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日本映画界はどこがおかしい?映画監督高橋玄が、今まで誰も書かな かった映画のウラオモテを直言。 11月6日は、松田優作の祥月命日である。今年で18回忌を迎える。 私が生まれて初めて映画界に飛び込んだとき、最初の仕事が松田優作監督・主演の『ア・ホーマンス』という東映映画だった。私はその映画の美術スタッフの末端として、セットの建て込みに駆り出されたひとりだった。映画を観た人には判るが、『ア・ホーマンス』のラスト・シーンで銃撃された瀕死の主人公(石橋凌)が運ばれる救急車は私が作ったものだ。 そんなわけで今回は、私の松田優作論を開陳したいと思う。 私たち昭和40年前後に生まれた日本男子にとって「ユーサク」はブルース・リーと並ぶカリスマであった。誰もがユーサクの出世作『太陽にほえろ!』で、彼が演じたジーパン刑事殉職シーンの名台詞「なんじゃこりゃああ!」を真似し、自家製のヌンチャクを振り回していた
いじめ、生徒・教師の自殺、文科省官僚が仕組んだヤラセのタウンミーティング、ここまで教育界が崩壊したのは、日本国が亡国の高速道路を全力で走りだした証拠だ。安倍内閣は教育改革で人気を上げようとしているが、教育の本質をまったく知らないで、大言を弄しているだけだ。その親分が森喜朗元首相であり、海部俊樹元首相のコンビである。 戦後教育を駄目にしたのは、文科省官僚だとか日教組だとか、国会の中ではかしましい議論をしているが、私に言わせれば自民党文教族がもっとも重い責任を感じるべきだと思う。もっとも文科省官僚や日教組にまったく責任がないとは言わない。しかし、政治家の姿勢に根本原因があることを承知しておくべきだ。 自民党文教族で文部大臣になった人は沢山いる。世間は文部大臣という名に見惚れて立派な人物だと思っているが、とんでもないことだ。私の知る限りでは、真面目に教育や文教行政を勉強して見識をもっていたの
ジャーナリストの青木理さんと連名で『月刊現代』12月号にレポートを発表した。題して「共同通信がもみ消した安倍スキャンダル」。安倍首相の地元秘書が絡んだ不祥事を暴くはずだった記事が、首相の鼻息をうかがう共同通信上層部の指示で配信を差し止められたという内容である。 青木さんも私も、かつて共同通信の記者だったので、「差し止め」に関わった幹部たちの人柄や能力をよく知っている。彼らはいずれも有能で良質な記者だった。だからこんなレポートを書くのは忍びないのだが、事実は事実である。権力との対決姿勢をなくした報道機関は自滅するしかない。 取材の過程でひとつだけ嬉しい事実にぶつかった。それは社会部の記者たちがそろって記事差し止めに激しく抗議したことだ。どうかその怒りを失わないでほしい。記者であることの誇りをかけて闘ってほしい。 『月刊現代』の原稿の処理が終わって一息つくまもなく、札幌に飛んだ。宮崎学さん
最近、国民生活を直撃するような異常気象がつづき、地球の異変が心配されている。それよりまして狂ったといえるのが日本の議会政治だ。10月に発覚した2つの問題を取り上げておく。 ひとつは22日に行われた衆院大阪9区の補欠選挙についてである。創価学会関係者の話によれば、自民党公認候補の運動のため延べ100万人の創価学会員が選挙区で事実上の個別訪問を行ったとのこと。選挙期間中に同選挙区にいる人の3人に1人は、創価学会員だったと地元の人は言っている。 連立政権のパートナーである自民党の新総裁・新首相の安倍さんに恥をかかせるわけにはいかない。しかも、9月22日、わざわざ創価学会の池田名誉会長を極秘に訪ね、1時間以上熱心にメモを取りながら話を拝聴し、大変な評価を受けたとのこと。国会で事実関係を質問された安倍首相は「そんな事実はない」と否定したが、嘘をついている可能性が強い。というのは、その件の報道は、
