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アメリカ大統領選
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岡田温司氏の『アガンベンの身振り』(月曜社、2018年)によれば、ジョルジョ・アガンベンの映画論は6本の短いエッセイに限られる。そのうち、未邦訳にとどまっていたゴダール論をここに訳出する。 このゴダール論は、もともとはベルナール・エイゼンシッツの企画により、1995年8月6日、11日、12日にロカルノ映画祭の最中に開催された『(複数の)映画史』Histoire(s) du cinémaをめぐる大規模なシンポジウムで読まれたものである。1988年に最初の2章(1A、1B)が完成した『(複数の)映画史』は、この時点では3Bまで出来上がっていた(本作の概要については、この解説を参照してほしい)。とはいえ、登壇者たちの全員が最新のエピソードまで見ているというわけではなく、内容から判断して、アガンベンもおそらく最初の2章しか見ていないと思われる。 このシンポジウムの一端は、同年10月6日付けの『ル・
2018年のカンヌ映画祭に出品されるジャン=リュック・ゴダールの新作『イメージの本(Le Livre d'image)』の予告篇は、それ自体、実験映画のようだ。左右のビープ音と『軽蔑』ラスト付近の音声の引用で始まり、ハンス・オッテの楽曲がサウンドトラックを支配するこの1分14秒の予告篇の映像は、音声面での不穏さと相まって、異様な密度の濃さで観客に襲いかかる(追記:以下のYouTubeに転載された動画は解像度が低いので、Vimeoのオリジナル版をご覧になることをお勧めします)。 この予告篇は、どうやら複数の映像のレイヤーで構成されているようだ。そのレイヤーの重なり具合を明確に言い表すのはむずかしいが、手がかりになるのは2種類の文字情報のレイヤーだろう。 まずはっきりしているのは、「TABLEAUX」「FILMS」「TEXTES」「MUSIQUE」と続く、大きなフォントサイズで書かれた4つの単
ついにジャック・リヴェットが亡くなった。2010年にはエリック・ロメールとクロード・シャブロル、2012年にはクリス・マルケル、2014年にはアラン・レネが立て続けに逝去し、ヌーヴェル・ヴァーグの時代を牽引した映画人たちのうち存命なのは、ジャン=リュック・ゴダール(1930-)や、アニエス・ヴァルダ(1928-)や、ジャック・ロジエ(1926-)くらいになってしまった。 リヴェットの作品で最初に見たのは、たぶん『セリーヌとジュリーは舟でゆく』(1974)だったと思う。その後、『北の橋』(1981)、『美しき諍い女』(1991)なども見て、『ジャンヌ・ダルク』2部作(1994)以降は、日本で封切られたものは封切り時に見た。かつて随分苦労して長編第一作の『パリはわれらのもの』(1960)の米国版VHSや、『アウト・ワン』(1971)の4巻組の仏語版VHSを手に入れて見たことも懐かしい。しかし、
去る5月30日(土)・31日(日)に京都造形芸術大学で開催された日本映像学会第41回全国大会で、シンポジウム「映画批評・理論の現在を問う――映画・映像のポストメディウム状況について」に登壇したので、忘れないうちにその感想を概要とともに記しておく。なお、ここでのまとめは、登壇者の発言を忠実に再現することを目的とするものではなく、わたしにとって強く印象に残った部分だけをごく選択的に拾ったもので、しかもわたし自身の感想とすでに混じり合ってしまったものなので、思わぬ誤解もあるかもしれないことをお断りしておく。 * およそ3時間におよぶシンポジウムの前半では、北小路隆志氏の司会のもと、パネリストのうちの4名がおのおの20-30分程度のプレゼンテーションを行った。 まず、プロデューサーの岡本英之氏(わたしにとっては、彼がミュージシャン・俳優として出演した濱口竜介の『親密さ』でのしっとりとした歌唱シーン
今年は没後10年になるということで、ジャック・デリダの研究書や訳書が続々と刊行されている(ちなみに、ゴダールの最新作『さらば、愛の言葉よ』には、先月日本語訳が刊行された『動物を追う、ゆえに私は〈動物で〉ある』〔鵜飼哲訳、筑摩書房〕の一節も引用されている)。私もささやかながら、『思想』2014年12月号の特集「10年後のジャック・デリダ」に、下記のインタヴューを訳出する機会を得た(この号全体の目次はここ)。 ジャック・デリダ「映画とその亡霊たち」(聞き手:アントワーヌ・ド・ベック、ティエリー・ジュス)、『思想』2014年12月号、312-332頁 思想 2014年 12月号 [雑誌] 出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2014/11/29メディア: 雑誌この商品を含むブログ (2件) を見る 本インタヴューは、没後も続々と刊行される(まさに亡霊的なロジックに従って?)デリダの著作のうち、
