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かつて江戸市中を潤した玉川上水。400年近くもの時を経た今では緑道が整備され、豊かな自然が保たれている。町並みや移ろう自然風景だけではなく、近現代の遺構や技術の結集も点在しており、いろいろな発見や学びが得られるのもおもしろい。 写真・文=中島タツヤ、トップ写真=井の頭公園内に続く玉川上水緑道 いよいよ本題。玉川上水ハイキングへGO! さて前置きが長くなってしまったが、いよいよ玉川上水を歩くパートに入っていこう。現在では下流はほとんどが暗渠だが、高井戸公園前の浅間橋から上流部は開渠となっている。玉川上水に沿って都立玉川上水緑道が整備され、地域の人々の散歩やウォーキングの場として親しまれている。 今回は、その玉川上水緑道に注目してみた。区間は浅間橋から拝島駅付近の平和橋までの約24kmとなっているが、せっかくなのでその先の羽村堰をめざして歩くこととした。歩いてみてわかったとしては、すべてが緑道
初心者にも中級者にも大人気の大菩薩嶺(だいぼさつれい)。王道コースから、健脚向きロングコースまで5コースを紹介します。 文=鈴木志野、写真=サンシマ 富士山や南アルプスの眺望や標高2000mの稜線歩き、温泉など楽しさいっぱい! 日本百名山にも数えられ、甲府盆地の北東に位置し、山梨・東京・埼玉とつながる秩父多摩甲斐国立公園の一部でもある大菩薩嶺。江戸時代には、武蔵国と甲斐国を結ぶ旧青梅街道の重要な峠として、多くの人々が往来していたという。そんな大菩薩嶺を特に有名にしたのが中里介山の長編時代小説『大菩薩峠』だが、全41巻の大長編とあって、その内容について知る登山愛好者は少ない。 登山者でなくても知っている大菩薩峠(写真=サンシマ) 標高は2057mと、2000m級の山だが、車でアクセスできる最も標高の高い登山口は1600mのため、交通至便で登りやすく、首都圏の日帰りハイカーに人気が高い。 そし
日本海から太平洋まで、アルプスの山々を越えて日本列島を横断する「トランスジャパンアルプスレース」(TJAR)は8月11日0時に富山湾をスタートし、8月18日22時15分に最終ランナーが静岡県の大浜海岸に到達して幕を閉じた。猛暑や台風接近など、難しいシチュエーションのなか、王者・土井陵選手の走り、若手の台頭など見どころも満載だった今大会を振り返る。 文=中島英摩、写真=中島英摩、三井伸太郎 29名が参戦、山の日深夜0時に日本海をスタート TJARは「日本一過酷な山岳レース」と呼ばれ、総距離415km、累積標高27,000mの道のりを8日間以内に走破する。2年に一度開催されるレースは年々人気が高まり、今年は例年以上に各地で選手を応援する人々でにぎわいを見せた。 山の日である2024年8月11日、日付が変わると同時に8日に渡る冒険が始まった。TJARの選手定員は30人。今年は、書類選考や選考会、
ヒマラヤに残された最難の課題とされるK2西壁。日本人最強のペア・平出和也と中島健郎がこの未踏の壁に挑戦するまでの軌跡を、二人を長年取材してきたライター・柏澄子が振り返る。 文=柏 澄子、トップ写真=2019年のラカポシ南壁初登後の平出・中島ペア(RAKAPOSHI EXPEDITION 2019) 平出と中島のK2西壁 今年6月11日、平出和也と中島健郎はパキスタンのイスラマバードで落ち合った。イスラマバードでの準備を終えキャラバンを開始し、6月23日にK2(8611m)西壁のベースキャンプ(BC)を設営した。 今回の計画は前人未踏のK2西壁(西北西壁とも呼ばれる)を登攀するものだった。彼らのBCは、いまや大勢の登山者が集まる南東稜や南南東リブのBCから徒歩15~30分ほど離れ、K2の基部を西側に回り込んだサヴォイア氷河末端に位置していた。 二人がめざしたのは、ポーランドの世界的登山家であ