空騒ぎと馬鹿騒ぎで自民党の断末魔と言われた総裁選は終わった。予想どおり安倍晋三氏の圧勝だ。問題は政治の基本である「理念と政策」を捨て去り、ひたすらポストと利権を漁る安倍劇場で、残り少なくなった権力の蜜を吸い尽くそうという様子は、もはや政治ではない。暴力団の縄張り争いより低次元なものだ。 日本の有識者、ことにマスコミはこれを正面から批判できない。それどころか読売とか産経など一部のマスコミは、安倍自民党応援団として活発な動きを始めた。その大義名分は、新しい憲法を創るということだ。しかしこれを推進する輩は、憲法が何であるかを知らず、もっぱらグループの経済的利益を拡大する狙い、すなわち憲法改正を新聞販売の拡大に利用しようとするものである。そして、その広告塔に大勲位こと中曽根元総理が立っている構図を、日本人は冷静に考えてみる必要がある。 断っておくが、私は自民党を創った良識のある人々に育てられ、
植草一秀氏が、電車内で女子高生に痴漢行為を行い、蒲田署は「都迷惑条例違反」の現行犯で逮捕したとの知らせを受け驚いている。しかし、私はあり得ないことだと、植草氏を信じている。 13日午後からテレビを中心に、警察が流す情報を種に、コメンテーターとして生きている輩どもや、事実関係の確認もせずに三百代言のテレビ弁護士どもが、勝手で無責任な放言を繰り返していることに、テレビファシズムに入ったわが国の危険性を痛感している。 犯罪の捜査や裁判における原理原則は、「推定無罪」であることが、近代刑法の本質だ。それがいつからか「推定有罪」を原則として、無責任な思いつきコメントが、テレビ各局で面白おかしく放映され、たれ流されている実態は、報道のあり方として間違っている。 勿論、私には植草氏の行為が事実かどうか断定する資格も能力もない。またそのつもりもない。正当な裁判で結論が出るまで、「推定無罪」を前提に植
この春から断続的に村上正邦さんのインタビューを続けている。皆さんよくご存じの通り、村上さんはかつて「参院の天皇」と呼ばれた実力者で、自民党の右派を代表する政治家だった。しかし、5年前のKSD事件で受託収賄罪に問われて議員を辞職した。 私が村上さんに興味を抱いたのは、彼が九州の筑豊炭田の出身で、若いころ炭鉱で労働運動をやっていたと聞いたからだ。組合の闘士だった人が、なぜ右派政界の中心人物になったのか。彼の生い立ちから現在までの軌跡をたどりながら、その理由を解き明かしていこうと考えたのである。 何度も話をきくうちに分かってきたのだが、村上さんは強面のイメージと違って、心根の優しい人だった。それに、どこか吹っ切れたような明るさと率直さを持っている。政治思想の面では同意しがたいところも多々あるが、村上さんが人間としての魅力を十分に備えた政治家であることは間違いない。 インタビューの結果は月刊誌
8月16日未明、北方領土・貝殻島周辺海域で北海道根室市のカニかご漁船「第31吉進丸(きっしんまる)」(4.9トン、4人組み)がロシアの国境警備艇に銃撃され、乗員1名が死亡した。北方四島周辺海域でロシア側の銃撃により日本人が死亡したのは1956年10月19日に日ソ共同宣言が署名され、同年12月12日に日ソ間の戦争状態が終結し、外交関係が回復してから初めてのできごとだ。 歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島の北方四島がわが国固有の領土であるというのは、日本の原理原則、すなわち国家神話、国民の物語である。国家神話は人知を超えた領域の話であるので、状況はよくわからないが、北方領土は絶対に日本のものなのである。 現在のロシアでは、北方四島を巡る神話は確立していない。それだから北方領土を日本に奪還できる可能性があるのだ。ちなみに1970年代後半、ブレジネフ書記長の権力が絶頂期にあった頃は、ソ連にも北方
