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ドラクエ3
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これが、その後ぼくに取り憑いて離れない魔法の国のすべてなのだ。 もちろん、その半透明な非現実性や、日常の世界との相違などは巧く君に伝えられない。しかし、現実に起こったことにちがいはないのだ。 もしそれが夢だとすれば、途方もない白昼夢ということになるのだろうか……。(p276) H・G・ウェルズの短編小説「塀についた扉」(タイム・マシン 他九篇 (岩波文庫) に収録)には、わたしの心情にぴったりなこんなセリフがあります。 前回の記事で触れたように、わたしははからずも「地図にない国」に迷いこんだ放浪者のようなものでした。 最初にそれを経験したのは小学校2年生の時。世界がモノクロになり、薄っぺらい紙のように見えました。やがて、夜、ベッドの中で不思議な世界に迷い込み、目に見えない友達の声が聞こえるようになりました。 ありありと目に焼き付く見えない友達の姿、あふれ出る物語、現実よりも鮮やかなもう一つ
たいていの患者と同じく、ジェニファーは、身体や情動に関する一連の症状が相互に関連している可能性や、幼少期のストレスに満ちた暮らしに結びついている可能性を、まったく考えていなかった。 まして、幼少期の経験が、腸と腸内微生物と脳の関係を不健康な方向にプログラミングしたなどとは、彼女には思いもよらなかった。 だが、最新の科学の目覚しい進展を考慮すれば、この知見を医療に取り入れるべき時はとうに来ている。(p116) 以前わたしは、さまざまな証拠からするに、現在「トラウマ」として研究されている問題は、マイクロバイオーム(体内の微生物群集)の問題と深くオーバーラップしているはずだと書きました。 その証拠としては、まず子ども時代のトラウマによって発症率が跳ね上がる病気の種類と、マイクロバイオームの混乱によって発症率が高まる病気の種類がまったく同じであることが挙げられます。たとえば、喘息、うつ病、自己免疫
ブレーズ・パスカルは、恐ろしい幻想を周期的に見た。ときどき、自分の左側に穴か峡谷がぱっくりと口を開けているように思った。自分を安心させるために、そちら側に家具を置くこともよくあった。 ……この周期的な幻想については、同時代の人たちが「パスカルの深淵」として触れている。(p 199) 人間は「考える葦」であるというパンセの記述で有名な物理学者ブレーズ・パスカル。 神経科学者オリヴァー・サックスのサックス博士の片頭痛大全 (ハヤカワ文庫NF) によれば、パスカルは恐ろしい幻想を周期的に見ました。 それは、自分の左側に無存在の空虚な穴が広がっているような、いわば「空っぽ」の感覚の恐怖であり、「パスカルの深淵」と呼ばれたそうです。 この「パスカルの深淵」については、これまで心理学的、また哲学的な理由づけがされてきました。しかしサックスは、これが「視野暗点」という生物学的に起こりうる実在の症状である
去年10月に道北に引っ越してから、半年が経ちました。東京や大阪の大都会で生まれ育ったわたしですが、そこで過ごしていたころの体調不良がかなり和らいで、楽しく充実した毎日を過ごしています。 田舎に引っ越したら退屈ではないかという人もいますが、とんでもない。今までの人生で、これほど刺激的な日々はありません。 毎日朝早くから自転車であちこちを巡り、自然観察を楽しみ、植物の名前を覚え、鳥の鳴き声に耳を傾け、農業や園芸を手伝ったりして、人生ではじめて、人間らしい当たり前の暮らしを実感しています。 本当は絵を描いたり、エッセイを描いたり、楽器を練習したりもしたいんですが、目まぐるしくて時間がなかなか取れないのがもどかしいです。 厳しい冬を無事に、というより楽しく切り抜けて、半年が経過した今、新しい生活がとても気に入っています。そこそこ元気になったおかげで、活動範囲がとても広がりました。 同じ場所の風景
