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2014年02月10日掲載 【オルガネラ様共生細菌で身を守るミカンキジラミ】 昆虫と微生物の共生のかたちのひとつに、微生物が宿主を外敵から守る「防衛共生」がありますが、この関係は進化的に不安定と考えられてきました。ところがさきごろ、私たちは、カンキツ類の大害虫であるミカンキジラミが、毒を作る共生細菌を自らの一部として安定な関係を築き、これを武器に天敵から身を守っているらしいことを明らかにしました。 図1: (左) ゲッキツ上のミカンキジラミ成虫。(中) ミカンキジラミ5齢幼虫。腹部に見える黄色いクロワッサン型の構造が、共生器官「バクテリオーム」。(右) バクテリオームの断面。表層細胞内にカルソネラ(赤色)、内腔内にプロフテラ(緑色)が多数収納されている。 (クリックで拡大します) 昆虫と共生する微生物は、その機能にもとづき、宿主のえさに乏しい栄養分を供給する「栄養共生体」、毒を合成して宿主
2014年01月30日掲載 【ゴキブリに栄養を供給する細菌の行く末は?】 非常にタフな害虫というイメージがあるゴキブリですが、実は一人では生きていくことができず、細胞内に共生しているブラタバクテリウム(Blattabacterium cuenoti)という細菌からアミノ酸やビタミンなどの栄養をもらって生きています。この細菌は、今から約一億八千万年前にゴキブリの祖先に感染し、母から子へと絶やすことなく受け継がれてきました。しかし、一部のゴキブリのグループはこの細菌を失っているのです。長大な年月を片時も離れることなくゴキブリと歩みをともにしてきたこの細菌にいったい何が起こったのでしょうか? ブラタバクテリウムの役割 図1: オオゴキブリ脂肪体切片のHE染色像。ブラタバクテリウムを含む菌細胞が脂肪体内に点在し、薄紫色に染まっている。 (クリックで拡大します) ブラタバクテリウムはほぼ全てのゴキブ
2014年01月17日掲載 【イモムシ体表にスポット紋様が生じるメカニズムの解明】 動物の体表には目玉のような模様がよく見られます。このような紋様の多くは捕食者に対するシグナルといわれていますが、その形成メカニズムの詳細は知られていませんでした。今回私たちは、カイコの突然変異体やキアゲハなどの幼虫を用いて、幼虫体表のスポット紋様が生じるメカニズムを解明しました1,2)。 イモムシ体表に見られるスポット紋様 蝶や蛾の幼虫の背側の体節には、スポット状の紋様がみられることがよくあります。目玉のように見える1対の紋様(図1A: カイコの祖先種とされるクワコ幼虫の紋様)や、目立つ斑点が並んだ紋様(図1B: キアゲハの幼虫)など、これらは警告的なシグナルとして鳥や小型の動物の捕食から免れる働きをしているといわれています。このようなスポット紋様は、幼虫の体表の表面に分泌されるクチクラ層に描かれていますが
2013年12月24日掲載 【近親交配を好む虫と避ける虫】 近親者と交尾すること(近親交配)は避けるべきだと一般に考えられています。これは近親交配によって生まれてきた子にはしばしば有害な影響(近交弱勢)が見られるためです。しかし、近親者は自分と同じ遺伝子を持っている可能性が高いため、遺伝子の伝搬効率という観点からはむしろ近親交配は有利となり得ます。ここでは、近親交配を避けるか受け入れるかという観点から、昆虫の行動を紹介します。 近親交配した方が得な時 近親交配を避けるべきか否かは近交弱勢の強さと遺伝子の伝搬効率の兼ね合いで決まります。ある程度近交弱勢が強い時は近親交配を避け、弱い時は受け入れることが適応的な行動となるわけです。では、実際にはどの程度適応度が低下するなら近親交配を避けるべきなのでしょうか? 単純なモデルによると父親と母親が同じ兄弟同士のペア(以下Full-sib)の場合、適応
2013年12月23日掲載 【虫で虫を滅ぼす方法: 不妊虫放飼法による害虫の根絶】 最近、サツマイモ害虫であるアリモドキゾウムシが、不妊虫放飼法と呼ばれる防除法により沖縄県久米島で根絶されました。離島とはいえ比較的広い島(60 km2)で、どのように害虫を根絶したのか疑問に持たれた方もおられるでしょう。ただ、ゾウムシの根絶を語るには、このコラムではあまりにもスペースが限られています。血と汗と涙のアリモドキゾウムシ根絶ドラマは他に譲ることとし、ここでは不妊虫放飼法で核となる不妊化にまつわる話題を紹介したいと思います。 はじめに 図1: サツマイモの世界的な大害虫であるイモゾウムシ(Euscepes postfasciatus)(左)とアリモドキゾウムシ(Cylas formicarius)(右)。 (クリックで拡大します) これまで沖縄を訪れたことがない方でも、紅芋が沖縄を代表する野菜の1つ
