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2017年春。“独特の世界観と手法的アプローチに強いこだわりを持った癖のある作風で、マニアックかつカルト的な支持を得ている”(*1)とされるミステリ作家・麻耶雄嵩の作品、『貴族探偵』・『貴族探偵対女探偵』が、まさかのテレビドラマ化――しかも、嵐の相葉雅紀主演でフジテレビの「月9」枠(*2)30周年記念作品として放映される事態となりました(「貴族探偵 | オフィシャルページ - フジテレビ」)。 羽鳥健一プロデューサーによれば、“次は相葉さんの“カッコよさ”を前面に出したドラマをぜひ制作したいと思っていたのですが、そんな中で出会ったのが「貴族探偵」というミステリー小説でした。”(*3)とのことで、相葉雅紀主演ありきのドラマ化だったようです。麻耶雄嵩の一ファンとしては、よりによってなぜこんなマイナーな(失礼)作品を……と困惑したものの、放映が始まってみると、予想をはるかに超えるほどミステリ部分
オランダ人外交官だったロバート・ファン・ヒューリックの手によるこのシリーズは、唐代の中国を舞台とした異色のミステリです。中国の文学及び歴史の研究者でもあったファン・ヒューリックは、中国独自の探偵小説である“公案小説”の魅力にとりつかれ、歴史上の人物である狄仁傑{ディーレンチエ}(狄判事/ディー判事)を主役とした作者不詳の公案小説を英訳し(『Dee Goong An』(狄公案))、さらに自分でも公案小説の形式を借りた作品を執筆するようになったのです。 シリーズ最大の特徴としては、長編一作の中で狄判事が三つの事件を扱い、それらが微妙に絡み合って物語を構成しているという点が挙げられます。公案小説に則ったこの形式によって、最終的に大きな事件や陰謀が浮かび上がってくるところが実によくできています。 また、主人公の狄判事はもちろんのこと、忠義心に満ちた老人・洪亮{ホンリャン}(洪警部)、荒事をこなす豪
このページでは、「叙述トリック分類」で分類したミステリの叙述トリックのうち「[A-3]人物の隠匿」トリックについて、実際の作品で使われている具体的な手法にある程度触れながら、より詳しく論じています。作品名は伏せてありますが、作品を予備知識なしで楽しみたいという方は、以下の内容をご覧にならないようご注意ください。 このページは、「叙述トリック分類#[A-3]人物の隠匿」で説明した、作中に存在する登場人物を“その場に存在しない”と見せかける叙述トリックについて、それが使われている作品をリストアップする(ただし作品名は伏せてあります)とともに、具体的な作例に基づいてトリックを比較検討してみようとするものです。 叙述トリックの中で特に〈人物の隠匿〉を取り上げたのは、現時点でも作例がさほど多すぎない(*1)ということもありますが、他の叙述トリックよりもやや複雑な機構――場合によっては作中でのトリック
[概要] 〈ノウンスペース・シリーズ〉はSF作家ラリイ・ニーヴンによる未来史で、長編8冊、連作集1冊、連作でない短編集2冊、及びいくつかの未訳または未収録短編から構成されています。扱われている年代は20世紀から32世紀にわたりますが、作中で言及されている出来事は紀元前15億年頃から紀元12万年頃にまで及びます。 “ノウンスペース”とは人類にとっての“既知空域”、すなわち人類が進出を果たした空域を指す言葉で、最終的には概ね地球を中心とした半径数十光年の球形の領域となっています。つまりこのシリーズは、20世紀の太陽系探査に始まり、小惑星帯への植民、恒星間探査、そして他の星系への植民という風に、“既知空域”が次第に広がっていく様子を描いたものといえるでしょう。 [舞台] (作中の年代で)初期には地球を含めた太陽系内の惑星や小惑星帯などが舞台となっていますが、“ノウンスペース”の拡張に伴って物語の