「この病気の大変さをわかってほしい」 今まで幾度となく聞いてきた言葉です。難病についてのニュース記事の見出しに、そう書かれていることもあります。 珍しい病気の苦しみを理解してもらうために、熱心に啓発活動をしている団体もたくさんあります。 わたしも、ずっとそのことを考えてきました。慢性疲労症候群と診断されたときも、解離やトラウマという、とても奇妙な症状と向き合ったときも、大半の人から理解してもらえない、という壁がずっと立ちはだかっていました。 わたしは、この奇妙すぎる辛さをわかってもらうにはどうすればいいか、ひたすら考えてきました。自分の抱えている苦しみを、いかに他の人にわかりやすく伝えるができるか、頭をひねり、言語化してきました。 けれども、わたしは気づくようになりました。 結論からいえば、他の人に、自分の抱える苦しみをわかってもらうことはできません。それは不可能です。この記事で紹介する心
慢性的なストレス下における無意識の固有感覚の緊張が、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)や線維筋痛症(FM)の症状を引き起こす一因になっている、という研究が名古屋大から発表されていました。 ストレス下での持続的な筋緊張が慢性的な痛みにつながる仕組みを解明 ~筋痛性脳脊髄炎/線維筋痛症における痛み発症・維持のメカニズム~│名古屋大学 今回の研究成果は、ストレス等によって一部の筋緊張が長期におよぶことにより、通常では、意識しない固有感覚の過興奮がミクログリアを介して痛みを引き起こすことを示しており、神経障害性疼痛や炎症性疼痛とは異なる新しい痛みの発生メカニズムを示したもので、今後、ME/CFSなどの患者さんの痛みを和らげる治療の標的として、筋緊張の抑制が有効である可能性が浮かび上がってきました。 この名古屋大の研究チームは、2年前にも慢性疲労症候群や線維筋痛症の異常な痛み(アロディニ
あなたは自由が好きですか? 100色以上もの色鉛筆や絵の具があれば、もっと自由に創作できるのに、と思ったことがありますか? わたしも昔はそう思って、高い色鉛筆セットを買ったことがありました(笑) 確かに創造的でありたいと思う人にとって、自由や多機能という言葉は魅力的です。たくさん選択肢があったほうが、より創造的になれる気がします。 でも、今となっては、自由だから、多機能だから、創造的になれるというのは幻想で、事実はその真反対だと思っています。 たとえば、「クリエイティブ」の処方箋―行き詰まったときこそ効く発想のアイデア86にこんなエピソードが書かれていました。 編集者たちは、ドクター・スースと賭けをした。編集者たちは、いくらスースでもたった60語で一冊の本を書くのは無理だろうと考えたのだ。ドクター・スースは、絵本のベストセラー『緑色の目玉焼きとハム』を書き上げ、賭けに勝った。 ゴッホは一枚
現代のトラウマ研究の第一人者である、ベッセル・ヴァン・デア・コークが、身体はトラウマを記録するーー脳・心・体のつながりと回復のための手法 の中で書いている次の説明は、いささか衝撃的かもしれません。 セラピストは、話すことにはトラウマを解決する力があると考え、その力に絶対的な信頼を置いている。…残念ながら、事はそれほど単純ではない。(p379) 私たちの研究における最も重要な発見は、次の事実かもしれない。 1893年のブロイアーとフロイトの主張とは裏腹に、トラウマを、それと結びついた感情のいっさいとともに思い出しても、必ずしもトラウマは解消しないのだ。 私たちの研究は、言語が行動の代わりになりうるという考え方を支持しなかった。(p321) ハーバード大学のジョン・レイティは、GO WILD 野生の体を取り戻せ! 科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネスの中で、ヴァン・デア・コ
これまでわたしは、睡眠の本をたくさん読んできました。まがりなりにも、このブログのテーマのひとつは睡眠であり、わたしは概日リズム睡眠障害の当事者です。わたしの主治医は睡眠専門医です。 さまざまな睡眠の医学に触れてきて、愚かにも、眠りとは何か、睡眠とは何なのか、「だいたいわかっている」気になってしまっていました。 ところが、失われた夜の歴史 という本に触れたことで、これまでの睡眠の常識をいちから構築し直さなければならない、と感じるほどの衝撃を受けました。中でもわたしの曇った常識のメガネを叩き割ってくれたのは、この部分でした。 さてそうなると、根本的な疑問が残る。この興味をそそる変則的な睡眠の取り方をどう説明すればよいのか。 というよりもむしろほんとうの謎と言うべきは、現在の私たちが中断のない睡眠を取っていることであり、それはどうすれば説明がつくのだろうか。 分割型の睡眠パターンは多くの野生動物