2013年10月30日掲載 【ベニシジミのメスのセクシャルハラスメント回避行動】 セクシャルハラスメントは人間だけのものではありません。逃げ回るメスに対してオスがしつこく求愛するという光景は、非常に多くの動物で見ることができます。オスから執拗に交尾を迫られると、メスは怪我をしたり求愛を逃れようとして天敵に見つかりやすくなったりすることがあります。それほどひどくなくても、餌をとったり産卵したりするところをオスの求愛によって邪魔されるのは甚だ迷惑な話です。しかし、メスの方も被害を受けているばかりではありません。実はセクハラへの対策を進化させているのです。 ベニシジミ(シジミチョウ科)では 図1: ベニシジミ(Lycaena phlaeas daimio)。気温が低い時には日光浴のために翅を開いていることが多い。 (クリックで拡大します) 野原や路傍でよく見かけるベニシジミという蝶がいます(図1
2012年12月25日掲載 【「出ておいで」 卵の中の子を呼ぶお母さんカメムシ】 卵塊から一斉に孵化する幼虫たち。彼らはどのようにして、自身の孵化のタイミングを知るのでしょうか。昆虫の親のなかには、産卵後に卵を保護し、孵化を様々な方法で手助けするものがいます。ここでは、お母さんカメムシの一斉孵化を呼びかける振動シグナルについて紹介します。 はじめに 砂浜からウミガメの子が、あるいは卵嚢からカマキリの幼虫が、一斉に出てくる様子をどこかでご覧になったことがあるかもしれません。このように複数の卵を一度に産む動物のなかには、ブルード(親が一度に産む子の集団)全体が一斉に孵化するものがいます。しかし、卵の中に存在しながら、胚(子)はどのようにして同時に孵化するタイミングを知ることができるのでしょうか。 この謎を解き明かすために、多くの研究者が動物の一斉孵化の仕組みについて研究してきました。親が卵を産
2012年12月28日掲載 【ショウジョウバエは栄養のことを考えて食べる】 生物は、エネルギー源としての炭水化物や脂質、体を構成するタンパク質など、様々な栄養物質を外界から摂取して生きていかなければなりません。しかも、暴飲暴食が体に良くないように、おいしいものを好きなだけ食べていてはだめで、各種栄養素を正しいバランスで摂食することが健康的な生活を送るには重要です。人間は栄養学の知識を学んで食事バランスを考えます。つまり、本能的に適切な食生活を送ることができないのです。だからこそ、「○○が健康に良い」という誤った情報にも踊らされるのでしょう。では、野生動物はどうでしょうか。私たちは、ショウジョウバエが不足した栄養素を補うように食の好みを変化させる能力を持っていることを明らかにしました(Toshima and Tanimura, 2012)。 体内で合成できない必須アミノ酸 アミノ酸はタンパク
チョウには訪花学習性がありますが、これは脳で学習や記憶をしているのでしょうか? 友人には単なる本能だといわれたのですが...。 また、「食う食われる」という厳しい世界に生きている彼らですが、痛みなどは感じるのでしょうか? はい。もちろん、昆虫も脳で記憶や学習をしています。 昆虫の脳は、脊椎動物と同様、ニューロンとよばれる神経細胞が集まってできています。しかし、体が小さな昆虫は一般に脊椎動物に比べて脳が小さく、例えばヒトの脳が1,000億個のニューロンでできているのに対し、昆虫の脳を構成するニューロンは多くても100万個程度と言われています。ニューロン数は脳の情報処理能力の大きさに比例します。ニューロンの多いヒトの脳では、様々な感覚情報を脳に集中させて大きな体を精密に動かすことができ、運動の柔軟性や高い学習・記憶能力も併せ持っています。一方、ニューロンの少ない昆虫の脳では、ヒトのように大容量
公園を散歩していて、やけに静かだと感じました。セミも鳴いていませんし、蚊もよってこない。セットの中を歩いているかのような感覚になりました。全体的に生命の感じが薄いというか・・むっとするような、土の香り虫たちが・・見当たらない感じです。 人体にただちに影響はないといわれる放射性物質ですが微生物や細菌が土壌で死滅しているということは考えられますか?また、土壌中の細菌や微生物の死滅により、それを食料にしている虫たちが激減しているということはありますか? 回答者が北海道を転々としていて、返事が遅れました。申し訳ありません。北海道ではエゾゼミが元気に鳴いていました。質問された方のあたりでも、いまはセミしぐれのまっ最中という気もしますが、どうやら長期戦になりそうな放射線漏れに関する話題ですので、遅ればせながら回答します。 もちろん、すべての昆虫種について放射線量が生存率に及ぼす影響を調べられているわけ