心霊体験・不思議な体験をした人の半数以上が「歩いているとき」と回答。気配や不思議な現象だけでなく、「妖怪・霊らしきもの見た」と断言している人も多かった点も興味深い結果です。また、心霊系の話だけでなく、動物や植物に関する不思議な体験も見られました。 では、実際にどのような回答があったのか、回答の一部を見ていきましょう。 ■山道でほかのハイカーとつかず離れず歩いていたら、分岐でも崖でもないところで急に姿が見えなくなった。(男性/50代) ■車中泊しているとき、車の外に複数の足音と話し声がして、それが車の中を通っていきました。(女性/50代) ■毎年、千本桜を見に4月中旬に茅ヶ岳に夫婦で登ります。桜は下山時に見るのですが、数年前に親子のカモシカに遭遇しました。下山しているとカモシカの子供が目の前に落ちてきました。動けなくなっていたので抱きかかえて母カモシカの近くまで運んであげました。そんなことが
2024年6月に山と溪谷オンラインで実践した山の心霊体験・不思議な体験に関するアンケートでは、100件を超える回答をいただきました。前回の記事では実際にどのような体験をしたか紹介しました。この記事では、回答者のみなさんの「山で心霊体験に遭わないために実践していること」をご紹介します。 構成=山と溪谷オンライン編集部、写真=PIXTA ■山にはたくさんの神々や霊がいると思う。私は無宗教なので、なるべくなにもしないようにしている。大きな神社なお寺は、その山の神として、登山の無事を願ったり、下山後に感謝したりするが、山道途中にある祠などに対しては、心のなかで「こんにちは!」とあいさつする程度にしている。また遭難碑などには「安らかに。皆さんを見守ってください。」と心のなかで思う程度にしている。(女性/50代) ■山頂に到着した際は手を合わせ、無事に登頂したことのお礼と無事に下山する約束をします。(
山頂近くまでロープウェイが延び、スズランやクリンソウ、それに絶景を手軽に楽しめる山として知られる南アルプス北端の入笠山(にゅうかさやま、1955m)。そんな山頂付近の一画に御所平(ごしょだいら)がある。南北朝時代の後醍醐天皇の皇子、宗良親王(むねよししんのう、むねながしんのう)は筆者の暮らす大鹿村を拠点としたが、ここにも隠れ住んだという。鎌倉幕府の執権職を世襲した北条家の遺児、北条時行(ほうじょうときゆき)がいたとも。歴史と伝承に彩られた入笠山のもう一つの顔を、高遠側から法華道をたどって触れてみた。 写真・文=宗像 充 「逃げ上手の若君」の潜伏地 7月6日から『週刊少年ジャンプ』で連載中の漫画『逃げ上手の若君』(松井優征作)がテレビやオンライン配信で放映される。主人公の北条時行は鎌倉幕府執権職を世襲した北条家最期の得宗、北条高時の一子で、1333年に鎌倉幕府が滅ぼされた2年後、中先代(なか
一部の地域を除いて全国的にクマの個体数が増えており、「クマ出没」のニュースが頻繁に報道されているのはみなさんもご存知のとおりだ。本格的な登山シーズンを迎え、私たち登山者ができる、準備すべきクマ対策について、専門家からのアドバイスを参考にまとめた。 文=山本 聡(山と溪谷オンライン)、協力=稲垣亜希乃(東京農工大学グローバルイノベーション研究院特任助教)、昆野安彦(フリーナチュラリスト) 2022年の夏、大雪山・白雲岳避難小屋の周囲に頻繁に現われた単独のヒグマ(写真=昆野安彦) クマとの遭遇 さて、そもそも山でクマに「遭遇する」とはどういう状態をいうのか。専門家の東京農工大学グローバルイノベーション研究院特任助教・稲垣亜希乃さんは、「おおよそ50m以内のクマとの予期せぬ接近」を遭遇と考えるとのことだ。この基準に照らして、最初に私(筆者)の遭遇体験を書いてみたい。 7年前の8月の終わり、私は会