この前の記事で、ジャクソン・ポロックのドリッピングの絵画に自然界と同じフラクタルが隠されていた! というびっくりするような話について書きましたが、芸術家とフラクタルをめぐる話はほかにもあります。 今回紹介するのは、ジャクソン・ポロックの物語に負けず劣らずユニークで突拍子もない、ジェイソン。パジェットという男性の物語。 彼はなんと、暴漢に殴られて脳を損傷したことがきっかけで、日常生活で見る景色に隠されたフラクタルが見えるようになってしまい、その超越感覚を生かしてアーティストまた数学者になりました。 そう書くととんでもない超能力映画みたいですが、彼の能力は脳画像研究を通して立証されており、もともと人間に備わっている特殊な能力が解放された「後天性サヴァン症候群」の一例だとみなされています。 彼の体験談が書かれているのは、31歳で天才になった男 サヴァンと共感覚の謎に迫る実話という本です。毎度毎度
これらの症状は、分断され散り散りになった体験の塊なのだ。 それは未完了の身体感覚であり、過去にはその人を圧倒した。 あたかも、惨殺され、切り裂かれたオシリスの身体が、はるかに離れた違なる場所に埋められたように、これらはかい離し、意味不明の状態にある。(p235) 身体の全体に散らばった「意味不明な状態にある」さまざまな症状や身体感覚。この生々しいオシリス王の伝説のような、奇妙な身体症状に心当たりがありますか? 全身に散らばる、説明不能で、原因もわからない多種多様な症状を抱える人は、現代の医療では説明がつかないために、医者から詐病のようにみなされたり、思い込みや気のせいだと門前払いされたりすることがよくあります。 たとえばそのような病気には、慢性疲労症候群や線維筋痛症、化学物質過敏症などが含まれるでしょう。 そうした意味不明の症状は、過去の体験の「痕跡」であり、最新の記憶の科学に基づいて説明
恐れも、後悔も、混乱も、苦痛もなかった。たとえば、火事のさなかのような、ゆるやかな死の危険に伴いうる、身のすくむような恐怖は、誰一人として感じなかった。 思考の働きは通常の速さや激しさの100倍にもなった。客観的な明晰さをもって、出来事とその結果を眺めることができた。 時間は止まっていた。次いで、しばしば、自分の全過去が突然蘇ってきて、落下している者は最後に壮麗な音楽を聞く。(p328) 死の間際に、これまでの人生のさまざまな思い出が映像として見える体験は、わたしたちがよく知っているとおり、日本では「走馬灯」と呼ばれてきました。 これは世界中のほとんどの地域の人が経験しうるもので、1928年、イギリスの神経学者S・A・キニア・ウィルソンによって「パノラマ記憶」(パノラマ体験、パノラマ視現象とも言われる)と命名されました。(p321) 人が死の間際に経験する現象には、ほかにも「あの世」や「三
「自閉症の子どもって津軽弁しゃべんねっきゃ(話さないよねぇ)」 妻のこの一言で始まった研究は思わぬ展開を示すこととなりました。 …調査をすればするほど湧いてくる課題、考えれば考えるほど解けない疑問と向き合った結果、方言というローカリティそのものと考えていた問題が、私たちをASDのことばの謎へと誘っていきました。(p246-247) 自閉スペクトラム症(ASD)の人たちは方言を話さない? 弘前大学の松本敏治先生のこの不思議な研究について知ったのは、2015年のニュース報道でした。 本当だろうかと怪訝に思いつつも、身の回りのアスペルガーの人たちを思い浮かべると、たしかにあまり方言を使わないことに気づきました。 それ以来、この不思議な研究のことはずっと頭の片隅に残っていたのですが、なんと今年になって、一冊の本自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く にまとめて出版された
不登校状態とは生命の脳の疲労であるため生活エネルギーがなくなってしまっており、自らを守るためには、じっと動かず回復を待つこと、すなわち引きこもりが必要となる。 …不登校は「心理的な問題」と漠然としてつかみようもない解釈がなされつづけてきたが、実際には中枢神経機能障害、ホルモン分泌機能障害、免疫機能障害の三大障害を伴うものであり、人生最大の危機に発展する例があることがわかってきた。(p3-5) 子どもの不登校、そして小児慢性疲労症候群(CCFS)の専門家である三池輝久先生は、学校を捨ててみよう!―子どもの脳は疲れはてている (講談社プラスアルファ新書)でこう書いています。 本来、活力に満ちあふれているはずの学生時代に、想像を絶する慢性疲労とエネルギーの枯渇に閉じ込められ、まったく身動きが取れなくなり、わけもわからないままに不登校、引きこもり、そして「人生最大の危機」へと発展していく。 いった