2005年発表 (新潮社)/新潮文庫 み40-1(新潮社) 本書では、死んだS君が蜘蛛に生まれ変わってミチオの前に現れるという、通常のミステリではあり得ない出来事が描かれています。読者は本書を、そのような出来事が起こり得る不条理な世界の物語として受け入れざるを得なくなっているわけですが、その主な理由(*1)はもちろん、“S君の生まれ変わり”をすんなりと受け入れているのがミチオだけではないからです。まさかそれらの“人物”たちまでもがS君と同様に“生まれ変わり”だったとは、思いもよりませんでした。 (2008.08.25追記) 本書のメインの仕掛けとなっているのは、一人称の語り手による叙述トリックです(*)。 叙述トリックは情報の“送り手”が仕掛けるトリック(拙文「叙述トリック概論」を参照)ですから、一人称の語り手がその“語り”の中に叙述トリックを仕掛けることは可能です。ただしその場合、トリッ
2001年10月6日、我が家にオオコノハズクの“ジェフくん”がやってきました。 もともと夫婦二人ともフクロウ類、特にミミズク(耳羽のあるもの)がお気に入りではあったのですが、まさか都会のマンション暮らしで飼うことができるとは夢にも思っていませんでした。しかし、専門店「動物堂アウルルーム」の存在を知ってから急速に熱意が高まり、ついにミミズクとの暮らしを実現することができました。 飼育には色々と困難もありますが、とても楽しく、また奥が深いものです。自分でもフクロウ類を飼ってみたいという方にとって、当サイトが多少なりとも参考になれば、と思います。 当サイトはフクロウの安易な飼育をおすすめするものではありません。飼ってみたいと思っている方は、事前によく学び、またよく考えてみて下さい。 また、当サイトの記載には注意を払っていますが、それでも間違いなどあるかもしれませんので、当サイトの記載だけを鵜呑み
ご注意: このページは、フクロウを飼おうと思い立ってから実際に飼い始めて今に至るまで、色々と学んできた知識や、経験から考えたことをまとめてみたものです。必ずしもすべてが正しいとは限りませんし、これで十分だというわけでもありませんので、くれぐれも鵜呑みにしてしまうことのないよう、お願いいたします。 ・はじめに フクロウを飼うのは、決して簡単なことではありません。犬や猫のように完全にペット化されているわけではなく、また飼育方法も一般のペットほどには確立されていません。餌も(基本的には)ペットフードのようなものはないので、生のお肉、具体的にはマウスなどをさばいて与えることになりますが、抵抗を感じる方も多いでしょう。 安易な気持ちで飼うべきでないというのはフクロウに限った話ではありませんが、ペットとして一般的な生き物というわけではないのですから、飼う前にも、そして飼い始めてからも絶えず勉強が必要だ
ミステリ・SF、その他に関する雑文です。思いつきを適当に書いていますので、穴は多々あると思いますが、楽しんでいただければ幸いです。 ・「貴族探偵」はいかに改造されたか? (2017.08.07) ・ドラマ第1話 「白きを見れば」 (2017.08.22) ・ドラマ第2話 「加速度円舞曲」 (2017.09.03) ・ドラマ第3話 「トリッチ・トラッチ・ポルカ」 (2017.09.21) ・ドラマ第4話 「幣もとりあへず」 (2017.10.03) ・ドラマ第5・6話 「春の声」 (2017.10.20) ・ドラマ第7話 「ウィーンの森の物語」 (2017.11.14) ・ドラマ第8話 「むべ山風を」 (2017.12.01) ・ドラマ第9話 「こうもり」 (2017.12.26) ・ドラマ第10・11話 「なほあまりある」 (2018.01.15) ・私的「ダイイング・メッセージ講義」 (
本書に関しては、ゴンザさん(「【ゴンザの園】」)が「謎解き『イニシエーション・ラブ』」にて詳細に分析していらっしゃいますので、ぜひそちらもご覧になってみて下さい。 本書では、「side-A」と「side-B」の間に二つの叙述トリック――人物に関するトリックと時間に関するトリック――が仕掛けられています。 1. 人物に関するトリック 人物に関するトリックは、「side-B」の“たっくん”(=辰也)を「side-A」の“たっくん”と同一人物(=夕樹)であるように見せかける“二人一役トリック”(「叙述トリック分類」の[A-1-2]を参照)になっており、最後から2行目の“「……何考えてるの、辰也?」”(「side-B」263頁)という美弥子の台詞で真相が明かされます。 しかし、このトリックに関してはかなりわかりやすい伏線があるので、真相が明かされる前に仕掛けを見抜くことができる読者も多いのではない
