サクサク読めて、アプリ限定の機能も多数!
トップへ戻る
衆院選
neworld-magazine.com
自明のこの事実を少しでも頭から追い出したいからこそ私たちは音楽を聴いているともいえるが、ポップ音楽をひとつのアート作品として価値判断しようとする“聴く”という行為は、文化や政治が居留守の空間において私たちの見知らぬ何者かによって仕掛けられるのではなく、それらの要素がフルに稼働する私(あなた)もメンバーである空間=社会の裡においてこそ、言うまでもなく、可能となる。 ある曲を聴くときに私たちそれぞれの耳に流れ込んでくる様々な音の要素とその組み合わせ、例えば、電気仕掛けのギターの歪み、1990年代の希少な南部産ラップの叫びのサンプリング、また愛についてのセリフまでのすべてとその絡み合いを私たちの聞く能力がどう拾いあげて味わうのか、そこに顕れる音の特徴をどう他から区別してどう娯しむかは、現実の聞き手それぞれに任されている。 音楽を聴く――知覚することにもし限界があるとするなら、それは社会の裡におい
私は、ECDが残していった20枚以上のアルバムとEP、同じような数に及ぶシングルやコラボレーション、そして精力的に、しかし海賊的にリリースされたミックステープといった音楽作品と呼べるもの、それから植本一子との共作を数えるなら10冊以上の著作、最後にメディアとストリートでの活動すべてとそれぞれを再起動し、再活性させようとしている。これはヒップホップのサウンドを構築するやり方の一つ、例えば、ECDも大きな影響を受けた1980年代の終わりにパブリック・エネミーがクライド・スタブルフィールドのビートを解体し再構築した流儀に倣ってのものとは以前に記した。ヒップホップというアートの出現以降、解体と再構築を繰り返していく以外の方策は限界にあると誰よりもECD自身が考えたはずだ。 その後生涯にわたっていくことになる活動を導く光のようなものをECDはヒップホップにこそ見出しただけでなく、見えた光のを腑分けし
編集者にして無類の“バックヤードウォッチャー”である今井夕華が、さまざまな施設、企業、お店の“裏側”に潜入して、その現場ならではの道具やレイアウト、独自のルールといったバックヤードの知恵をマニアックに紹介する連載企画。 はじめまして、編集者の今井夕華です。私は小学校のときから、立ち入り禁止の場所に堂々と入れてもらえる社会科見学が大好きでした。大学では工場やアトリエを多数取材、社会人になってからは、編集者としてさまざまなバックヤードを取材しています。 バックヤードに対する目線を先にお伝えしておくと、どのバックヤードも最高!ということ。好みは多少ありますが、優劣は決してなく、平等に観察し愛でています。研究家でも評論家でもなく、「バックヤードウォッチャー」といったところでしょうか。独自ルールが発達した休憩室や、放置された私物など、キラキラした世界と表裏一体の、人間味あふれる舞台裏が、私は大好きで
僕の育った家族は、あとから振り返るとおかしなところが沢山あった。まず、家族同士があいさつをするということが一切なかった。といっても、仲が悪かったというわけではない。僕の父と母が結婚してから僕が十歳になるまで住んでいたうちは、六畳一間の小さな家だった。その小さな家に父、母、僕、孝二の四人で暮らしていたのである。家族それぞれに部屋があり、朝起きて初めて顔を合わすのが居間やキッチンという環境なら「おはよう」とあいさつするのも自然だろうが、僕の家では逆に不自然なことだった。そもそも核家族のありかた自体にまだお手本がなかった。父も母もとにかく暮らしを楽にすることに必死で、あるべき家族の姿を模索する余裕はなかった。 そして、家族のあるべき姿を模索するための余裕というのは、うちの場合暮らしが楽になれば生まれるというものでもなかった。僕が小四になる時に父は吉祥寺に三百万で家を買い、僕たち一家はそこに移り住
七時間の大手術を終え、僕はICUで目を覚ました。しばらくすると妻が娘二人を連れて面会にやって来た。三人ともマスクをしている。寝たままの姿勢で上体を起こせない僕からは妻と長女の顔は見えるのだが、長女よりまだ頭ひとつ分背が低い次女は頭のてっぺんしか見えない。それで妻が次女を抱っこして顔を見せてくれる。 *1 デモを見てお祭りみたいだと言う人がいる。お祭りみたいで楽しそうだと賛意を込めて言うひともいれば、騒ぎたいだけだろと揶揄として言うひともいる。僕も祭りは好きだ。子供の時は山車を引いてお菓子をもらうのがうれしかったという程度だったが大人になってからひょんなきっかけで大人神輿を担ぐことになった時、自分はこれほど祭りが好きだったのかと驚くほどの体験をした。ぶっ倒れる寸前まで体力を使い果たすことが自分自身を何かに捧げているかのような気持ちにさせた。後に何も残らない忘我の境地。それが祭りだとすればデモ
このページを最初にブックマークしてみませんか?
『neworld-magazine.com』の新着エントリーを見る
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く