「ほとんどの人は」とラヴィーンが指摘するように、「トラウマを〈精神的な〉問題、さらには〈脳の病気〉だと考えている。しかし、トラウマはからだの中にも生じる何かなのである」。 実際に、トラウマが最初に、真っ先にからだに生じることをピーターは示している。トラウマに関連している精神状態は重要ではあるけれども、二次的なものである。からだから始まり、こころが後に続くのだ、と彼は言う。 したがって、知性や情動さえも関与させる「対話による療法」では十分に深いところまで到達しないのである。(p xii) これは、身体に閉じ込められたトラウマ:ソマティック・エクスペリエンシングによる最新のトラウマ・ケア のまえがきに寄せられたカナダのサイコセラピスト ガボール・マテの言葉です。 ガボール・マテはわたしにとって重要な気づきをくれた医師でした。彼のことを知ったのは、慢性疲労症候群(CFS)の専門医である三浦一樹先
ある若い男性が自らの暗い経験を次のように記述している。 「人類から切り離されて、宇宙でひとりぼっちのように感じる……自分が存在しているのかどうかさえわからない……みんなは花の一部なのに、僕は未だに根っこの一部だ」(p133) 先日、わたしは とある講演の中で、性的虐待のサバイバーである女性のエピソードについて話されるのを聞き、戸惑いと違和感を覚えました。 講師は、その女性が自殺衝動と闘いながらひたむきに生き抜いていることに触れ、わたしたちはみな、こうした憂鬱な気分や苦悩に見舞われるとしても、それを乗り越えていくことができる、と聴衆を励ましていました。 確かに勇気づけられるエピソードかもしれません。しかし、わたしはその話に困惑して、同意も共感もできませんでした。 性的虐待をはじめ、子ども虐待のサバイバーが感じる苦悩は、多くの人がふだんの生活の中で感じる憂うつさや不安とは、あまりに異質で種類の
重要なのは、ただ単にある特定の性格特性を身にまとうだけでは創造性の衣鉢を受け継ぐことはできないということである。 人は僧侶のように生きても、身体を酷使して無理をして生きても、創造的であり得る。 ミケランジェロは女性にそれほど興味を示さなかったが、ピカソは常に女性を求めていた。彼らの性格に共通点はほとんどないが、しかし、両者は絵画の領域を変えたのである。(p64) 創造的な人に「ある特定の性格特性」などない。 自信を持って、そう言い切ってしまえるのは、創造性について、豊富な調査と研究を積み重ねてきた第一人者、ミハイ・チクセントミハイをおいてほかにはいないでしょう。 今日、さまざまなメディアで、創造性、クリエティビティについて、ありとあらゆることが取り上げられています。 創造的な人は外向的だとする記事もあれば、内向性人間の時代が来たとする学者もいますし、朝型人間のほうが、あるいは夜型人間のほう
ありがたいことに、分離脳研究から多くのことが学べた。 手術で二つの半球を分離すると二つの心をもつひとりの人間になるという最初の定義づけに始まり、長い道のりを経た今日では、決定を行動に移すことのできるようになる複数の心を私たちの誰もが実際にもっているという、直観に反するような見解に到達した。(p402-403) わたしたちの脳は、ただひとつの自己ではなく、「複数の心」、複数の異なる自己から成り立っている。 そんなことを書くと、まるでドラマやマンガに出てくる現実離れした話だ、と感じるかもしれません。たいていの人にとって、自分はひとつであり、心の中に複数の自分がいる、などと言い出す人は突拍子もなく思えます。 ところが、冒頭の本、右脳と左脳を見つけた男 – 認知神経科学の父、脳と人生を語る –の著者、マイケル・S・ガザニガは、認知神経科学の研究を通して、「複数の心を私たちの誰もが実際にもっていると
精神科臨床では、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD)と診断される患者のなかに解離症状を併せ持つ一群がいることは知られている。 ここではそういった病態を、「解離型自閉症スペクトラム障害(解離型ASD)と呼んでおく」。(p192) これは、先週 発売された解離の舞台―症状構造と治療 の中で、解離性障害の専門家である、柴山雅俊先生が述べている言葉です。 解離性障害は、一般に、トラウマ的な経験をきっかけに記憶が失われたり、現実感を喪失したり、人格交代が生じたりする、さまざまな困難な症状を伴うものです。 近年の研究によると、こうした解離症状を示す人たちの中に、自閉スペクトラム症(ASD)つまり、アスペルガー症候群などの発達障害の人たちが含まれていることが明らかになってきました。 たとえば、つい昨日発売されたASD当事者の天咲心良さんによる自伝的小説COC