本書の中心となる仕掛けの一つは、視点人物を誤認させる叙述トリックです。 対馬つぐみが殺されたことを報じる記事(「プロローグ」)の後、第1章はつぐみへの想いをにじませる独白で幕を開け、次いで以下のようなやり取りが始まります。 「なあ、諫早。ファイアフライ館はまだか?」 突然、後部座席から無粋な声が聞こえてきた。平戸だ。目の前に浮かんでいたつぐみの笑顔は、つぐみの思い出は、一瞬のうちに平戸の野太い声によって儚くもかき消されてしまった。……つぐみ。 (中略) 「起きたんですか、平戸さん。(中略)」 ハンドルをゆっくり右に切りながら、億劫げに諫早は答えた。(後略) (単行本11頁/文庫13頁~14頁) このやり取りをみると、一人称と三人称が混在しているようにも受け取れますが、諫早視点の(内面描写も含めた)三人称と解釈することも可能でしょう。そしてその後の“対馬はそこの諫早の彼女だったんだよ”(単行
[A-2-1] 性別の誤認 登場人物の性別を誤認させるトリックは、当然ながら、女性を男性と誤認させるものと、男性を女性と誤認させるものとに分けられます(*2)。多くの作品では前者のトリックが使われており、後者のトリックが使われた作品はあまり見当たらないのが実状です(安眠練炭さん「女か虎か」及びきたろーさん「男女トリックの男女比」を参照)。 [A-2-1-1] 女性を男性と誤認させるもの 女性を男性と誤認させるためには少なくとも、呼称や言動を含めた描写の中性化を行う必要があります。少なくとも現代の日本を舞台とした作品では、中性的な描写がなされた人物は概して男性と解される傾向があるので、とりあえずはそれで十分だと思われます。 さらに、職業や肩書、あるいは特定の行動(例えば女性との性行為)などに関する先入観を利用して誤認を補強する例もあります。 [A-2-1-2] 男性を女性と誤認させるもの 男
[図2]からもわかるように、事象Aが物語世界の中で改変(または誤認)されることはないのですから、叙述トリックは仮想の物語世界の中ではなく、送り手がそれを表現した叙述の中にのみ存在すると考えることができます。 [3] トリックの解明 [図2]に示したように、通常のトリックとは異なり、叙述トリックでは物語世界の中の事象Aが改変されることはありません。すなわち、叙述トリックは物語世界に影響を与えない、と表現することもできるでしょう(*2)。 ところがこれは、物語世界の中の登場人物は叙述トリックの存在を認識することすらできない(*3)、ということを意味します。したがって、叙述トリックが仕掛けられた物語の登場人物は、叙述トリックによって隠された真相そのもの(例えば[図2]における事象A)を直接的に示すことはできる(*4)としても、叙述トリックを解き明かす(仕掛けを説明する)ことはできない、ということ
・作家別感想索引 (国内・海外共通/50音順) ・(比較的)最近の感想 似鳥 鶏 『叙述トリック短編集』 (2023.02.19) 片里 鴎 『異世界の名探偵1』 (2024.04.04) 詠坂雄二 『君待秋ラは透きとおる』 (2023.05.16) 深水黎一郎 『第四の暴力』 (2024.03.03) 白井智之 『お前の彼女は二階で茹で死に』 (2024.04.16) M.ラファティ 『六つの航跡(上下)』 (2024.04.27) (→ 掲載順リスト) ・改稿した感想 (2017.04.23) P.ワイルド 『悪党どものお楽しみ』 ・シリーズ作品 (2024.05.05) 田中啓文〈オニマル 異界犯罪捜査班〉に『警視庁陰陽寮オニマル 鬼刑事VS吸血鬼』を追加 ・短編 (2017.04.23) 泡坂妻夫 「酔象秘曲」 ・ロバート・J・ソウヤー 〈ミステリファンにもおすすめのSF作家〉 (
山田正紀の著作は長編・短編集を合わせて140作余り(冊数にして180冊以上)を数え、しかも幅広い作風であるために、その全貌を把握することが困難になっている面もあります。そこで、これから山田正紀を読んでみようと思う方のために、簡単なガイドを作ってみました。 具体的には、SF、冒険/アクション、ミステリ、その他の四つに分類し、さらにその中でテーマ/サブジャンルごとに分類してあります(複数の分類にまたがる作品もいくつかあります)。また、短編集は独立させてあります。 作品名は内容の紹介及び感想にリンクしています。また、このページでは最も入手しやすいと思われる版を記載してありますが、電子書籍では他の版が入手可能な場合もあります。 (注意): 分類はあくまでも主観的なものです。また、記憶違い・思いこみ等により分類がおかしいものもあると思いますが、その点はご了承ください。 なお、このページを作製するにあ