今年5月のカンヌ映画祭でお目見えし、北米では10月下旬に封切られるや「スマッシュヒット」を飛ばしているゴダールの3Dによる最新作『Adieu au langage』(2014)が、日本でも来年1月に『さらば、愛の言葉よ』の邦題で公開されることになっている(公式ツイッター)。 北米で「スマッシュヒット」と書いたのは決して戯れではない。『Indiewire』記者のこのブログ記事によれば、まずニューヨークの2館で水曜日(10/29)に封切られた『Goodbye to Language』は最初の2日間で11,448ドルを売り上げ、別の記事によれば、週末までに興行収入は38,448ドルに至り、前作『ゴダール・ソシアリスム』(2010)が20週をかけて到達した32,977ドル(なんという少なさ!)を上回ったという。 もちろん、2館のみの上映なので観客の絶対数で考えればごく少人数に見られたにすぎないのだ
前エントリーでお知らせしたマノヴィッチの『ニューメディアの言語』の刊行を機に、このエントリーではニューメディア論の関連文献をいくつか挙げておく。 ニューメディアの言語―― デジタル時代のアート、デザイン、映画 作者: レフ・マノヴィッチ,堀潤之出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2013/09/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件) を見る まず、マノヴィッチ自身は、この夏に『ニューメディアの言語』の続編ともいえる『ソフトウェアが指揮を執る』(Software Takes Command, Bloomsbury Academic, 2013)を刊行している。すでに『ニューメディアの言語』でも、ニューメディアは「プログラム可能」なデジタルデータから成っており、メディアとしてもはや固有のかたちを持っていないのだから、既存のメディア論の枠組みを超えて、コンピュータ・サイエンスの
2009年頃から翻訳に取りかかっていたレフ・マノヴィッチの『ニューメディアの言語』(Lev Manovich, The Language of New Media, Cambridge, Mass.: The MIT Press, 2001)が、ようやくみすず書房から刊行された。おりしもこの夏に、本書の続編とも言えるマノヴィッチの新著『ソフトウェアが指揮を執る』(Software Takes Command, Bloomsbury Academic, 2013)が刊行されたので、いわば「周回遅れ」の邦訳刊行なのだが、それでもまったく色あせることのない、ニューメディア研究の基本文献である。 ニューメディアの言語―― デジタル時代のアート、デザイン、映画 作者: レフ・マノヴィッチ,堀潤之出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2013/09/14メディア: 単行本この商品を含むブログ (8件
もはや旧聞に属する事柄で恐縮だが、5月末にIVCから発売されたジャン=リュック・ゴダール+ジガ・ヴェルトフ集団 Blu-ray BOXに封入の小冊子に、「ゴダール 1968-1972」という短いエッセイを寄せた。 ジャン=リュック・ゴダール+ジガ・ヴェルトフ集団 Blu-ray BOX (初回限定生産) 出版社/メーカー: IVC,Ltd.(VC)(D)発売日: 2012/05/31メディア: Blu-ray購入: 3人 クリック: 227回この商品を含むブログ (9件) を見る 小冊子には他に、黒沢清・菊池成孔の両氏によるエッセイと、2010年8月に行われたゴダールとの2時間の対話の採録が丁寧な注釈とともに収められている。後者の対話の映像版は、『JLGとの対話』(Conversation avec JLG)としてボックスにのみ特典として付属している(ちなみに、このボーナスは以前このエント
以前、このエントリーでも触れた『ゴダール・ソシアリスム』のブルーレイ版(紀伊國屋書店)が、数度の延期を経てようやく発売された。全44頁の封入リーフレットには、中条省平氏によるゴダール・フリートーク(2010年11月27日実施)の採録(4-19頁)と、私が執筆した解説(22-42頁)が収められている。 ゴダール・ブルーレイ コレクション ゴダール・ソシアリスム [Blu-ray] 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店発売日: 2012/02/25メディア: Blu-ray購入: 3人 クリック: 58回この商品を含むブログ (12件) を見る 中条氏のトークは、『勝手にしやがれ』上映前に行われた経緯もあって、『気狂いピエロ』などの60年代ゴダールの革新性を振り返ることから始まり、『ゴダール・ソシアリスム』の別のやり方での革新性にまで話が及ぶ、たいへん見通しのよい内容である。 他方、私の解説は、以