前回に続き、メディアに風穴を空ける可能性について記す。 その前に、小泉から安倍へと続く現在の状況とメディアの関係は、どのようなものかをまずは考えてみたい。そこで参考になるのが、辺見庸の新刊『いまここに在ることの恥』(毎日新聞社刊)である。 この中で辺見は、いわゆる小泉の劇場型政治について、「政治権力とメディアが合作したこの劇場の空気とは何だろうか。第一に、わかりやすいイメージや情緒が、迂遠ではあるけれど大切な論理を排除し、現在の出来事が記憶すべき過去(歴史)を塗りかえてしまうこと。第二に、あざとい政治劇を観る群衆から分析的思考を奪い、歓呼の声や嘲笑を伝染させて、劇を喜ばない者たちにはシニシズムを蔓延させたことであろう」と分析している。実に的確な指摘ではないか。 ところで、かつての戦争とメディアの関係についての検証は、この国では全く部分的にしか行われなかった。 且つその検証も、「評論家
さる8月4日午後1時10分、和歌山地裁第一法廷で和歌山県警のA元警部補(36)=逮捕後懲戒免職=を被告とする警察官同士の「強姦未遂」事件の初公判が開かれた。検察官による起訴状の朗読のあと、裁判長が、「事実と違っているところはありませんか?」とA被告に質(ただ)すと彼はうなだれるようにして「はい」と答え、起訴事実を全面的に認めた―― だが、この事件の裏側にはまたしても警察発表を悪用した、事実の隠蔽工作が行われていたのだ。まずはそれらを念頭において以下の記事を読んでほしい。 A被告は和歌山市に隣接する和歌山県岩出市に住んでいる。妻子はいたが、事件前に離婚し1人で暮らしていた。そして事件があった今年5月13日当時、A被告は和歌山県県北部に位置する橋本市の和歌山県警橋本署で生活安全刑事課の係長として勤務していた。一方、A被告に襲われた岩出署に勤務する被害者のB子さん(25)=事件当時=も独身で岩
8月9日午後、秋田県警と秋田地方検察庁はすべての捜査が終結したとして、畠山彩香ちゃん(当時9歳)殺害の容疑で逮捕した実母の畠山鈴香被告(33)を秋田地方裁判所に追起訴した。本件は当初から物的証拠の乏しい事件とされ、公判を危ぶむ声が上がっていたが、図らずも検察側には公判を維持できるだけの強力な「目撃証言」と「物的証拠」があるという。 だが私にはその言葉を素直に呑み込むことはできない。秋田地検が胸を張れるだけの捜査を行ったとは到底思えないからである。 そもそも「目撃証言」とは犯人が罪を行った瞬間、若しくはその直前、直後の様子を詳細に目撃した人物が実在するという意味なのだから、事件当日、藤琴川にかかる大沢橋の上で鈴香被告と彩香ちゃんらしき子どもを見かけたという程度の証言では、「目撃証言」とは言えないのである。それなのに、もしこの証言だけをもって「目撃証言」だというなら今回の追起訴は茶番という
米山豪憲君の父勝弘さんが、「秋田県警様」と題する質問状を能代署長に提出したのは去る8月2日午前のこと。 「質問の大半はすでに報道されているものばかりだから、明かされて当然!」米山さんはそう固く信じていた。ところが翌日の午前10時ごろ、米山さんの自宅に電話をかけてきた、能代署の渡部博樹刑事課長は蚊の鳴くような声でこういうのだ。 「提出された質問状にはお答えできません。捜査中の事案であり、公判を控えているので……」 秋田県警能代署は、米山さんが提出した13項目にも及ぶ質問について何ひとつ答えないばかりか、質問の回答を取りに来られても困るというのである。そもそも手渡した質問状に対する返答が、この電話一本だけとは人をバカにした話ではあるが、能代署はそんな米山さんにさらなる冷酷無慈悲な扱いを続けたのだ。 以下は8月3日午後0時35分ごろ、正式な回答を求めるために能代署を訪れた米山さんと対応に出た