相沢 沙呼 medium 青崎 有吾 〈裏染天馬シリーズ〉 体育館の殺人 (改稿) 水族館の殺人 風ヶ丘五十円玉祭りの謎 図書館の殺人 〈アンデッドガール・マーダーファルス〉 アンデッドガール・マーダーファルス1 アンデッドガール・マーダーファルス2 ノッキンオン・ロックドドア 早朝始発の殺風景 浅暮 三文 殺しも鯖もMで始まる 芦辺 拓 地底獣国の殺人 不思議の国のアリバイ 和時計の館の殺人 赤死病の館の殺人 グラン・ギニョール城 紅楼夢の殺人 三百年の謎匣 少年は探偵を夢見る 千一夜の館の殺人 アシモフ, アイザック 宇宙の小石 暗黒星雲のかなたに 宇宙気流 鋼鉄都市 はだかの太陽 夜明けのロボット(上下) 永遠の終り 火星人の方法 アシモフのミステリ世界 飛鳥部勝則 殉教カテリナ車輪 バベル消滅 N・Aの扉 砂漠の薔薇 冬のスフィンクス ヴェロニカの鍵 バラバの方を ラミア虐殺 レ
ミステリもSFも好んで読んでいる私は、当然ながら両者の要素を併せ持ったSFミステリも大好きです。以前からこのSFミステリについて何か書こうと思っていたのですが、ちょうど嵐山薫さん(「嵐の館」)を中心にSFミステリのリストアップが行われているので(2002年7月10日~24日あたりの日記を参照)、私も自分なりのリスト(及び分類)を作成してみようと思います。 E.D.ホック『コンピューター検察局』(ハヤカワ文庫HM)の末尾に付された「“SFミステリ”小論」などで、風見潤は“SFミステリ”の分類を行っています。すなわち、ミステリが主でSFが従のSF風ミステリ、逆にSFが主でミステリが従のミステリ風SF、そして両者がほぼ均等の比重で組み合わされている(狭義の)SFミステリの三つです。しかし、「ミステリが主でSFが従」・「SFが主でミステリが従」・「ほぼ均等の比重」といった表現が具体的に何を意味する
“連鎖式”(中島河太郎氏による命名のようです)は物語を構成する手法の一つです。日下三蔵氏は、“一応は一話完結でありながら、少しずつストーリーに一貫性を持たせていき、全体を通して読むと長篇にもなっている、というかたちの連作”(山田風太郎『明治断頭台』(ちくま文庫)解説より引用)と説明していますが、より簡単にいえば“長編化する連作短編”ということです。この“連鎖式”という手法は、ミステリとしての仕掛けや趣向と結びついて、主に国内ミステリで特異的な発展を遂げています。 個人的にこの手法は好きですし、その発展の経緯にも興味があったので、作品をリストにまとめてみることにしました(shakaさんの日記(2002.11.21)もきっかけになっています;だいぶ遅くなってしまいましたが)。 発展の経緯がわかりやすいように、大まかに年代順に並べてみました(刊行された月まではチェックしていません)。 厳密には連
ミステリを「謎に対して解決が示される物語」と定義(*1)した場合、「謎」及び「解決」が重要な要素となるのはもちろんですが、その両者をつなぎ合わせるもの、すなわち謎に対する解決を示す手続き――謎解きのロジック――もまた、決して軽視されるべきではないでしょう。 この、ミステリにおけるロジックについて、「Junk Land」(MAQさん)経由で興味深い文章を知ることができました。以下に一部引用します。 与えられたデータをもとにして、「世界」の実像に迫り、唯一無二の真相に到達することを目指すのが「解明の論理」である。(中略)象徴的な手がかりを読み解き、超人的な構成力を駆使して「世界」を紡ぎ出す。それは「解明の論理」とは似て非なる「解釈の論理」である。極論すれば、そこにはもはや「予め用意された真相」という概念はない。ただ所与との整合性を保ちながら、より奇妙でより面白い「真相」を作り出すのだ。 津田裕
申し訳ありませんが、こちらへ移動をお願いします。
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