コロニーと呼ばれる集団をつくり階層社会を営む「真社会性生物」の驚きの生態を、進化生物 学者がヒトの社会にたとえながらわかりやすく語った名著『働かないアリに意義がある』がヤマケイ文庫で復刊! 働かないアリが存在するのはなぜなのか? ムシの社会で行われる協力 、裏切り、出し抜き、悲喜こもごも――面白く、味わい深い「ムシの生きざま」を紹介する。 よく働くアリ、働かないアリ かなり単純な判断しかできないハチやアリたちのコロニーが効率よく仕事を処理していくためには、必要な個体数を必要な場所に配置するメカニズムが必要です。人間の会社では、これは上司の仕事です。 しかし昆虫社会に上司はいないので、別のやり方が必要になります。このために用意されているのが「反応閾値(いきち) 」=「仕事に対する腰の軽さの個体差」です。 「反応閾値」とは耳慣れない言葉ですが、社会性昆虫が集団行動を制御する仕組みを理解するため
都市近郊の里山を歩いていると、道や分岐が結構多く、また小さな尾根を隔てて風景がガラッと変わることもあっておもしろい。この道はどこにつながっているのだろう?また、どんな景色が広がっているのだろう?まだ見ぬトレイルや風景を求めて、都市近郊の自然探索へ。 写真・文=山と溪谷オンライン 横浜に「グランドキャニオン」!? アメリカのアリゾナ州にあるグランドキャニオンはあまりにもよく知られる観光スポットだが、日本にも青森・白神山地の日本キャニオンや、「岐阜のグランドキャニオン」など、「キャニオン」と呼ばれているスポットが各地にある。 聞くところによると、どうやら横浜南部の栄区にも「グランドキャニオン」があるらしい。地図を確認すると、付近は鎌倉市との境になっており、緑地が広がっているようだ。豊かな自然と絶景を期待しつつ、足を運んでみた。 地図を見てみると、顕著な崖がある(地理院地図より) 町歩きでルート
2月10日の日没後、八ヶ岳・天狗岳で3件連続で救助要請。現場で起きていたこととは? 長野県警察山岳遭難救助隊レポート 2024年2月10日の日没後まもなく、長野県警では3件連続で山岳遭難の通報を受理した。いずれも八ヶ岳連峰の天狗岳周辺・・・。連休中、かつ冬型の気圧配置が強まる状況だったとはいえ、このとき何が起きていたのか、そしてその際の救助の実際は? それぞれの遭難の原因には、ある共通する「理由」があった。 ※本記事は、長野県警察・山岳情報、「山岳遭難の現場から~Mountain Rescue File~」(2024年3月8日版)を編集・転載したものです。 冬季の八ヶ岳連峰は、一般的な冬山登山からアルパインクライミングやアイスクライミングまでさまざまなジャンルの登山が楽しめることに加え、冬季も営業をしている山小屋が多いことやアクセスのよさ、北アルプスと比べると比較的天候が安定しているなどの
軽アイゼンで厳冬期の冬山登山縦走へ―― 2023年12月25日、八ヶ岳連峰で発生した遭難事例。長野県警察山岳遭難救助隊レポート 2023年末、八ヶ岳連峰で山岳遭難事故が発生した。「凍結した登山道で滑落して行動不能、救助された」という一言では説明できない実際の救助の様子を、実際に救助に当たった長野県警察山岳遭難救助隊が掘り下げ、遭難事故が起きた背景を検証。登山中のリスク対策や事前準備の重要性について、あらためて問いかける。 ※本記事は、長野県警察・山岳情報、「山岳遭難の現場から~Mountain Rescue File~」(1月11日版)を編集・転載したものです。 長野県警山岳安全対策課では、実際の遭難事例を掘り下げ、その原因や背景を検証しました。登山中のリスク対策や事前準備の重要性について、今回の事例を参考に考えてみましょう。 令和5年中の長野県内の山岳遭難は、統計史上最多となる302件を
