健三、大江宏、浜口隆一という戦後大活躍する建築家たちがいたが、彼らにとって、立原は常にあこがれの的であった。 その立原が夢に見た自分のための別荘。それがこのヒアシンスハウスである。 立原は身体が弱く、卒業後、石本建築事務所へ入ったが、翌年には結核