私が米山豪憲くんの遺影に対面したのは黄昏迫る7月27日の午後6時過ぎのことだった。通された居間の片隅に真新しい仏壇が置かれていて、その中に、あどけなく微笑む豪憲君の姿があった―― テーブルを挟んで座ると、去る5月17日午後、畠山鈴香容疑者(33)に最愛の息子を殺害された米山豪憲君の父、米山勝弘さん(40)がこう切り出した。 「私にはどうしても納得できないんです。彩香ちゃんが水死体となって発見されたとき、警察はなぜ徹底的に捜査をしなかったのでしょうか。もしあのとき、普通に捜査をしていれば鈴香はすぐに逮捕されたに違いないし、逮捕されなかったとしても警察にマークされた人間がさらに人を殺すとは思えないから、うちの豪憲は死なずにすんだはずです」 勝弘さんの戦いの原点はここにある。 前稿にも書いたが、警察は記者クラブ制度を悪用し、地元マスコミにガセネタをつかませることで事件を闇に葬り去ることに成功した
1974年香川県生まれ。87年に雑誌モデルとしてデビュー、その後女優に転身。代表作にドラマ「逃亡者」、「踊る大捜査線」、「ビューティフルライフ」、映画に『恋人はスナイパー 劇場版』(04年)、『交渉人 真下正義』(05年)、舞台に劇団☆新感線公演「髑髏城の七人」(04年)、阿佐ヶ谷スパイダース「桜飛沫」(06年)など。大人の女性役から、コミカルな役まで幅広く活躍する実力派女優。著書にエッセイ『ドロップ・ボックス』がある。05年12月に所属していたバーニングプロダクションを辞め、独立。*公式サイト「628DRIVE 水野美紀オフィシャルサイト」http://www.628drive.com/ 女優を目指したきっかけと、今回の独立の真意について 高木 独立はいつですか? 水野 去年の12月1日からなので、まだ1ヵ月半ですね(取材時)。 高木 その真意は? 水野 30代に入って、やりたいことが
1週間ほど前、『マスコミ市民』という雑誌のインタビューを受けた。テーマは『冤罪と報道』。なぜメディアは冤罪を作り出してしまうのか? 当局のリークを無批判に垂れ流す姿勢に問題があると思うが、見解を聞かせてくれという趣旨だった。私はこう答えた。 「その質問に答える前にまずメディアとは何かという定義をはっきりさせておく必要があると思います。大ざっぱに言うと、メディアとは官庁から情報を仕入れて、売る企業体です。私の実感では新聞記事の7割くらいは官庁発の情報。その情報を伝えることが、新聞やテレビ局といった大手メディアの本質的役割なのです。メディアにとって、官庁は本来ならすごく経費がかかる商品の素材をただで供給してくれる、このうえなくありがたい仕入れ先なわけです。したがって、当局発の情報を無批判にメディアが受け入れているというよりも、そうすることがメディア本来の役割であり機能であると言った方がいいので
今年に入ってから特に目につき始めた小泉政権のダッチロール現象の原因は、検察権力の先祖返りに拠るものと考える。 言うまでもなく、小泉自公連立政権は衆院において2/3以上の絶対多数派を擁す、超安定政権である。数の論理が優先する国会にあっては、どのような法案も通すことの出来る力を持つ、戦後稀有の内閣でもある。 その小泉内閣が、前国会では腰砕けを起こしてしまった。野党の民主党がメール問題で自滅状態に陥っているにも関わらず、重要法案のほとんどを継続審議として自ら幕を引いてしまった。これがダッチロール現象と言われるものである。 結論を先に言うと、検察の追及を怖れての萎縮がこのダッチロール現象の因だと私は考える。 それでは小泉は、検察の追及の何を怖れて萎縮したのか。答えは明かである。堀江・村上の逮捕・起訴である。 堀江・村上の逮捕・起訴を突破口として、検察の追求が霞ヶ関、永田町へと及び、第二の