植物写真家の髙橋修さんは、入山者の少ない山にばかり入っているため何度もヒグマやツキノワグマを見ているが、幸い、被害に遭ったことはないという。クマに襲われるニュースが後を絶たないが、ツキノワグマに出合わないために、高橋さんがツキノワグマに対してふだん気をつけていることは「こちらが先に見つけること」だという。 自然科学の立場から言えば、ツキノワグマのヒグマもヒトも同じ大型哺乳類だ。山は彼らのナワバリ内。だから、彼らのルールに従って行動するほうがよいのは当然だ。 クマのニュースが飛び交っている2023年秋。クマの個体数の増加とブナとドングリの不作が原因とされている。植物写真家である筆者は、山の植物を撮影のため年間に何十日も登山者が少ない山ばかりに入っており、野生生物に出合う可能性は高く、実際何度もヒグマやツキノワグマを見ている。しかし、今まで山でクマから被害に遭ったことはない。単にラッキーな可能
20年間、警視庁青梅警察署山岳救助隊を率いてきた著者が、実際に取り扱った遭難の実態と検証を綴る。安易な気持ちで奥多摩に登る登山者に警鐘を鳴らす書、ヤマケイ文庫『侮るな東京の山 新編奥多摩山岳救助隊日誌』から一部を紹介します。 文=金 邦夫 道に迷って沢に降りたら死ぬぞ登山道でない小道が人気に奥多摩における重大遭難事故のほとんどは「道迷い」「転落、滑落」によるものである。これは奥多摩に限らず全国的な傾向だと思う。そしてそういう事故を起こす遭難者のほとんどが、経験の少ない単独行者と高齢者だ。山は非日常の世界だから、まかり間違えば命を落とすことになる……などと考えたこともない登山者が、「奥多摩くらいなら」と気軽にやってくるのである。 2010年9月、「奥多摩の山に行ってくる」と言って神奈川県K市の自宅を車で出た男性Nさん(46歳)が翌日になっても戻らないと、家族から地元警察署に捜索願いが出された
20年間、警視庁青梅警察署山岳救助隊を率いてきた著者が、実際に取り扱った遭難の実態と検証を綴る。安易な気持ちで奥多摩に登る登山者に警鐘を鳴らす書、ヤマケイ文庫『侮るな東京の山 新編奥多摩山岳救助隊日誌』から一部を紹介します。 文=金 邦夫 本仁田山の「ガンバッタさん」遭難者が自力下山1999年5月10日の午前9時20分ごろ「山でケガをした登山者が下りてきた」との110番通報があった。私はすぐ交番勤務員と現場である奥多摩工業の構内にジープで向かった。すでに遭難者は救急車に乗せられていたが、意識はハッキリしており、右腕の骨折、全身打撲などの相当ひどいケガのようだった。 女性遭難者Yさん(42歳)は5月5日(こどもの日)に、川苔山に登り、本仁田山経由で大休場尾根を氷川に下山中、40メートルほど滑落し右腕を折るなどして動けなくなった。昨日、やっとのことで除ヶ沢まで下りてきて、今朝、地元のTさんに発
人間の体温は、体がつくり出す熱(産熱)と、その熱を体外に排出する(放熱)機能の働きによって、通常36〜37度に保たれている。しかし、標高が高い山や北海道の山では、真夏でも天気が崩れれば低体温症に陥ることも。とくに子どもや高齢者は要注意。 北アルプス・立山(雄山)の場合(報告・立山診療所) 風雨に打たれてずぶ濡れになり、下山途中で子どもが行動不能に 8月上旬のある日の午後、一ノ越から雄山に至る登山道上で遭難事故が発生した。父親と雄山に登った小学生の男児が、下山途中の標高2800mのあたりで動けなくなってしまったのだ。親子が登山を開始したときの天気は曇りで、視界も悪くなかった。しかし、しばらくして雨が降りだし、風も強くなってきた。そのなかを二人はずぶ濡れになって行動していたが、とうとう男児が行動不能に陥ってしまい、父親が救助を要請してきたのだった。 救助要請を受け、富山県警山岳警備隊員と立山診