2010年12月13日掲載 【兵隊を持つ寄生蜂】 兵隊カーストは防衛に専念するように特殊化した階級で、アリやシロアリなど社会性昆虫でよく知られていますが、「多胚性寄生蜂」といって、1つの卵から多数の成虫を発達させる寄生蜂のなかにも兵隊カーストを持つものが明らかになっています。今回は、「多胚性寄生蜂」が同じ寄主に侵入してきた別の寄生蜂に対して、兵隊カーストを増員して攻撃し、多数の仲間を守る現象を紹介します。 はじめに 兵隊カーストはコロニーのなかで防衛に専念するように特殊化した階級です。アリやシロアリなど社会性昆虫で古くから知られていますが、社会性のアブラムシやアザミウマ、さらには寄生蜂のなかにも兵隊を持つものが知られるようになっています。寄生蜂とは他の昆虫に寄生してその体内で栄養を搾取して発育をおこなうハチのことで、寄生者(パラサイト)という点では人や動物の寄生虫と同じです。けれども寄生蜂
2007年03月27日掲載 【カシノナガキクイムシ】 「キクイムシ」には、その名の通り木を食べる種類の他に、木の中に餌となる菌類を持ち込んで栽培する種類がいます。このような農業を営むキクイムシの一種が樹木の幹に孔をあけ、次々に枯死させる被害が全国各地で拡がっています。今回は、この奇妙な現象を紹介しようと思います。 1. キクイムシとは キクイムシは、世界に7千種以上が知られており、形態によってキクイムシ科とナガキクイムシ科に大別されています。日本にも300種以上が知られていますが、ほとんどは体長1cm以下と小さく、黒色などの単一色で、ゴマ粒のような地味な存在です。また、樹木の幹や製材した木材に孔をあけるため、害虫として扱われることが多い昆虫です。このため、蝶やカミキリムシを収集する人は多いのですが、キクイムシを収集する人はほとんどいません。しかし、キクイムシは、衰弱木を早く枯死させたり、腐
トゲアリトゲナシトゲハムシという昆虫がよくネタにされていますが、どうしてこのような命名がされたのでしょうか? どうして発見した時に普通のトゲハムシではないと判断することが出来たのでしょうか? 「トゲアリトゲナシトゲハムシ」という和名の昆虫はおりませんが、「トゲナシトゲハムシ」あるいは「トゲナシトゲトゲ」の和名は使われてきました。 このグループは、鞘翅(甲虫)目ハムシ科のトゲハムシ亜科に属しています。トゲハムシ亜科は、学名もHispinaeで、体にトゲがある特徴に基づいていますが、このトゲハムシの中には、体にトゲのないグループがおり、特に亜熱帯/熱帯圏からは非常に沢山の種が知られております。 トゲハムシ類は、日本には14種が分布していますが、それらのうち体にトゲのない種が外来種で定着しているもの1種を含めて4種が知られています。トゲハムシ亜科の種は、トゲの有無で外見上は非常に異なる印象を受け
2007年05月10日掲載 【ダンゴムシはジグザグが好き!】 軒下に置いてある植木鉢を持ち上げると、鉢の下からころころと転がりでるダンゴムシを見かけることがあります。正式にはオカダンゴムシという生き物です。足の数や胸と腹の区別がないことからもわかるように、昆虫ではなく、エビやカニなどとともに節足動物門甲殻綱に分類されています。 この生き物がたいへん面白い行動をすることが知られています。どなたでも観察できるちょっと不思議な楽しい行動をご紹介しましょう。
新着「最新のトピック」: プロの研究者でもまだ知らないような、出来たてホヤホヤの最新研究成果を分かりやすくお伝えします。 イネの大害虫であるトビイロウンカは、針状の口を突き刺して師管液を多量に吸汁することによりイネを枯死させ、深刻な被害をもたらします。ところが、南インドやスリランカのイネの中には、トビイロウンカに強い品種があることが知られています。では、トビイロウンカに強いイネ品種はどのような抵抗性遺伝子を持っているのでしょうか? 著者: 田村泰盛 (農業・食品産業技術総合研究機構 昆虫植物相互作用ユニット) 全文を読む
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