日本を誤らせるのは誰か!?辣腕政治家として知られた政界の達人が教える日本の今。講談社MouRaの『直言』も、いよいよ最後となった。およそ1年間、直言に名を借りて言いたいことを言ってきたが、ご迷惑をかけたり、ご無礼もあったと思う。そこで最終回は、画期的文明論で幕を閉じたい。 小泉純一郎という政治家の最大の功績(悪政)を、逆説的に言うならば、「格差があって何が悪いか」という発言である。今年の通常国会冒頭でのことだった。小泉政治5年間の評価であるが、米国の過激な市場万能主義を日本に強要し、権力とインサイダー関係にある超金持ちの「勝ち組」を人口の0.1%に作りあげた。これを「上離れ」という。 一方で、「底抜け」という「負け組」を政策的に作りあげた。大企業のリストラ、中小企業の倒産などにより、収入減で人並みの生活ができなくなった人達の急増である。20代の失業率は12年前の3.7%から9.3%にな
NHKには私の尊敬する番組制作者が二人いる。一人は教養番組部のデスクだった長井暁氏、もう一人は同じ部のチーフプロデューサーだった永田浩三氏である。つい最近、その二人が制作現場を外され、長井氏は放送文化研究所に、永田氏はライツ・アーカイブスセンター(旧資料部)に追いやられた。 理由ははっきりしている。二人はNHK上層部の方針に逆らい、ETV特集『問われる戦時性暴力』が政治的圧力で改変された事実を明らかにした。今回の異動はそれに対する懲罰もしくは報復人事である。 NHKでは過去にも同じような左遷人事が繰り返されてきた。それにより、どれだけ多くの有為の人材がスポイルされてきたことか。海老沢体制が崩壊して首脳陣の顔ぶれが変わっても、その腐敗した中身は少しも変わらなかったらしい。 ドキュメンタリー一筋の長井氏や永田氏にとって、現場から遠ざけられるのは身を切られるように辛いはずだ。それでも彼らは
経済はただの弱肉強食の世界ではない。私たちに活力を与える経済の姿をレポート。本コラムの執筆に大きなブランクが生じてしまいお詫び申し上げます。執筆を再開し、従来よりも高頻度で執筆してまいりますのでなにとぞご高覧賜りますようお願い申し上げます。 小泉政権の5年半の期間に日本経済は最悪の状況に陥った。日経平均株価は7600円に暴落し、金融恐慌が目前にまで迫った。その後、日経平均株価は17000円台まで上昇し、日本経済も緩やかな改善を続けているから、小泉政権に対する国民の評価はさほど悪くない。 「改革」で膿を出し尽くし、日本経済を再浮上させたなどという、見当違いの説明を聞いて思わず納得してしまう国民も多数存在しているようだ。だが、事実はまるで違う。小泉政権が提示した経済政策は文字通り日本経済を破綻寸前に追い込んだのだ。2003年5月に日本経済が破綻せず再浮上したのは、小泉政権が当初示していた政策
「事実は小説より奇なり」と言うが、インテリジェンスの世界では、小説の方が事実をよりリアルに表す場合がある。例えば、1963年にイギリス秘密情報局(SIS、いわゆるMI6)幹部のキム・フィルビーがソ連に亡命した。この事件が西側陣営に与えた影響は計り知れない。本件については、数多くのノンフィクションが書かれたが、そのどれよりもイギリスのカトリック作家グレアム・グリーンが書いた小説『ヒューマン・ファクター』(ハヤカワ文庫)の方が真相を知る上で有益だ。諜報機関員はほぼ例外なくこの小説を読んでいる。 さて、日本でも、最近公刊された一冊の小説がインテリジェンスの世界に激震を与えている。NHK前ワシントン支局長の手嶋龍一氏の『ウルトラ・ダラー』(新潮社)だ。奥付によると3月1日の発行だが、2ヵ月強で既に20万部を超えるベストセラーだ。本書について、筆者は『文藝春秋』5月号で書評しているので、ここでその