コロナ禍で減少傾向が続いていた夏山遭難だが、2023年は山岳遭難が多発。発生件数・遭難者数とも過去最多となった。しかし、死亡事故は必ずしも多くはない。今年、夏山ではなにが起きていたのか。 文・写真=野村 仁 新型コロナの制限緩和、いきなり遭難が過去最多となった今年の夏山 9月13日に夏山期間(7~8月)の山岳遭難統計が発表されました。期間中、738件の遭難が発生し、遭難者数は809人、うち死者・行方不明者は61人(7.5%)、負傷者351人(43.4%)、無事救出者397人(49.1%)でした。統計上の特徴としては、次の点が挙げられます。 発生件数・遭難者数とも過去最多となりました。 前年と比較して件数で11%程度の増加でした。新型コロナ関係の制限が今年から基本的に解除されましたが、遭難の大幅増加という変化にはなりませんでした。 死亡遭難が多いように見えますが、2018年以前はもっと多い年
スポルティバのエクイリビウムは、登山靴のなかでも、アルパインブーツにカテゴライズされる一足だ。一口に登山靴といっても、現在は歩行性に優れるトレッキングシューズと、登攀性を備えるアルパインブーツに大別でき、エクイリビウムは後者に含まれる。 アルパインブーツの特徴は、細かいフットホールドへの立ち込みをサポートする、剛性の高いソールにある。ただし、それゆえにトレッキングシューズのような軽快さは得られず、どちらかというと平地ではぎこちない足運びを余儀なくされるものが多かった。 その常識に衝撃を与えたのが、エクイリビウムだ。「平衡」を意味するネーミングのとおり、エクイリビウムは「登攀性」と「歩行性」をバランスよく備え、特に歩行性については発売された当初から評価が高い。
登山者ならずとも、冬山での遭難事故として、多くの人が知っている『八甲田山死の彷徨』。1902年(明治35年)に199名が凍死した大惨事の原因は大寒波と異常低温とされているが、実際に当時のデータを紐解いてみると、意外な事実が浮かび上がってきた。 山岳防災気象予報士の大矢です。一時は中心気圧905hPaの猛烈な勢力まで発達した台風2号が、勢力を落としながらも「黒潮ルート」を進み、黒潮から吸い上げた大量の湿った空気を梅雨前線に送り込んだため、6月2日は各地で線状降水帯による豪雨で大きな被害を与えました。皆様のお住まいの地域で被害を受けた方がみえましたら、心からお見舞い申し上げます。 さて今回のコラム記事では、長年にわたって知りたいと思っていた有名な1902年(明治35年)の八甲田山雪中行軍遭難事故の気象状況について、ようやく再現することに成功しましたのでご紹介したいと思います。 これまではJRA
ゴールデンウィークの日本アルプスの山小屋で起きた「事件」。登山の常識からは考えられないような行為にどう対応すればよいのか、山小屋関係者は当惑を隠せない。 文=ヤマケイオンライン編集部 GW後半、とある事件がSNSでバズった。多くの良識ある登山者がその事実に嘆き、憤った。北アルプスで三俣山荘と水晶小屋を運営する伊藤圭さんは、インスタグラムに次のように投稿していた。 「三俣山荘は、何者かの手によって侵入され鍵を開け放たれ、それだけでは済まずにこの冬の季節、この地域を楽しむBCや登山客の間で『三俣山荘使えるらしいよ』と口づてで広まり、多くの無法者に無断で利用されていました」 山小屋内には大量の雪とごみが残され・・・ 伊藤さんはGWに山小屋のチェックとバックカントリーを兼ねて黒部源流を訪れていたが、そこで目にしたのが三俣小屋の惨状だった。侵入者が開け放ったままの入り口から大量の雪が山小屋内に吹き込