こうした患者たちは、精神医療を受けている間に、互いに関連のない診断を五つか六つ受けるのが普通だ。 医師が気分変動に焦点を絞れば双極性障害とみなされ…医師が彼らの絶望感にいちばん強い印象を受ければ、大うつ病を患っていると言われて…医師が落ち着きのなさと注意力の欠乏に注目したら、注意欠如・多動性障害(ADHD)に分類され…たまたまトラウマ歴を聴取し、患者が関連情報を自ら提供するようなことがあれば、PTSDという診断を受けるかもしれない。 これらの診断のどれ一つとして、完全に的外れではないが、どれもみな、これらの患者が何者か、何を患っているのかを有意義なかたちで説明する端緒さえつかめていない。(p226-227) トラウマ研究の権威、ベッセル・ヴァン・デア・コーク医師は、まだPTSDという概念が知られていない時代にベトナム戦争の退役軍人の強烈な症状を目の当たりにし、彼らの苦悩の原因を突き止めるべ
ADHD(注意欠如・多動症/注意欠陥・多動性障害)というと、一般には、多動・不注意・衝動の3つの症状を中心に説明されます。 ADHDについての紹介記事は、どれを見ても、たいていは、じっと座っていられないだとか、よく物忘れをする、片付けができない、事故に遭いやすい、計画を立てられない、といったお決まりの症状が繰り返し解説されているだけです。 しかしそうした症状は、あくまで多くの人(子ども)に見られるものなので、だれでも自分はADHDかもしれない、と思ってしまうところがあります。 しかしADHDの症状というのは、もっと複雑なものであり、あまり知られていない、他のいろいろな特徴が現実に存在しています。それらの隠れた特徴のほうを調べていくと、自分がADHDなのか、そうではないのか、ということがはっきりするようにも思います。 VOICE新書 知って良かった、大人のADHDなど幾つかの本を参考に、ご自
■人からの評価に敏感 ■失敗するのが怖くて挑戦できない ■プライドは高いが自信がない ■人との関わりを求めつつも傷つくのを恐れる ■何事も面倒くさくて無気力 ■起立性調節障害や慢性疲労症候群で不登校になることも 本当は生き方を変えたいのに、あまりにハードルが高く感じてやる気が出ず、結局、問題と向き合うのを後回しにしてしまう。 あなたはそうした悩ましい葛藤を抱えていますか。 なかなか一歩を踏み出せないそのような人は、「回避性パーソナリティ」と呼ばれていて、近年、増加傾向にあるそうです。 不登校や引きこもりとされる人たちの中にも、本当はなんとかしたいのに、自分の無力さに打ちひしがれ、出るのはため息ばかり、その状況から抜け出せないまま年月が過ぎていくという辛い葛藤を抱えている人は少なくないでしょう。 「回避性パーソナリティ」を抱える人たちは、周囲の冷たい視線にさらされて、自分は何もできない無力で
■光や音、匂い、そのほかのさまざまな感覚に人一倍敏感 ■場の空気や他の人の気持ちを読みとることが得意 ■人より深く考え、呑み込みが早いと言われる ■感受性が強すぎるせいで刺激に圧倒されて疲れ果てることがある ■子どものころから空想の友だちなど不思議な体験をしてきた あなたはこのような、人一倍強い感受性の持ち主ですか? あるいは、もしかすると、あなたのお子さんがこのリストに当てはまるでしょうか。 もしそうなら、あなたやお子さんはHSP (Highly Sensitive Person)、つまり「人一倍敏感な人」や、HSC (Highly Sensitive Child)、つまり「人一倍敏感な子ども」と呼ばれる生まれつきの感受性の強さを持っているのかもしれません。 生まれつきの感受性の強さは、優れた才能につながることがあります。HSPの人は人の心をつかむコミュニケーション力に長けていますし、優