昨年末に公開された『ゴダール・ソシアリスム』についての覚書を、勤務先の紀要に寄せた。 堀潤之「イメージ、写真、社会主義――『ゴダール・ソシアリスム』をめぐって」、『関西大学文学論集』第60巻第2号、2011年9月、47–62頁 全文(PDF) これは、表象文化論学会のウェブ上のニューズレターの『REPRE』11(2010年12月)に寄せた短評「イメージの社会主義——『ゴダール・ソシアリスム』をめぐって」(全文)に大幅に加筆したものである。なお、この紀要はいずれPDFで公開されるはずのものなので、やや先走ってここにPDFをアップしておく次第である。 大幅に加筆した部分は、ほとんどが『ゴダール・ソシアリスム』に頻出する「写真」のモチーフについて触れた箇所である。加筆にあたって、大きな着想源になったのは、イギリスの映画研究者にして仏文学者のロラン=フランソワ・ラックがスペインの映画批評誌『Lum
ゴダールが予告編の名手であることはよく知られている。ゴダールの手にかかると、予告編はそれが予告するところの本篇の粗末な要約であるどころか、それ自体として一つの短編としての完成度を備えるようになる。そのことは、作品のキーワード(かわいい女の子、悪党、拳銃…)をアンヌ・コレットの声が次々に列挙する一方で、それに対応したりしなかったりする映像がテンポよく展開されていく『勝手にしやがれ』の予告編(左)——それを締めくくるのは、ゴダール自身による「今やっている最良の映画」le meilleur film actuelという声だ——や、同じ手法をブラッシュ・アップした『軽蔑』と『気狂いピエロ』の予告編を見るだけでも明らかだ。あるいは、ブレッソンの『少女ムシェット』の予告編(右)など、一種の映画批評になっているとも言え、「予告編」の概念そのものを更新している。その他にも、ゴダールの声が非西洋音楽のメタフ
『ゴダール・ソシアリスム』の関連資料(5) Miscellaneousとして、最後にいくつかの小ネタを紹介する(あわせて関連資料(1)TEXTOS、(2)VIDEOS、(3)AUDIOS、(4)BIBLOSもご参照ください)。 まず、第1楽章の豪華客船は、企画段階では「ゴールデン・ウェブ号」という名前が付いていたようだが、完成作ではその名前が出てくることは一度もなく、「コスタ・コンコルディア号」という撮影に使われた客船の名前がいくつかのショットで目に入る。この船の概要は、コスタクルーズ社のホームページで見ることができる(なんと日本語にも対応している)。船内の各部分を写真と360度の画像で見ることもでき、何度も出てくるビュッフェ・レストランやアトリウム(船内の吹き抜け)、アリッサが倒れ込むプールやアラン・バディウが講演するからっぽの講堂、諜報員たちが情報交換するインターネット・コーナーなどを
『ゴダール・ソシアリスム』関連資料(2) VIDEOSとして、引用されている映像一覧を載せる(関連資料(1)TEXTOSも参照ください)。 『映画史』以降の多くのゴダール作品と同様、本作にもさまざまな映画からの引用がちりばめられているが、なかでも目に付くのは、第3楽章のオデッサのパートがまるまるそれに割かれている『戦艦ポチョムキン』(それに現在のオデッサ階段を子供たちにガイドする様子が対比されるのだが、その悲痛なユーモアは、合成を駆使したズビグニュー・リプチンスキーの『Steps』(1987)の下品さとは比べようもない)を除けば、ジャン=ダニエル・ポレの中編『地中海』(日本未公開、63)からの引用だろう(この作品の公開時に、ゴダールは短い評論を書いてもいる。『ゴダール全評論・全発言I』所収)。鉄条網ごしの海辺、ピラミッド、闘牛、黒々とした古代エジプトの太陽神ホルス、かすかに微笑んだスフィン
来る12月18日に日本公開される『ゴダール・ソシアリスム』Film Socialismeについての短評を、表象文化論学会のウェブ上のニューズレターに寄せた。 堀 潤之「イメージの社会主義——『ゴダール・ソシアリスム』をめぐって」、『REPRE』11(2010年12月)、(全文) 5月半ばにパリで公開されて以来、カルチエ・ラタンの映画館シネマ・デュ・パンテオンで、それから9月末にフランスで出たDVDで、この作品とはおよそ半年間にわたって濃密なつきあいを続けてきた。映画公開と同時にP.O.Lから出た採録本(といっても、台詞の中身が句読点なしに載っているだけで、ト書きはおろか、話者の名前さえ載っていない代物)を参考にしながら、オフの声が非常に多いため、苦労してなんとか話者を割り出しながら、字幕製作の参考のための下訳(勘違いや間違いだらけの、ひどい代物!)を作ったことも、今となってはもはやよい思い
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