秋から冬にかけての時期、高い山は雪が積もり、限られた登山者のみの世界となるが、標高の低い山はハイキングのベストシーズン。空気が澄んで視界もよく、天気がよければ日だまりも心地よい。前編 に引き続き今回も、東京近郊の丘陵地帯に目を向けてみたい。 構成・文=山と溪谷オンライン TOP写真=モーちゃんさん 丘陵ハイキングというと熟達者には物足りないかもしれないが、高低差が少ないので膝にもやさしく、歩行時間も短めなので半日でも充分楽しめる。気軽に自然を楽しみたいという初心者でも歩きやすい。里山風景や街並みの展望、寺社・史跡巡りのほか、時には地元ならではのグルメなど、山歩きとは違った意外な魅力を発見できるかもしれない。 長沼公園の尾根上に続く、なだらなかトレイル 前編でも触れたが、丘陵とはいっても気をつけたい点もある。生活路や作業道などの分岐道が多いので、道迷いに注意してこまめに現在地確認をしよう。ま
秋から冬にかけての時期、高い山は雪が積もり、限られた登山者のみの世界となるが、標高の低い山はハイキングのベストシーズン。空気が澄んで視界もよく、天気がよければ日だまりも心地よい。今回は低山よりもさらに標高を下げ、東京近郊の丘陵地帯に目を向けてみたい。 構成・文=山と溪谷オンライン TOP写真=masa.aさん 秋から春が最適期!たまにはのんびり丘陵歩きはいかが? 丘陵ハイキングというと熟達者には物足りないかもしれないが、高低差が少ないので膝にもやさしく、歩行時間も短めなので半日でも充分楽しめる。気軽に自然を楽しみたいという初心者でも歩きやすい。里山風景や街並みの展望、寺社・史跡巡りのほか、時には地元ならではのグルメなど、山歩きとは違った意外な魅力を発見できるかもしれない。 長淵丘陵・赤ぼっこからの展望(写真=山が好き!さん) ただし丘陵とはいっても、気をつけたい点もある。生活路や作業道など
野村良太 積雪期単独北海道分水嶺縦断記 北海道の中央には宗谷丘陵から北見山地、石狩山地、日高山脈が連なり、長大な分水嶺を構成している。2022年冬、雪に閉ざされたその分水嶺を、ひとりぼっちで歩き通した若き登山家がいた。テントや雪洞の中で毎夜地形図の裏に書き綴った山行記録をもとに、2ヶ月余りにわたる長い単独登山を振り返る。 記事一覧
登山でキツく感じるのは登り坂だが、身体に負担がかかるのは下り坂で、実際、膝痛は下山中に起こることが多い。そんな下り坂で、身体が圧倒的に楽になる歩き方のコツは、重心移動を「起こさない」ことだという。 前回の記事では、登り・下りそれぞれの場面で歩きやすくする、登山靴の紐の調整方法について解説しました。 ★前回記事:登山靴の紐の結び方で山の歩き方は劇的に変わる! 靴紐の締め具合を変えることで登りでは足首が素早く動く状態を作り、下りではゆっくり動く状態を生み出すことができます。結果、登りでは重心移動がしやすく、下りでは重心移動が起こりにくい状態で歩けるようになります。 さて今回は、下りでの重心移動について解説していきます。登りでの重心移動については、以前の記事(第1回、第2回)をご参照ください。 下りは重心移動を起こさない 下りでは、登りとは正反対に、重心移動が起こりにくい状態で歩く必要があります