21世紀に入って大規模なテロ行為や、自然災害が増えるにつれ、ニュースなどでよく見聞きするようになった言葉のひとつに、PTSD、すなわち心的外傷後ストレス障害という病名があります。 PTSDは、突然恐ろしい出来事や犯罪行為に巻き込まれた後、神経が高ぶって敏感になり、繰り返すトラウマ記憶のフラッシュバックに悩まされる脳の機能障害です。 一方で、近年、PTSDほどではないものの、比較的よく知られるようになった病気として、解離性障害というものがあります。解離性障害は、現実感がなくなったり、記憶が失われたり、ときには別の人格が現れたりする病気です。 解離性障害は、PTSDをもたらす災害などのトラウマとは別に、子ども虐待に伴いやすいものとして、知られるようになりました。しかし近年では、一見それほどトラウマ経験がないような環境で育った人にも発症することもわかってきました。 PTSDと解離性障害は、どちら
前回、絵を描く喜びを得るにはどうしたら良いのか、という点を描きました。それは、ある程度の手間と創意工夫の余地を残しつつ、いろいろな助けを活用することでした。 ところが対照的に、絵を描く喜びをことごとく奪い去ってしまうものがあるといいます。 それは、神話にちなんで、「シーシュポス条件」(sisyphic condition)と呼ばれています。絵を描く場合だけでなく、創作活動全般に関わる用語です。 作家アルベール・カミュは、シーシュポスの神話 (新潮文庫) で、シーシュポスの物語について説明しています。 神々がシーシュポスに課した刑罰は、休みなく石をころがして、ある山の頂まで運び上げるというものであったが、ひとたび山頂にまで達すると、岩はそれ自体の重さでいつも転がり落ちてしまうのであった。 無益で希望のない労働ほど恐ろしい懲罰はないと神々が考えたのは、たしかにいくらかはもっともなことであった。
愛着回避と愛着不安がいずれも強い愛着スタイルは、恐れ・回避型(fearful-avoidant)と呼ばれる。 対人関係を避けて、ひきこもろうとする人間嫌いの面と、人の反応に敏感で、見捨てられ不安が強い面の両方を抱えているため、対人関係はより錯綜し、不安定なものになりやすい。(p236) これは、愛着障害 子ども時代を引きずる人々 (光文社新書)という本で説明されている、ある特殊なタイプの愛着スタイルを持つ人たちの感じ方です。 わたしたちは一般に、世の中には、内向的な人と外向的な人がいることを知っています。内向的な人は人づきあいが苦手で引きこもりがちな人たちであり、外向的に人は逆に一人でいるのが寂しく、どんどん交友を広げていきます。 ところが、中には外向的とも内向的とも言いがたい、矛盾した振る舞いをみせる人たちがいます。人づきあいがうまく、気を回すのが得意で、初対面の人とも親しげに振る舞える
近年、アスペルガー症候群がよく知られるようになりました。 しかし、みなさんが知っていることは、じつはほとんどが男性のアスペルガー症候群の情報です。 女性の場合には悩みごとも対処法も男性とは異なります。 これは、女性のアスペルガー症候群 (健康ライブラリーイラスト版) の冒頭に書かれている言葉です。 アスペルガー症候群(DSM-5では「自閉スペクトラム症:ASD」に統一)というと「空気が読めない」「オタク気質」「理系」といった特徴を持つ男性を思い浮かべる人が少なくありません。 しかし同じアスペルガー症候群といっても、女性の場合は現われる特徴がかなり異なっていて、アスペルガー症候群であることがわからないまま、さまざまな苦労を抱えていることが明らかになってきました。 特に、コミュニケーション能力にはそれほど問題がないように思えても、独特の脳機能に由来するストレスを抱え込み、子どものころから、慢性
アスペルガー症候群(自閉スペクトラム症)の人は、「共感性がない」。 これまで、幾度となく繰り返し見た言葉です。アスペルガーをはじめ、自閉症と共感性のなさは、たいていの場合セットで語られてきました。 しかし、このブログで何度か過去にも取り上げてきたとおり、近年の研究では、どうもそれは正しくないということがわかってきています。 これまでの研究は、すべて定型発達者の観点から見れば、アスペルガーの人たちは共感性がない、というものでした。それはあたかも地球から見れば、太陽が地球のまわりを動いているように見えるのと同じです。 しかしちょうど宇宙から太陽と地球をを眺めるかのように、より公平な観点から定型発達者と自閉スペクトラム症(ASD)の人たちを見ればどうなるでしょうか。 発達科学ハンドブック 8 脳の発達科学 という本には、とても興味深い最新の研究について書かれていました。 これはどんな本? 発達科
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