最近、この国では刑事裁判をめぐる弁護士のあり方についての矮小かつ低レベルの議論らしきものがさかんに行われている。その中でも、山口県光市の母子殺害事件の被告人の弁護を行っている安田好弘弁護士等に対する「批判」のようなものは、この国の民度の低さをものの見事に示すところである。 ところで私が、私のホームページ(http://www.miyazakimanabu.com/)に3月15日付で「弁護士安田好弘を擁護する」という文章をアップしたところ、匿名でしか意見を発表することのできない「臆病」者達からメールが送られてきていることや、とりわけ、テレビメディアに登場するポピュリスト系コメンテーターが意味不明の「安田弁護士」批判をくり返すことに等に対して、ここで決着をつけることとした。 まず、刑事弁護人の仕事とは、人殺しや泥棒と言った「悪人」を弁護するのがその主要な部分である。刑事被告人と刑事弁護士は
プーチン政権が立て続けに日本に対してシグナルを送っているが、アンテナが鈍くなった外務官僚にはそれがきちんと読み取れていないようである。情報収集を強化し、日本政府からきちんとシグナルを打ち返さないと、近未来に政治、経済の両面で日本の国益を毀損する事態が生じると筆者は危惧する。 まず、9月18日にロシア天然資源省がサハリン大陸棚の石油・天然ガス開発プロジェクト「サハリン2」に対する開発認可を取り消す決定をした。「サハリン2」にはイギリス・オランダのロイヤル・ダッチ・シェルが55%、三井物産が25%、三菱商事が20%の出資をしている。翌19日にロシア天然資源監督庁(天然資源省の外局)のミトボリ副長官は、環境団体やロイター、NHKなどの外国報道機関を呼んで、国営ロシア通信・ノーヴォスチ社で記者会見を行い、「『サハリン2』の事業主体のサハリン・エナジー社に対して、環境破壊容疑による刑事告発を検討し
朝日新聞の月刊誌『一冊の本』の3月号にすごい記事が載っていた。タイトルは「『万引き』で『死刑宣告』」。筆者は『アエラ』編集部の大鹿靖明記者である。おそらくこのウェブの読者の大半は読んでいないだろう(私も佐藤優さんとの連続対談を『一冊の本』で始めるまではそんな雑誌があることも知らなかった)から、少し詳しく紹介したい。 タイトルの「『万引き』で『死刑宣告』」とはライブドア捜査のことである。大鹿記者はまず2月6日の毎日新聞の一面トップ記事を俎上にのせる。 「ライブドア 株売却益/特別利益に計上/純利益黒字装う/粉飾70億円か」 これは企業買収に伴う株売却益を、本来、計上すべきではない特別利益に計上したことを大いに問題視した記事で、「特別利益の計上によって本来は赤字になるはずの純利益を黒字にした」という内容が書かれている。 でも、と大鹿記者は言う。株式の売却益を特別利益に計上するのはしごく当
ライブドア事件をめぐるマスコミ報道や検察の動きに違和感を持っておられる方はかなり多いのではないだろうか。今ではまるで悪の巣窟のような扱いを受けているけれど、ライブドアはそれほど悪逆非道なことをしたわけではない。逮捕容疑となった証取法違反(偽計、風説の流布)にしても、確かにルール違反に違いないだろうが、広い意味で言えば「形式犯」だ。東横インの社長が言ったように「制限速度60キロのところを67~8キロで走ったようなもの」だ。本来なら監督官庁による行政指導で済んだ話だろう。にもかかわらず、なぜ検察は強制捜査に乗り出したのか。 知り合いの司法記者によると、きっかけは昨年初めのライブドアによるニッポン放送株買い占め騒動だったそうだ。当時、フジサンケイグループの周辺などから「ライブドアの時間外取引は違法ではないか」という声が上がり、特捜部が内偵捜査に乗り出した。現場の検事たちはかなりやる気になってい
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