推薦人:打田鍈一 低山専門山歩きライター。主に西上州や埼玉県のマイナーで静かな山をこよなく愛する。一般登山道ではない、岩あり、ヤブこぎ、ルートファインディングありの自分の登山力が試せるスリリングな変化に富んだ1000m前後の山歩きを「ハイグレード・ハイキング」と名付け、関東の名低山を渡り歩く。『山と高原地図 西上州』(昭文社)を30年執筆。ほかの著書に『薮岩魂 ハイグレード・ハイキングの世界』『続・藪岩魂 いつまでもハイグレードハイキング』『分県登山ガイド・埼玉県の山』(いずれも山と溪谷社)など。 岩山は興奮する。一般的な山道で退屈してグズりだす子どもも、岩場になると一転、オロオロする大人を尻目に果敢に登りだす。大人でもそれは同じ。山登りが日常生活からの脱却を求める行為なら、日常とかけ離れるほどうれしく、岩山はその好例だ。 北アルプス、八ヶ岳、谷川岳など岩場のある山は、それゆえ人気が高い。
推薦人:石丸哲也 東京に生まれ育つ。オールラウンドな登山を経て、山岳ライター、登山・ツアーの講師など幅広く活動している。 山頂に立つことだけを目的とするのでなく、山を旅する感覚で、登るプロセスや自然に触れることを大切にして山を楽しむことを心がけている。 国内では北海道の利尻山から屋久島の宮之浦岳まで全国の山を登り、海外ではペルーアンデス、ヨーロッパアルプス、北米のヨセミテ、メキシコ、カムチャツカなどの山に足跡を残す。 駅からバスに乗り継ぐ山より、駅から歩いて登れる山はアクセスが短くて済む。バスの乗車時間はもちろん、乗り継ぎによる時間のロスもない。バスの時刻に合わせた計画、行動から解放され、山行の自由度が上がる。帰りの心配が少なく、秋〜早春の日が短い季節は殊にうれしい。家を少し遅めに出ても支障がないので、「朝起きて天気がいいので急きょ山へ」という場合や、「寝坊して出遅れた」という場合も対応し
南アルプスの赤石岳(3121m)直下に立つ赤石岳避難小屋だ。18年にわたって夏の赤石岳にやってくる登山者を見守ってきた名物管理人・榎田善行さんは、2022年を最後に、山を下りることにした。長野県側の麓の大鹿村に住むライターが晩夏の赤石岳を訪ね、榎田さんの思いを聞いた。(→「前編」はこちら) 文・写真=宗像 充 「人生避難小屋」 ―― いろんな方がここにみえた。 4年前に80歳のおじいちゃんが聖岳からやってきた。30時間以上かけて歩いてきたという。手帳を見ると昭和40年の「山と溪谷」の付録の黄ばんだ登山手帳。格好も当時のまま。テントもツエルトも持っていない。 翌日暗いうちに出ていった。そしたら椹島への分岐のところで寒い中レスキューシートくるまっているという。駆けつけて「ヘリを呼びますから」といっても首を縦に振らない。多分80歳近くになって、山登りを思い出して昔の装備を引っ張り出したんだね。そ
南アルプスこと赤石山脈の盟主・赤石岳(3121m)。その山頂直下に立つ山小屋が赤石岳避難小屋だ。この三角屋根の小さな山小屋には、毎年夏の2ヶ月余り、管理人が常駐する。18年にわたって赤石岳の登山者を見守ってきた名物管理人・榎田善行さんは、2022年を最後に、山を下りることにしたが、そのラストシーズンを飾ったのは、標高3000mからのツイートが招いた思わぬ炎上騒動だった。長野県側の麓の大鹿村に住むライターが晩夏の赤石岳を訪ね、榎田さんの思いを聞いた。 文・写真=宗像 充 「『この人は大丈夫か、天気予報ぐらい見てこいよ』って。避難してきた人が目の前にいるんだから、おれが一番そう思う。それが、避難小屋の親父にあるまじき言動だなんて」 赤石岳避難小屋の管理人、榎田善行さんが8月16日にツイッターに書き込むと(現在は削除)非難が殺到。榎田さんはその後、ネット番組に電話出演して釈明した。榎田さんは18
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