1995年に起きた国松孝次(たかじ)警察庁長官(当時)狙撃事件で、犯行を「自白」していた中村泰(ひろし)受刑者(94)=別事件で服役=が亡くなった。警視庁公安部は「オウム真理教の組織的テロ」と総括したが、容疑者は特定できず、受刑者の死で事件を検証する術(すべ)は失われた。記者が受刑者と重ねた手紙のやりとりや当時の捜査員の証言から、警察トップが狙われた前代未聞の未解決事件が残したものを考える。(木原育子) 警察庁長官狙撃事件 1995年3月30日午前8時半ごろ、国松長官(当時)が東京都荒川区南千住の自宅マンションを出た所で狙撃された。4発中3発が腹などに命中し、瀕死(ひんし)の重傷を負った。犯人は自転車で逃走。長官は奇跡的に命を取り留め、2カ月半後に公務に復帰した。